国会質問

<第185臨時国会 2013年10月30日 経済産業委員会 1号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、議論が重ねられております福島第一原発事故の作業員の労働条件、待遇の抜本的改善を求める質問を行いたいと思います。
 福島第一原発の事故収束、汚染水対策は深刻であります。茂木大臣も大臣所信で、廃炉・汚染水対策について、東電任せにするのでなく、国が前面に立ち、責任を果たしていくと述べておられます。
 そこで、福島第一に人員を結集することについて、まず、東電の廣瀬社長にお尋ねをいたします。
 福島第一では、毎日約三千人、そのうち二百人ぐらいが東電の社員の方だと思いますけれども、作業しておられます。放射線量が大変高い中、全面マスクや防護服といった重装備で、急で頻繁な作業内容の変更など、大変困難な作業に従事しておられます。
 一昨日の田中原子力規制委員長と廣瀬東電社長との面談の原子力規制庁のメモを見ますと、廣瀬社長が、作業員の確保が困難と述べていると記載されております。
 そこで、この作業員の確保が困難というのはどのような状況を言っておられるのか、お尋ねいたします。

○廣瀬参考人 これは、先ほど来御質問がございましたように、一昨日、田中委員長から、今、東京電力として、福島第一原子力発電所の中でのいろいろな課題、忌憚のない話をしてほしいということを受けて、私からお話ししたことでございます。
 少し正確に申し上げますと、労働市場で人を確保して従事していただくわけですので、ほかの職業、ほかの条件と競合するということも当然考えられます。
 今、除染等々で条件が違うところでの仕事もあるということを聞いておりますし、また、これから復興が進んでまいりますと、福島地域において、地元においても住宅の建設等々のことが出てくるということから、当然、人のとり合いになるということも考えていかなければいけないということから、今直ちに人が全く集まっていないというようなことで申し上げたつもりはございませんけれども、そうしたことも考えて、我々としても条件等々についても今後検討していかなければいけないということで申し上げたということでございます。

○塩川委員 除染の作業との人のとり合い、また、全国で住宅建設等々が進めば、全国レベルでもゼネコンなどで人のとり合いになるだろう、今のところはそうではないにしても、将来を見通せばそうだという話をされておりましたが、それが実際には現在も進行しているのではないかと思います。
 先ほど、三谷委員の質問に対して田中原子力規制委員長が、面談のやりとりについて、除染作業に廃炉作業より高い賃金が払われているという話を廣瀬社長から聞いたという趣旨のことを述べておられましたが、それはそのとおりでよろしいですか。

○廣瀬参考人 私どもの構内で働く、私どもの契約でお支払いしている賃金というのは、ベースのものに対して、どういう放射線レベルのところでどのぐらい働くのかといったようなこと、あるいはどういう装備をつけて働くのかといったようなことで、幾つもケースがございますので、にわかに除染の方が高いということではなく、そうしたところで競合して、あるいは除染の方の条件がいいということもあり得るという意味で申し上げたということでございます。

○塩川委員 土木作業という点でいえば除染の作業でも廃炉作業でも共通する仕事、その点でいえば、除染の方が条件がいいという場合もあるという話でありました。そういうことでよろしいですか。

○廣瀬参考人 私どもが、除染の一つ一つの作業で一体お幾らお支払いになられているのかということまですべからく把握しているということではないですけれども、巷間聞かれるところによれば、条件のよいものもあるというふうに聞いている、そういう意味でございます。

○塩川委員 除染の作業の方が条件がよいところもあると聞いているという話です。
 そこで、廣瀬社長、では、汚染水処理などに携わる下請の作業員の方が一般的に日当で幾らぐらい受け取っているのか、日当の相場がどのぐらいかということについては御存じでしょうか。

○廣瀬参考人 金額までは、私は正確には承知しておりません。

○塩川委員 除染の作業の方が条件がいいというところもあると聞いているということでいえば、相場感が頭におありなんだろうなと思ったんです。除染の方について言えば、直接担当していないからという言い方ですけれども、少なくとも、発注している業務において、廃炉作業、汚染水処理などについての下請の作業員の方が日当で幾らぐらい受け取っているのか、その相場感といいますか、教えていただけますか。

