国会質問

<第183通常国会 2013年06月06日 総務委員会 11号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 第三次の一括法案について質問いたします。
 二〇一一年に成立した第一次一括法、そして第二次一括法にも、また今回の第三次一括法案にも、附則に、いわゆる基準のあり方についての検討条項が付されております。施行の状況等を勘案して、基準のあり方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするというものであります。
 大臣にお尋ねしますが、いわゆる従うべき基準の検討条項だと思いますが、この附則の部分はなぜ設けられているのか、その理由についてお答えいただきたいと思います。

○新藤国務大臣 まず、義務づけ・枠づけの見直しは、国が一律に決定していた基準を、地方みずからが決定し、実施するように改めるものである。そして、地方分権改革推進委員会の勧告でも、従うべき基準、これを国が設定するのは真に必要な場合に限定すべきものというふうにされているわけであります。この趣旨を踏まえまして、従うべき基準というものを定めるわけであります。
 この一括法の附則において、改正後の法律の施行の状況等を勘案して、そのあり方についての検討を加え、見直しの必要があると認められるときは必要な措置を講ずる旨の見直し規定が定められている。これは、中身に応じてしっかりとした検討をしていく、こういうことでございます。

○塩川委員 地方がみずから決定するように改めていく、自治体の自主性を確保するために国の縛りをなくしていくんだ、そういう過程の中で、この従うべき基準についても見直しの検討という項目で挙げているということが理屈となっているわけであります。
 そこで、厚生労働省に、その中身についてお尋ねいたします。
 従うべき基準を残している法律にはどのようなものがあるのか、そして、その従うべき基準となっているのはどのような基準となっているのかについて、概括的に御説明いただけますか。

○唐澤政府参考人 お答え申し上げます。
 厚生労働省所管の法律の中で現在も従うべき基準を残している法律でございますけれども、例えば、医療法、障害者総合支援法、生活保護法、児童福祉法、介護保険法などが挙げられるところでございます。
 この国による従うべき基準でございますけれども、条例の内容を直接拘束する、必ず適合しなければならない基準でございますので、真に必要な場合に限って設定されることになっているわけでございます。
 具体的には、例えば、医療法におきましては、医療機関における看護師さんなどの人員配置基準、それから、障害者総合支援法や生活保護法、児童福祉法、介護保険法などにおきましては、施設の人員配置基準のほかに居室面積の基準、人権に直結する運営基準、こうしたものを従うべき基準として定めているところでございます。

○塩川委員 児童福祉法や介護保険法、障害者総合支援法、医療法、生活保護法、例示がございました。いずれも国民生活に直接かかわる重要な法律であります。保育所や障害者施設、老人福祉施設などの面積基準や人員の配置基準、また、秘密の保持や虐待防止など利用者の処遇や人権に直接かかわる基準が従うべき基準となっているわけであります。
 そこで、重ねてお尋ねしますが、これらはなぜ従うべき基準として存置されているのかについて、少し丁寧にお答えいただけますか。

○唐澤政府参考人 この従うべき基準が残されている理由でございますけれども、厚生労働省といたしましても、地域の経済を元気にして、実情に合わせた行政の推進と効率化を促していくという分権の理念の実現には積極的に取り組む必要があると考えておるところでございますけれども、一方で、厚生労働省の所管する行政分野は、国民の皆様の生命や健康、生活などに大きな影響を与えるものでございます。全国の医療や福祉サービスの質の確保を図っていく必要もございます。
 こうした基本的考え方を踏まえまして、福祉施設、医療施設などの基準のうち、人員配置基準、居室面積基準、そして御指摘のございました人権に直結する運営基準、こうしたものを従うべき基準として残しているところでございます。

○塩川委員 生命や健康や生活に影響を与える、そういったものについて措置することが必要であり、こういった質の確保、こういう点が重要だ、全国における共通した質の確保ということが求められているということであります。つまりは、セーフティーネットとしての役割、またナショナルミニマムとしての役割があるということを示しているものであります。
 厚生労働省に続けてお尋ねしますが、個別の法律に関してお聞きしますけれども、例えば第二次一括法では医療法の改正がありました。その中で、医療法における医療従事者の配置に関する基準を従うべき基準としている理由はどのようなものなのか、この点について簡単にお答えください。

