国会質問

<第183通常国会 2013年05月22日 経済産業委員会 13号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、原発事故の汚染水対策について質問をいたします。
 一昨日、私は、福島第一の現地調査に行ってまいりました。汚染水の処理設備を中心に、設備を実見し、運用状況の説明を受けてまいりました。事故が収束していないということを改めて痛感いたしました。
 そういう中で驚いたのが、冷却水を原子炉に注入する注水ポンプがトラックの荷台に据えつけられたままということなんですね。まさにその冷却機能を果たす注水ポンプが荷台の上ということで、これはどうなのかと東電の担当者の方に、仮設対応ではなく本設をしないのかと聞くと、そういうことは考えていない、ポンプは複数箇所あるので対応可能だというお話でした。しかし、トラックの荷台ということで思い出すのが仮設の配電盤の話でもあります。そういう停電の事故の事例もありますので。
 そこでお尋ねしますが、冷却水を注入するこのポンプが、実態があの仮設のような状況で本当に大丈夫なのか、この点についてお答えください。

○山本政府参考人 お答えいたします。
 まず、トラックの荷台にポンプが載っているということでございますけれども、この意味合いにつきましては、トラックというのは、ごらんのとおり、四つの車輪があってタイヤがあり、そしてばねとダンパーがあるということで、トラックの荷台に載っているということは、一定の、耐震性の観点からいいますと、地べたに置くことに比べてトラックに載せた方が耐震性は有利であるというのが一つの考え方でありますので、そういう考え方で今やっているということでございます。ただ、これが長期的にそのままでいいのかどうかというのは、今後よく議論をしていく必要があろうかと思っております。
 それからもう一つの、冷却注水の安定性という問題でございますが、先生がごらんになったのは恐らく常用系というものでありまして、これは通常送っているもので、これがまず一系統ございます。そのほかに予備の系統が一つ。それから、建屋内にもう一つポンプがございますので、都合、常用系が三系統ございます。さらに、非常用の注水ポンプがございます。これは、電源がなくなった場合でも、非常用ディーゼルがくっついてございますので、電源なしでもディーゼルでポンプを回して注水する、こういう複数の形での供給系統は設けております。
 さらに、信頼性を高めるために、今申し上げましたポンプは、建屋から少し離れたところ、あるいはタンクから供給してございますので、タービン建屋の近くに復水貯蔵タンクというのがございます、そこのタンクから、建屋の中にポンプを置いて水を冷却する、すなわち供給するラインの距離を短くすることによってリスクを低減させる、そういう信頼性の対策を今計画しているところであります。これは、三号機はこの夏ぐらいからそれを運用する、続いてほかの号機もやっていくということでございます。
 いずれにしましても、多重性を持たせることによって原子炉の冷却を安定的に図っていくというのが基本的な考え方でございますし、私ども規制の立場から見ましても、そういうものがきちっと設備として運用がなされているかどうか、それからそういったものの点検、保守とか、そういったものも含めて対応がきちっとなされているかどうか、これをしっかり確認していきたいというふうに考えておるところでございます。
    〔委員長退席、渡辺(博)委員長代理着席〕

○塩川委員 現状が仮設対応ということの話であるわけであります。予備ポンプもトラックの荷台でしたから、常用のところもシートで覆われているだけですから、安定性という点で、現状が仮設状況ということは明らかなわけで、そういう意味でも、仮設対応のままでの安全対策に大きな疑義があるということは言わなければなりません。
 次に、汚染水の処理設備の循環ラインの配管を見てまいりました。汚染水処理設備の循環ライン配管には、耐圧ホースやポリエチレン管、また炭素鋼ですとかステンレスといった鋼管などが使用されていると承知しております。
 そこで、耐圧ホースについてお尋ねをします。
 いわば仮設のホースであります耐圧ホースは、汚染水漏れなどのトラブルをこの間も起こしてまいりました。具体的にどんな事例があったのか、あわせて、耐圧ホースからの汚染水の漏えい、そういう事故がこの間何件ぐらいあったのか、この点についてお答えいただけますか。
    〔渡辺(博)委員長代理退席、委員長着席〕

