国会質問

<第185臨時国会 2013年11月07日 総務委員会 3号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 法案について質問いたします。
 国家公務員の一般職、地方公務員などに配偶者同行休業制度を創設する関連二法案については、私ども賛成であります。制度の趣旨を生かしてよりよいものにという立場から、何点か質問をいたします。
 この法案の目的として、「この法律は、配偶者同行休業の制度を設けることにより、有為な国家公務員の継続的な勤務を促進し、もって公務の円滑な運営に資することを目的とする。」とあります。
 国家公務員の同様の休業制度に育児休業制度や自己啓発休業制度がありますが、有為なという文言が法文上、目的規定に明記されているものは今回の法案だけと承知をしております。
 有為という言葉は、辞書で引けば、才能があり、役に立つという言葉になるわけですけれども、公務員の皆さんは誰もが才能があり、役に立つとは思いますが、この同行休業を申請する職員の対象が限定されるように受けとめられる、こういうことを思うわけです。
 そこで、大臣にお尋ねしますが、同行休業制度の利用希望者は、そもそも退職しないで勤務を継続したいがために申請をするわけで、利用を希望する職員が原則利用できるものにする、こういう趣旨のものであるべきだと思いますが、この点についてお尋ねをいたします。

○新藤国務大臣 今回創設いたします、配偶者同行休業制度を御提案いたしましたが、職員が休業から公務に復帰した後に、各分野において活躍をし、行政のパフォーマンス向上に貢献をしてもらいたい、こういう期待を持って、有為なという表現を用いているわけであります。この趣旨を踏まえた上で、これは任命権者が裁量において適切に承認をなされる必要があるということになります。
 そして、その制度の運用に当たっては、やはり何らかの基準が必要だということになります。今御指摘いただきましたような自己啓発等休業同様、こういったものも人事院から各府省に承認基準例を示していただいておりますけれども、そういった、職員にとっても透明性や納得性の高い運用が図られるように期待をしております。

○塩川委員 利用を希望する職員の方にとって透明性、納得性が高いものにということでの対応をお願いしたいと思います。
 あわせて、地方公務員法の改正ですけれども、条例で定めるところにより、職員の勤務成績その他の事情を考慮した上でとなっております。地方公務員法ですから、目的規定に有為なという文言はありませんけれども、自治体が、その実情に基づいて、利用を希望する職員が原則利用できるようなものにする、そういう趣旨で立法されるということだと思っておりますが、その点についても確認でお尋ねをします。

○新藤国務大臣 地方公務員に関しましても、職員の休業申請に関する承認、これは、今般の配偶者同行休業の制度の趣旨、それから国家公務員制度における取り扱いを踏まえて、地方公共団体において適切に判断をしていただくべきものと考えております。当然のことであります。
 それから、単に勤務成績で固定していいかというと、例えば、何らかの事情があって、ある期間に勤務の日数が少なくなっているとか、そういういろいろな事情があると思いますよね。ですから、基準は基準として、まずは勤務評定というものがございますけれども、それらも含めた諸事情を勘案した任命権者による適切な裁量がなされるということ、そしてそれは、地方公共団体においてそのような運用が図られていくように、国としても適切な助言、またいろいろな情報提供をしてまいりたい、このように考えます。

○塩川委員 地方公務員の同行休業制度については自治体が判断すべきもの、そういう点では、細かな点まで国が口を挟むようなものではないということを、ぜひとも趣旨として対応していただきたいということであります。
 そういう点では、国の技術的助言とかで今問題となっているのが、地方公務員にかかわっては、給与削減の問題であります。
 そこで、地方公務員給与削減に関係して、何点かお尋ねをいたします。
 今年度七・八%の賃下げに関して、地方六団体は、来年度の予算概算要求の文書において、以下のように述べています。「平成二十五年度の地方公務員給与削減要請は、臨時的・例外的な措置であり、地域経済再生に向けた取組みを国・地方一丸となって進める必要がある中で、地域の消費腰折れを回避しなければならないとの観点からも、平成二十六年度以降二度とあってはならないこと。」このように述べております。
 ここには、公務の賃下げがもたらす地域経済への否定的な影響への懸念と、地方自治を侵害するような地方公務員給与削減の要請そのものへの批判が込められているわけであります。
 まず、地域経済への影響についてお尋ねします。日銀にお尋ねをいたします。
 十月二十一日公表の地域経済報告、さくらレポートを見ますと、先行きの個人消費における地方公務員の給与減額の影響について記述をしております。
 地方公務員の給与減額の影響について調査した経緯及びその結果について御説明をいただけますか。

