国会質問

<第183通常国会 2013年04月24日 経済産業委員会 9号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 消費税転嫁法案について質問をいたします。
 きょうは、法案に直接関連する点で稲田大臣にお尋ねをし、また、中小業者の実態については茂木大臣にお聞きする、こういうことで質問したいと思っております。
 法案の提案理由説明の中では、今回の法案は、消費税率の引き上げが二段階にわたるものであることもあり、中小零細事業者を中心に、消費税の転嫁について懸念が示されていると述べています。ついては、消費税の価格転嫁が困難という現状認識についてまずお尋ねしたいと思います。
 資料を配付させていただきましたが、一枚目、「中小企業四団体による消費税転嫁にかかる実態調査結果」ということで、これは、二〇一一年十二月十二日の政府税制調査会で経済産業省意見として紹介された、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会の中小四団体による中小企業における消費税実態調査の結果であります。
 ごらんいただいてわかりますように、売り上げの規模などによって当然差も出てくるわけですけれども、現在、消費税五%を販売価格に転嫁することができていますかという問いに対して、多数の事業者が転嫁できていないと回答していることが見てとれます。消費税を価格転嫁できないのが実態だと事業者の方が訴えているわけですが、こういう声、価格転嫁できないという中小業者の実態について、稲田大臣、そして茂木大臣も同じ認識か、この点についてまずお答えください。

○稲田国務大臣 今、塩川委員から示されました「中小企業四団体による消費税転嫁にかかる実態調査結果」を見ましても、明らかに、規模が小さくなるほど、売り上げが小さくなるほど、現在でも消費税を転嫁することができないという状況になっております。
 昨日の予算委員会でも、ある委員から、御自身が調査された結果で、商店街のところで調査をしたら、百人中九十八人が消費税増税に反対で、転嫁に対して大変不安を持っている、そういう結果を出して質問されておりましたが、規模が小さくなるほど消費税の転嫁に対して不安があり、そして今回の法案はまさしく、消費税増税時において集中して起こるであろう転嫁拒否事案に対して対応をするものでございます。

○茂木国務大臣 御指摘の調査は、一昨年の平成二十三年八月に、中小四団体が共同で調査をしたものであります。
 消費税に関しては、委員も御案内のとおり、さまざまな調査が行われておりますが、御指摘の調査結果に限れば、中小企業、小規模事業者の方々が、消費税の転嫁について、まさに現在も困難に直面しており、かつ今後にも不安を感じていることがこの調査結果で示されていると思います。
 政府としては、こうした事業者の方々の御懸念も踏まえて、本法案の内容を中心にして、政府一丸となって実効性のある強力な転嫁対策を実施していきたい、このように考えております。

○塩川委員 稲田大臣からは、現在でも消費税を転嫁することができないというお話がございました。茂木大臣からも、現在も転嫁について困難に直面している、いわば法案の趣旨としては、消費税の引き上げの際に転嫁ができない懸念と言いましたけれども、現時点で転嫁ができていない実態があることを意味しているという点での認識を示していただきました。転嫁できない苦しみというのが、消費税導入以来、四半世紀続いているという業者の方の悲痛な叫びも寄せられております。
 そこで、茂木大臣にお尋ねしますが、消費税を価格転嫁できない、しかし消費税は払いなさいと言われた場合に、そのときにこの消費税分というのは誰が負担するのか、お答えいただけますか。

○茂木国務大臣 さまざまな取引において、これは消費税の転嫁にかかわらず、例えば付加価値を売り手、買い手のどちらがとるか、こういう問題というのが出てくるわけであります。そういった商取引の中で、その企業の持っている技術であったり部品であったり、その独自性であったり価格支配力、こういったものによっても相当違ってくるのではないか。
 ただ、一般的に申し上げて、多くの先から調達を行う、調達のオプションを持っている大きな企業と、納入のオプションが限られる中小企業の場合には、どうしても力関係は大きな企業の方が大きくなるであろう、こういったことから、不当な価格転嫁の阻止が起こらないようにということで、今回の措置を導入させていただきたいと考えております。