○山本政府参考人 お答えいたします。
 まず、耐圧ホースの漏えいの事象でございますけれども、これまで規制側に報告がございましたのが十五件でございます。
 その中で、主なものとしましては、昨年、二十四年の三月それから四月に起きたものでありますが、耐圧ホースの接続部が外れて中の汚染水が漏えいしたという事象が大きなものとして一つございます。
 それから、もう一つは、同じく二十四年の八月と十月、二回ありましたけれども、冷却した水を建屋内に今滞留してございますけれども、セシウムなどを取る処理をするために、一号機から四号機、さらにはセシウムを処理しますところに持っていく配管、ここに耐圧ホースが使われておりまして、そこで作業している作業員が踏むなどいたしまして漏えいした、こういうふうな事象がございました。
 耐圧ホースは、先生御指摘のように、信頼性の面では非常に問題がございます。今申し上げたもの以外にも、微小な漏えい事象であるとか、あるいはチガヤという草が刺さったりとかいうようなことで漏えいが起きたとか、いろいろなことがございました。
 そのために、耐圧ホース、これは当初、応急のために敷設したものでございますけれども、より信頼性の高いものということで、今、ポリエチレン管の配管に順次取りかえを行っております。屋外を引き回します配管については、ポリエチレン管への取りかえがほとんど終わっているというふうに考えているところでございます。
 耐圧ホースの構造強度などでございますけれども、一応これは市販の耐圧ホースを使っているわけでございますが、当時は、構造強度上の試験の評価の結果とか、それからあと、放射線によりまして、プラスチックでございますので脆化をいたしますと強度が弱くなりますので、その耐用年数は試験の結果大体十一年である、そういうような結果を踏まえながら耐圧ホースを使っていたということでございます。
 ただ、先ほど申しましたように、耐圧ホース自身の信頼性が極めて低いことがわかっておりますので、ポリエチレン管に順次取りかえて、これをしっかり維持管理していく、こういう対応を今しているところでございます。

○塩川委員 今お答えがありましたように、耐圧ホースからの汚染水の漏えいというのがこの間十五件もある、つなぎ目が外れるとか、あるいは作業員が踏みつけて、それによって損傷が生じるとかいうことがありました。
 信頼性の面で問題があるとおっしゃいましたけれども、そもそも、使うということになった際に、その評価として、市販のものを使う、耐用年数は十一年ぐらいという評価を国としてもしていたわけですから、そういう点でも国のこの問題についての安全対策の姿勢が問われたというのが、今回の耐圧ホースの問題であります。
 そういった汚染水漏れなどの重大な事故を繰り返していた耐圧ホースについてですけれども、要するに仮設対応に限界があるということです。先ほど、耐圧ホースについてはポリエチレン管に取りかえを行っている、ほぼ屋外は終わったという話ですけれども、汚染水の循環ライン配管において、耐圧ホースの使用というのは全てやめることにしているんでしょうか。

○山本政府参考人 御指摘のとおり、基本的にはやはり、信頼性の低さから、耐圧ホースからポリエチレン管にかえる、これが基本方針でございます。
 ただ、構造的に、今、汚染水を蒸留するために蒸発濃縮装置とかいうものが仮設の小屋の中に入ってございますけれども、例えばそういう設備の機器の間を引き回す配管については、一定の湾曲性とかそういったものが必要になりますので、物理的にポリエチレン管が使えないところがございます。ですから、そういったところは耐圧ホースを残さざるを得ないというふうには考えてございますが、基本的に、屋外を長距離で引き回す主要な配管、これはポリエチレン管にかえるというのが基本的な考え方でございます。
 なお、先ほど言いました建屋内のそういう引き回しのための設備については、中で漏えいの検知であるとか、カメラとかそういったもので点検を行いながら漏えいがないかどうかを確認していく、そういう対策と組み合わせて対応しているところでございます。

○塩川委員 建屋内であっても、ふぐあいが生じれば汚染水の移送そのものに支障が出てくるわけですから、そういったところを含めてしっかりと取りかえていく、そういうことはなさらないんですか。

○山本政府参考人 できるものはポリエチレン管の信頼性の高いものにかえるのが基本だろうということは先ほど申し上げたとおりでございますが、先ほど言いましたように、弁の周りとか機械の周りをつなぐという接続部になりますと、ポリエチレン管は御案内のとおり非常にかたい構造のものでございますので、なかなか引き回しが耐圧ホースでないと物理的にできないところもございますから、そこのところは引き続き使わざるを得ないのかなというふうには考えております。
 ただし、先ほど言ったように、信頼性がやや劣るところがございますので、そういう点検とか監視であるとか、それから万が一漏えいした場合には、先ほど仮設の小屋も申しましたけれども、堰を設けて、外部への漏えいがないような構造にしている、そういう発生防止と起きた場合の対応というものを組み合わせて対応しているところでございます。

