国会質問

<第185臨時国会 2013年11月06日 経済産業委員会 3号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、原発事故作業員の労働条件の改善、特に、危険手当の適正な支給を求めるということで、先週に引き続いてお尋ねをいたします。東電の廣瀬社長にもおいでいただきました。
 最初に、高い放射線量のもとで作業されておられる作業員の方々が健康への不安を大変感じておられる、このことについて私は直接間接にお話をお聞きしました。そのことを少し御紹介して、大臣と廣瀬社長からお気持ちも聞かせていただきたいと思っております。
 お二方はどちらも三十前後の方ですけれども、お一人の方は、事故前から原発で作業をしておられた。あの事故で、サイトにかかわってきたという責任感から、事故直後から現場で作業をしておられた。被曝線量が高くなれば使い捨てられることになるのではないのか、こういう不安もあって、みずから線量計を隠したりした。
 そういう中で、四十ミリシーベルトという被曝をして、実際には作業現場にいられなくなった。使い捨てられたと本人はおっしゃっておられました。一日に五ミリシーベルト被曝をしたこともあるそうであります。事故後に結婚もされたそうですが、健康のことは考えると怖くなるので考えないようにしている、このようにおっしゃっておられる。一方で、子供への影響についても心配しておられました。
 もうお一方は、やはり十年前から原発で働いて、自分にも事故の責任があるとみずから志願して、直後の作業に当たったという方であります。
 事故前からの累積被曝線量が八十ミリシーベルトを超えている、そういう高い線量を浴びているということについて、不安だからこそ口にしないんだ、医者に話せば、がんになると言われるんじゃないのか、それはもう死刑を宣告されているような思いだ、子供に障害が出るかもしれない、そういうことを考えると、自分のような者と結婚してくれる女性はいないだろう、こういうことを話しておられました。
 廣瀬社長にお尋ねしますが、こういう高い放射線量のもとで働いておられる作業員の方の健康への不安な気持ちをどのように受けとめておられますか。

○廣瀬参考人 特に、事故直後に、まだまだ線量が高い時期に、私どもの社員も含めて多くの人にレベルの高い被曝が起こったということは、本当に申しわけなく思うとともに、大変残念なことだったというふうに思っております。
 現在は線量は大分下がっておりますけれども、ただ、もちろん作業環境を今後とも絶え間なくずっと改善し続けていくということは本当に大事なことだと思っておりますし、また、今先生御指摘の、不安だというお気持ちの面については、相談所を設ける、健康管理についてのそうした窓口を設ける、あるいは、これは当たり前のことかもしれませんけれども、法令についての説明をさせていただいて、しっかり被曝の管理についても御協力いただくというようなことで対処してまいりたいというふうに思っています。
 引き続き、まだまだやらないといけないことがあると思っておりますので、これについては改善をしていきたいというふうに思っております。

○塩川委員 健康管理のお話がありましたし、そもそも、レベルの高い被曝について申しわけなく思うとおっしゃっておられて、作業環境を絶え間なく改善し続けていくことが必要だというお話もありました。
 大臣にも同じ質問ですけれども、こういう高い放射線量の中で作業してこられた作業員の方々の健康への不安な思いというのをおわかりいただけるかどうか、この点についてお聞かせください。

○茂木国務大臣 福島第一原発の作業現場、本当に過酷な現場だ、そういう実感を私も持っております。そういった中で必死の作業に当たっていらっしゃる作業員の方々がモチベーションを維持して、安全、そして御本人にとっても安心な環境のもとで作業に当たれる、こういった環境をつくることが極めて重要だ、そのように認識をいたしております。

○塩川委員 モチベーションの維持、安全、安心な環境という点での配慮のことのお話がございました。
 心身ともに大変負担のかかる作業環境でもありますから、こういった劣悪な作業環境に対する労働条件の改善、待遇の改善が必要であります。その点で、私は日当のことについても取り上げてきたわけです。
 ここで、環境省にお尋ねをいたします。
 環境省の除染作業では、危険手当、特殊勤務手当として、除染作業に従事する作業員の方に一万円が支給されております。除染特別地域における除染作業員に特殊勤務手当、いわゆる危険手当を支給する仕組みについて、簡単に御説明いただけますか。

○小林政府参考人 環境省が実施しております除染事業、このうち、直轄地域ということで、避難を余儀なくされている地域について除染を担当していただいている場合に、作業員に対して、特に除染作業を行ってもらう方については一万円、ほかの作業でありますと多少値段が違ってまいりますが、特殊勤務手当を支給するということで、元請のジョイントベンチャーと契約した上でこれを出してもらう、こういうことにしているものでございます。