○廣瀬参考人 私どもは発注者でございますので、私どもからそれぞれのお仕事に対しての元請企業さんへのお支払いの内容というのは当然つかんでおります。したがいまして、それは、先ほどの繰り返しになりますけれども、いろいろなケースがございますので、本当にたくさんの種類の賃金がございます。

○塩川委員 いろいろなと言いながら、具体的にお話をされなかった。本当に現場の状況を御存じなのかなということを疑問に思わざるを得ません。
 こういった日当について、どのぐらい支払われているか、この日当の額がわかるような調査というのはしておられるんですか。

○廣瀬参考人 これは先ほど三谷先生の御質問にもお答えいたしましたけれども、アンケートというのをやらせていただいております。
 ただ、それは、直接、あなたは幾らもらっていますかということでなくて、それぞれの方に、御自分の賃金体系がどうなっているかわかっていらっしゃるのか、そうした説明を受けていらっしゃるか、そのとおりもらっているか、そういうアンケートをしております。
 また、ちょっと先ほどの質問に戻りますけれども、私どものお支払いしているものは、重機を動かす人とか、本当にいろいろな、技量によっても違いますし、働く場所によっても違いますので、本当にたくさんございますので、ちょっとなかなか私も全部、一つ一つの数字を申し上げられません。

○塩川委員 人のとり合いになるということですから、ほぼ同職種の話として、実際に除染の方が条件がいいという場合があるということを趣旨としておっしゃっておられたわけです。
 アンケートのお話をされましたが、私もあのアンケートをいただきました。
 去年の作業員アンケートでは、賃金についての問いは、最賃額を下回るかどうかという問いなんですよ。沖縄の最賃の六百四十五円、福島の最賃の六百五十八円、東京の最賃の八百三十七円という数字を並べて、その上か下かという問いなんです。最賃を下回るような事例というのも、少ないけれども出ている。そもそも、最賃レベルの低賃金かどうかを調査していること自体、賃金水準が低いということを追認していると言わざるを得ません。
 しかも、ことしの作業員のアンケートでは、現場作業員の賃金額について聞く問い自体がなくなっています。これで実態がつかめると言えるのか。
 私がお話を伺った中では、汚染水処理などに携わる下請の作業員の一般的な日当相場は一万円前後。現場監督の場合は一万数千円という例もありますが、二次、三次またはそれ以下の作業員となると一万円前後ということで、ある二次下請の五十歳代の作業員の方は、日当七千円ということだったそうであります。一方、福島第一の作業をやめて除染作業に従事した人では、除染作業で日当一万五千円から一万六千円を受け取っているという話であります。明らかに除染の方が高いという状況です。
 そこで、廣瀬社長にお尋ねします。
 私がお聞きしているのはこういう実態ですけれども、除染より極めて放射線量が高い汚染水処理などに携わる一Fの作業員の方の対価が余りにも低い実態にあるんじゃないのか、この認識はお持ちですか。

○廣瀬参考人 まさにそうしたことの実態をしっかりと把握しておく必要があろうということで、アンケートをさせていただいています。
 ただ、一つ一つが、幾らが正しいのかというのを私どもが決めるあれはないので、それぞれの労働条件をちゃんと一人一人の働いていらっしゃる方が認識して、また、実際に支払われるものも契約条件にたがわないしっかりとしたものが出ているのか、そういったものについては、しっかり我々としてもウオッチをしていかなければいけないというふうに思っています。

○塩川委員 労働契約の書面がどうなっているとか、そういう話というのは手続の話として聞いているということで、実際に賃金額が幾らかという調査をしていないんですよ。今とり合いになっているという話をしているわけですから、労働条件を改善するのであれば、まずは賃金水準を上げるということが一番の作業員の確保の根本であるわけで、その実態すらつかんでいないということで、まともな対応がとれるのかと言わざるを得ません。
 この点では、昨年のアンケートを見ると、いわゆる危険手当、特別手当についての問いがあります。あなたの賃金には特別手当、線量の高さや特別な装備等に対する手当等が加算されていますかという問いがありますけれども、このいわゆる危険手当が賃金に加算されているという回答が、どのぐらいパーセントがあったかは御存じでしょうか。