○唐澤政府参考人 医療法の関係する基準でございますけれども、医療機関における看護師などの人員配置基準につきましては、医療法に基づきまして都道府県が条例で定めることとされているわけでございますけれども、その際には、厚生労働省令で定める基準に従うこととされているところでございます。
 このように、看護師などの人員配置基準につきまして従うべき基準を国が設けておりますのは、配置すべき医療従事者やその数が、提供される医療サービスの質に直結しておりますことや、国民の生命や健康に大きな影響を及ぼすためでございます。
 このため、平成二十三年の地方分権第二次一括法で条例に委任した際にも、引き続き医療法におきまして統一的な基準を定めることとしたものでございます。

○塩川委員 国民の生命あるいは健康に直結をするという意味での基準となっていることでのお話がありました。
 こういった配置すべき者あるいはその数というのが、提供される医療サービスの質に直結をする、国民の生命に重大な影響を及ぼすものであるため、統一的な基準が必要としているものであります。そもそも、義務づけ・枠づけの見直しを行う対象ではなく、国民の生命等への危険に対する保護等に当たるその性質上、義務づけを残すべきもの、こういうものであるはずであります。
 次に、障害者総合支援法、旧障害者自立支援法において改正も行われたわけですが、従うべき基準と定めているものはどのようなもので、その理由は何なのかについてお答えください。

○村木政府参考人 お答え申し上げます。
 障害者総合支援法におきましては、障害福祉サービス事業者等の基準を定めてございます。この中で、一人当たりの居室の床面積、従事する従業者及びその員数、人権侵害の防止に係る基準等が従うべき基準として定められているところでございます。
 これらは、利用者一人一人に対する障害福祉サービスの質を確保するという観点、またナショナルミニマムを確保するという観点から、全国統一の基準を定めることが適当と考えて、従うべき基準として整理をしたところでございます。

○塩川委員 面積基準や人員配置基準についての定め、あるいは人権の確保に関する基準としているもので、その質の確保やナショナルミニマムの確保という点で全国的な一律の基準が必要だということであります。
 一方で、実際には、この改正によって居室の定員については緩和がされたわけであります。また、市町村が障害福祉計画を策定する際に住民の意見聴取義務がかかっていたものを、これを外すという改正も行われていたわけで、この間、障害者の皆さん、障害者団体の皆さんが、私たち抜きに私たちのことは決めないでと、こういう趣旨に反するようなことがこの一括法の中で行われてきたということも極めて重大だということは指摘をしておかなければなりません。
 続けて、従うべき基準に関して、生活保護法においてはどのようなものを定めとしているのか、また、その理由は何なのかについてお答えください。

○村木政府参考人 お答え申し上げます。
 生活保護法につきましては、要保護者に対して生活扶助等を行うことを目的としている保護施設の基準等を定めてございます。これに関しまして、やはり、障害と同様でございますが、職員配置基準でございますとか、居室の床面積の基準、また、利用者の適切な処遇、安全の確保並びに秘密の保持に密接に関連するもの、例えば授産工賃の支払い等でございますが、これらについては従うべき基準としているところでございます。
 これはやはり、生活扶助等を一人一人に対して適切に行うという観点から、設備や運営に関して一定の水準を保ち、サービスの質の確保を全国的にするということが必要だという観点から、従うべき基準としたところでございます。

○塩川委員 いずれも、施設利用者の方などの生活と権利を保障するための基準となっております。
 そこで、大臣にお尋ねいたします。
 今紹介がされましたように、従うべき基準とされているものの中身、またその理由というのが、国民の最低限の生活と暮らしを守る、その権利を守るナショナルミニマムに深くかかわるものである。このナショナルミニマムを後退させることにつながるような、従うべき基準の見直しを行うのは、これは間違っているんじゃないでしょうか。いかがお考えですか。

○新藤国務大臣 まさにそこをきちんと議論しなきゃいけないということだと思います。
 そして、この制度の精神においても、従うべき基準を国が設定するのは真に必要な場合に限定すべきということがあります。第一次見直しにおいて、第一次一括法の附則において、改正後の法律の施行の状況等を勘案し、そのあり方についての検討を加え、必要があると認めるときは必要な措置を講ずる、この旨が入ったのもその精神だと思います。
 ですから、御心配があると思いますし、ナショナルミニマムに尽きるわけでありますが、こういったものをきちんと議論することが必要。
 一方で、地方分権の進展、国民意識の変化、社会状況の変化、こういったものも踏まえながらの検討がなされていると思っておりますし、私としてもしっかりと取り組んでまいりたい、このように考えます。