○塩川委員 質問にお答えいただいていないんですが、消費税を価格転嫁できないというときに、その消費税分は誰が負担するのかという点については、最終的に消費税を負担するのは消費者とされているわけですが、納税義務者は事業者の方であります。この分離が矛盾となって価格転嫁問題というのが生じるわけで、改めてお尋ねしますが、価格転嫁できなければ、事業者の方が自腹を切って払わざるを得ない、それが消費税ということになるんじゃありませんか。

○茂木国務大臣 それぞれの企業の活動の中で、原材料に係るコストであったり、人件費に係るコストであったり、そういったコストを売り上げから除いた部分が利益として計上される、そして、その利益がどこまで大きいか、消費税の分も含めて利益が圧縮される、場合によっては、売り上げよりもコストの方が大きければマイナスになる、こういった状態は出てくるのではないか。
 ただ、これは付加価値税でありますから、それぞれの段階で計上していただき、そしてそれを消費税として国に納めてもらう、これを国民全体の社会保障の安定に使っていく、こういった方向で考えております。

○塩川委員 全国商工会連合会、全国連も、ちょうどこの実態調査を行った際に「消費税の問題点」という資料を出しました。そこの中でも「規模の小さな事業者ほど、立場が弱く、販売価格に消費税を転嫁できないため、消費税率が引き上げられると、転嫁をできない分を自らの利益を削って納税することとなる。」というふうに述べて、つまり、価格転嫁ができずに、身銭を切って納税せざるを得ない、これが中小業者の実態だと。これは受けとめていただけますか。

○茂木国務大臣 先ほど正確に答弁をさせていただいたと思います。

○塩川委員 消費税は、赤字でも売り上げに応じて課税されるわけで、国税庁にお尋ねしますが、全法人に占める欠損法人、赤字法人の割合、国税の新規発生滞納額に占める消費税の割合、新規発生滞納件数に占める消費税の割合について、一九九一年度と直近の二〇一一年度の割合をそれぞれお答えいただけますか。

○岡南政府参考人 お答えいたします。
 国税庁の会社標本調査によりますと、欠損法人割合は、一九九一年度が四九・七%、二〇一一年度が七二・三%となっております。
 また、新規発生滞納全体に占める消費税の割合でございますが、まず税額ベースでは、一九九一年度が一三・四%、二〇一一年度が五三・〇%となっております。また、件数ベースでは、一九九一年度が九・六%、二〇一一年度が四一・五%となっております。

○塩川委員 今お答えいただいた数字をグラフにしたのが資料の二枚目であります。
 全法人に占める赤字法人の割合及び国税の新規発生滞納に占める消費税の割合、これは金額ベースと件数ベースですけれども、一九九一年度以降、二〇一一年度までの推移をここで紹介しております。ごらんいただいてもわかるように、消費税導入後、赤字法人の割合が増加するとともに、ほかの国税に比べて消費税の滞納の割合というのが、納税額でも滞納件数でもどんどん高くなっております。
 重ねて国税庁の方にお尋ねしますが、本会議の私の質問に対して安倍総理は、このような滞納となった消費税額のほとんどは翌年度末までに納税されていると言うけれども、どのような徴収が行われているのか、この点についてお答えください。

○岡南政府参考人 お答えいたします。
 消費税につきましては、平成二十二年度の徴収決定済み額が約十兆六百二十八億円ございましたが、このうち約三千三百九十八億円が滞納となりました。したがいまして、消費税の徴収決定済み額約十兆円に対する割合は三・四%でございまして、逆に言いますと、九六・六%は督促前に収納されておりました。滞納にならなかったということでございます。
 御指摘の点でございますけれども、平成二十二年度に新たに発生しました消費税の滞納税額約三千三百九十八億円のうち、同二十二年度中に約二千百五十七億円、さらに翌二十三年度末までに約七百二億円、二年間の合計で二千八百五十九億円が徴収されております。
 なお、平成二十三年度末における消費税滞納残高は約四千百六十九億円でございまして、平成十二年度以降、十二年連続で減少しているところでございます。