○前田参考人 お答え申し上げます。
 私ども日本銀行が四半期ごとに公表しております地域経済報告、通称さくらレポートでございますけれども、毎回、その時々のテーマを定めて、本支店において調査を行っております。
 今回、十月は個人消費をテーマとして取り上げましたが、委員御指摘の部分につきましては、企業の見方の一つとして、地域経済に影響の大きい公務員給与の減額による消費への影響が懸念されるとする声が複数の支店から寄せられましたので、それを掲載したものでございます。

○塩川委員 個人消費についての実態調査を行う、そういう中で、企業の見方の一つとして、「地域経済に影響の大きい公務員給与減額による消費への影響が先行き懸念される。」というのが複数の支店から声が上がったということであります。これは、先行きの懸念という書き方になっているのも、調査時点が七月、八月ということで、実際、七月から下げ始めていますから、影響が出ている段階ではまだないということもありますので、先行きの懸念という書き方をしているわけですが、そもそも、こういう調査項目に挙げられているように、やはり個人消費の落ち込みについての懸念というのは大変強いわけであります。
 そういう点では、自治体の側からもこういう影響についての試算なども行っている。例えば高知県は、県としてそういう試算を行いました。地方公務員の給与削減を前提にした地方交付税削減について、政府の要請どおり県と県内市町村が削減した場合に、本県経済へのマイナス波及効果は約五十六億円で、六百七十四人の雇用が失われる、こういった試算も出しているわけです。
 そういう点でも、地方公務員給与削減が地域経済、個人消費の落ち込みに影響を与える、このことを心配する声というのが多くあるということも、こういう事例にあらわれていると思います。
 大臣にお尋ねいたしますが、地方公務員給与削減が地方の個人消費の落ち込みに悪影響を与えるのではないのかと率直に思いますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

○新藤国務大臣 地方の公務員の給与の削減が個人の消費に影響がある、これは何らかの影響というのは必ずあるというふうに思います。よくも悪くもあると思います。ですから、そのような御懸念があるということもたくさんの方々から、地方団体の皆さんも含めて、私、頂戴しておりますから、そういう御懸念があることは承知をしております。
 しかし、一般論として、今委員も調査の時期について言及されました。それから、企業はそれぞれその企業の経営方針や経営状況によって環境が違ってまいります。したがって、その企業の業績。それから、その地域のいろいろな産業が、独特の産業があると思いますから、さまざまな動向によって条件が変動するわけでございます。
 したがって、私といたしましては、今回のことは非常に、我々とすれば、要請をするに当たっていろいろ考えました。そして、国家公務員が復興に対する貢献をしていこう、そしてそれは公務員がまず隗より始めよで示そう。それに合わせて、地方公務員におきましても、一年はおくれましたけれども、これはまず地域経済の再生のために公務員にも御協力いただこうということを閣議で決定いたしまして、そして地方にまずこのような趣旨をお願いし、要請をさせていただいたところであります。
 そして、給与の削減と同様に、地域経済に対する配慮、これにつきましては、この給与削減に見合う額です。同額ではございません。見合う額につきましては、防災・減災事業、そして地域の元気づくり事業というようなことで、地域経済への影響を最小限にする、こういうような形で工夫をさせていただきながら、配慮をさせていただいたわけでございまして、総合的な判断をさせていただいたわけでありますので、一面の原因にはとどまらない、このように思います。

