国会質問

<第185臨時国会 2013年11月08日 経済産業委員会 4号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 産業競争力強化法案について質問いたします。
 関連して、最初に、福島第一原発における作業員の問題について紹介もし、大臣に一言御答弁いただきたいと思うんです。
 きょう午後一時半から、東電の広瀬社長が臨時の記者会見を行いまして、福島第一の緊急安全対策を発表いたしました。この中で、作業員の労務費についての発表をいたしました。
 敷地内作業に適用する設計上の労務費の増額についてということで、一日一万円を一日二万円にする、十二月発注分以降実施するということであります。元請に対して、下請作業員に渡るようお願いしているということでありました。
 この間の当委員会で、福島第一の困難な作業をされておられる作業員の方の労賃、日当などが、より困難な環境であるにもかかわらず、除染の作業員の方を下回るような日当、賃金の水準、これの抜本的改善こそ、不安を抱えておられる作業員の方に報いることにもなるし、さらには要員の確保にもつながっていくということを訴えましたが、そういう中での対応を一歩踏み出すということでありました。
 そういう点でも、設計上の労務費の単価ですから、やはり確実に作業員の方に渡るような取り組みについて、ぜひ茂木大臣としましても、事故収束を進めていく立場から、東電や元請、下請事業者に対し、作業員に適正な労賃が渡るような働きかけを行っていただきたいと思いますが、一言いただきたいと思います。

○茂木国務大臣 再三申し上げておりますが、現場で大変困難な作業に当たっている作業員の皆さんがモチベーションを維持して、安全にしっかりと仕事をしていただく、事故収束に当たっていただく、極めて重要でありまして、そのための労働環境の整備は重要な課題だと思っております。
 きょうの東電の発表につきましては私も承知をいたしております。汚染水、廃炉の問題については、与野党ない、さまざまな党からさまざまな提案をいただいています。よい提案を取り入れながら、事故の収束の加速化に努めていきたいと考えております。

○塩川委員 しっかりとした対応方、よろしくお願いいたします。
 やはり、働く方々が意欲を持って元気に仕事ができてこそ産業競争力の強化だ、そういう立場からきょうは質問をいたします。
 本会議の質問で、多国籍企業化が進めば、企業利益と国民の利益が一致しなくなることは、既に一九九二年の通商白書が指摘したところと述べました。これに対して、茂木大臣は、多国籍企業と国民経済の関係についてですが、多国籍企業の利益と一国の利益が一致しないケースは、多国籍企業の性格からして当然出てくるもの、このように答弁をされました。
 この意味するところについて、まず御説明いただけますでしょうか。

○茂木国務大臣 多国籍企業、恐らく一九八〇年代ぐらいからよく使われるようになってきた言葉じゃないかな、こんなふうに思っておりますけれども、OECDの多国籍企業ガイドラインでは、複数の国に拠点を設立している企業を一般的に多国籍企業と呼ぶわけでありますが、多国籍の度合いというのは、単に拠点の数とか、幾つの国に拠点を置いているということだけでは決まらないんだと思います。恐らく、企業の組織運営システムがどうなっているかとか、株主、従業員の国籍の構成、さまざまな要素によって決まってくる、このように考えております。
 その上で、先日、多国籍企業の性格からして当然である、このように申し上げましたのは、企業活動が国際化するに従って株主であったり従業員、顧客などの言ってみますとステークホルダーも多様化いたします、そうなりますと、相対的に企業は特定の国のステークホルダーの利益のみを優先しづらくなる、こういったことを念頭に発言したものであります。
 各国政府とも、自国の事業環境整備をすることによりまして、自国内での企業の活動分野の拡大、活性化を図り、自国民の雇用の拡大やGDPの成長率の引き上げにしのぎを削っているのが現在の状態だ、こんなふうに認識いたしております。
 安倍政権では、第一の矢、第二の矢、第三の矢から成りますアベノミクスによりまして、これまで日本は六重苦というふうに言われてきましたが、この事業環境を改善して、世界で企業が一番活動しやすい国、こういったものを目指してまいりたいと考えております。