○塩川委員 滞納そのものについて、消費税の占める割合が高くなっているというのは先ほども示しました。
 その上で、実際には翌年度末までには納税がされている、今の数字でいいますと、大体八四%まで徴収されているということですけれども、現状は、結局、転嫁できない事業者が身銭を切って納税せざるを得ない。身銭を切ることもままならず、滞納せざるを得ないという実態に陥ったときに、結果として、どういう実態の中で消費税を払い、あるいは滞納せざるを得なくなっているかというところに心を寄せることが必要なんじゃないでしょうか。
 グラフで見ていただくと、件数ベースで、新規滞納に占める消費税の割合が大きくふえているのが、二〇〇四年から二〇〇五年にかけてであります。これは、消費税の免税点が二〇〇四年に売上高三千万円から一千万円に縮小されたときに対応しています。そういう中で、滞納の件数もふえているということが見ていただけると思います。
 売上高一千万円の事業者といえば、単純計算で月八十三万円強ですし、ここから仕入れ経費や水光熱費などを引くとどれだけ残るかという状況で、粗利の二割として十七万円弱であります。非常に零細な小売店程度の規模ということで、一千万円に対し消費税が五十万円ということがどれだけ過酷なものかわかるんじゃないでしょうか。
 茂木大臣に重ねてお尋ねしますけれども、こういったまさに生業に近いような小規模零細な事業者は、もともと内部留保などはありませんし、経営者の給与も報酬も受け取らない、預貯金を取り崩して、保険も解約する、こういう状況で納税し、結果として滞納せざるを得ない、それが消費税だという実態を受けとめていただけますか。

○茂木国務大臣 法人税に限らず、消費税についてもそうだと思いますけれども、根本的な解決策は、やはり日本の経済を再生して、そして多くの企業が納税できる、利益が上がる、こういう環境をつくることだ、そのように考えております。
 今御案内のとおり、安倍内閣におきましては、三本の矢ということで、長引くデフレからの脱却、そして経済の再生というものに取り組んでおります。そういった中で、中小企業、小規模事業者がしっかりと収益を上げて、それが所得にも還元される、そして税もしっかりと払える、こういう環境をつくるために全力で取り組んでいきたいと思っております。

○塩川委員 安倍内閣の三本の矢、経済再生ということですけれども、しかし、アベノミクスの恩恵というのが中小零細企業に及んでいるのかという問題があります。逆に、円安に伴う資材高騰により仕入れコストが上昇して、経営を圧迫するような事態になっているんじゃないのか。
 中小企業家同友会全国協議会の方が各議員を回られまして、私のところにもおいでになりましたが、二〇一三年一―三月期の景況調査の速報を示していただきました。そのタイトルは「アベノミクス効果 中小に及ばず」であります。
 若干紹介しますと、「一部の大企業景況の上向きと対照的に中小企業景況は後退が続いている。売上・業況・採算DIは、いずれも水面下で悪化、特に製造業での悪化が大きい。円安の影響で仕入単価が大きく上昇し、採算が圧迫されている。次期以降に改善への「期待感」が存在する一方、製造業などで業界の先行き不透明感がぬぐえず、設備投資に踏み切れない状況もある。アベノミクス効果が中小企業景況に及んでいるとは現況ではいえない。むしろ円安先行による利益圧迫との攻防が当面する課題となっている。」こういう指摘こそ真摯に受けとめることが必要だと申し上げたい。
 消費税の滞納割合が増加しているというのは、価格への転嫁ができないもとで、受け取ってもいない消費税を払えと言われても、赤字経営のもとで払うに払えないという中小業者の実態を示しております。実際、売り上げも減少して、この十年でもうけを吐き出したという業者の方の声もよく聞くわけであります。
 資料の三枚目、「資本金別配当金、利益剰余金、給与等の増減比」これは、資本金十億円超と資本金一千万円以下で九一年を一〇〇とした増減率を示したグラフであります。この間、資本金十億円を超える大手企業においては配当金や利益剰余金を大きくふやしているのに対して、中小企業における経営は深刻になっているということが見てとれます。
 茂木大臣に重ねてお尋ねします。
 消費税の増税というのがこういった中小企業、小規模事業者の廃業や倒産の引き金になるのではないのか、こういう強い懸念の声もあります。この点についてはどのように受けとめておられますか。