○塩川委員 地方団体からの懸念の声も上がっているということで、それは実際にそういう影響が出るだろうということを多くの方が感じておられるあかしでもあります。
 第一生命経済研究所のマクロ経済分析のレポートなどでも、個人消費への影響は小さくない、個人消費へのマイナスのインパクトが及ぶことになる可能性は高い、このように言い、また、雇用者報酬総額に占める公務の割合が大きい地方経済への影響は相対的に大きくなるということで、内閣府の平成二十二年度県民経済計算を引用して、雇用者報酬に占める公務の割合は、関東や中部、近畿が八%前後に対して、北海道・東北とか中国、四国、九州は一〇%を超えますので、地方であるほどこの公務の給与削減というのが個人消費に影響も与える、これがひいては地域経済にも影響を与えるということを指摘しているわけであります。
 今、安倍総理は民間企業に対して賃上げを要請しております。経済界に要請という場を、例えば九月二十日の政労使協議の場におきましても、経済はデフレ脱却の方向に向かっている、この動きを企業収益、賃金、雇用の拡大を伴う好循環につなげられるかどうかが勝負どころだ、このように述べて、民間企業への賃上げを要請しております。
 私は、何よりも、デフレ脱却というのであれば、賃上げこそ必要だ、個人の所得が落ち込んでいることこそ問題だ、そういう点でも、賃上げそのものは大いにやるべしということを求めているわけですが、政府挙げて民間企業に賃上げを要請しているときに、公務、国公、地公の賃下げを要請するというのは、これは矛盾しているんじゃありませんか。

○新藤国務大臣 我々は、デフレの脱却、日本経済の再生、あわせて財政再建、これを同時になし遂げなければいけない、そういう困難な課題に直面しているわけであります。その中で、アベノミクスを打ち出しました。総理の御提案による異次元の金融政策、財政出動、そして成長戦略を打ち出していこう、こういうことで、今、マクロ経済の指標が上がっています。しかし、現状において、それぞれの地域における成長の実感がまだ得られていないということも、私も実感をしております。
 しかし、あらゆる経済指標は上向いております。とても大枠のお話をいたしますが、全国の自治体で、三分の二を超える七四%の自治体が給与の削減に御協力をいただきました。今委員の御指摘のように、それがそのまま地域経済への悪影響を及ぼすならば、全国の七四%の地区で景気は下向いていなければいけません。現実は、全ての地域で、緩やか、もしくは穏やかに持ち上がっているわけであります。
 ですから、この給与の問題は一面でございますから、影響があることは事実であります。しかし、いろいろな経済政策と相まって、全体として国民の所得を、またその可処分所得をふやしていくことが重要でありますから、そのための賃上げ要請を民間企業にいたしました。
 しかし、一方で、財政再建のために、まずは隗より始めよで、公務員はその模範を示そうということで、ことし、地方公務員については一年間の臨時異例の措置をお願いいたしました。来年以降については、ただいま申し上げましたような、地域経済そして国家の経済、さらには税収動向であるとか今後の成長見込み、いろいろなものを見越しながら、また財政再建という観点も踏まえての議論を今、閣僚間で精力的にやらせていただいております。
 国の公務員の給与の方針が出ましたならば、あわせて、地方の公務員につきましては、地方団体からの御意見も精力的に今お伺いをしているところでありますけれども、そういったもろもろのことも踏まえて、総合的な判断をさせていただこうと考えております。

○塩川委員 財政再建というのであれば、私は、黒字企業に対する法人税減税、そのあり方そのものが今問われているんじゃないでしょうか。しっかりとした財政の確保という点では、本来取るべきところから取らないで、庶民に負担が大きいような消費税増税のやり方もおかしいし、また、地方公務員、国家公務員を含めて、給与削減というやり方も本来おかしいということを申し述べ、そもそも、やはり勤労者の所得が落ち込んでいる、今でも勤労者の所得がふえているわけじゃないですから、そこのところの手当てがしっかりない限りは、国民的な経済の発展もないということを言わざるを得ません。
 そういう点でも、地方公務員の賃下げの継続はそもそもやるべきではないし、賃下げを押しつけるような要請も行うべきではない。
 そういう点では、地方六団体との意見交換会の場でも、全国町村会の藤原会長も、やはり地域の商店街など、個人消費の落ち込みで大変なんだ、こういう具体の話もしておられるわけで、こういう地方の声に耳を傾けていただくときではないでしょうか。
 そこで、大臣は、この地方公務員の給与の減額要請について、引き続き継続をしております。先週の委員会答弁でも、十二月議会のチャンスがあるから、そこまで丁寧に、そして細やかに協力のお願いをしたいということをおっしゃっておられます。
 そういう点でいうと、実施予定なしとしている団体というのも二百五十五団体あるわけですよね。こういう実施予定なしとみずから決めているような団体に対しても要請するのかということが問われるんじゃないでしょうか。もうきっぱり給与削減の要請そのものをやめたらどうですか。

