国会質問

<第183通常国会 2013年05月10日 経済産業委員会 11号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 消費税の転嫁を阻害する表示の禁止について、八条に関連して、お越しいただきました森大臣にまずお尋ねをいたします。
 この審議に当たりまして、ずっと見てみますと、やはり答弁の変遷があります。
 四月の十九日に國重委員がこの問題を取り上げまして、全商品三%値下げはマルかバツか三角かと、まさにフレーズをとった中でマルかバツか三角かと聞いたのに対して、消費者庁の審議官は、マル、バツ、三角と言われれば三角と答弁をしたわけです。
 しかし、四月二十六日に私が、全品三%値引きセールというのは大丈夫なのかだめなのかと聞きました。三%値引きのセールという私の質問に対しては、審議官の答弁というのは、基本的には禁止の対象となりません、マルと答えたんです。
 この答弁の線で今回の「考え方」もまとめられているわけであります。つまり、マルとしていたものが、四月十九日の答弁では三角だったんですよ。つまり、四月十九日の答弁が間違いだったということですよね。

○森国務大臣 四月十九日の答弁で、菅久審議官はこのように答弁しております。
 三%還元セール、全商品三%値下げ、価格据え置きセールといった宣伝等では、消費税という文言は用いていないが、このような表示を含む表示全体から見て、事実上、消費税と関連づけて値引き等の宣伝を行っていると判断される場合には禁止されることになる、現時点でマル、バツ、三角と言われれば、三角ということになるが、先ほどのような基本的な考えについて、ガイドラインで今後明らかにしていきたいというふうに述べています。
 三%還元セールという、その表示だけが看板に書いて置いてあったら原則禁止をされませんが、その看板の、三%還元セールと書いたところの下に、吹き出しで、消費税増税でありますのでというふうに書いてあれば、全体の表示を見れば、もちろんそれは禁止されるのでございます。
 それをマル、バツ、三角で答えるということでいえば、原則マルですけれども、全体の表示で見た場合に法の目的に反する場合には禁止ですという、今回のこの統一見解に書いてあるものと同じことをもって三角というふうに述べたものであります。

○塩川委員 オーバーな表現でも、答弁の中身が変わっているのは明らかで、國重さんが聞かれているのは具体的にその文言だけなんですよ。三%還元セール、全商品三%値下げ、価格据え置きセール、この文言を取り上げて、その一つの例示として、今私が示したような全商品三%値下げ、これについてどうですかと重ねて聞いて、マル、バツ、三角かと言われれば三角ですという答弁なんですよ。
 だから、余計なことは何もないんです。この文言のみをとって三角と答えているんですよ。実際、今答えたようにマルなのに、十九日の答弁は三角と言っているんですよ。間違っていますよね。

○森国務大臣 表示の規制を執行するときに、その文言だけを見て判断するということはできません。常に、執行するときにはその全体の表示を見て禁止するんです。
 例えば、大きな広告チラシがあって、一番上に三%還元セールと書いてあったとしても、下の方に小さな字でほかのことが書いてあるかもしれません。消費者庁としては、常に、こういった表示の執行をする場合には全体を見て執行しております。そのことをきちんと正確に述べたということなんです。

○塩川委員 違います。
 大体、宣伝そのものも、一九九八年、五%引き上げ時に、イトーヨーカドーが、消費税分五%還元セール、これを大きく表示で出しているわけですよ。それだけですよ。消費税分五%還元セールと。
 ですから、そういうような例示が具体的にあるわけで、ここに該当するような中身というのは、まさにそこだけ切り取った表示というのはあり得るわけですよ。そういう例として國重さんが聞いて、三角と言っていたわけですから。
 私の答弁にも、私もその表現だけ切り取って聞いたのに対して、マルだ、禁止されないと言っているわけですから、この点については明確に答弁の中身が変わっている、十九日の答弁が間違っている、修正が行われた、こういうことは明らかだと言わざるを得ません。
 そういう点でも、国会審議の場で間違った説明を行って国会審議や国民や事業者に対して混乱をもたらしたことは極めて重大だということを強く指摘しておかなければいけません。
 その上で、そもそも、当時、景品表示法を所管していた公正取引委員会は、それぞれ、消費税の導入に当たって、あるいは五%引き上げに当たって、手引、考え方を出しております。
 昭和六十三年十二月三十日で、公正取引委員会が「「消費税の転嫁と独占禁止法」についての手引き」というのを出している。これは消費者庁からいただきました。それから、平成八年十二月二十五日、五%引き上げの前の年の年末、公正取引委員会は「消費税率の引上げ及び地方消費税の導入に伴う転嫁・表示に関する独占禁止法及び関係法令の考え方」を出している。
 要するに、これは景表法の執行に当たって考え方をまさに整理したガイドラインであり、これそのものは今も生きているということですよね。