○茂木国務大臣 委員のお示しいただきました図を拝見いたしましたが、この図の起点は九一年というバブルが崩壊する前であります。これは、中小企業、小規模事業者も比較的業況がよかった年でありまして、それ以降の落ち込みということになると、大企業の回復の方が早かったということなんだと思います。恐らく、九三年を起点にとるとかなり違った形のグラフになってくる、私はそのように思っております。
 いずれにしても、立場の弱い中小企業、小規模事業者が消費税を転嫁できず経営に悪影響を及ぼすことがないように、今回の法案による措置を中心にして、政府一丸となって転嫁対策に万全を期していきたい、このように考えております。
 同時に、日本政策金融公庫によりますセーフティーネット貸し付け等々もしっかり行っていきたいと思っております。
 さらに申し上げると、日本は今開廃業率がいずれも五%前後なんですが、廃業率の方が高い。アメリカそしてイギリスは、開業率が大体一〇%から一二%ぐらいまでいっております。そういった状況に中期的には持っていけるように、これからの成長戦略の中で、開廃業率の逆転、そして開業率の上昇に重点的に取り組んでいきたいと考えております。

○塩川委員 バブルを起点にすると大企業の回復が早いのではないのかというお話がありましたけれども、であるならば、バブルを起点としても、大企業がこれほど大きな配当金、利益剰余金を積み上げていることに、中小企業との大きな格差が生まれているということこそ見なければいけないんじゃないでしょうか。中小企業は本当にこの景気回復の恩恵に浴していないということを示すものだと考えます。
 消費税増税なら来年四月の前に廃業しようという業者の方というのも少なくないんですよ。ですから、開廃率の話をされたけれども、廃業率をさらに高めるのが消費税の増税だということこそ真摯に受けとめるべきだと思います。
 消費税の価格転嫁の問題ですけれども、そもそも、大企業は消費税についてほぼ一〇〇%転嫁できるのに、中小業者はなぜ転嫁できないのか。冒頭お話がありましたように、現在でも消費税の転嫁について困難に直面している、転嫁することができないという実態にある。なぜ中小業者は転嫁できないのか、この点についてはどのようにお考えですか。

○茂木国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたけれども、取引関係において、いろいろな意味で、どちらに選択の幅があるかによって価格交渉力というのは違ってくる、そういった影響も出ているんだと思っております。
 ただ、繰り返しになりますが、今の日本は、全体的に申し上げて、余りにもコストダウンというか、価格競争に陥っている。全体の経済が、もう少し高付加価値なものを適正な価格で売る、こういったマインドに転換していくことが必要だ、そんなふうに考えております。
 同時に、根本的な解決策というのは、やはり景気をよくしなくちゃいけないんです。みんなが景気がよくなかったら、消費税だけじゃなくて、法人税だって払えない。
 ですから、我々は、まずデフレからきちんと脱却して日本経済を新しい成長軌道に乗せる、それによって所得がふえる、所得がふえれば消費は当然伸びます、消費が伸びれば企業の設備投資が膨らむ、設備投資が膨らむことによって企業の収益が上がり、また所得がふえる、こういったいい循環をつくり出していきたいと思っております。

○塩川委員 勤労者の報酬の引き上げを安倍総理も要請したということですけれども、結果は去年の春闘の結果と変わらない、並びなんですね。
 そういう点でいえば、四万人の雇用創出なんて総理は言いましたけれども、どこに根拠があるのか。そういう実態が今あるということを厳しく言わなければなりません。本来、勤労者の、国民の所得をふやすというところにこそ政策を行うべきであって、そういう点でも、内部留保をきちんと還元していくような仕組みづくりこそ行うべきだということを申し上げておきたい。
 そもそも、中小企業が転嫁できない根本原因というのは、製造業や建設業に典型的な重層的下請構造にあるわけで、大企業と下請中小企業との間に圧倒的な力の差を背景とした支配関係があるからであり、小売業でも大手流通企業が市場を支配し、納入業者や取引業者は弱い立場に立たされております。消費税というのはトランプのばば抜きのようなものだ、大企業はさっさとジョーカーを押しつけて高みの見物を決め込み、中小業者と消費者がジョーカーを押しつけ合っている、こういう声もあるわけであります。
 消費税は、転嫁できなくても赤字であっても納税を迫る、弱い者いじめの税金であり、営業破壊税と言わざるを得ません。消費税増税ありきで目先の対策だけを行うような今回の法案は、結果として、下請いじめ構造にメスを入れることを棚上げすることになり、かえって有害にもなりかねない。
 消費税増税そのものの中止の決断こそすべきだということを申し上げて、質問を終わります。