○塩川委員 信頼性が劣ると認めているわけですから、私は、こういう部材について、信頼性のあるものに、そういう配管に取りかえていくという姿勢でこそ臨むべきだと思います。
 それと、ALPS、多核種除去設備の中でも、この耐圧ホースというのは使う部分があるんでしょうか。

○山本政府参考人 正確なものはあれですが、先ほど言いましたが、多核種除去装置は、沈殿させたり吸着させたり、いろいろな化学的な装置の組み合わせで放射性物質を除去する、一種の化学プラントのような構造をしてございます。ステンレス製の配管などを用いているものが多いわけでございますけれども、一部、場合によっては、引き回しの関係上、ホースを使わざるを得ない部分がもしかしたらちょっとあるかもしれませんけれども、基本は、ステンレス系の配管といったもので構成されているものでございます。

○塩川委員 規制庁の説明の中でも、部分的には耐圧ホースを使う部分が残るということなども指摘している。そういう点でも、私は、そもそもの信頼性に欠ける耐圧ホースの使用について、それを継続するということ自身を見直す必要があると思います。
 そういう意味でも、改めて、循環ライン配管、要するに汚染水を移送する、それにかかわるようなところに、信頼性に欠ける耐圧ホースの使用はもう取りやめる、こういうことこそ必要だと思うんですが、いかがですか。

○山本政府参考人 御指摘のように、汚染水を大量に移送する、しかも屋外で移送するような場合、もし万が一漏れますと周辺環境への影響というのが出てまいりますので、そういった移送配管はポリエチレン管にするのが基本でございます。
 私が先ほどから何度も繰り返し申し上げているのは、建屋内とかそういう機器周りのところで、どうしても非常に湾曲させなければならない、構造的、物理的に難しいところは一部使わざるを得ないということを申し上げておりますけれども、先生が御指摘のような大量移送に使う大きな配管につきましては、ポリエチレン管にしていくというのが基本的な考え方でございます。

○塩川委員 地下貯水槽からタンクへの移送というのは耐圧ホースを使っているわけですから、屋外における汚染水の移送に当たっても実際には使用されているわけです。このことを含めて問われてくる。
 私は、おととい、事故の現地調査の後にいわき漁協に寄りまして、役員の方からもお話を伺いました。
 そこでも、原発の放射能汚染水漏れで使っているオレンジのパイプ、耐圧ホースのことですけれども、これは自分たちが船で使っているようなものだ、あれは日に当たると劣化してひび割れる、こういう言い方をしていて、一年か二年しかもたない、そういうものがカバーもしないではい回っていた、こういうことについて、東電の汚染水対策を厳しく批判しておりました。
 そういう点でも、汚染水を扱うのに欠陥のある耐圧ホースを使い続けたままでは、国民の信頼を大きく損なうことになるということを改めて指摘しておくものであります。
 次に、ポリエチレン管についてお尋ねします。
 この間、耐圧ホースをポリエチレン管に取りかえてまいりました。東電及び国はこのポリエチレン管の信頼性についてどのような評価をしてきたのか、過去、こういったポリエチレン管というのは、原子炉建屋など高放射線量の場所に使用してきたということがあるんでしょうか、この点についてお答えください。

○山本政府参考人 まず、ポリエチレン管の安全性といいますか、構造強度の評価でございますが、これは一般的に、先ほど先生が御指摘のような、原子力発電所の重要な設備にポリエチレン管を使うということは今までございません。
 今回使用しておりますのは、原子炉のような高温高圧状態での配管ではなくて、汚染水、常温状態の圧力もそれほど高くない液体を移送するための配管としてポリエチレン管を使うということでございます。
 この構造強度については、従来、このポリエチレン管というのは主として水道などで使われているものがございますので、日本水道協会の規格などといったものにきちっと適合しているようなこと、特に、使用いたします圧力に対して十分構造強度上の強度があるかどうかということは確認してございます。そういう構造強度上の劣化に鑑みますと、十年程度の寿命があるというふうに評価されております。
 それからもう一つは、放射線によります材料の劣化でございます。これも、材料の照射試験のデータなどを見ますと、約二十三年耐えるというようなことがわかってございます。
 ただ、一番問題なのは、こういう放射線以外に、日光、いわゆる紫外線によります劣化、これが一番心配でございます。これに対しては、今、ポリエチレン管の表面を被覆して、日光が直接当たらないように対策をしているところでございます。
 日光によります劣化というのはまだ詳しくわかっていないところがございますので、長期の暴露試験といいますか、そういう影響評価の試験をしながら、どういった劣化事象があるかというのをきちっと把握して、それで必要な取りかえなどをやっていく、こういう保全の考え方で今対応しているところでございます。