○森国務大臣 先ほどの塩川委員の御指摘に誤りがありましたので、誤解しないように訂正しておきます。明らかにバツであるときには切り出したもので判断をしますが、マルかどうかということは全体の表示を見て判断するということ、消費者に誤解のないように今答弁をしておきたいと思います。
 御指摘の一九八八年のガイドラインについては、御通告がございませんでしたけれども……(塩川委員「そんなことはないですよ、やりとりしているじゃないですか、過去のガイドラインについて聞く」と呼ぶ)そうですか。
 今御答弁いたしますけれども、生きております。

○塩川委員 ですから、当時、導入時や五%引き上げ時にもガイドラインが出されており、それが現在も生きているわけです。
 資料を配付いたしました。これがその部分の引用ですけれども、例えば、消費税導入前に出された手引、ガイドラインですね。
 「第三 消費税の導入に伴う表示に関する景品表示法の考え方」とあります。その後四行ほど読みますが、「消費税の導入に伴い、消費税の円滑かつ適正な転嫁が行われるためには、その転嫁等に関する表示が適正に行われる必要があります。景品表示法は、虚偽・誇大な表示など一般消費者を誤認させ、不当に顧客を誘引する表示を規制しています。このため、同法の規定にてらして問題となるおそれのある表示を例示し、消費税の導入に伴う表示の適正化を図ることとします。」。
 こういう趣旨は、五%引き上げ時のガイドラインにも書かれていることであります。
 こう見ていきますと、そういった点で、景品表示法上問題となるおそれのある表示について例示があります。(例)と真ん中あたりにありますけれども、1にあるように「消費税は転嫁していません。」とか、3には「消費税はおまけしています。」その下の行に「当店は消費税額分を値引きします。」こういうふうにも書かれているわけです。
 ですから、消費税の導入のときも、それから五%に引き上げたときも、事前にガイドラインをつくって、消費税に関して消費者の誤解を招くおそれのある表示は規制の対象としてきているんですよ。そのガイドラインが今も生きているんでしょう。それなのに、今回、屋上屋を架すようなことを行う必要がどこにあるのか。

○森国務大臣 塩川委員にお答えをいたします。
 この景品表示法というのは、実際のものよりも著しく優良、有利と一般消費者に誤認される表示を不当表示として禁止するものであります。例えば、千円のものを五百円としますと書いてあるけれども、そもそも、もともと五百円だった。五百円のものが五百円なのに、千円のものを五百円としますというように、実際のものよりも有利であるというふうに誤認される表示を不当表示として禁止するものでございます。
 そのため、例えば、消費税分八%値引きしますと書いてあったとしますと、これが景品表示法に当たる場合は、実際に八%分の値引きをしていないのに、消費税分八%値引きしますというふうに書いてあった場合には、これは著しく有利であると一般消費者に誤認を与えるものというふうになりますけれども、今回の本法案の趣旨とは違ってくるということでございます。

○塩川委員 いや、その説明自身もわかりません。だって、ガイドラインを過去つくったんでしょう。そのガイドラインをつくったというのは、景品表示法に反するおそれがあるような表示についてはこれを規制しましょうということでの例示なんでしょう。そういうことを現にやってきているわけじゃないですか。
 実際にそういう執行も行ってきているわけですよね。具体的に、八八年のこのガイドライン、あるいはその九六年末のガイドラインに沿って、当時公正取引委員会においては改善指導などを行ってきているわけですよね。

○森国務大臣 公取についての質問でございましょうか。(塩川委員「景品表示法の執行についての質問です」と呼ぶ)
 公取が執行したかどうかについては、公取から今答弁をさせます。

○塩川委員 景品表示法は消費者庁の所管なんですよ。当時公取がやっていたような仕事は全部消費者庁が引き継いでいるんです。だから、そういうことについて、執行状況はどうかと問われて答えるのは、森大臣の責務なんですよ。
 実際にこういう改善指導を行った例があると思いますけれども、そういうことについてはいかがですか。

○森国務大臣 通告がございませんけれども、当時執行をしております。

○塩川委員 改善指導した具体的な事例について承知していますか。

○森国務大臣 具体的に改善指導した例については把握しておりません。

○塩川委員 把握をしていないというのは余りにも無責任じゃないですか。過去の導入時、引き上げ時にガイドラインを出したんですよ。そのガイドラインの執行状況をいわば総括した上で、本来、今回のような法改正をするというのが大前提じゃないですか。過去の経緯についてもまともに調べていないんですか。そんなことも知らずに今回法案を出しているということですか。

