国会質問

<第183通常国会 2013年04月12日 本会議 16号>




○塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、消費税転嫁法案について質問をいたします。(拍手)
 まず、法案の前提となる消費増税が国民の暮らしと経済に与える影響です。
 例えば、二〇〇〇年以降だけを見ても、勤労者の賃金は下がり、所得税、住民税の増税と社会保険料の負担の押しつけによって、可処分所得は大きく減り、消費支出は、実に五十七万九千円も減少しています。
 総理、相次ぐ賃下げと国民負担増により内需が縮小させられてきたとの認識はお持ちですか。
 そして、今、いわゆるアベノミクスのもと、円安の進行により、ガソリンや灯油、電気、ガス、小麦など輸入食品や生活必需品の値上がりが連続し、国民生活に深刻な影響が出始めています。その現状認識と対策について答弁を求めます。
 この上さらに消費税率を一〇%に増税すれば、年十三・五兆円、戦後の税制史上最大規模の増税が国民の暮らしを直撃することになります。税と社会保障の負担増により、平均的なサラリーマン世帯で、一世帯当たり何と三十一万円も負担がふえます。
 一方、日銀は、大胆な金融緩和によって、消費者物価を二年以内に二%上げるとしています。そうなれば、三年後には、単純計算で、消費者物価は九%も上がることになります。
 総理、賃上げがこれに追いつかなければ、勤労者の可処分所得と消費支出を一層減らし、デフレ不況からの脱却に逆行することになるのではありませんか。
 そもそも、消費税は、低所得者層ほど負担が重い逆進性があり、まさに、弱い者いじめの税金です。増税を強行すれば、低所得世帯の生活は一層厳しくなり、貧困と格差を拡大することになります。
 さらには、東日本大震災の被災者の住宅再建、生活再建の足かせにもなるのではありませんか。答弁を求めます。
 次に、法案では、中小零細業者が消費税の価格転嫁に懸念を持っていることに対処するとしていますが、そもそも、この認識が間違っています。懸念ではなく、転嫁できていないというのが現実です。
 転嫁できない苦しみが、消費税導入以来、四半世紀続いてきた、これが中小零細業者の悲痛な叫びです。多くの業者は、身銭を切って納税し、身銭すら切れずに滞納を余儀なくされ、毎年約六十万件もの消費税新規滞納が発生しています。ついには、廃業、倒産に追い込まれているのです。総理は、この現状を知っていますか。
 大企業は消費税をほぼ一〇〇%転嫁できているのに、なぜ中小業者は転嫁できないのか。その根本原因は、製造業や建設業に典型的な、重層的下請構造にあります。大企業と下請中小企業との間に、圧倒的な力の差を背景とした支配関係があるからです。
 小売業でも、同様に、大手流通企業が市場を支配し、納入業者や取引業者は弱い立場に立たされています。欧米にはない我が国特有のこの下請いじめの構造に根本的なメスを入れられずに、どうして実効ある対策ができるでしょうか。
 法案は、消費税転嫁拒否行為を是正するとしていますが、その内容は、現行法と実質的に変わりがありません。現行の独禁法や下請法が大企業の優越的地位の濫用行為に対してほとんど有効な役割を果たせてこなかったことを、どう反省し、どんな改善策をとるというのですか。
 また、法案は、消費税還元セールなどの広告、宣伝を禁止するとしていますが、背後にある下請いじめの構造にメスを入れず、宣伝文句や表示を取り締まるというのは、全く筋違いであり、消費者の利益にもなりません。答弁を求めます。
 最後に、多くの業者は、消費税を営業破壊税と呼んでいます。消費増税を強行すれば、雇用の七割を支える中小零細業者の営業を破壊します。消費支出を抑え、内需を冷え込ませて、国民の暮らしも日本経済も、底なしの泥沼に突き落とすことになるのであります。
 消費税の大増税はきっぱり中止することを求め、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 塩川鉄也議員にお答えをいたします。
 消費税率の引き上げが経済に与える影響等についてお尋ねがありました。
 今般の一体改革による消費税率引き上げは、増大する社会保障の持続性と安心の確保、国の信認維持のために行うものであり、給付と負担のバランスのとれた社会保障制度を維持強化していくため、御理解をいただきたいと考えております。
 また、消費税率引き上げ分は、全額社会保障財源化され、国民に還元される点も考慮する必要があり、負担増のみに着目することはいかがかと思います。
 なお、二〇〇〇年以降の消費の伸び悩みについては、長年にわたりデフレを維持してきたことが背景にあると考えております。
 私の内閣では、デフレから脱却をし、雇用や所得の拡大を実現することで、国民生活、経済成長の恩恵が幅広く行き渡るよう、三本の矢を一体的に進めてまいります。
 ガソリンや輸入食品等の価格の値上がりによる影響の現状認識と対策についてお尋ねがありました。
 ガソリンや輸入食品等の価格は、為替相場の動向に加え、地政学的リスクの増大などによる原油価格の動向や国際穀物相場など、さまざまな要因で変動するものと承知しています。
 最近の為替相場の動向は、全体としては景気にプラスの影響をもたらすと考えていますが、ガソリン等一部の価格の上昇による家計や企業への影響については、引き続き注視していきます。
 いずれにせよ、政府としては、三本の矢により、企業の収益機会をふやし、雇用や所得の拡大を実現することで、国民生活に経済成長の恩恵が幅広く行き渡るようにしてまいります。
 消費税率引き上げに伴う負担増と物価についてお尋ねがありました。
 今般の一体改革による消費税率引き上げは、増大する社会保障の持続性と安心の確保、国の信認維持のために行うものであります。引き上げられる消費税率の税収は全て社会保障の財源に充てられることとしており、その負担増のみに着目することはいかがかと考えております。
 また、物価のみが上昇するのではなく、企業の収益力向上の成果が適切に勤労者にも分配されることが重要です。
 引き続き、三本の矢により、企業の収益機会をふやし、雇用や所得の拡大を実現することで、国民生活に経済成長の恩恵が幅広く行き渡るようにしてまいります。
 なお、消費税率の引き上げは一回限りの物価上昇につながりますが、住宅、家賃等の非課税取引があることから、単純に、引き上げ分が全てそのまま物価上昇につながるわけではありません。
 消費税率引き上げに際しての低所得者への配慮と東日本大震災からの復興についてのお尋ねがありました。
 消費税率引き上げに当たっては、低所得者への配慮として、税制抜本改革法において、給付つき税額控除と複数税率がともに検討課題とされ、消費税率八%段階から、いずれかの施策の実現までの間の暫定的、臨時的な措置として、簡素な給付措置を実施することとされています。
 また、東日本大震災の被災者の方々に対しては、住宅ローン減税の拡充や、住宅の再取得等に係る消費税の負担増加に対応し得る給付措置を講じるとともに、現場主義により、被災地における住宅再建等の課題にしっかりと取り組んでまいります。
 消費税の滞納及び下請取引に対する対応についてのお尋ねがありました。
 消費税が滞納となる原因については、個々の納税者の営業や資金繰りの状況など、さまざまな事情によるため、一概に価格転嫁の問題のみが原因とは言えないのではないかと考えております。
 また、滞納となった消費税額のほとんどは翌年度末までに納付されており、消費税の滞納が直ちに廃業や倒産の原因となっているわけではないと考えております。
 下請法違反行為に対しては、公正取引委員会及び中小企業庁が緊密に連携し、迅速かつ的確に対処しているところであり、引き続き、下請事業者に与える不利益が大きい事案については、勧告を積極的に行うなど、適切に対処してまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣稲田朋美君登壇〕

