国会質問

<第183通常国会 2013年06月12日 経済産業委員会 19号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 電気事業法の改正案について、きょうは、安倍内閣におけます原子力に対する政策、基本姿勢について経産省に確認をし、最後に、大臣に、電力システム改革との関係についてお尋ねをいたします。
 骨太方針素案ということで六月六日に出されたものを見ますと、安価で安定的なエネルギーの確保として原発が位置づけられています。ここでは、「原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。その際、立地自治体等関係者の理解と協力を得るため、政府一丸となって最大限取り組む。」このように書かれているわけであります。
 この間の答弁でも繰り返された内容ではありますけれども、原発の再稼働の推進のための地元対策を政府一丸となって行うこととしているわけであります。
 その上で、六月五日、安倍総理が成長戦略第三弾スピーチを行いました。そこでは、今後十年間の日本の電力関係投資は、過去十年間の実績の一・五倍である三十兆円規模に拡大できる、このように述べておられます。
 そこで経産省の方にお尋ねをいたします。
 過去十年間の電力関係の投資実績がどのようになっているのか、その中で原発の占める額がどのくらいになっているのか、この点についてお答えください。

○高原政府参考人 過去の電力関係の投資、これは二〇〇三年から二〇一二年の十年間でございますけれども、二十・五兆円でございます。これは十電力による発電及び送配電に係る投資実績を含めておりまして、その中には原子力発電への投資も含まれております。
 原子力発電設備への投資実績でございますけれども、各電力会社の有価証券報告書やヒアリングなどによりますと、同じ過去十年間で約三・二兆円というふうに把握をいたしております。
 以上でございます。

○塩川委員 送配電を含めた設備投資ということで二十・五兆円ですけれども、原発は三・二兆円ということですが、電源関係はどのぐらいになるのか。

○高原政府参考人 ただいま申し上げました、原子力発電設備に関しましては三・二兆円でございますが、全体の発電に関しては、他の水力発電、火力発電等々を合計いたしますと全体で七・五兆円というふうに把握いたしております。

○塩川委員 この数字は、年度ごとで出すことはできますか。例えば、直近でいえば、平成二十四年度とかという数字は可能でしょうか。

○高原政府参考人 年度ごとに出すことはできます。

○塩川委員 それは、改めてお尋ねし、御回答いただきたいと思っております。
 この間、規制緩和の省令改正で、事業者から報告を求める項目として入っていないなどということもあって、実際には実態がわからなくなっているということもありますから、こういう点について、ぜひ改めて開示を求めたいと思っております。
 続けて、これから先の話ですけれども、今後十年間の電力関係投資、これは二〇二〇年で三十兆円規模ということもスピーチではあるわけですけれども、この中に原子力というのはどのぐらい含まれているものでしょうか。

○高原政府参考人 今後十年間の日本の電力関係投資につきましては、足元の実績から全体の規模を見込んだものでございまして、どの発電設備をどのようにしていくかなど、その内訳について見通しを持っているわけではございません。
 以上でございます。

○塩川委員 今後の電力関係投資の推計というのは、過去の原子力を含む実績を踏まえて出されているものであります。ですから、今後、国内において原発の新規投資を行うことは否定されないような中身だと思うんですけれども、その点はいかがですか。

○茂木国務大臣 今後の成長戦略の中で、大きな柱として、効率的、安定的なエネルギー、こういった分野が出てまいります。そこの中には、例えば蓄電池、今世界的に一兆円の市場でありますが、これが例えば、電力系統用、そして自動車、こういった分野に応用されますと、二十兆円の市場に拡大をしていく。
 いずれにしても、エネルギー、どのようなベストミックスになったにしても、これからの日本としては成長戦略として位置づけていく、こういった意味から、一・五倍、三十兆円、こういう数字をはじき出しております。

