国会質問

<第183通常国会 2013年04月24日 経済産業委員会 9号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、三人の参考人の皆さんから貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。早速、質問をさせていただきます。
 最初に、お三方皆さんにお尋ねしたいと思うんですけれども、この消費税そのものが、現在でもきちんと転嫁をされているのかという問題があります。
 というのは、今回の法案というのは、八%、一〇%、二段階で増税を行う、その際に、転嫁ができないのではないかという中小零細事業者の懸念があるからというのが今回の提案理由の説明として行われているわけですけれども、事業者の皆さんにすると、いやいや、そもそも、今、消費税そのものが転嫁できていないという声があるわけですね。
 おととしの政府税制調査会に経済産業省が提出をいたしました商工会議所や商工会など全国団体、中小四団体が実施をしました消費税に関する実態調査、アンケート調査がございます。これは全国商工会連合会が作成したものですけれども、消費税の問題点として、消費税の価格への転嫁は困難だ、売り上げの規模によって差はありますけれども、三割から七割の事業者の方々が現在でも転嫁が困難だという声を上げておられる、これが実態だという事業者の方の声があります。
 この点について、参考人の皆さんが、転嫁できていないという現状についての認識がいかがかということをぜひお聞きしたいということと、転嫁できていないということであれば、その理由、要因が何なのか、この点について、ぜひお聞かせいただければと思っております。

○舟田参考人 法律的に言いますと、規制の実効性はあるのかということであります。特に、優越的地位の濫用あるいは下請法については、従来からざる法ではないかということが言われてきたわけです。しかし、私が習っていたころは、ざる法ではないかという批判はありましたけれども、ここ十年、二十年、下請法は著しい変革といいますか、さまざまな工夫を重ねてきて、大分浸透してきたというのが一般的な認識ではないかと思います。
 そうはいっても、では、全ての下請いじめがなくなっているかというと、そんなことはもちろんないわけですが、制定当初のざる法と言われたころから比べれば、実効性が少しずつ出てきたという程度ではないかと思います。
 それから、優越的地位の濫用もそのとおりで、確かに今の転嫁されていないことについて、優越的地位の濫用、やっていないじゃないかと言われればそのとおりでございますが、これも前回の独禁法改正で、優越的地位の濫用があった場合には課徴金をかけるという制度ができて、次第に執行力が高まるということが期待されているわけです。
 そういうことで、お答えになっていないかもしれませんけれども、少しずつ改善が見られている状況だというふうに認識しております。

○小川参考人 お答えしたいと思いますけれども、ちょっと誤解を招く表現になるかもしれないので気をつけて言いたいと思います。
 転嫁ができないという場合に、二つのポイントがあると思っております。
 ちょっと微妙な発言になりますけれども、基本的に、やはりビジネスが厳しいんだと思います。というのは当たり前の話で、三から五になって、五から八に行って、八から一〇になりますと、価格的に言えばどんどん上がっていくわけですね。それは、税を納めているという形ではありますが、商品に対する対価は上がっているんです。その中で商売をやっていかなきゃいけませんから、商売は、普通同じ状態で戦っていれば厳しくなっていくと思います。ですから、なかなか転嫁が難しいというお答えは、やはりそれは環境が、商売をやる人間から見れば、ビジネスをやる人間からいえば、同じ条件のもとでは厳しくなる、利益は減るに決まっているんですね。
 もう一つです。重要なポイントは、これは誤解していただきたくないんですけれども、アンケート調査で、生活が苦しいですかといったときに、これは操作概念じゃないんですね。これは主観です。事実でもあるんですけれども、主観でもあるんです。これは難しいです。つまり、転嫁できない、生活が苦しいというのは、何をもって苦しいですかという調査をしていませんね。ですから、私、参考人としてこれを発言するために、いろいろな資料を調べて、転嫁の問題についていろいろ聞いたんですけれども、およそ六割、七割の方が、普通の調査をすると、転嫁できないと言うんです。それは、だけれども、操作概念じゃないんです。科学的ではないんです。
 ですから、誤解していただくと困るんですけれども、私は、科学的には証明されていないというふうに言って、これは一応置いておきます。確かに苦しい方が多いけれども、転嫁できない方が多いけれども、その五〇とか六〇とか七〇という数字は科学的ではない。誤解しないでください。これは事実です。