○塩川委員 除染作業員の賃金については、労賃部分と特殊勤務手当部分、諸手当などがあるわけです。このうち、労賃や諸手当は雇用主と作業員の方の契約の話ですけれども、一方、特殊勤務手当については、環境省の契約に基づき一万円支給される、こういうことで対応しておられるということでよろしいですか。

○小林政府参考人 御指摘のとおりでございまして、除染作業員には、賃金としてはいわゆる月給とか日給とかいうような意味の労賃、それから特殊勤務手当、それから普通は諸手当、残業手当でありますとか通勤手当でありますが、そういうものが支払われるというように承知をしております。
 このうち、労賃とか諸手当は雇用主と作業員の間で契約が結ばれて決定されていく、こういうことでございます。特殊勤務手当につきましては、環境省が、今も申し上げましたが、元請事業者との契約に基づいて支給していただくということで、一定額について払っていただく、こういう仕組みでやっているものでございます。

○塩川委員 特殊勤務手当については、元請事業者との契約に基づいて作業員の方に支給してもらうということです。
 そこで、環境省が除染作業を請け負う元請事業者との契約の際に適用する除染等工事共通仕様書においては、この特殊勤務手当支給についてどのように定めているか、この点について簡単に御説明ください。

○小林政府参考人 除染等の工事共通仕様書におきましては、支給の対象、どういう方に対して幾ら払うかという金額、それから、作業員との間で交わされる労働条件通知書に特殊勤務手当が記載されるようにということで、元請事業者が周知など必要な措置を講じなければならない、そういうようなことを記載しております。
 また、これを確認するために、特殊勤務手当が適正に支給されたことを証するため、工事完了後速やかに元請事業者は賃金台帳などの書類を提示しなければならないことというようなことを仕様書として決めているものでございます。

○塩川委員 重ねてお尋ねします。
 環境省は除染作業員に特殊勤務手当が支給されるように受注者、元請に義務づける、こういう仕組みになっているわけですけれども、つまり、元請の雇用者に対して支払われるのはもちろんのこと、下請の事業者の作業員についてもきちんと一万円の特殊勤務手当を支給することを求める、そういう契約の内容になっているということでよろしいですか。

○小林政府参考人 そのとおりでございまして、労働条件通知書にも記載いたしますし、その実態については賃金台帳として出していただいて確認できるようにする、そういうふうにしているということでございます。

○塩川委員 環境省の除染の作業におきましては、元請との契約において、下請事業者の作業員にまできちんと一万円の特殊勤務手当が支給される、こういうことを義務づける中身になっているということです。
 この前も御紹介しましたが、除染作業員の日当が一万五千円ぐらいという話がありました。
 何でこんなことになるかというと、福島県の最低賃金、これが今、時給六百七十五円なんです。これを八時間して一万円を足すと、一万五千四百円なんですね。ですから、いわば一万円の特殊勤務手当を払うとした場合に、最賃を上乗せすれば最低でも一万五千円にならざるを得ない。でも、実際に現場では、いわば特殊勤務手当が出てはいるけれども、賃金部分について言えば最賃という状況ということでは、私は、除染という劣悪な環境下を考えたら、余りにも低い現状だということを言わざるを得ません。これは設計労務単価上は一万円以上ということで見ているわけですから、本来はもっと高くていいと思っているわけです。
 そこで、重ねて環境省にお尋ねします。
 この間、環境省は、特殊勤務手当が支払われていないような状況にあれば、そういう訴えがあれば是正を求める指導を事業者に行っているというふうに承知しておりますけれども、今御紹介したように、最賃プラス特殊勤務手当一万円を下回るような日当の場合は、当然、是正指導の対象ということになると思うんですが、いかがですか。

○小林政府参考人 今し方も申しましたように、工事完了後速やかに賃金台帳などの書類を提示してもらうということで、適正な賃金、それから契約に基づいております特殊勤務手当が支給されるということを確認するようにしております。
 その際に、御指摘のように、問題であるというようなケースがありました場合には、必要に応じて、厚生労働省とも連携しながら、元請の事業者を指導していくという方針で臨んでいるところでございます。

○塩川委員 もう一回確認です。
 環境省の取り組みとして、作業員から個別に通報があった場合は事業者に対して事実関係の確認、及び、不払いがあった場合には是正指導を行うということですから、最賃部分プラス一万円が払われていないような賃金だということが作業員の方から訴えがあれば、それは当然、是正指導の対象ということでよろしいですね。