○塩川委員 ナショナルミニマムにかかわるようなこういう基準について、あたかも国が地方を縛るような中身だ、こういうことを考えることが間違っているんじゃないかと考えるわけです。
 例えば、生活保護法の一条についてちょっと説明してほしいんですけれども、生活保護法の一条に目的が書かれております。その目的にはどういうことをうたわれているのか、簡単に御紹介いただけますか。

○村木政府参考人 御答弁申し上げます。
 では、一条をそのまま読み上げさせていただきます。「この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」という規定でございます。

○塩川委員 つまり、生活保護法というのは、憲法二十五条に基づく法律であります。国民の最低限度の生活を保障する、こういう立場で設けられた法律でありまして、そこで定められる基準というのがまさに憲法二十五条の要請に基づくものなんだということこそ問われているわけです。
 ぜひこの点については改めてお尋ねしたいんですが、この地方分権の一括法について言えば、国の地方に対する縛りをなくすんだという理屈でずっと行われてきているわけですけれども、私は、今は従うべき基準の話をしてきましたけれども、そもそも、国が地方を縛る規定ではなくて、国民が国を縛る、憲法の要請に基づいて国民が国を縛るという規定として、基準として設けられているんじゃないのか、これこそ問われているんじゃないですか。

○新藤国務大臣 国民がひとしく健康的な生活を送る、そしてまた、国は国民の命を守る、これは基本であります。そういうミニマムを実現するための制度というものがあって、それを保障するのは、国家的な保障は国が行うわけであります。そして、それに加えて、地方の暮らし、地方の自治の自主性というものがございます。それとの兼ね合いをよく考えていくことだと思います。
 ですから、これは見直しを行うに当たっても極めて慎重に行わなければいけないし、かつ、従うべき基準を限定しているというのは、そこに精神があるということだと思います。
 ですから、あとはきちんと議論を一つ一つ注視していかなくてはならない、こういうことだと思います。

○塩川委員 一括法で行われてきたという規制緩和の中身というのが、私は、国が地方を縛るということではなくて、そもそも憲法の要請に基づいて国民が国を縛る規定としてある、そういうものも含まれている。見直すべき中身もあると思いますよ。しかし、一律にこれをなくしていくという方向のやり方そのものが乱暴で、これでは本来確保すべきナショナルミニマムそのものも掘り崩すことにつながる、このような規制緩和というのは認められないということを申し上げます。
 生活保護法の関係でいえば、今参議院で審議が始まろうとしています生活保護法の改正案について、そのものが憲法二十五条に反するような、保護が必要な人を窓口で追い返すような水際作戦を合法化する、こういう中身であるわけで、こういった生活保護法の改悪もやめるべきだということもあわせて申し上げておくものであります。
 次に、今回の法案でも出ております民生委員法の改正についてお尋ねをいたします。
 職員等の資格・定数等についての見直しですが、今回改正対象になっている職員等は、住民の命や暮らし、安全を支える重要な役割を担っております。地方分権、地域主権改革の名のもとに、そうした役割に後退をもたらすことがあってはなりません。
 そこで、民生委員法の改正についてですが、今回の法案ではどういう内容が改正の対象となっているんでしょうか。

○村木政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の地方分権一括法案で民生委員法の一部改正を行いますが、その内容でございます。
 まず第一に、民生委員の定数について、都道府県の条例により定めることとし、厚生労働大臣の定める基準は参酌すべき基準とすることとしております。
 二つ目でございます。都道府県知事が厚生労働大臣に対して民生委員の推薦を行う際に必要とされている地方社会福祉審議会への事前の意見聴取については、努力義務とすることとしてございます。
 第三点目でございます。民生委員推薦会の委員の資格及び資格ごとの定数に関する規定を削除することとし、地域の自主性及び自立性を高め、地域の実情に応じた対応を図ることとしているところでございます。

○塩川委員 民生委員は、児童福祉法により児童委員も兼務しております。全国に約二十三万人、基本的にボランティアで活動され、都道府県知事の推薦によって厚労大臣が委嘱をしております。児童虐待や悪質商法の被害、自然災害被害、孤独死、児童の犯罪など、さまざまな地域社会のきずなやセーフティーネット、これを確保する上で大きな役割を果たしておられます。ほかにこうした全国的な組織はございません。
 大臣にお尋ねしますが、こうした民生委員の果たす役割は大変大きいと思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。