○塩川委員 御答弁いただきましたとおり、要するに、日本の多国籍企業であっても、日本のステークホルダーの利益を優先しづらくなるということでのお話でございました。
 まさに、そのような事態が進んでいるのではないかということをきょうは御質問したいと思っておるんです。
 資料を配付させていただきました。一枚目が「自動車産業の海外生産シフトと製造業における国内雇用の空洞化」ということで、グラフをつくりました。棒グラフと折れ線グラフがあります。
 棒グラフの方が自動車の生産台数、日本自動車工業会の資料をもとに載せました。海外生産がグレーで、国内生産が黒ということで、棒グラフ、九〇年度から二〇一二年度まで書いてあります。
 ここをごらんいただきますとわかりますように、国内の生産台数は、一九九〇年度千三百四十九万台が二〇一二年度には九百九十四万台と、一千万台を切っています。一方、海外の生産台数は、一九九〇年度三百二十六万台が二〇一二年度には千五百八十三万台と、約五倍に増加しております。自動車産業の海外生産シフトが進んでいることが見てとれます。
 あわせて、折れ線グラフの方が、自動車産業を含む製造業の就業者数、従業者数であります。
 国内の就業者数は一九九二年をピークとして大きく減少し、上の折れ線グラフですけれども、一九九〇年度千五百五万人が、二〇一二年度におきましては千三十二万人と、三分の二になっております。一方、海外の常時従業者数は、一九九〇年度百二十四万人が二〇一一年度には四百十一万人と、三倍以上に増加しております。自動車などの製造業において、国内雇用が減少し、海外雇用が増加しております。
 そこで、大臣にお尋ねをいたします。
 日本再興戦略でも、失われた二十年の経済の低迷は余りにも長過ぎ、我が国経済社会に深刻な影響をもたらしたと述べておるわけですが、その過去二十年間において進んだということは、多国籍企業化が進む中で国内産業と雇用の空洞化が生じたということではないのか。この点についての大臣のお考えをお聞かせください。

○茂木国務大臣 先ほど私が答弁いたしましたのは、企業は特定の国のステークホルダーの利益のみをということでありまして、例えば日本の自動車産業が日本の利益のことを全く無視して海外展開している、こういったことを申し上げるつもりはないわけであります。
 我が国の製造業にとりましても、これは長引くデフレ不況の問題もあります、国内市場が落ち込む、そしてまた一方で円高が進む、さらには新興国市場が大きく拡大する、こういったグローバル市場の拡大に伴います海外需要の取り込みは必須であります。
 海外での現地生産の拡大が不可避な状況もございます。これは恐らく、関税の問題等々もありまして、これから我々としては、経済連携協定等々を進めることによりまして、こういったさまざまな課題を解決していかなければならない。一方で、自動車産業初め製造業でありますが、非常に裾野の広い産業集積と広範なサプライチェーンは我が国の製造業の強みでありまして、雇用の確保にもつながる国内での生産活動の活性化は引き続き重要だ、こんなふうに考えております。
 実は、直近なんですが、ある自動車メーカーの新しいマザー工場へ行ってまいりました。そこでお話を伺ったのは、海外展開をしていると日本の技術よりもかえって海外の技術が進んでしまう、だからやはりマザー工場を日本に置いて、しっかり日本のマザー工場を中心にしながら国際戦略も組み立てていかなければならないと。まさに私も同じようなことを思っているところであります。
 国内での設備投資を促すために、ことしの一月の緊急経済対策でも最新設備の導入の支援のため二千億円の予算措置を行ったところでありまして、この事業の効果として、一兆円を超える民間投資の呼び水となる、こんなことも期待をいたしております。
 十月一日に決定いたしました経済政策パッケージにおいても、これまでにない大胆な投資減税などを盛り込んだところでありまして、産業競争力強化法案においては成長戦略を確実に実行するための仕組みを新たに創設し、まさに日本にベースを置く企業にとって、この日本を世界の中心として活躍しやすい国にしていく、こういったことに全力で取り組んでまいりたいと考えております。