○小林政府参考人 契約に基づいた適正な賃金の支払いまたは特殊勤務手当の支払いというのは、常々、元請事業者に指導しております。また、これも含めていろいろな作業員の方の苦情がございますので、そういう受け入れ窓口も設けまして、そういうものがあれば受けとめて、事業者を指導していくということでやっております。
 御指摘の点なども、事実を確認した上で、必要に応じてしっかり事業者を指導していく、こういうことになると考えております。

○塩川委員 最賃以下ということは違反ですから、加えて、特殊勤務手当もきちっと一万円出しなさいということでいえば、八時間勤務している方であれば、一万五千四百円を下回るようなことであれば、当然、一万円が払われていないということになるわけですから、そういう点での是正指導の対象ということであります。
 その上で、除染作業より高い放射線量下で働く事故収束、汚染水対策の作業員に対して、こういう除染の作業員を下回るような賃金、日当があってはならない。
 先週紹介しましたように、国家公務員の特殊勤務手当におきましては、建屋内で作業すれば四万円、福一の敷地内であれば一万三千三百円が支給されていますから、本来、これを下回らないような手当額が作業員に支給されて当然だと私は考えます。
 そこで、廣瀬社長にお尋ねします。
 どのような支給方法であっても、私は、最賃プラス、除染を上回るという点でいえば、環境省が実施している除染の特殊勤務手当の一万円を下回るようなことがあってはならない、八時間働いているのであれば、福島だったら一万五千四百円を下回るようなことがあってはならない、サイトの構内の作業員の方の賃金、日当が、こう思うんですが、いかがですか。

○廣瀬参考人 発電所の中での作業というのは、除染作業と違いまして、いろいろな種類の作業がございます。また、技量もいろいろございます。また、作業場所によって線量もいろいろ違います。したがいまして、非常に多種にわたる賃金の構成になっているというふうに思っております。
 もちろん、しっかりとした適切な対価がそれぞれの作業員の方々にお支払いされているということは非常に大事なことだというふうに思っています。

○塩川委員 多種多様であるのはよく承知しているわけですけれども、その場合でも、いわゆる技量、技能、技術が伴わないような作業というのも、当然、中ではあるわけであります、瓦れきの撤去を含めて。
 ただ、それが高放射線量下で、それこそ防護服やマスクや、非常に困難な環境下で働く、そういう点では当然のことながらそれに見合った賃金が支払われなければならないということでありまして、それを考えるとした場合に、除染作業との対比でも、少なくとも、いわば単純な作業という言い方をすれば、賃金としては一番低い場合であっても、私は、最賃プラス除染作業の一万円を超えるような賃金が構内の作業に払われるべきだ、一万五千円を下回るようなことはあってはならないと思うんですが、改めてお尋ねします。

○廣瀬参考人 それぞれの作業員の方々が、しっかりとした契約に基づいて、しっかりと事前に説明を受けて、そのもとで合意された賃金がしっかりお支払いされて、そうしたことは極めて大事な点だというふうに我々発注者側として思っておりますので、それについてのフォローをしっかりし、そうした事例のないように、また、あった場合には元請さんにしっかりお願いして、そうしたことのないようにということについてのお願いは引き続きこれからもやってまいりたいというふうに思っているところです。

○塩川委員 お答えいただけていないんですが、要するに、雇用主と雇用者との間で契約があって、合意がされていますということであれば、要するに、一万円でもそれは容認するというお立場ということですか。

○廣瀬参考人 私どもの元請企業さんに対しての契約というのは作業ごとの一つ一つの単位でされておりますので、私どもの方でもちろんその契約額が適切かどうかということでのチェックをする必要はありますので、我々としてもしっかりとした積み上げでのチェックはいたしますけれども、その後、元請企業さんからそれぞれ個々の下請の方々との契約ということに関しては、それぞれの賃金がどうなっているかということは把握し得ておりませんし、また、ここは民民の契約ということになりますので、おのずと限界があるというふうに思っております。

○塩川委員 これは、廣瀬社長自身が今後のということを前提でおっしゃっておりますけれども、作業員の確保について今後困難になるということは、地元協力企業について言えば、除染作業がふえてくる、あるいは住宅建設が進む、そういうことになれば人繰りが難しくなる。全国のレベルでいえば、ゼネコンさんが人の確保ということを考えても、アベノミクスとか東京オリンピックを考えたら困難になるという点でも、私は除染との対比で言っておりますけれども、除染を下回るような賃金水準であれば、人の確保そのものが困難になるんじゃないのかということも指摘をしたわけであります。
 今、環境省との間で確認しましたように、最賃プラス一万円という点でいえば一万五千四百円というのが日当相当で、これ自身が不十分なものだと思いますけれども、この額を下回るような、例えば一万円、こういった支払い額というのが現に構内の作業員の中にあるわけで、そういった実態を放置したままでは人の確保が困難になってくるんじゃないのか。一万円のような、除染作業を下回るような賃金、日当を容認することでは人の確保が困難になるんじゃないのかと考えますが、いかがですか。

