国会質問

<第183通常国会 2013年05月29日 経済産業委員会 15号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 小規模企業活性化法案について質問します。
 最初に、下請小規模事業者の実態調査に関連してお尋ねします。
 今回の下請中小企業振興法の改正案においては、振興基準は、小規模企業者の下請取引の実態その他の事情を勘案して定めなければならないとあります。
 そこで、大臣にお尋ねしますが、こういう下請小規模事業者の実態をどのように把握しておられるのか、今回の法改正に当たりどのような調査をされたのか、また、調査されているのであれば、その特徴などがわかれば教えていただけますか。

○茂木国務大臣 下請の中小企業、小規模事業者は、産業の分業構造の担い手として我が国の産業基盤を形成しており、その活力を引き出すとともに、その取引構造から生ずる不利を是正することが我が国の競争力の強化に資すると考えております。
 実態から申し上げますと、下請の中小企業、小規模事業者をめぐる状況というのは極めて厳しい状況でありまして、例えば、製造業の小規模事業者の受託額は、平成十八年度から平成二十二年度にかけて二・一兆円、六〇・九%減少し、またその企業数も、七・六千社、一七%減少しております。
 製造業におきまして、下請の中小企業、小規模事業者の受託額や企業数が減少している原因としては、大企業等の親会社の生産拠点が海外に進出する、そういう進展が進む中で、多くの下請の中小企業、小規模事業者では海外に進出することが困難なことなどが影響する、このように考えられます。
 このような状況のもと、昨年、中小企業庁が親事業者を対象に行ったアンケート調査によりますと、親事業者は、下請中小企業の提案力や技術、ノウハウを重視しているとしております。このため、下請みずからが企画、提案力を高め、取引先を多角化する取り組みが必要だと考えております。
 こうした取り組みを促すべく、下請の中小企業、小規模事業者の連携による取引先の自立的な開拓のための計画を策定した場合には、別枠で信用保証を受けられる中小企業信用保険法の特例措置を盛り込むとともに、平成二十五年度の予算におきまして、情報システム構築等に要した費用の三分の二の補助を、上限二千万円でありますが、講じているところであります。

○塩川委員 下請の小規模事業者の実態の深刻さと同時に、そこの実態を踏まえた支援策ということが改めて求められていると思います。
 消費税の転嫁法案のとき、総理出席の際にやりとりした中身で、トヨタの重層下請構造のことを聞きました。五次、六次と言われるような、シートを縫う縫製業の小規模事業者の方の話も紹介したところです。
 やはり、実際に土台で支えている小規模事業者をどう振興していくのかということが必要で、そういう点でも、今回のような調査とあわせて、重層的な下請構造において、製造業などを支えている小規模事業者の実態の把握、それに対しての調査、こういうことにもぜひ取り組んでいただきたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

○茂木国務大臣 大変重要な御指摘だと思っておりまして、検討させていただきたいと思います。
 同時に、これまでは、我が国の製造業を見てみますと、いわゆる垂直分業型の構造というのがありまして、自動車の企業の例を出していただきましたけれども、アセンブリーのメーカーがあり、そのもとで、かなり大きな一次下請から関連産業が相当下までつながる、それが一社のもとにつながっている。ところが、業界によっては、垂直統合型から水平分業型ということに、モジュール化等々が進んでおりまして、そういった業界の変化等も考えながら、下請中小企業は今どうなっているか、こういうことについてはきちんと調査をしていきたいと思っております。

○塩川委員 協力会社をなくしていくようなところもあったり、逆に再編するようなところもあるわけで、そういった実態の変化を踏まえた調査、対応策をぜひ要望しておきます。
 次に、中小企業憲章に関して一点お尋ねします。
 中小企業基本法の改正で、基本理念に、小規模企業の意義として、地域経済の安定と経済社会の発展に寄与すると規定しております。施策の方針にも、小規模企業の活性化を明記するということです。
 一方、中小企業団体の運動もあって、二〇一〇年六月に中小企業憲章が閣議決定されました。これがパンフレットで紹介しているものです。
 中小企業は経済を牽引する力であり社会の主役である、政府が中核となり、国の総力を挙げて、中小企業の持つ個性や可能性を存分に伸ばし、困っている中小企業を支え、どんな問題も中小企業の立場で考えていく、こういうことがこの中に盛り込まれているところです。
 ことしの二月の参議院の代表質問で、我が党の市田書記局長は、安倍内閣はこの中小企業憲章の立場を踏襲するのかと質問し、安倍総理は、今後とも、中小企業憲章の理念を踏まえ、中小企業、小規模事業者に対する支援策を着実に実施していくと答弁しております。
 そこで、大臣にお尋ねしますが、今回の中小企業基本法の基本理念の改正等を踏まえて、小規模企業を中小企業憲章の理念に位置づけるなど、中小企業憲章についても必要な改定を行う、そういうお考えはありませんか。

○茂木国務大臣 今回の法改正におきましては、小規模企業に焦点を当てた中小企業政策の再構築を図る観点から、中小企業基本法の基本理念の中に、小規模企業の意義として、地域経済の安定と経済社会の発展に寄与することを盛り込んでいるわけであります。
 委員から御指摘をいただきました中小企業憲章、平成二十二年六月の閣議決定であります。冒頭部分は委員の方から御紹介いただきましたが、基本理念の最後の部分に、「小規模企業の多くは家族経営形態を採り、地域社会の安定をもたらす。」こういう表現が使われておりまして、表現上、若干、そのままの表現ではありませんが、基本的に、既にこの中小企業憲章の中には小規模企業の意義というものが今回の改正と同じような形で盛り込まれている、このように理解いたしております。