○廣瀬参考人 今、ホームページに載せてあります結果を持っておりますので、加算されているとお答えになった方が千六百三十人で五一・二%、加算されていないとお答えになった方々が千二十三人で三二・一%、加算されているかどうかわからないとおっしゃった方が四百七十四名で一四・九%、無回答が一・九%でございます。

○塩川委員 加算されているという回答だけで見れば、半数でしかありません。
 廣瀬社長自身が除染作業と人のとり合いになっていると認めているように、労働条件や待遇の改善がなければ、福島第一の必要な要員の確保もできません。労働条件の抜本的な改善が必要で、その点では、労賃を上げる、そういう点と同時に、少なくとも、直ちにできることは、この危険手当をきちんと支給するということを求めていくことであります。
 そこで、環境省にお尋ねをいたします。
 除染特別地域における除染作業員に対する特殊勤務手当、いわゆる危険手当について、その支給の理由及び支給対象と支給額、その支給額の根拠について説明をいただきたい。

○小林政府参考人 お尋ねの除染特別地域の特殊勤務手当でございますが、環境省が直轄事業として除染を実施している地域、これは避難指示が出ている地域でございます、ここの作業員にとっては精神的にも身体的にも負担が大きい地域であるということから、除染作業員に対して特殊勤務手当の支給をすることとしております。
 その金額は、除染作業に従事する作業員は一日当たり一万円、それから、その他の調査業務など、これはモニタリングなどでございます、これについては、地域に応じまして、例えば帰還困難区域ですと六千六百円云々というようなランクをつけて支給しているものでございます。
 この支給につきましては、除染も新しい仕事でございますが、開始した当時の賃金の実勢、また人事院規則などを総合的に勘案して設定したものでございます。

○塩川委員 精神的、身体的負担が大きいということで、除染作業に従事する人には一万円の特殊勤務手当を支給する、その支給基準額については、実勢と同時に、人事院規則を念頭にということでのお話がありました。
 そこで、除染作業においては、環境省が特殊勤務手当を作業員に支給するように元請事業者と契約しております。その手当額が、人事院規則、つまり国家公務員の手当額を参考にしているということで、ただ、除染作業は福島第一の敷地内ではありませんから、では、福島第一の敷地内でどんな手当が国家公務員に支給されているのか、この点について人事院にお尋ねをいたします。
 人事院規則九―一二九第二条、災害応急作業等手当の特例を設けた理由、及び、原子炉建屋内等、福島第一原発の敷地内の作業に対する手当額は幾らかを教えてください。

○古屋政府参考人 お答えいたします。
 福島第一原発に関連しまして、現在、御指摘の手当を支給しておるところでございますが、これに関しましては、給与法に基づきまして、その勤務の特殊性、今御指摘もございましたが、被曝の危険性でありますとか、高い放射線量下での作業を行うということの困難性、不健康性、さらにはこれに伴う精神的労苦を含む従来にはない著しい特殊性が認められるということで、手当を措置したところでございます。
 敷地内の関係でございますが、建屋内における作業につきましては、一日について四万円、それから、建屋及び免震重要棟以外の敷地内において、漏えいした汚染水等による放射線の被曝の危険性が生じている現場で初動的に行う作業という限定はついていますが、これにつきましては二万円、それ以外の敷地内において行うその他の作業につきましては、一日について一万三千三百円となっているところでございます。

