国会質問

<第183通常国会 2013年05月28日 本会議 28号>




○塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、電気事業法改正案について質問します。(拍手)
 本法案で問われているのは、地域独占、発送電一貫体制という戦後の九電力体制を変革し、発送電分離などの電力システム改革を実現するか否かであります。
 この改革の直接の契機となった三・一一東電福島第一原発事故からの教訓を踏まえ、三つの角度から伺います。
 第一に、原発との関係です。
 事故を起こした福島第一原発一号機から四号機は、ゼネラル・エレクトリック(GE)社及び東芝製のマーク1型です。国会事故調の指摘を含め、いまだ未解明な事故原因を究明し、製造者責任こそ問うべきではありませんか。
 また、原発の再稼働など論外だと思いますが、これを認めるのですか。
 そのGE、日立、東芝、ウェスチングハウス及び三菱重工業の原子炉メーカー五社を中核とするいわば日米原発利益共同体は、世界の原発市場のおよそ四割を占めています。日米同盟を基礎とした原発輸出によってさらなる市場の獲得を目指すことは、福島事故の教訓を無視し、その被害者の願いに対する許しがたい背信行為であり、人類の未来に対する挑戦と言わざるを得ないものです。
 あすの日印首脳会談において、NPT、核不拡散体制の未加盟国で核兵器保有国のインドに対し、唯一の被爆国で福島事故を経験した日本が原発輸出を約束するなど、もってのほかであります。答弁を求めます。
 第二に、東電改革との関係です。
 私は、先週、その福島第一原発の調査に行きましたが、事故は収束しておりません。
 放射能汚染水事故は、仮設設備などコストを優先させ東電任せにしてきた政府の無責任な対応から生まれたもので、三・一一以来、福島原発は最大の危機に直面しているのではありませんか。
 事故から二年以上たっても、十五万人を超える避難者の方々を初め被害者の生活と権利は回復していません。財物賠償を含め、被害の全面賠償、生活再建にこそ尽力すべきではありませんか。
 これらの問題の根本には、国の責任を曖昧にしたまま、東電を絶対潰さないとして国費で支え、全国の原発の再稼働と電気代値上げで原資を賄う原子力損害賠償支援機構のスキームがあります。
 しかし、東電は、昨年十一月七日、賠償、除染等について、一企業のみの努力では限界があるとして白旗を上げました。既に実質国有化されている東電の事実上の破綻、原発の不良債権化は明らかです。
 であるならば、原賠機構法を見直し、東電を特別な公的管理下に置き、その経営責任、株主責任、貸し手責任を問い、メガバンクの債権放棄、利害関係者に対する負担を求める東電改革が、電力システム改革の出発点でなければなりません。答弁を求めます。
 第三に、電力システム改革は、原発のような大規模集中型から再生可能エネルギーの爆発的普及、小規模分散・地域経済循環型システムへの転換でなければなりません。
 福島事故は、安全神話とともに、原発が安い、クリーン、安定供給という神話も崩壊させました。
 ドイツのバーデンビュルテンブルク州では、四大電力の支配から抜け出し、優先接続義務などの電力改革によって、再生可能エネルギー事業者が十四万社も生まれています。
 本法案は、持ち株会社グループによる発送電の法的分離をするといいますが、発送電一貫体制を実質的に維持したい電事連の要求どおりにならない保証がどこにありますか。
 また、本法案の基底をなすいわゆる電力自由化は、二〇〇〇年代初頭の米国エンロン破綻事件、北米、カリフォルニア州の大停電を招いた市場原理主義、規制緩和の失敗とどう違うのか、明快な答弁を求めます。
 今求められているのは、こうした諸外国の経験を教訓にして、電力独占への民主的規制と国民的監視を強める電力民主化です。
 今こそ、原発ゼロへ向かう電力改革を強く求め、質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

