国会質問

<第183通常国会 2013年05月24日 経済産業委員会 14号>




○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、本法案の反対討論を行います。
 我が国の歴史的、社会的な土壌、生活文化や芸術から育まれたコンテンツ、ファッション、日本食、地域産品、観光サービス等が、海外において高い評価を受け発展していくことは、国民誰もが望むことです。こうした分野の発展を国が支援することは極めて重要です。
 しかし、国の関与のあり方と発展方向について、この法案は重大な問題があります。
 以下、反対理由を述べます。
 第一に、法案には、その目的である、機構が支援する対象の我が国の生活文化や魅力ある商品または役務に関する定義がありません。いわゆるクール・ジャパンの片仮名語表示に対する疑義も含め、無定義だと言わざるを得ません。
 経産大臣が決める支援基準の中身も定かでなく、支援対象事業が拡散していくおそれがあるとともに、機構の投資決定は、海外需要開拓委員会の面々に全て白紙委任するものであり、認められません。
 そもそも国が、多様な価値観に基づく商品、役務の中から特定のものを海外ビジネス上の価値判断で特別扱いすることは、国の関与のあり方として問題です。
 法案はまた、外国籍のものも含む投資ファンドに対する国費投入の仕組みとなっており、容認できません。
 匿名組合など投資ファンドは、出資者の秘密保持が厳重で、国会や国民への財務諸表や事業活動の報告及びその開示はそもそもできにくい仕組みであり、問題です。
 第二に、本機構の設立は、官民ファンドの乱立の一つとなるものです。
 補正予算と本予算合計で、全部で十一本、六千八百三十九億円ものリスクマネーを供給する官民ファンドがつくられ、しかもコンテンツの海外展開については既に産業革新機構があり、本機構との役割分担や異同も明確でなく、屋上屋を架すことになりかねません。
 巨額の損失を出した過去の政府出資法人の無責任経営や、最近破綻したエルピーダメモリへの血税による穴埋め等、これらのまともな検証や総括がないまま本機構を設立することは容認できません。
 最終的に、機構に対する出資金五百億円もの財政資金の無駄な投入につながるおそれが拭えないものであります。
 第三に、法案はいわゆる文化の産業化を進めるものですが、海外展開を急ぐ余り、我が国文化を薄利多売することになるおそれがあります。
 例えば、質疑で紹介したアニメ産業等の現場、足元の実態は、海外流出による空洞化と先細りの懸念など、深刻な状況にあります。
 政府はまず、いわゆる生活文化産業の足元の実態把握とその抜本的改善並びに文化予算等の拡充にこそ尽力すべきことを強調して、討論を終わります。(拍手)