国会質問

<第184臨時国会 2013年09月30日 経済産業委員会 3号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 汚染水問題について、茂木大臣を初め政府に質問をいたします。
 この間、汚染水対策に対して、政府として、予備費等国費を使って、凍土方式の陸側遮水壁や、より処理効率の高い汚染水浄化処理設備の財政出動を決定いたしました。
 一方で、九月十九日、安倍総理の「廃炉に向けた安全対策に万全を期すため、現場の裁量で使用できる資金・予算の枠を確保すること」という要請を受けて、東電は、「これまでに手当てした約一兆円と同程度の支出が必要になっても対応できるよう、コストダウンや投資抑制により、今年度から十年間の総額として更に一兆円を確保してまいります。」と回答しております。
 そこで、お尋ねします。
 総理の要請どおり、廃炉に向けた安全対策に万全を期すため、東電がさらに一兆円積み増しして二兆円といたしました。ですから、凍土方式の陸側遮水壁とか、あるいはより処理効率の高い汚染水浄化処理設備についても、この二兆円の中から経費として東電が払えばいいのではないかと思うんですが、その点についてはどのようにお考えなんですか。

○茂木国務大臣 この廃炉・汚染水対策、さまざまな事業がございます。アクションプランに盛り込んだ事業、これは全部お答えすると多分二十分ぐらいたってしまいますので割愛をさせていただきますが、そこの中で、役割分担、特に国が前に出て進めるべき、技術的難度が高いもの、そして、それをやらないことによって、それが進まないことによって抜本対策のボトルネックになる、こういうことについては国が前面に出るという形にいたしました。それが、凍土方式によります陸側の遮水壁であったり、高効率の放射性物質の除去装置であります。
 これは、単に大きくするということではなくて、例えば、当然、この除去の処理をしますと放射性物質の沈殿を起こす、化学反応によって沈殿をさせるわけでありまして、その量を大幅に減量するとか、吸着力を大幅に上げる、技術的に難度のかなり高いものでありまして、そういったことにつきましては国がしっかりと取り組む必要があると考えております。
 ただ、さまざまな対策があるわけであります。一つ一つは時間の関係で申し上げられませんが、東電は、既に引き当てた一兆円、そしてこれから十年間で積んでいく一兆円の資金枠、これを有効に活用して、そういった対策を速やかに実施に移してもらいたい、このように考えております。

○塩川委員 その役割分担というのがよくわからないわけです。
 大臣がおっしゃったように、技術的に難度が高いもので、抜本的対策のボトルネックとなっている分野、こういうものに対しては国が前に出てやるんだ、国費、税金も投入しましょうということです。
 例えば、技術的に困難という、より処理効率の高い汚染水浄化処理設備についての公募要領を見ますと、もちろん減容化の話もありますよ。ただ、処理水に関する目標放射能濃度というのは、大臣は吸着量を圧倒的に高めるとおっしゃいましたけれども、しかし、この公募要領を見れば、ALPSと同程度の除去能力を有するものというのが要件なんですね。
 ALPSそのものも、実際に試運転もままならない、稼働にも至っておりません。そういう点では、ALPS自体が技術的に困難という設備になっているわけで、大臣がおっしゃるような、技術的に困難で、抜本的対策のボトルネックとなっている分野にこのALPSも入っちゃうんじゃないのか。東電が負担しているALPSの経費などについても、技術的困難という理由で国が負担するという理屈にもなっちゃうんじゃないのか。そういう点では、私は理屈が通らないんじゃないかなと思うんですが、いかがですか。

○糟谷政府参考人 ALPSにつきましては、試運転、ホット試験を始めました後、一旦とまってちょっと御心配をおかけしましたが、きょう未明、午前二時半過ぎからまた再開しております。
 公募要領でございますけれども、放射性廃棄物の減量につきましては、現行の放射性廃棄物を八割以上削減するということになっております。それから、処理能力につきましては、公募要領上、具体的に、ALPSで処理ができる濃度というのを六十二の放射性物質について掲げまして、それと同程度でいいということではなくて、それ以下に除去可能な能力を有するものということを要件として求めております。
 こういうものは現段階で世の中に存在しないものでありまして、これまでなかったものをつくるというところで、難易度の高いものだというふうに考えておるところでございます。