○国務大臣(稲田朋美君) 消費税の転嫁を拒否する行為を是正するためにどのような改善策をとるかについてのお尋ねがありました。
 今回の転嫁対策法案では、法律上の要件を簡潔なものとしたほか、公正取引委員会だけでなく、業所管大臣等も法の運用の主体とするなど、転嫁拒否等の行為に対して迅速かつ効果的な対応を可能とする制度としております。
 この転嫁対策法案による特別措置を設けることにより、現行の独占禁止法や下請法による措置に加えて、さらに万全の措置を講ずることといたしております。
 表示の規制をするよりも、下請いじめの構造にメスを入れるべきではないかというお尋ねがありました。
 本法案では、消費税率の引き上げ時に中小事業者等に対する消費税の転嫁拒否の問題が集中的に発生することが懸念されるため、これに対応するために、法律上の要件を簡潔なものとしたほか、公正取引委員会だけでなく、業所管大臣等も法運用の主体とするなど、転嫁拒否等の行為を迅速かつ効果的に是正することが可能となる制度といたしております。(拍手)

    〔国務大臣森まさこ君登壇〕

○国務大臣(森まさこ君) 広告、宣伝の禁止はむしろ消費者の利益に反するのではないかとのお尋ねがありました。
 消費税は、最終的に消費者が負担するという仕組みをとっている税であり、一般消費者が消費税の負担者ではない旨を示す表示は、それ自体が事実と異なる表示です。
 かかる表示が蔓延することは、適正な表示を前提に商品選択を行おうとする消費者の期待に反することとなり、ひいては、消費者の利益に反するものと考えています。
 また、本法案は、あくまで消費税の転嫁を阻害する広告、宣伝を禁止するものであり、事業者の企業努力による価格設定自体を制限するものではありません。(拍手)

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