○塩川委員 大臣にお尋ねします。
 仮設対応での移送というのがこの間も行われてきたわけですけれども、耐圧ホースをポリエチレン管に切りかえていく、こういう作業なども行われてきたわけです。このポリエチレン管の信頼性の問題についても、十年とかというお話が今ありますけれども、もともと地下貯水槽についても、十年大丈夫だというのが一カ月で漏れてしまったわけです。
 そういう点でも、私は、こういった仮設対応ではなくて、恒久的、恒設的な設備による抜本的な措置こそ行うべきで、このポリエチレン管についてもステンレス管に切りかえるなどを行っていく、こういうことが今求められていると思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○茂木国務大臣 仮設でないものにしていく、これが基本であると思いますし、置きかえられるものについては置きかえる。
 ただ、実際に、技術的な問題とか、私も炉の内部に入ったことがありますけれども、なかなか難しい部分もあります。そこにつきましては、監視体制、モニタリング体制を強化したり、どうやって補強するかということも含めて、安全には万全を期していきたいと考えております。

○塩川委員 現場の作業員の方のお話などで、コスト削減が行われている中で、仮設のホースをステンレス管などにする計画があったんだけれども見送られた、こういう話なんかもあるわけで、私は、この東電のコスト優先という姿勢が安全対策の軽視につながっているのではないか、こういうふうに考えますが、大臣はいかがでしょうか。

○茂木国務大臣 原子力の安全性、いかなる事情よりも優先して考えてまいります。

○塩川委員 事故収束作業を事業者に任せるということは、一刻も早い事故収束ですとか安全確保策よりもコストを優先するということになりかねない。だからこそ、事業者任せにしないで、国が責任を持って対処することが必要だと思います。その点についてはいかがですか。

○茂木国務大臣 福島第一原発事故からの収束、そして廃炉の問題、事業者任せにせず、研究開発初め、国が前面に出る部分につきましては前面に出て、この加速を進めてまいりたいと考えております。

○塩川委員 最後に、地下水バイパスによる地下水の海洋への放出計画です。
 漁民の方が強く反対し、私がお話を伺ったいわき漁協の役員さんも、強くこの点について指摘しておられました。
 低レベルだから、地下水だからと言うけれども、汚染水もまぜて流そうとしているんじゃないかと疑いたくなる、一般の消費者は納得しない、漁業者はそう思っている、風評被害だけではない、漁業者としての命にかかわる事態となっていることをわかっていないのじゃないか、国や東電はここに来て、ただ頭をぺこぺこ下げれば済むと思っているのではないか、もう二年も漁ができていない、やはり漁業はだめだということに特に若い人などはなってしまう、そうなればこの漁場を捨てないとならない、このように訴えておられます。
 こういった国と東電への不信感について、大臣はどのように受けとめておられるのか、お聞きします。

○茂木国務大臣 地下水のバイパス、私は必要だと思っています。
 やはり、毎日四百立米の水が阿武隈山系、山側の方から流れてくるわけでありまして、これが汚染水の増大につながっているのは間違いない。さまざまな形でこの汚染水の問題については取り組まなければいけない。
 もちろん、山側からの、最終的には水が入らない状態をつくる、ただ、その場合は、建屋内の水位の問題で逆流しないようにしなきゃならない、このことも考えていかなきゃなりません。
 そして、バイパスを行うことによって、今四百入っているのを三百にする、二百にする。こういった形になりますと、これは汚染水ではありませんから。しっかりこの水質についても検査をしております。必要なことだと思っております。
 同時に、こういったことを進めるに当たっては、地元の皆さんの御理解を得る努力が必要であります。この水質がどうなのか、きちんと説明し、御理解を得る、そして同時に、定期的にその後もモニタリングを行いながら、安全に万全を期していくということが必要だと思っております。
 問題は幾つでも指摘できます、率直に言って難しい問題です。それをどうやって解決していくかということが、私は政治の責任だと思っています。

○塩川委員 もともと、地下水の流入について防ぐという点では、そもそも大量に流入していたということはわかっていたわけですから、そういう意味でも、二年前に陸側の遮水壁の話が出たときに、結果としてはそれが立ち消えになって、今回改めて出てくるということを考えても、そもそもの国の姿勢の問題が問われているということであります。
 そういう意味でも、海への放出などは行うな、このことを改めて申し上げて、質問を終わります。