○塩川委員 ベストミックスということですから、原発は排除されていないということではあります。
 そこで、成長戦略の素案ということで六月五日に出されております。それを見ますと、三つのアクションプランというのがあって、そのうちの一つとして国際展開戦略があります。その中に、インフラシステム輸出戦略を迅速かつ着実に実施するとしております。
 このインフラシステム輸出戦略を見ますと、後ろの方に、将来のインフラシステム輸出の主要分野における日本企業の海外受注額の推計が出されております。
 その中身について教えていただきたいんですが、インフラシステム輸出戦略では、官民連携のもと、我が国企業が二〇二〇年に約三十兆円、現状約十兆円のインフラシステムを受注することを目指すとして、原発や高速鉄道等、熾烈な競争を勝ち抜くべき個別案件について、官民一体で取り組み、政府全体として支援していくとあります。
 そこでお聞きしますが、このインフラシステム輸出戦略の中で、原子力分野の二〇二〇年における海外受注額はどのように推計しているんでしょうか、どのような額になるんでしょうか。

○糟谷政府参考人 お尋ねのインフラシステム輸出戦略におきまして、二〇二〇年の海外受注額でありますが、将来推計として、エネルギー分野全体で九兆円程度、うち原子力分野については約二兆円程度という推計でございます。
 この推計の方法でございますけれども、IAEAが二〇一二年九月に発表した原子力発電に関する予測がございます。
 これは二〇一一年の実績と、それから二〇二〇年時点の設備容量の予測の数値が出されております。この二〇二〇年時点の予測の設備容量と二〇一一年との差分を九年間で割りまして、これも高い数値と低い数値と両方ありますので、平均いたしまして中間値をとりまして、年間千六十万キロワットの原子力発電の設備容量がふえるというふうに仮定をし、原子力発電所一基百万キロワット当たり〇・五兆円という数字を掛けますと、一年間に五・三兆円の原子力発電設備の受注がなされるということでございます。
 世界の原子力発電の主要メーカーが八社ありまして、そのうち日本の企業が三社であります。これが全く同じ比率で受注したと単純に仮定いたしまして、一年当たり五・三兆円に八分の三を掛けて、約二兆円という数字を出しております。

○塩川委員 八分の三に五・三を掛けて約二兆円ということです。二〇一〇年の原発輸出実績は、このインフラシステム輸出戦略では〇・三兆円とあります。ですから、この〇・三兆円を二〇二〇年には二兆円にふやすという推計であります。日本の原子炉メーカーの市場確保を優先した成長戦略として原発輸出を政府を挙げて行うということであります。
 大臣にお尋ねします。
 この成長戦略において、原発の活用と原発輸出が位置づけられております。国内では、原発再稼働のために政府一丸となって地元対策を行い、海外に向けては、原発輸出を官民一体で取り組み、政府全体として支援していくとしております。
 そうなると、政府が原発にてこ入れすることが電源構成において原発を優先することになり、結果として九電力と原子炉メーカーを優遇することによって、本来、国民の多くの方々が願っておられる再生可能エネルギーの普及とか分散型電源などの電力システムの改革、国民が願うこの電力システムの改革に反するものになってしまうのではないか、このことを強く感じておりますが、その点、大臣、いかがでしょうか。

○茂木国務大臣 国内における成長戦略と、そして成長戦略の一つの柱であります国際展開戦略は一貫して進めていきたいと思っておりまして、例えば国内における高効率の石炭火力、こういったものは海外に応用した場合にグローバルなCO2の排出削減、こういったものにもつながってまいります。
 また、先ほど申し上げましたような燃料電池、こういったものにつきましても、日本の最高の技術は十分海外に打って出られるものだ、このように考えております。
 そして、先ほど鉄道のお話もいただきましたけれども、日本の強みというのは、単に技術じゃなくて、その設備を運転するシステムであったりノウハウ、こういうところにあると思っておりまして、鉄道の発着時間がこれだけしっかりしている国はない、こんなふうに考えているわけであります。
 原発の輸出につきましては、過去のこれまでの事故の教訓であったりとか経験を踏まえた安全技術を世界と共有することによりまして、世界の原子力安全の向上や原子力の平和利用に貢献していくことは我が国の責務である、そのように考えております。

○塩川委員 朝日新聞の世論調査でも、安倍政権が成長戦略に原発の活用を盛り込んだことに反対が五九%、原発再稼働についても反対が五八%。安倍政権の原発推進政策というのは原発ゼロを願う国民世論に逆行するものだということを申し上げ、これでは国民の願う電力システム改革は進まないということを最後に申し上げ、質問を終わります。