○国務大臣(茂木敏充君) 塩川議員にお答えいたします。
 まず、事故原因の究明と事故の責任についてでありますが、国会事故調、政府事故調等により、事故の原因分析について主要なポイントが整理されており、また、原子力規制委員会に設置された事故分析に係る検討会で、今後、現地調査を含めたさらなる原因分析が行われるものと認識をいたしております。
 また、メーカーの責任に関しては、原子力損害賠償法は、被害者に対する損害賠償責任を原子力事業者に負わせることとしており、製造物責任法の適用除外とすることが定められております。
 次に、原発の再稼働についてでありますが、原発については、いかなる事情よりも安全性を最優先し、その安全性については原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、安全と認められない限り、原発の再稼働はありません。一方、安全と認められた場合には、その判断を尊重し、再稼働を進めます。
 今後、原子力規制委員会によって安全性が確認された段階で、立地自治体等関係者の理解と協力を得るため、事業者任せにするのではなく、国も前面に出て誠実に説明していくことが必要と考えております。
 次に、福島事故の教訓とインドへの原発輸出についてでありますが、東電福島第一原発事故の経験と教訓を世界と共有することにより、世界の原子力安全の向上や核不拡散に貢献していくことは、我が国の責務であると考えております。
 インドとの原子力協力の協議を進めるに当たっては、インド側が、核実験一時休止の継続や原子力施設の軍民分離など、過去に行った約束を堅持することが当然の前提であると考えております。これによって、核兵器不拡散条約に加盟していないインドを、国際的な核不拡散体制に関与させ、実体的に取り込むことが重要であると認識をいたしております。
 次に、汚染水処理対策についてでありますが、単に事業者任せにするのではなく、国も前面に立って汚染水処理対策に取り組むため、私が議長を務める廃炉対策推進会議のもとに汚染水処理対策委員会を設置し、汚染水処理への対応を検討しております。
 その中で、これまでの取り組みを検証し、地下水の流入抑制策や、汚染水に含まれる放射性物質処理対策、万が一にも汚染水が海上に流出しないための対策等、汚染水問題を抜本的に解決するための方策を打ち出すこととしており、今週中をめどに、そのうちの、地下水流入抑制に関する事項について、今後の対応の方向を取りまとめる予定であります。
 次に、被害者に対する賠償についてでありますが、迅速かつ適切な賠償のため、政府は、原子力損害賠償支援機構を設立し、これを通じた東京電力への資金援助を実施しております。
 また、迅速かつ適切な賠償に万全を期すため、昨年九月から、精神的損害に係る賠償について、将来分を含めた一括での支払いを開始しております。さらに、本年三月には、避難指示区域内における被害者の方の宅地建物を含む財物への賠償も開始をいたしました。
 今後、それぞれ異なる状況に置かれている被害者の皆様の立場に立ったこれらの賠償が適切かつ円滑に進むよう、東電を強く指導してまいります。
 次に、原賠機構法の見直しと東電改革についてでありますが、仮に、法的整理等により利害関係者にさらなる負担を求める場合、債権債務関係の確定などの調整に相当の時間がかかり、賠償、廃炉、電力の安定供給という原賠機構法の三つの目的を同時に達成することが困難となり、適切ではないと考えております。
 他方、原賠機構法の枠組みのもと、東京電力の特別事業計画を認定するに当たっては、経営責任の明確化、東京電力による株主、金融機関を含む関係者に対する協力の要請等、東電の改革が適切かつ十分なものであるか確認することといたしております。
 次に、法的分離についてでありますが、法的分離の方式では、送配電部門の一層の中立性を確保するため、人事や予算等に係る行為を規制する、いわゆる行為規制が必要であり、また、他の発電・小売会社に比べグループ内の発電・小売会社を優遇しないよう、行政が監視していくことも重要であると考えております。
 今後、法的分離を行う第三段階の改正の実施に向け、行為規制の具体的な検討を進めてまいります。
 最後に、海外の電力自由化の教訓についてでありますが、電力自由化で先行する海外での教訓も踏まえることは重要であり、御指摘の米国カリフォルニア州では、供給力が不足する状況下で小売料金を凍結する規制を実施したために、発電事業への投資が進まず、停電を引き起こしました。こうした海外での教訓を踏まえ、今回の電力システム改革では、発電事業への投資がしっかり行われる仕組みとしております。
 また、今回の改革では、単に全てを市場原理に委ねるのではなく、安定供給の責任を負う送配電事業者には料金規制や行為規制を行い、小売事業者には供給力確保を求め、そのための空売り規制を行い、既存の電力会社の料金規制は競争の状況を見きわめた上で撤廃するなど、海外での教訓も踏まえた制度設計といたしております。(拍手)
    〔国務大臣岸田文雄君登壇〕

○国務大臣(岸田文雄君) 塩川議員にお答えいたします。
 まず、福島第一原子力発電所事故の原因の究明と製造者責任についてお尋ねがありました。
 お尋ねの点につきましては、必ずしも外務省の所掌事項ではないと考えておりますが、東京電力福島第一原子力発電所事故の原因究明については、国として継続的に取り組むことが重要です。これまで、政府や国会の事故調査委員会の調査に加え、そこで引き続き検証が必要とされた点も含め、原子力規制委員会において技術的な観点から原因究明にしっかりと取り組んでいると承知をしております。
 そして、製造者責任に関しましては、原子力損害賠償法においては、故意ある第三者により損害が生じた場合等についてのみ原子力事業者から製造者に対する求償権が認められていると承知しておりますが、現時点において、福島第一原子力発電所事故において製造者の故意は示されていないと承知をしております。
 そして、原子力関連資機材の輸出についてお尋ねがありました。
 福島第一原発事故の経験と教訓を世界に共有することにより、世界の原子力安全の向上に貢献していくことが我が国の責務であると考えております。
 我が国の原子力技術に対しては、今月総理が訪問した中東諸国を初め、各国から高い期待が示されてきています。原子炉等の原子力関連資機材の輸出については、相手国の意向や事情を踏まえつつ、世界最高水準の安全性を有する技術を提供していく考えであります。
 そして、インドへの原子力関連資機材の輸出についてお尋ねがありました。
 インドとの原子力協力については、二十九日の日に予定されております日・インド首脳会談でどのような議論が行われるかは予断することはできませんが、我が国として、このインドとの原子力協力を行うに当たっては、インド側が、核実験モラトリアムの継続や原子力施設の軍民分離など、過去に行った約束を堅持することが当然の前提であると考えております。これによって、核兵器不拡散条約(NPT)の外側にいるインドを、国際的な核不拡散体制に関与させ、実体的に取り込む契機となり得るものと認識をしております。
 加えて、インドとの原子力の平和的利用に関する協力は、インドとの戦略的グローバルパートナーシップの強化に資するものです。
 いずれにしましても、交渉を進めるに際しては、核軍縮・不拡散に十分配慮していくことは当然のことであります。(拍手)
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