○塩川委員 環境省が除染の作業者に対して一万円というのは、今はない区域である警戒区域においての作業を想定して一万円、これが人事院の規則にもあったわけでありますが、今お話しいただきましたように、敷地内においては一万三千三百円、原子炉建屋内は四万円というのが人事院規則で定めた特殊勤務手当、いわゆる危険手当の額であります。
 そこで、廣瀬社長にお尋ねします。
 除染作業でも一万円を支給している、敷地内においては、国家公務員の手当の基準でいえば一万三千三百円、建屋内は四万円、それはやはり精神的、身体的、さまざまな負担が生じることによる手当の額ですから。私は、まさに福一で作業する作業員の方々に四万円とか一万三千三百円とか、しっかりと支給することこそ必要だと思うんですが、そういうことをきちんと行うという考えはありませんか。

○廣瀬参考人 今お話にありましたような、いわゆる加算手当といいますか、特別手当といいますか、そうしたものの賃金体系における扱いというのは、会社によりまして、手当としてはっきり明示してお支払いをされている会社もございますし、基本賃金の中に、こういう仕事だからということで初めから割り増しをされている会社もあるというふうにお聞きしておりますし、基本賃金そのものが福島第一で作業に従事するということを前提に設定されていらっしゃる会社もあるというふうにお聞きしております。これは各社各様でございます。
 したがって、私ども発注者としましては、それぞれ御事情はあると思いますし、それぞれ各社各様の契約の仕方があるというのは尊重しつつ、そうした御自分の契約内容を、御自分の雇われていらっしゃる、契約を結ばれていらっしゃる会社からしっかり説明を受けて、お一人お一人が納得をした上でその作業に従事していただくこと、それが適切な労働環境の確保に一番重要だと思っております。
 作業内容や賃金の書面での明示、それぞれの作業者に、あなたはこういうことで、こういう格好で、こういう項目で払われているんですよというようなことの書面による明示、雇用主からの説明の徹底、作業員の御理解と納得、それから、合意したとおりに、書面どおりに実際に支払われているかどうかといったようなことについて、元請各社にしっかりとやってくださいということをお願いするとともに、私どもも私どもなりに、そうしたことの聞き取りといったようなことを元請会社にしているということで取り組んでいるということでございます。
 また、当然、そうはいいましても、なかなかそのとおりいかないケースもあろうと思いますので、弁護士さんに、相談所というようなものをもちろん無料で開設して、そこにいろいろなことで相談に行っていただくというような形をさせていただいているところでございます。

○塩川委員 最後に大臣に伺います。
 東電廣瀬社長はそういうふうにおっしゃいますけれども、いろいろな各種各様の支払いの仕方と言うんですが、環境省がやっているのは外出しで手当という額で明示して、それを元請との契約の中に織り込んでいるわけですよ。それが下請でもきちんと作業員に渡るような仕組みとなっているんです。
 ですから、発注者の東電がやろうと思えばできることじゃないですか。現に、東電が発注する場合に、地元雇用を尊重してくださいとか、いろいろな物品についても地元調達を求めますとか、そういうことを契約の中でも要求しているわけですから、こういうことをまさに危険手当についてもきちんと外出しで明示して、一万三千三百円とか四万円とか、少なくともそういう額をきちんと支払わせる、こういうことこそ東電の責任じゃないでしょうか。
 ぜひ、茂木大臣、国が前面に出るというのであれば、まさに東電の福一の作業員を確保するためにも、除染を上回るような手当、賃金がしっかりと現場の作業員に支払われる、そういった危険手当などを外出しできちんと支給する、こういうことを東電に求めて、作業員の確保をしっかりと図る、これこそ経産省、国のやるべきことじゃないでしょうか。いかがですか。

○茂木国務大臣 経済産業省としては、個別具体的な労働条件というよりも、作業員の方々がしっかりと賃金、そして仕事の内容、さらに作業環境などについて説明を受けて、納得した上でしっかりと仕事をしてもらう、こういったことが重要だと思っておりまして、その点、常に改善というのは必要だと考えております。

○塩川委員 手当の面で除染を下回るような現状では、まともな作業員を確保できなくなる、これがひいては廃炉そのものをおくらせることになる、このことを強く指摘して、抜本的な改善を求めることを要求し、質問を終わります。