○新藤国務大臣 私どもは、望ましい給与水準というものを閣議決定いたしました。これは、私たちが国民からお預かりをしている政権においてそのような方針を決めさせていただいて、それに基づいて地方団体に御要請させていただいているわけであります。
 そしてそれは、私がいただいた時間の範囲で、それを途中でやめる、もしくは、ある団体はお願いします、ある団体は結構ですよ、こんな不公平があっていいわけがありません、強制はできませんし、最終的に自主的判断に委ねているわけでありますが、事情を私たちは聞かせていただき、また、趣旨を御理解いただけるように、最後までこれは懇切丁寧に御説明を、御要請をさせていただきたい、こんなふうに考えております。

○塩川委員 要請は一律にやっているわけで、その要請を踏まえても、実施しませんと決めた団体に繰り返し繰り返し働きかけるということ自身は、これはもう強制になってくるということを言わざるを得ません。
 実際、総務省が現場のヒアリングにおいて、各都道府県の市町村振興課を通じて連絡している内容が重大であります。ある地方団体に対してこのような要請があったという話をお聞きしました。
 総務省の言い方として、地方公務員の給与は地方が自主的に決めるものという原則はそのとおりだが、そういった入り口論に終わるのではなく、今回の要請の趣旨を繰り返し説明してきた中で、一歩踏み越えて御検討いただきたい、要するに、実施についてしっかりとやってくれ、給与削減してくれ、一歩踏み越えろ、こういう要請をしている。
 地方公務員の給与は地方が自主的に決めるものという原則論で終わるんじゃなくて、一歩踏み越えてしっかりやれ、そういうのはそもそも言い過ぎじゃないですか。一歩踏み越えろなんということは許されない、こういうことはもうやらないとはっきりと言っていただきたい。

○新藤国務大臣 ある団体のある言葉を言われても、大体、そのやりとりの文脈、それから具体の言葉のやりとり等が不明でございますので、私とすれば、私の思いは既に手紙にしたためて、これも臨時異例のことでございますけれども、差し出がましいことをしたのかもしれませんが、私とすれば、単なる事務通達ではなくて、そういう思いを感じていただきたいと。
 何度も申し上げておりますけれども、誰だって給料を下げることを喜ぶ人はいませんから、一生懸命働いている人たちに対して、それに報いてあげたいのは誰だって同じですから、その中で、みんなで努力するために、まずここを乗り越えなきゃいかぬということでやった措置である。
 今、この日本全国が、気持ちが上向いて、そしていろいろな指標が上向いて、頑張ろうという気になっている。だけれども、去年の今ごろはどうだったのか、その夏はどうだったのか、そういうことを考えて、私どもは、とにかく、まず一回お願いしたことは、その趣旨が御理解いただけるように丁寧にお願いをしよう。
 それから、実施の予定なしというところもあると言いますけれども、実際に御提案していただいた、議会に条例をかけていただいたけれども、いろいろな事情があって否決された団体もございます。ですから、そういった議会の御事情等も聞かせていただいて、それに対してどんな対策をおとりになるんですか、もし私たちに必要な助言があるならば、まずそれを聞かせていただきたいということもあります。
 あくまで、介入もできませんし、全ては議会でもって条例で決めていただくことなのでありますから、それは、私の意思は、全職員が同じようにやっていただいていると思っておりますし、懇切丁寧に誠意を持って私どもは最後までお願いを続けさせていただきたい、このように考えております。

○塩川委員 やらないと言っている団体に繰り返しということ自身が、地方自治の趣旨からいっても、本来あってはならないことだと改めて申し上げ、実際、そういう要請、一歩踏み越えろという働きかけというのがあるということは、例えば私どもがお話をお聞きしている労働団体の自治労連の現場でお聞きした話として、これはもう総務省の事務方とのやりとりで、その文言を含めて、こういうことがあるでしょうというやりとりというのは現にやっているわけですよ。
 そういう具体の話として指摘をしているわけで、そういう点でも、大臣が繰り返しやっているということが、現場ではさらに一層ひどい形であらわれている。こんなことはもうやめてもらいたい、きっぱりと給与削減の強制そのものはやめるべきだし、来年度以降の継続などもとんでもないということを重ねて申し上げて、質問を終わります。