○塩川委員 ALPSの技術も、その時点では見通しが立たなかった、そういう話でもあるわけで、私が言いたいのは、こういった技術的困難云々という分野で国費を使うことになると、その先どうなってくるのかという話があります。
 資料を配付させていただきました。
 二十七日の汚染水処理対策委員会の資料ですけれども、その中で、資料の一枚目に「三、今後の検討の進め方」というのがあります。ここにありますように、(1)に、「技術的に困難性が伴うものについては、国内外の叡智を結集すべく、技術提案を求め」ていく、こういうふうにあります。
 この技術提案というものについてどのようなことをやるかというのが、一番後ろの四ページ、四枚目の真ん中、「二、技術提案の対象分野」というのが掲げられています。「汚染水問題への対応として、以下六分野について幅広く技術提案を募集」する、1汚染水貯留、2汚染水処理、3港湾内の海水の浄化、4建屋内の汚染水管理、5地下水流入抑制の敷地管理、6地下水等の挙動把握等々となっているわけであります。
 そうなると、技術的に困難性を伴う、難度が高いものということで、これらの技術提案を行うような対象分野についても、東電には経費負担を求めず、国が負担するということになりはしませんか。

○茂木国務大臣 難しいといえば何でも難しいんだと思います。
 今回の福島第一原発におけます事故の処理、廃炉・汚染水対策、世界で初めて経験することでありますから、既に進めております海側の水ガラスによります地盤改良、これも難しいといえば難しいわけでありますけれども、炉の設置者であり、そして現場に通じ、さまざまな作業を担ってきた東電において行っているところであります。
 そして、今後の潜在的なリスクへの予防的な対応策につきましても、当然それは技術的に難度の高いものでありますけれども、そこの中で、東電が行うもの、国が行うもの、しっかりと仕分けをしていきたいと思っております。

○塩川委員 仕分けをして、役割分担をして、国費も使うということは、そもそも国が汚染水対策に税金を投入するということが汚染者負担原則そのものに反し、汚染者である東電の責任を免罪するものではないのか。また、原子力損害賠償支援機構法に基づく総合特別事業計画で、汚染水対策を含む事故プラントの廃止措置の責任を負う主体として東電があらゆる手段を総動員し、責任に正面から向き合うという、これまでの基本方針も投げ捨てるものになるのではないのか。
 大臣に伺いますが、汚染水対策に税金を投入するということは、東電には汚染水処理能力、事故対応能力、当事者能力がないということを政府自身が認めるということではありませんか。

○茂木国務大臣 何度も申し上げておりますが、一義的には、炉の設置者であり、現場に精通し、これまでさまざまな作業に取り組んできた東電に実施主体としての責任をしっかり果たしてほしい、このように考えております。
 国としても、アクションプランをつくり、さらには予防的、重層的な対策というものもこれから検討していく。そういうアクションプランの中で、東電の作業の進捗状況、こういったことについてもしっかりと管理していきたい、そのように思っておりますが、問題を解決する上で、技術的に難度が高くて、問題解決のボトルネックになるもの、これはやはり国の責任で除去していきたい、そう思っております。
 決して、東電に責任が全くない、東電は仕事をしなくて結構です、そういうことを申し上げているつもりは先ほどから全くございません。

○塩川委員 政府は、汚染水対策の責任は東電にあるとしてまいりました。
 しかし、税金投入というのが、汚染水対策に東電が責任を負うというスキームそのものが破綻したことを示しているんじゃないのかということを私は申し上げているわけです。それなのに、事実上破綻している東電を存続させたまま、事故に何らの責任もない国民の税金を投入するというのは筋が通らないということを言っているわけであります。この点についてはいかがですか。

○茂木国務大臣 先ほどから申し上げているように、事故処理の実施主体は基本的には東電だという話を申し上げているところであります。
 実質的に破綻している、破綻処理をお進めになりたいということなのかもしれませんけれども、会社更生法を適用したらどのような状態になるか。御案内のとおり、内外の機関投資家を初め、電力債が優先弁済になるわけでありますよ。それにはこの債権がまず払われる。それで、福島の方々や被害に遭われた方の賠償、さらには現場で本当に困難な作業に当たっている協力会社の債権、これが十分に払われなくなる可能性もある、そういったことも念頭に入れて検討する必要があると私は思っております。

○塩川委員 原発事故被害者、福島の皆さんは、東電そのものが賠償の障害物になっている、こういう思いを強くしているんですよ。また、東電を存続させたことが、コスト優先で安全軽視の仕組みとなって、汚染水対策など事故収束でも障害物となっている。
 東電を破綻処理して、利害関係者の責任を問うて、国の汚染水対策を初め、事故収束等、賠償、除染に全面的に責任を果たす体制を構築すべきだということを私どもは申し上げてきているところであります。経営責任、株主責任、貸し手責任を問うべきだという点で。
 そこで、上田長官にお尋ねします。
 九月二十八日付の日本経済新聞に、首相が福島に赴く前日の十八日には東電の取締役懇談会に上田資源エネルギー庁長官が出席、一部に慎重論があった社外取締役に対し柏崎刈羽の再稼働の必要性を訴えたとされると報道されております。
 そこでお聞きしますが、この取締役懇談会に出席をされたのか、その場で柏崎刈羽の再稼働の必要性を訴えたのか。このことについてお答えください。