○森国務大臣 景品表示法に係る事件記録の保存期間を既に満了しているため、記録がございませんでした。

○塩川委員 それは、極めて無責任な答弁だと思いますよ。
 今回、過去にガイドラインでやったものについて、いわばバージョンアップして、新たな法律も設けガイドラインをつくろうというわけでしょう。過去はどんなことをやってきたのか、その執行がどうだったのか、実際に機能したのかどうなのかということについて、いや、資料がないからわかりません、こんなことで話が通るんですか。
 大体、新聞について、報道されているというのも、これはとればわかる話なんですよ。
 例えば、一九八九年四月四日、つまり、四月一日から消費税が導入されたときですけれども、日本経済新聞の記事を見ても、「公正取引委員会は三日、消費税に関して消費者の誤解を招く恐れのある表示をしていたスーパーや小売店約二十店に対して改善指導したことを明らかにした。」ということで、実際に改善指導した表示として、「消費税は当店で負担します」とか、あるいは「当店は消費税相当分を値引きします」、「消費税相当分はいただきません」、こういう表示についてやめるよう指導したと。
 担当大臣はこういうことも知らないんですか。

○森国務大臣 御指摘の新聞記事については承知しておりますけれども、役所にこの記事に掲載された改善指導があったという記録がございません。
 先ほどから答弁をしておりますとおり、景品表示法による表示は、他のものよりも有利であると誤認されるような表示でございますので、本法案の目的と異なる部分でございますので、そこは新たに今回はこの法案に則する目的での表示を禁止したということです。

○塩川委員 資料でもお配りしているように、具体の例示を見てもらえば、今議論しているような話じゃないですか。ガイドラインとして同じような話をやっているんですよ。現に、当店は消費税額分を値引きしますとか、こういう表示についてはやめるよう指導を、当時、景表法を所管している公正取引委員会が行っているんですよ。こういう過去の経緯について調べもしないで、今回、この法律をつくる、ガイドラインをつくる、こういう作業を行っているということになりますよね。
 過去の経緯について知らないまま、今回の法案を準備したということですか。

○森国務大臣 過去の経緯については調べましたけれども、役所にはその記録が残っておりませんということを先ほど答弁いたしました。
 この法案について、これからガイドラインをつくってまいります。さまざまな委員の先生から質問をされたような曖昧な表示についてどうなるのかということを一つ一つ判断していく上では、景品表示法の、ほかのものよりも有利になる、つまり、本当は五百円なのに、千円のものを五百円と言ったというような表示であるかどうかということと、それから消費税の導入に当たる、今回の法案の趣旨とでは違ってくる場合もありますから、それは表示から見たら重なる部分もあるでしょう、だけれども、やはりその細かい部分についてきちっとしたガイドラインをつくっていくという委員の先生方の御要望に応えるためには、私は、この法案で表示を禁止したということの意味があると思っております。

○塩川委員 質問に答えていない答弁であります。
 私は、だから、今回法案をつくる際に、過去のガイドラインの執行状況について、評価、総括をしたのかどうかと聞いたんですよ。知っているかどうかの話じゃないんですよ。そもそもこういうガイドラインを過去につくったことが、うまく機能したかどうかについて調べもしないで法案を出したのかということを聞いているわけですから。
 その点について、そもそもこういう指導した状況についても知らなかったということですから、やっていないわけですよね。そういう意味でも、過去の経緯も調べないで出してきたというやり方そのものが極めておかしい。三月ぐらいに与党から言われてこういうものに仕上げるような、こういうやり方が結果としてこの混乱をつくっているということは極めて重大だと言わざるを得ません。
 そもそも、事業者が消費税に関連したセールを行おうとするのはなぜか。消費税の五%引き上げ後の一九九八年秋に消費税分の五%還元セールを行ったのは、イトーヨーカドーであります。セブン&アイ・ホールディングスの鈴木会長は、会社のホームページでこのように述べています。
 「以前、消費税が三%から五%に上がった時に、私はイトーヨーカドーで「消費税分五%還元セール」を提案しました。その際、社内の多くの人間は反対しました。理由を聞くと、「一〇%引きや二〇%引きのセールでもなかなか売れないのに、たった五%では効果が見込めない」と。そこで北海道に限定して実施したところ、前年比で四〇%から六〇%くらい伸びました。それで翌週に全国に拡大したら、ニュースなどでも大きく取り上げられ、一大ブームのようになり、他の小売業でも同様のセールが行われ、半年くらいブームが続きました。」と述べています。
 このことというのは、つまり、消費税増税がいかに消費を冷え込ませるのかということを意味しているんですよ。一〇%や二〇%の値引きよりも、消費税五%を還元しますという方が消費者が大きく購入意欲が湧くような状況というのは、まさに消費税増税そのものが消費を冷え込ませる、今の景気をさらに後退させることになりかねない、このことを言わざるを得ない。

○富田委員長 塩川委員、申し合わせの時間が大分経過しております。御協力をお願いします。

○塩川委員 私は、こういった消費税増税そのものをやめるべき、応能負担の原則に立った税制改革こそ行うべきで、下請いじめ構造を放置したまま消費税還元セールなどの宣伝、広告を取り締まるのは筋違いだということを申し上げ、茂木大臣においでいただきましたが、トヨタの質問については、また次の機会にしたいと思います。
 以上で終わります。