○上西参考人 消費税につきましては、先ほどお答えさせていただきましたように、前段階で課されました消費税を控除していくために、その事業者においても適切に転嫁していくということが大前提でございます。
 また、一面、消費税もコストであるという見方もできるかなと思います。そのコストが吸収できないという面も否定できないことは事実でございますし、また、二十三年の中小四団体様がされました中小企業における消費税実態調査の結果についても、なるほどなという結果が示されております。ただ、全ての価格形成要因が価格の中に盛り込めるかどうかということにつきましては、全てのものが必ずしもできるものではない、こう認識しております。
 ただ、消費税の価格転嫁が十分でないということだけではなくて、今後、引き上げに際して円滑、適切に転嫁されるような特別措置法案については、より一層迅速かつ適切に執行されるように期待されるところでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 やはりそうはいっても、力関係の差がありますので、優越的地位の濫用に当たるような、あるいは下請法に対しても違反するような行為が現行行われているという実態があるのはそのとおりだろうと思います。
 そういう点では、やはり製造業や建設業の場合ですと、重層的な下請構造の問題もございますし、小売関係でも、大手の流通業者と小規模な事業者においての差も当然あります。当然、大手の流通業者は仕入れや納入業者との関係でも強い立場にありますから、そういう点で、コストの一部という形であれ、消費税の転嫁が困難になるような事態というのは生まれ得るだろうと思うわけです。やはり、そのものにメスを入れるような取り組みこそ必要だと思っておるんです。
 舟田参考人にお尋ねいたします。
 この法案というのが、実際にどの程度、いわゆる下請いじめの構造というものの是正という点で力になるのかという点での率直な受けとめをお尋ねしたいんです。

○舟田参考人 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、もちろん政府側としては、さまざまな体制を整備して、なるべく転嫁拒否が行われないようにということを努力なさっているだろうと思います。いろいろ、表示の仕方等も含めて、今回新しい手法もとられましたので、明確な、あるいはあからさまな違反というのは少しずつ減るのではないかなと思っております。
 しかし、では、全ての違反行為がこれで取り締まれるでしょうかという質問であれば、それはやはり難しいであろうと思います。転嫁できなかったとか、そういう表示なのかということで、消費者が惑わされることもどうしてもあるのではないかなと思っております。
 そういう意味で、規制の実効性は少しは上がったけれども、しかし、十分ではないということを申し上げざるを得ないと思います。

○塩川委員 舟田参考人が冒頭の意見陳述で、検討すべき課題でも述べておられます。臨時の増員などで対処できることは限られている、専門的行政職員の育成が重要ということを述べておられます。
 この間、下請法も対象拡大をして、役務ですとか、先ほどのコンテンツの制作委託などについても拡大をする。そういう点でいえば、事業者にすれば倍にこの間なってきているわけですけれども、公取の体制もふやしておりますけれども、今の対象業種が拡大した中でふさわしい体制なのか。特に、やはり専門性を持った体制ということで、今の公取の現状について、率直にどのように受けとめておられるか、何が必要なのか、この点についていかがでしょうか。

○舟田参考人 独立行政委員会というのは、一般の省庁と違って、政治的な圧力にさらされることなく、委員会として独自の法執行を行うということであります。
 その理由の一つは専門性ということで、優越的地位の濫用も下請法も、原則はむしろ自由な取引なんですから、それを規制するにはよほどの明確な違法性がなければいけない。そのためには、さまざまな取引の実態、あるいはこれまでの法執行がどれだけ社会に浸透しているか、つまり法意識の問題ですが、その他さまざまな要因を勘案して規制を進めていかなければならない。
 それは、非常に難しいことで、単に臨時の増員などで対処できない問題がやはりあるのではないか。特に、正式な法の適用、単なる行政指導ではなくて、勧告、公表あるいは独禁法違反とするためには、裁判で勝てるだけの証拠を集めて、あるいは理論武装するということが必要で、これはかなり専門的な知識を持った、あるいは訓練された職員が必要であろう、そのためのバックグラウンドとして研究所あるいは経済学の知識の援用等が必要ではないかなと思っております。

○塩川委員 検討すべき課題で、その後に、独禁法の改正案についての御意見もありました。廃案にはなりましたけれども、今の政権のもとでも、同趣旨の独禁法の改正案の提出に向けて作業をしていると承知しております。
 公正取引委員会から行政処分を受けた企業が異議を申し立てることができる審判制度の廃止が柱となっているわけですけれども、この間、例えば経団連などからは、審判を担当する公正取引委員会が検察官と裁判官を兼ねるようなもので公平性に欠けるということなども言われているということが紹介されております。
 舟田参考人が審判制度を廃止する独占禁止法改正案は疑問と述べておられる趣旨について、御説明いただけないでしょうか。

○舟田参考人 私、きょうは慌てて自分のを調べてきたところ、二〇〇九年に参議院で参考人として反対意見を述べているんです。そのときは、ここに書いたことに重なるんですけれども、単なる経済官庁といいますか、違法行為を取り締まる官庁ではなくて、ルールをみずからつくっていかなきゃいけない。例えば、優越的地位の濫用と言われたって、何が実際にいけないのかということは難しいものですから、それを、個別のルールを具体化して示していくという仕事がむしろメーンであろう。
 それは行政庁の中で考えるだけじゃなくて、一旦、違法で、命令を出した後で、審判手続の中で被審人の意見も聞きながら、もう一度、公正取引委員会が考え直す。場合によっては、最初は、命令のときには違法と考えたけれども、被審人の意見を見て、これは違法ではないかもしれない、そのような慎重な手続が審判制度であるわけで、このような手続は一般の行政庁とは違うであろうということで、しかも、その審判制度については、今言ったような、もう一度考え直す、あるいは証拠をもう一度出してもらうということが非常に大事なことである。
 そういう意味で、独立行政委員会として特殊性を維持すべきではないかということであります。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。