国会質問

<第183通常国会 2013年04月26日 経済産業委員会 10号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 消費税転嫁法案について、きょうは、八条、いわゆる消費税還元セール禁止の問題について質問をいたします。
 法案では、消費者に誤認を与えないようにするとともに、納入業者に対する買いたたきや競合する小売店の転嫁を阻害することにつながらないようにするため、事業者が消費税に関連するような形で安売りの宣伝や広告を行うことを禁止する規定を設けるとしております。
 それでは、具体的にどういう表示が禁止をされるのかということで、一昨日のこの委員会の審議で、近藤委員の質問に対して消費者庁の答弁では、具体的にどのような表示が禁止されるのかは、その表示の一部の文言のみを取り出して判断されるわけではなく、表示されている値引きの幅とか、時期、態様といった要素も総合的に勘案しつつ、表示されている全体から見て、消費税と関連づけて値引き等の宣伝を行っていることが明らかであるものは禁止をされるとしております。
 これは、そのとおりでよろしいでしょうか。

○菅久政府参考人 お答えいたします。
 先日そのように答弁したことは事実でございます。

○塩川委員 ですから、値引きの幅、時期、態様、こういった要素を総合的に勘案して、消費税と関連づけているかどうかで判断をするということになります。
 ですから、例えば、値引きの幅についてなんですけれども、消費税と関連づけるという点では、値引きの幅が増税分と同じ三%になるような表示だとだめということでしょうか。

○菅久政府参考人 お答えいたします。
 少し基本的な考え方を御説明させていただければと思います。
 本法案第八条は、いわゆる消費税分を値引きする等の表示を行うことを禁止するものでございます。
 そこで、その対象に該当するかどうかにつきましては、当然ながら行政側が立証責任を負うということになりますので、消費税とか税、こういった表現を伴わない宣伝、これが時々議論になっているわけでございますけれども、消費税や税という表現を伴わない宣伝などの場合は、行政側がその表示全体から見まして、消費税を意味することが誰の目から見ても明らかと立証できるような場合でなければ、基本的には本法案の禁止の対象にはならないものというふうに考えております。
 そういうようなことで、今、パーセントの話も出ましたが、いわゆる三%値下げとか、こうした表現というのもよく指摘されております。
 こういった表現につきましては、それだけをもって禁止するということにはならないと考えておりますけれども、例えば、新聞折り込みチラシなどで広告をしている場合であれば、三%値下げという表現が書かれているとともに、チラシのほかの部分に消費税とか税についての記載をしているということもあり得るかと思っておりまして、そのような宣伝や広告全体を見まして、明らかに消費税を意味する、そういう場合には禁止の対象になり得るというふうに考えております。

○塩川委員 三%値引きと書いてあっても、消費税という文言がそのチラシの中に出てこなければ、税という言葉が出てこなければ大丈夫ということなんですか。

○菅久政府参考人 お答えいたします。
 三%値下げというその表現だけを取り上げて見ますれば、それをもって直ちに禁止されるということにならないと考えております。
 ただ、広告の場合には、さまざまなことが表示され、またそういう組み合わせで宣伝されることがございますので、先日来の答弁になっておりますが、事業者の方々から具体的な表示の計画など、そういうことも十分伺いまして、わかりやすく実例を含めて示していきたいというふうに考えております。

○塩川委員 わからないんですよ。
 例えば、では、その三%値引き、全品三%値引きです、四月からやります、こういうのはどうなんですか。

○菅久政府参考人 お答えいたします。
 消費税や税ということに全く言及していない表示の場合には、基本的にはこの第八条の対象にはならないものと考えております。
 ただ、繰り返しで申しわけございませんが、いわゆる表示のその他のところとの組み合わせということも考えなきゃいけないということを気にしているということでございます。

○塩川委員 来年四月になったときに、四月は物入りの時期、全品三%値引きセールというのは、大丈夫なのか、だめなのか。

○菅久政府参考人 ただいま御指摘いただいた表現のみ、つまり消費税や税に全く触れていない広告ということでございますれば、基本的には禁止の対象にはならないものと考えております。

○塩川委員 これまでの答弁と違ってきているんですけれども。
 その辺について、説明が大きく変化しているんですよ。そういう点でも、先ほど岸本委員もおっしゃいましたけれども、ガイドラインのガイドラインのようなもの、こういうものを示さないと、何か議論の土台がどんどん変わってきているんじゃないのかという疑念が当然出てくるわけで、禁止かどうかの区分というのが、これじゃわからない。
 まずは、この委員会審議の中でしっかりと提示をして、それを土台に議論するということが必要だ、こういうのはぜひ出していただきたい。
 先ほど委員長にもお願いした経緯がありますけれども、私の方からもお願いをしたいと思います。

