国会質問

<第185臨時国会 2013年11月01日 経済産業委員会 2号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 電力システム改革は、東日本大震災と福島原発事故を契機としたものであり、その教訓を踏まえたものでなければなりません。今、何よりも最優先すべきは、原発事故の収束であり、汚染水対策であります。
 十月二十八日、田中原子力規制委員長は、福島第一の廃止措置の現状は、安全を確保する観点から極めて憂慮すべき事態、早急にこの状況の解決策を講じる必要があると述べ、広瀬東電社長は、福島第一に必要な要員がしっかり確保できるように、柏崎刈羽や他の火力、水力からも含めて、東電全体として人員を回転させていくと述べたとされております。
 広瀬社長は御都合でお越しいただけないということで、山口副社長においでいただきました。
 お尋ねいたします。
 柏崎刈羽の東電社員の在籍者数についてお尋ねしたいんですが、事故が起こる前の二〇一一年三月時点と、ことし十月時点の数をそれぞれ教えてください。

○山口参考人 この場をおかりしまして、福島の原子力事故から二年半がたつ今なお、社会の皆様に多大な御迷惑をおかけしていることを改めておわび申し上げたいと思います。
 御質問にお答えしたいと思います。
 柏崎刈羽の要員でございますけれども、震災前は千百名でございます。現在は、数字でありますが、同じく千百名ということでございます。

○塩川委員 柏崎刈羽の在籍者数は千百人のまま、全く変わりがないわけであります。一方、福島の第二においては七百人が五百人になっている。
 そこで、重ねてお尋ねしますが、福島第二は減っているのに柏崎刈羽が変わらないというのはなぜなのか。

○山口参考人 お答えいたします。
 柏崎刈羽は、定期点検中ではありますけれども、燃料が装荷されている発電所でございまして、発電所の維持管理業務に要員が必要でございます。
 これに加えまして、ことしの七月には新たな規制基準が策定されまして、これに適合した形で安全対策を着実に進めるための要員も確保しなければならないということで、人数は変わっていないということでございます。

○塩川委員 福島第二であれ、七百人が五百人に減っているわけであります。それでも回している。一方で、柏崎刈羽は人数が変わらない。その理由としては、もちろん維持管理も当然あるでしょうけれども、新しい規制基準に対応するためのさまざまな諸準備があると。つまり、再稼働に向けた準備があるために人手がかかっているからだという話になるわけであります。
 私は、これが、福島第一の事故収束対策、汚染水対策に全力を挙げる、力を集中する、このことの妨げとなっていると。柏崎刈羽の再稼働準備の作業というのが福島第一の事故収束の妨げとなっているんじゃないのか。再稼働の準備をやめれば、福島第一の要員をふやすことができるんじゃありませんか。お答えください。

○山口参考人 お答えいたします。
 まず、柏崎でございますが、ことしの九月に新規制基準への適合申請を行っておりますけれども、これまで当社が自主的に取り組んでまいりました安全対策が新しい規制基準に適合しているかどうか、規制委員会に審査いただくことで柏崎の安全性向上に資する、そのために鋭意取り組んでいるということでございます。
 福島の第一につきましては、社長の広瀬が申し上げましたとおり、必要な人員はタイムリーに投入するとともに、全社的に、水力、火力からも人を回して、適切に精力的に対応していきたいというふうに思ってございます。

○塩川委員 現にやろうとしている話としても、二十人を移すという程度の話なんですよ。それで本気で解決するという立場なのか。
 大臣にお尋ねします。
 田中原子力規制委員長も、委員会の議論の中で、柏崎刈羽の職員を福島第一の対応に充てるべきではないかというのはもっともな指摘だ、このように述べておられます。大臣も、その点についてどのようにお考えなのか。
 柏崎刈羽の再稼働の準備をストップし、福島第一の事故収束、汚染水対策に柏崎刈羽の人員を投入するように東電に指導を行う、このことこそ大臣に求められているのではありませんか。

○茂木国務大臣 東京電力におきましては、現下の最優先課題は、御指摘のように、福島第一原発の廃炉・汚染水対策を確実に速やかに実行すると同時に、三・一一以降のエネルギー制約のもとで電力需給の安定に万全を期すことであります。
 九月の二十七日に広瀬社長が、柏崎刈羽の六号機、七号機の新規制基準への適合申請を行った旨、私のところに報告に来たときも、福島第一の廃炉・汚染水対策がゆめゆめおろそかになることのないように、それに最優先で取り組むように、こういう指示を行っております。
 東京電力全体として、関係企業も含めて、また電力業界も含めて、どういう人の回し方をするかというのは、現場のいろいろなやりくりもあると思っておりますが、いずれにしても最優先で、しっかりした体制で臨むこと、これは既に要請しておりますし、今、山口副社長もこちらにいらっしゃいますから、改めてこの場でも要請したいと思っております。

○塩川委員 最優先というのであれば、事故収束、汚染水対策に全ての人員を投入するような構えでこそ行うべきことであって、東電が今行うべきことは、再稼働の準備ではなくて、事故収束、汚染水対策だ、そのためにこそ全力を注ぐべきだということを強く求めておくものであります。
 今回の電力システム改革においては、送配電部門の中立性確保を法的分離によって実施することを前提として進めるとしております。法的分離の場合には送配電部門を別会社化する、その場合、持ち株会社形式をとり、子会社として発電、送配電、小売をつくることが想定されております。
 そこで、山口副社長にお尋ねします。
 東電においては、総合特別事業計画、総特におきまして、組織改革としてカンパニー制を導入することとし、ことし四月に移行しております。また、今後の電力システム改革の動向を踏まえつつ、グループ内分社化や持ち株会社制への移行等についても検討するとしております。現状において、発電、送配電、小売などに分けるとそれぞれどの程度の人員の規模になるのか、この点について教えていただけますか。

