国会質問

<第185臨時国会 2013年10月29日 本会議 5号>




○塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、産業競争力強化法案について質問します。(拍手)
 本法案は、アベノミクス第三の矢である成長戦略の具体化として、安倍総理が、世界で一番企業が活動しやすい国に日本を変えると称して出してきたものです。
 成長戦略は、全国単位、戦略地域単位、企業単位の三層構造で、企業が求める規制緩和を進めるものですが、なぜ、規制緩和で企業を強くすれば国民生活が向上するというのでしょうか。
 バブル経済の崩壊後、実行された規制緩和と構造改革は、一体何をもたらしたか。
 自動車、電機など、我が国大企業は、海外生産比率を高めて世界的な多国籍企業となり、逆に、国内産業と雇用の空洞化をもたらしました。派遣、請負など非正規雇用が激増し、リストラ、雇用破壊、賃金の引き下げが消費を冷やし続けているのであります。
 他方で、上場大企業の外資比率が急増し、金融投機が横行する中で、金融大資産家が生まれております。
 結局、貧困と格差の拡大をもたらしただけだったではありませんか。
 アメリカの対日規制改革要望書による一連の規制緩和政策と小泉構造改革の結果、既に日本は、世界で最も規制の緩い国になっているのではありませんか。
 中でも、一九九九年のリストラ支援の産業活力再生法、産活法と労働者派遣法の原則自由化は、極めて重大な悪影響を及ぼしました。甘利経済再生大臣は、当時の関係大臣として、その反省はありませんか。明瞭な答弁を求めます。
 そこで、法案に関連して伺います。
 第一は、企業実証特例制度の問題です。
 そもそも、個別企業が希望する規制緩和を法律で担保するようなことが許されるのでしょうか。また、それがなぜ産業全体の競争力の向上をもたらすのでしょうか。経団連が要求するような、企業ごとの労使協議による労働法制の緩和など、論外であります。
 かつての本田技研工業の例を挙げるまでもなく、厳しい環境規制、安全規制を乗り越える企業努力の中にこそ、新たなビジネスチャンスの創造的な発展があるのではないでしょうか。
 第二は、産活法との関連です。
 法案では、産業活動のリストラとMアンドAなどの再編計画で、産活法を継承し、「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」と定めています。
 ところが、産活法のもとで、十八万人もの電機リストラが強行され、産業革新機構が出資するルネサスエレクトロニクスでは退職勧奨が強要されています。労働者の権利と地位が不当に害されているではありませんか。
 産活法の認定企業六百七社について、どのような検証と総括を行ったのでしょうか。労働者の権利と地位を守る監督、指導こそ行うべきではありませんか。
 第三は、ファンド活用の問題です。
 この間、外資ファンドによる企業支配とリストラは野放しにされ、昭和ゴム、アデランス事件やサーベラスの西武鉄道TOBなど、我が国は、世界最高の、規制なきファンド天国とさえ言われています。今必要なのは、野放し状態の是正ではありませんか。
 我が国における内外ファンドの実態、摘発事件数及び規制の強化策について答弁を求めます。
 第四は、税負担の問題です。
 九月のG20でも大きなテーマとなった、ファンドやシャドーバンキング、あるいはアップルなど多国籍企業のタックスヘイブンを利用した税金逃れに対する規制強化策について、日本政府はどのような国際的イニシアチブをとるのですか。
 国際展開している多国籍企業に幾ら税金をまけてやっても、グローバル資本としての彼らが、当該国の投資や雇用に振り向ける企業行動をとる保証はありません。OECDの報告にあるように、多国籍企業による有害な税の引き下げ競争にくみせず、これ以上の法人税率引き下げの検討は行うべきではありません。答弁を求めます。
 多国籍企業化が進めば、企業利益と国民の利益が一致しなくなることは、既に一九九二年の通商白書が指摘したところであります。多国籍企業に成長した我が国大企業を応援し、産業競争力を幾ら強くしても、国民生活の向上につながりません。
 今こそ、国民生活を最優先させた日本経済発展の道に根本的に政策を切りかえることを求めて、質問を終わります。(拍手)