○富田委員長 後刻、理事会で協議させていただきます。

○塩川委員 そういう点では、消費税に便乗して、取引業者や中小小売店いじめを伴うような安売り宣伝とそうでない安売り宣伝の線引きがよくわからないということで、もちろん現に、消費税を価格転嫁できていない中小の事業者の方から、買いたたきにつながるおそれや周囲の小売事業者が転嫁しにくくなるおそれがある、こういう声が上がっているのは、きょうの午前中の参考人質疑の中でも伺ってきたところで、そういう実態、気持ちというのはよくわかるわけであります。
 しかしながら、稲田大臣、こういう表示にだけこだわるようなやり方というのが、かえって取引業者いじめとか中小小売店いじめのやり方というのを巧妙化させる、あるいは潜在化させる、こういうことになりはしないかという懸念を強く持つんですが、大臣としてはどのようにお考えでしょうか。

○稲田国務大臣 今、一連の質疑を聞いておりまして、やはり八条の、消費税を転嫁していない旨、また、消費税に相当する額の全部または一部を対価の額から減ずる旨、三号の、消費税に関連し、取引の相手方に経済上の利益を提供する旨のガイドライン、なるべく早く策定をするべきだと思っております。

○塩川委員 いや、法案が通ってからの話ではなくて、今必要だということを改めて求めておくものであります。
 そもそも是正すべきなのは、大規模小売業者による納入業者などに対する買いたたきであり、このような優越的地位の濫用を背景とした大型店の安売りによって、周囲の中小小売店の営業が侵害されるという問題であります。
 消費税の転嫁を阻害する宣伝というのは、過去の消費税率の引き上げ時にも生じていたわけであります。三%から五%に引き上げられた一九九七年ごろはどうだったのか。この点について、消費者庁から説明を伺いました。
 資料を配付いたしましたけれども、消費者庁からいただいた説明によりますと、「消費税転嫁特措法第八条が規定された経緯等」ということで、「以下のような資料等に基づいた中小事業者の実態等を踏まえて、消費税の円滑かつ適正な転嫁を阻害する表示を禁止することとした。 (1)一九九七年に消費税率が引き上げられた際に大手の小売業者が「消費税還元セール」を行ったことにより、納入業者である中小事業者が消費税を転嫁することが困難となった実態があったこと。」
 その例示として、右側につけてあります、一九九八年十一月十七日付、日経流通新聞の十六面、これが示されております。この中でも、上から二段目のところですけれども、大手スーパーでセールが始まったときに、取引先の量販店から突然、セール期間中の仕入れ分は五%値引きしてもらいたい、こういう要求があったということが紹介をされているわけであります。
 (2)として、昨年、二〇一二年四月二十日の民主党転嫁対策・価格表示のあり方検討ワーキングチーム、これがいろいろな事業者団体を呼んでヒアリングを行っていたわけですけれども、ある中小企業団体から、「「大企業と中小企業が競合関係にある市場では、大手が価格転嫁をわざと見合わせて、体力勝負を仕掛け、中小企業の淘汰を狙うケースも想定される。某流通大手は「消費税分五%還元セール」を仕掛け、業界の盟主となったと言われている。一〇%時代では?」として、消費税還元セールが中小事業者に対して与える影響について懸念が示されていたこと。」こういう過去の消費税引き上げ時のことを挙げて、価格転嫁が困難になる、こういう事態が今回も生ずるおそれがあるということで挙げているわけであります。
 つまり、消費者庁は、この八条が規定された経緯として、一九九七年の五%増税時の中小事業者の実態等を踏まえて、消費税の円滑かつ適正な転嫁を阻害する表示を禁止することとしたと説明をしているわけです。五%への増税時に消費税転嫁を阻害する表示があったから今回禁止の措置をとるということです。
 消費者庁にお尋ねしますけれども、この(1)で例示されている、納入業者いじめを行っている大手の小売業者というのは具体的にはどこなんでしょうか。また、(2)で例示されている某流通大手、これはどこを指しているんでしょうか。

○菅久政府参考人 お答えいたします。
 消費者庁といたしましては、与党における御議論、また今御紹介いただきました、そのような御議論を伺ってはおります。また、そういう御議論の中で、消費税還元セールなどの表示について、まさに消費税の負担がないかのような誤認を与えないようにする観点でありますとか買いたたきを防止する観点、また周辺商店街の転嫁の妨げにならないようにする観点、そういった御議論があって、今回その表示を禁止することにしたということでございますが、具体的に、買いたたきなどを行われた事業者、BツーBのところについては、消費者庁としては承知しておりません。

○塩川委員 ここの部分は消費者庁の担当ですからお聞きしているわけです。
 過去、九七年の増税時に、実際に価格転嫁が困難になるような事態があったということを実態として踏まえて今回出してきているという経緯が説明されているわけですけれども、九七年の増税時でどんなことが行われていたか、そういう実態については、消費者庁さんとしては把握もされないでこの法案を出してきているということですか。