○上田政府参考人 お答え申し上げます。
 私が東電の取締役懇談会に出席をしたのは事実でございます。
 その場におきましては、私の方から汚染水対策をしっかりやること等々についてお話をいたしました。東電の取締役、社外取締役の方々とさまざまな意見交換、情報交換を行わせていただきました。
 ただ、その具体的な内容は、懇談会の席上であるので、ここで申し述べるのは差し控えさせていただきたいと思います。

○塩川委員 いやいや、政府を代表して行っているんですから、政府の姿勢としてどうなのか。再稼働の必要性は訴えたんですか、訴えていないんですか。その点、もう一回答えてください。

○上田政府参考人 政府の姿勢といたしましては、安全性が確認された原子力発電所については再稼働を進めていくというのが政府の一般論としての考え方であると承知しております。
 東京電力の取締役、社外取締役等々を含めた懇談会の中身につきましては、今申し上げたとおりでございまして、これは懇談ということでございますので、非常に非公式なさまざまな意見交換をさせていただいたということでございまして、その内容については差し控えさせていただきたいと思います。

○塩川委員 ですから、エネ庁、経産省自体が再稼働に前のめりだということが、汚染水問題解決のために持てる人材、人的、物的資源を全て集中するというその妨げになるんじゃないのか。柏崎刈羽が再稼働になれば、当然そちらに人手がとられる。そうなれば、福一の対策に対しての人手が削られることになる。こういうこと一つをとっても、私は、再稼働の動きそのものが、汚染水対策を初めとした廃炉に向けた安全対策そのものをおろそかにすることになる、こういうことを言わざるを得ない。
 経産省、政府としてのこの原発再稼働の動きが汚染水対策の妨げになるということが今問われているんだと思うんですが、大臣、いかがですか。

○茂木国務大臣 先日、東電の広瀬社長が、柏崎刈羽原発六号機、七号機の安全適合審査の申請を行ったと、この報告が、申請を行った日の午前でありますが、私のところに参りました。
 その際、私が一番強調させていただいたのは、安全審査は安全審査として、福島第一原発の廃炉・汚染水対策が全くおろそかになることがないように、これに最優先で取り組むように、このことは強く申し上げております。

○塩川委員 再稼働になれば柏崎刈羽に人手がとられる、それが結果として廃炉対策に対する人材投入を妨げることになるのではないのか。この点についてはどうですか。

○茂木国務大臣 電力会社、これは東電だけではなくて、さまざまな事業を行っております。電力の安定供給、そして低コスト化、さらには社内の合理化の話。
 東電の場合は、この福島第一原発の事故処理、こういう大きな問題を抱えているわけでありますが、では電力の安定供給はもう諦めていい、こういうことにはならないんだと思います。さまざまな重要課題について適切に資源配分を行っていく、同時に、そこの中で福島第一原発の廃炉・汚染水対策に最優先で取り組むよう指示をしておりますし、そのような体制をとっている、そう考えております。

○塩川委員 最優先といいながら、再稼働を進めるということが、かえって、人手を投入することなどを含めて、最優先となるべき汚染水対策の妨げになるということについて、具体的に事実をもって反論ということはございませんでした。
 広瀬東電社長は、一昨日のマスコミのインタビューで、除染や廃炉費用について、一つの企業ではとても負担できないと、国の支援への要望をしているわけであります。これは昨年十一月にも東電としても表明されていたことですけれども、この除染、廃炉費用などを一つの企業ではとても負担できないということについては、大臣としてはどのように受けとめておられるんですか。

○茂木国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、廃炉・汚染水対策は極めて重要な事業でありまして、福島の一日も早い復興再生のために関係者一丸となって進めなきゃならない、そこの中で、技術的に難易度の高い分野につきましては、国が前面に出てそういったことを進めてまいりたいと我々は考えております。
 何から何までちょっと一緒に議論されると困る部分がありまして、先ほどの東電の破綻の問題にしましても、では、共産党としては、そういう機関投資家、例えば外資系のファンドに対する電力債の支払いを賠償より優先するという考えに私には聞こえるんですけれども、そういうことなんですか。

○塩川委員 私が質問しているんです。
 今の除染や賠償の問題についても、きちんとした政府としての姿勢についてのお話はございませんでした。今後大きな課題になってくるわけであります。
 日経の九月二十七日付に、融資の借りかえに関連して、金融機関は、再稼働できないなら電気料金値上げをしてほしいと東電を突き上げた、こういう話も報道されております。これが柏崎刈羽再稼働申請につながったという報道でありますが、私は、メガバンクがみずからの貸し手責任を棚上げして原発の再稼働を要求する、こういうあり方そのものが許されない、これが国民の声だということを改めて申し上げて、質問を終わります。