○廣瀬参考人 先生まさに御指摘のとおり、ポイントは、これから長きにわたって廃炉、廃止措置作業が続いていく中でどうやって人を確保していくかということだと思っております。作業員の方々が引き続き福島第一の構内でいろいろな作業に携わっていただけるような方向で、もちろん賃金もそうかもしれませんが、先ほど来出ておりますように、労働条件それから環境の整備もあわせて当然必要だというふうに考えておりますので、総合的にそうしたことを改善して、引き続き作業員の方々の確保に万全を尽くしていきたいと思っています。

○塩川委員 環境省が行っているように、末端の下請の事業者の作業員の方にもきちんと特殊勤務手当が一万円支払われるとなれば、少なくともそれに最賃分が上乗せされた一万五千四百円というのはいわば下限で、もっと高くするというのが本来の筋だと思いますけれども、その下限を下回るような構内の作業の日当、賃金であっていいはずがない。ですから、一万円ということを現に現場の作業員の方からお聞きしているわけですけれども、そういう日当というのは本来あってはならないんじゃないのか。その点についてもう一回お聞きします。

○廣瀬参考人 元請さんから下の二次請、三次請の方々に対しての契約は、それぞれ個々の契約があると思いますので、私どもがどこまで民民の契約の中でそうしたことに踏み込めるのかということについては、ちょっと考えなければいけない点があろうというふうには思っております。
 ただ、引き続き、そうした実態についてもこれからもアンケート等でしっかり把握して、我々としては、元請の方々に改善すべき事項があった場合にはそうした措置をとって、できる限り職場の全体としての環境改善に努めてまいりたいというふうに思っております。

○塩川委員 実態把握のアンケートとおっしゃいますけれども、今実施しているアンケートの中には、賃金の実額について聞くという項目はないわけですよね。ですから、今実際に日当で幾らもらっていますかという問いを作業員の方に投げる、日当、賃金の実額を聞く、そういうアンケートの項目を設ける考えはありませんか。

○廣瀬参考人 この点につきましても、まだまだちょっと工夫の余地があるなというふうに実は考えております。今、二回目のアンケートをさせていただいておりますけれども、質問の仕方によって、なかなかそのとおりにお答えいただけないケースもあろうかと思っておりますし、また、これは元請さん以下の協力も間違いなく必要なところでございますので、そうしたことをあわせて、質問の仕方等々についてはなお工夫を加えていきたいというふうに思っております。

○塩川委員 実際の実態もつかまずにそういった低い賃金を放置するということでは、そのこと自身が、高い線量下で働く作業員の方々に報いるものに逆行することでもありますし、さらには、事故収束、汚染水対策の措置にも大きな障害にならざるを得ないということを改めて申し上げておきます。
 最後に大臣にお尋ねします。
 私はやはり、一万円とかいう日当では心身ともに負担を感じておられる作業員の方には低過ぎるし、さらには、事故収束、汚染水対策をするにも人手の確保が困難になるという点でも抜本的な改善ということこそ必要だ、そういう点でも引き上げの方向で東電に働きかけるべきだし、また、東電がああいう形で実態調査もしないのであれば、国としてしっかり実態調査をするということも含めて行うべきだと。その二点についてお尋ねします。

○茂木国務大臣 福島第一の作業現場、場所によりまして放射線のレベルが異なっております。また、作業内容、そしてそれを遂行するのに必要となる技能、こういうものも異なっておりますから、作業員の賃金体系は一律にはならないんだと思っております。
 また、作業のくくりに対する支払いである、こういうことであっても、特殊勤務手当が作業内容に応じて適切に、また作業員に納得がいく形で行き渡ることは望ましいことである、このように思っております。
 そして、アンケートの関係でありますけれども、こういった過酷な作業現場において、冒頭申し上げたように、作業員の方々のモチベーションを維持していく、そしてまた作業の安全管理、放射線管理、健康管理が適切に行われているか、こういった実態をつかむために行うものであると私は考えております。単に賃金の多寡ということよりも、そういう全体像の中でどういう質問項目がふさわしいのか、東電にも工夫をしてほしいと思っております。

○塩川委員 重層下請構造のさまざまな問題がありながらも、できることはある。環境省が行っているような、手当を確保するやり方もあるわけですから、そういったことも含めて、労働条件の改善をしっかりと行っていくということを強く求めて、質問を終わります。