○菅久政府参考人 お答えいたします。
 第八条の規定につきましては、このような消費税の還元セールのような表示というものが、そもそも消費者に消費税負担がないかのような誤認を与える、消費税負担についての誤認を与えるということから、このような表示についての規制がされているものと理解をしております。
 その結果、ひいては、そういう買いたたき、またはその周辺の商店街の方々の転嫁の妨げになる、こういう懸念が、与党の御議論の中でも、事業者の方々からいろいろ御指摘があったというふうには伺っております。
 ただ、具体的にどのような事業者がどうだったかということについては、我々、BツーBのところにつきましては承知していないということでございます。

○塩川委員 BツーCは知っているんですか。

○菅久政府参考人 さきの増税時に、まさにこの報道にありますように、消費税還元セールというのがいろいろ行われたということ、もちろん、いついつどのスーパーがということを今把握しているわけではございませんが、そういうことが行われたということは承知しております。

○塩川委員 それは、消費税の価格転嫁を阻害する行為だったということについては確認をされているということなんですか。

○菅久政府参考人 お答えいたします。
 与党の中の御議論、御検討の中などにおいて、まさにそのような強い懸念が示されたということは伺っております。

○塩川委員 これでは与党にお聞きしなければならないという話になってくるんですから、閣法について聞いているわけですから、政府として責任を持って答えていただきたい。
 BツーBの話をされたんですけれども、では、公正取引委員会にお尋ねします。
 五%の増税時にこういう価格転嫁できない実態があったということで議論されているということが、この法案が出てくる背景にあるという説明でしたけれども、では、五%の増税時にBツーBで価格転嫁ができないという実態があったとすれば、適切に対処されるべきことだったわけですが、何らかの対処を行ったんでしょうか。

○杉本政府特別補佐人 公正取引委員会では、下請法に基づいていろいろな勧告、指導等を行っておるところでございますけれども、平成九年度以降、明確に消費税にかかわるものとして、下請法の関係で二十件の指導を行っております。
 ただ、下請法というのは、形式的な要件、すなわち親事業者と下請事業者の関係で見ておりますし、形式的な、買いたたき、減額、購入・利用強制、不当な経済利益の強要といったことで見ておりますので、その行為の内容についてまで詳しく精査せずにやっておるところもございます。
 本法案で規制しております転嫁拒否行為の類型でございます、減額、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請につきましては、平成九年以降で見ますと、四千九十六件の勧告、指導を行っているところでございます。この中には、消費税の転嫁拒否に関する行為を含むものもあるかと考えているところでございます。

○塩川委員 平成九年以降の数字を言っているだけで、平成九年の五%の増税時に適切に対処したのかという質問なんですが、いかがですか。

○杉本政府特別補佐人 平成九年度で見ますと、消費税にかかわるものとして、下請法に係る指導件数は四件でございます。

○塩川委員 消費税にかかわるという点で、実際、どう具体的に対処されたんですか。

○杉本政府特別補佐人 消費税で、減額という事態がありましたときには、その減額を戻すようにというような指導をしておるところでございます。

○塩川委員 四件ですから、物すごく多数の取引の中で、実際にはそれしか対応されていないわけで、四半世紀にわたって中小事業者は消費税の転嫁に苦しんできたのに、是正の取り組みというのが、下請法に基づくものでも指導はわずか二十件ということであるわけで、公取はそもそも何をやってきたんだということが問われるわけであります。ですから、五%の増税時にも大手による優越的地位の濫用行為などがあったにもかかわらず、是正してこなかった公取の責任こそ問われているんじゃないのか。
 この点について、稲田大臣はどのように受けとめておられますか。

○稲田国務大臣 今、公取の委員長からも報告がありましたように、平成九年時から下請法違反などがあったということも踏まえて、また、今回消費税を増税するに当たって、優越的地位を利用した、不当な、転嫁を拒否するような行為を取り締まるために、特別措置法を提出した次第でございます。

○塩川委員 五%の増税時に公取は特別調査をやっているんですけれども、このときには、価格転嫁はできているという結論なんですよ。まさに、実態を見ていないということじゃないですか。まさに、公取が仕事をしていないということが問われているわけです。
 茂木大臣にも最後にお尋ねしますけれども、何よりも、大手流通企業が市場を支配し、納入業者や取引業者が弱い立場に立たされている、こういった下請、中小小売業者いじめの構造にこそメスを入れる、この取り組みにこそ全力を挙げるべきではないのか。この点についての大臣のお考えをお聞かせください。

○茂木国務大臣 厳正な監視、そして厳しい取り締まりをしっかりと行ってまいります。

○塩川委員 こういった価格転嫁できない根本原因に重層的な下請構造がありますし、大手流通企業が市場を支配して、納入業者、取引業者が弱い立場にある、こういう根本原因こそ是正をすべきであって、消費税還元セールの禁止などという、宣伝文句に文句をつけるようなやり方は筋違いだということを申し上げて、質問を終わります。