○山口参考人 お答えいたします。
 現時点では、電力システム改革の各事業のライセンスの詳細でございますとか、送配電部門に求められる行為規制の詳細といった、制度の詳細が固まっていない段階でございますので、ライセンスに合った形で要員を分けるというのは難しゅうございます。
 ことしの四月から導入いたしました社内のカンパニー制に基づいて要員を分けますと、まず火力の発電事業、これは社内的にはフュエル&パワー・カンパニーと申しておりますが、約二千八百人でございます。送配電事業、パワーグリッド・カンパニーと社内では呼んでいるものですが、約一万五千四百名でございます。小売事業、社内的にはカスタマーサービス・カンパニーと申しておりますが、約七千四百人になってございます。これに加えまして、原子力部門並びに原子力の損害賠償対応等を含めましたコーポレートの扱いになっている部門は一万七百人でございます。
 なお、今申し上げました数字は、ことしの九月三十日時点の在籍者ということでございます。

○塩川委員 燃料、火力部門が二千八百人、送配電部門が一万五千四百人、小売部門が七千四百人。それから、経営陣の補佐ですとか、あるいは総務、労務、経理など社内共通サービス、さらには原子力部門、また賠償関連の福島復興本社などがコーポレートということで一万七百人程度というお話でありました。
 法案に即して、分離した発電会社、送配電会社、小売会社を持ち株会社のもとにぶら下げる、そういう形の想定というのが総特でも見てとれるわけですが、これは法案もそうだからでありますけれども、資本分離ではなく、グループ一体経営となることへの懸念があります。
 大手電力の独占的なガリバー支配を考えると、発電と送配電網を完全に分離することなしには、再生可能エネルギーの発電事業者への系統接続など、確実に確保される保証がないのではないのか。
 大臣にお尋ねします。
 発送電分離に当たっては、法的分離ではなく、所有権分離、資本分離まで踏み込んで行うべきだ、このように思いますが、大臣のお答えをいただきます。

○茂木国務大臣 電気事業の分離の仕方は、一般的には機能分離、法的分離、所有権分離という三つのタイプがあると言われておりますけれども、機能分離、これは一つの形態でありますが、法的分離と所有権分離は、概念としては私は比較的近いものだと思っております。
 そこの中で、オプションのとり方でありますけれども、所有権分離を行った場合に、現実的に、それぞれの会社の資金調達等々がうまくいくのかどうか。場合によってはさまざまな経過措置といったものも講じていかなければならないということでありまして、一般担保つき社債の発行であったりとか連帯債務等の取り扱いに、グループ一体としての資金調達をこれまでと同様に一定期間行えるような経過措置を講じることが所有権分離の場合は難しい、こういう側面がございます。
 また、現在の一般電気事業者の株主が保有します株式価値の毀損などを懸念して、一般電気事業者やその株主が所有権分離に反対したにもかかわらず、実際に当該株式の毀損などが発生した場合、これが憲法二十九条で保障されております財産権の侵害に当たる可能性も否定できない、このように考えているところであります。
 ただ、逆に申し上げると、法的分離は持ち株会社また親会社のもとに送配電部門を子会社化することを求めることでありますが、各会社及び株主の自主的な判断によって、資本関係を解消する所有権分離を選択することをこの法的分離が妨げるものではありません。

○塩川委員 所有権分離を妨げるものではないという話と同時に、所有権分離についての幾つかの懸念のお話がございました。
 これは、制度設計の問題も当然ありましょう。ヨーロッパのEU電力指令などにおきまして所有権分離まで踏み込む、こういうことで、イギリスやイタリア、またドイツ、スペインでも所有権分離に踏み出すということでありますし、そういう中では民営会社においての所有権分離なども現に行われているわけですから、そういう点でいって、財産権の侵害に当たる云々ということが実際に問題となるのかということが当然ございます。
 また、さまざまな資金調達の問題をいいましても、それ自身も制度設計の問題だと思いますけれども、いや、グループ一体でないと確保できないということであれば、逆に言うと、グループ一体だからこそ資金調達ができるような親会社に対する配慮ということも含めて懸念をされるわけで、それこそグループ一体経営としての問題点にもなるということを言わざるを得ません。
 もともと、電力システムの改革におきましては、例えば二〇〇二年に、東京電力としても、発送電一貫体制の堅持の一方で、小売の全面自由化を要求するような提言なんかも出しているわけで、今回はそういう方向に行くのではないのかという懸念もあるわけであります。
 私は、こういった電力改革についてはさらに踏み込んだ対応を強く求めるということで、聞きませんでしたけれども、東電の広瀬社長が朝日のインタビューで、国に支援拡大を求める考えはないのかという問いに対して、「とても我々では負担できない。電力自由化を見据えると、巨額の負担を負って自由競争していくのは無理だ。これから見直す総合特別事業計画は、その点が焦点になる。」と述べております。
 電力自由化を口実として、自由競争のために負担を軽くしてほしいというのは、理屈としてそもそも成り立たない、国の支援を当たり前の前提とした自由競争などは、国民利用者の理解を得られないということを申し上げ、質問を終わります。