○塩川委員 御指摘のところがあります。同時に、今回の基本理念として二つ、小規模企業の意義を改正の中でも盛り込んでいるわけですから、そういう意図が組み込まれるような盛り込まれ方というのは考えておかれるときではないかなと思います。
 もちろん、小規模企業の活性化のための施策の方針も新たに基本法としても盛り込むということですから、中小企業憲章にある基本原則とか行動指針、この部分にも小規模企業に対応するようなところを盛り込んでいく、こういうこともぜひ具体化を図っていただきたいと思うんですが、改めていかがでしょうか。

○茂木国務大臣 今回の改正が第一弾で、第二弾では、この基本的な位置づけに沿った具体的な施策について、小規模企業基本法も含めた検討を行いたいと思っております。
 そこの中で、憲章そのものの改正が必要かどうか。私は、いい憲章ができていると思っております。ただ、改正が必要かどうかにつきましても改めて検討させていただければと思います。

○塩川委員 ぜひ、中小企業憲章の内容の実現を図るとともに、この中小企業憲章を国民の総意とするため、国会決議にしよう、こういうこともぜひ呼びかけたいと思っております。
 その上で、小規模企業者等設備導入資金助成法についての廃止が提案されているわけですが、この点について伺います。
 小規模企業活性化法案と銘打っているわけですけれども、この小規模企業者等設備導入資金助成制度の廃止というのは賛成できません。小規模企業は資金力が脆弱なために、みずからの力で設備投資を行うことが困難で、資金の借り入れやリース等により設備投資を行う小規模企業を直接支援する本制度の意義は高いと考えます。
 中小企業庁は、本制度を廃止する理由に利用実績の低迷を挙げておりますが、制度の利用が減っているのは、景気低迷により小規模企業全体の設備投資意欲が減退していることや、本制度の認知度の低さにこそあると思います。
 加えて、そもそも、二〇〇二年の機械類信用保険制度の廃止によって、本制度の利用者が融資の返済、リース料の支払いが困難になった場合の損失を、設備貸与機関が、これは都道府県などの支援センターですけれども、全て負担することになりました。それまでは、保険により損失の半額が補填されていたわけです。その結果、この設備貸与機関の採算が悪化し、四十七都道府県全てで実施していたものが大きく後退することになったというのが現実であります。
 お尋ねしますが、こういう利用低迷の原因には機械類信用保険制度の廃止というのがあるんじゃないでしょうか。

○鈴木政府参考人 委員御指摘のとおり、この設備導入資金助成制度、これが低迷している理由はいろいろあろうかと思います。その一つの理由といたしまして、機械類信用保険制度の廃止で都道府県の貸与機関がリスクを全部負うことになったということもあろうかと思います。
 加えまして、利用する側からいたしましても、例えば無利子貸し付けの場合ですと担保とか保証人が必要とされる、また設備投資額の半分までしか融資を受けられないというふうなことで、利用者にとっても使いにくいところがある。
 加えまして、今、都道府県が中小企業信用保険制度を活用されまして、民間金融機関から中小企業、小規模事業者に融資を行う、いわゆる制度融資をどんどんふやしていらっしゃいます。この制度融資の利用が増加しているということも、この小規模企業者等設備導入資金助成制度の利用実績が低迷している理由かというふうに考えております。

○塩川委員 都道府県の事業休止に追い込まれている理由として、この機械類信用保険制度の廃止もあるというお話でした。
 国の制度改正によって小規模事業者向けの支援制度が後退しているということは明らかで、その他の制度云々という話がありましたけれども、実際に活用してきたひょうご産業活性化センターなども、パブリックコメントの中で、機械類信用保険にかわる補填制度の創設によって本制度の維持は可能、こういう声もあるわけで、このような要望にこそ応えるべきだと思います。
 本制度の廃止を盛り込んだ“ちいさな企業”未来部会取りまとめに対して寄せられたパブリックコメントの九割以上が、廃止ではなく継続を求めています。
 そういった声の一つとして、小規模企業にとっては、銀行、保証協会の無担保保証枠が少ないため、その枠を運転資金に利用したり、今後のためにその枠を残していると、思うように設備投資額が調達できないのが現状です、現行の制度は、銀行、保証協会の無担保保証枠とは別になるため、保証枠がいっぱいであったり、その枠を残しておきたい企業にとっては非常に利用しやすい制度です、このように述べておられます。
 つまり、金融機関の融資枠とは別に、金額がかさむ設備資金の調達が可能となる本制度の存在意義は大きいと考えます。
 大臣にお尋ねしますが、運転資金とは別に設備資金を確保する、こういう制度を生かしていくべきじゃないでしょうか。

○茂木国務大臣 利用実態につきましては中小企業庁長官の方から答弁させていただきましたが、まだ使っている方もいらっしゃるということでありますので、本制度の廃止につきましては平成二十七年の三月末にするなど、十分な周知期間それから準備期間を確保したいと考えております。
 また、国としては制度を廃止いたしますが、都道府県のイニシアチブで地域の政策ニーズに合致した新しい仕組みを進めることは可能と考えておりまして、四月から、中小企業庁及び都道府県等で中小企業支援のための勉強会を開催しているところであります。

○塩川委員 制度廃止の代替措置というのは融資部分のみで、リースによる設備導入への対応というのは直接はないわけです。そういう点でも、この設備導入資金助成制度の廃止部分というのは法案として削除すべきだということを申し上げ、質問を終わります。