○新藤国務大臣 私も地元において民生委員の皆さんとのおつき合いがございます。まさに社会奉仕の精神をもって、住民の生活状態の把握、それから援助を必要とする者への生活相談に応じる等、その役割をボランティアで行っているということであります。
 住民福祉の増進を図るためにもこの役割は極めて大きいし、これまでも大きな功績を残していただいている、このように思っています。

○塩川委員 こういった大きな役割を持つ民生委員にかかわって、今回、改正の中身が出てきています。
 その内容について、民生委員を組織しております全国民生委員児童委員連合会から意見書が二〇一一年の十二月の時点で出されております。その中身では、今般の見直しは厚生労働大臣の委嘱による全国一律の制度をなし崩しにするものであり反対、国民の生活基盤を支える全国制度の後退見直しを行わないよう要請しますとしており、この三月にも、連合会から厚生労働省に対して、懇談が行われ、同趣旨の要請が行われたと承知をしているところであります。
 そういう点で、厚生労働省にお尋ねしますが、特に民生委員推薦会について、民生委員の職務遂行に鑑み、公平中立的立場の委員で構成される現行どおりとしてほしいということを求めておられます。こういった連合会の心配の声に対してどのようにお考えか、お答えください。

○村木政府参考人 民生委員の方々が地域の住民を支えてくださっているということは、厚生労働省としては本当に実感をしているところでございます。この活動というのはこれからも大切にしていきたいというふうに思っております。
 先生御指摘のように、平成二十三年に要望書をいただきまして、特に、定数基準は国が示してほしいということと、それから推薦会については、公平中立的に民生委員を推薦するためのものなので現行どおりの制度を維持してほしいというお話がありました。
 民生委員会の御要望も、私どもも非常によくわかるところがございます。ただ一方で、今度の地方分権の一括法は、やはり地域の自主性、自立性を高めるということ、それから、自治体の事務の簡素化というものにもつながるということで、これもまた非常に大事なことだというふうに考えております。
 そういったこともありまして、私どもも関係者の方にかなり丁寧に今回の改正の内容について御説明をさせていただき、趣旨については御理解をいただけたものと考えております。もちろん、賛成ですとか、いいですよと言っていただけるかどうかということは別として、一定の御理解をいただいたものと思っております。
 ただ、制度が変わって混乱をしたりすることがないように、しっかりといい形で運営ができるように、環境整備は我々もしっかり努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 環境整備ということで今考えておられることはどのようなものですか。

○村木政府参考人 まだ具体的に内容を決定しているところではございませんが、関係者の御要望も聞きながら、推薦会等の運営のルールなどについて自治体に技術的な助言などができればというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 昨年三月の厚労省内の会議でも、今回の民生委員法の改正では、民生委員、児童委員の重要性に対する認識の低下や質の低下、住民に対するサービスの低下を来すことのないよう、十分に留意の上対応する必要があるとしています。そういう意味では、懸念も当然あるわけですし、会の皆さんも了解をしているわけではありません。二〇一一年の要望は要望のままだということもおっしゃっておられるわけで、そういう点で実際懸念が生まれるようなことが、一括法の中で、一律の基準を当てはめることによって生まれている、これがおかしいのじゃないのかという声というのが現にあるわけです。
 最後に大臣にお尋ねしますが、こういった地域のきずなの役割を果たすという使命感で、民生委員の方々は頑張っておられます。そういう現場の方から懸念が出ているわけですから、こういった改正そのものはやはり行わずに、そもそも、国の責任で民生委員の数をふやすとか、しっかりとしたサポートをするとか、こういうことにこそ全力を挙げるべきだと思うんですが、いかがですか。

○新藤国務大臣 ただいま局長の方からも答弁がありましたように、所管する厚労省においても大変な議論があって、丁寧な話し合いが行われた、こういうことでございました。
 私も、この全国民生委員児童委員連合会からの厚労大臣に対する意見書というのは承知をしておりますし、また、その上で、厚労省と連合会との意見調整があったということであります。その改正を行うに至る経緯、こういったものがあって、その上で、都道府県、市町村が地域の実情を踏まえて民生委員の定数や民生委員推薦会の委員の資格、定数を定めるということであります。
 崩してならないのは、これによって民生委員制度の後退が起きてはならないということであります。きちんと、本来の目的を達成しつつ、地域の声を踏まえた、そういった検討、改正がなされるものではないか、これを期待しております。

○塩川委員 当事者の民生委員の方々がやらないでくれと言っているものをやる、それが一括法の一律機械的なやり方で、こういうやり方が間違っているということを最後に申し上げて、質問を終わります。