○塩川委員 サプライチェーン、広く裾野もある、そういう日本の製造業の強みのお話がございました。
 同時に、トヨタ、愛知などでお話を伺っても、やはりそういう協力会の企業そのものがこの間で半分に減っているという点でいいますと、非常にそのピラミッド構造そのものが大きく変貌してきているという状況にあるんじゃないのか。海外展開の中で、このピラミッド構造が大きく切り崩されている事態が現に進行しているというのが今の実態なのではないのか。そういう点でも、多国籍企業化が進むことで、企業利益と国民の利益が一致しない事態が進んでいるということを直視すべきときだと思います。
 同時に、こういった空洞化を初めとした今の日本経済の構造変化というのは、単に自然現象ではなくて、政治のもたらした、政策がもたらした結果だということも見ておかなければならない。例えば、一九九五年の日米自動車合意によって、北米市場に進出する、製造拠点、生産拠点を移す、このことが加速いたしましたし、また、九九年以降の産活法改正によって事業再編、それは働く人にとってみればリストラが進む、こういうことにもつながったわけであります。
 配付資料の二枚目に「正規雇用・非正規雇用の推移と労働法制の規制緩和措置」を取り上げましたが、正規雇用について見れば、一九九三年三千七百五十六万人が二〇一三年では三千二百八十一万人になり、一方、非正規雇用は一九九三年九百八十六万人が二〇一三年には千八百七十万人と、二倍に増加しております。
 この間に行われたことが有期雇用の導入であり、労働者派遣の原則自由化であり、製造業への労働者派遣解禁、有期雇用の拡大、きょう本会議質問がありました国家戦略特区の法案におきましては、一部の業種などにつきまして有期雇用のさらなる拡大も盛り込むという話にもなっているわけであります。
 正規が減少し、非正規が大幅に増加している、このことが国民、勤労者の所得が減る大きな要因となっているという点でも、私はやはり、大臣にお尋ねしますが、こういった一連の政府の政策によって雇用が失われ、産業と雇用の空洞化と言われるような事態が進んだのではないのかと率直に思いますが、いかがでしょうか。

○茂木国務大臣 バブルの崩壊から二十年以上がたつわけでありますが、その間、一貫して、日本はデフレ不況、そして企業の経営も縮み思考といいますか、どうしても前に出られない、こういった状況の中で、資金の活用についても、人材の活用についてもなかなか前向きの行動がとられてこなかった、こういう側面は否定できないと思っております。
 それをまさにアベノミクスで変えていきたいということでありまして、企業の収益の改善を賃金の上昇であったりとか雇用条件の改善や所得の向上に結びつけ、それによって消費が拡大し、さらなる投資や生産を生む、こういう好循環をつくっていくというのが我々の決意であります。

○塩川委員 この間の二十年を見れば、勤労者の所得、国民の所得が減少してきた二十年だった、そこはやはりしっかり見なければなりません。私は、そこにそもそも今のデフレの根源があるということこそ問われなければならないと思います。勤労者、国民の所得をふやすということを中心にした取り組みこそ今求められている、そういう点でも、この二十年間の政策のあり方そのものを問い直すときだと考えております。
 そういった意味でも産活法の総括が問われるわけですが、今回の産業競争力強化法案は、産活法をベースにしてまさにバージョンアップするという中身となっておりますけれども、産活法の果たした役割は何だったのか。もともと、人、物、金の過剰を解消しようというのが産活法の目的だったわけですけれども、本会議の大臣答弁で、産活法の認定事業者の大半においては、計画期間中に生産性の改善等に一定の成果が出ているが、他方、雇用者数を減らした例があることも事実と述べておられます。
 そこで、産活法認定事業者で雇用者数を減らしたのはどういう例があるのか、御紹介いただけますか。

○西山政府参考人 お答えを申し上げます。
 二つの例を申し上げさせていただきたいと思います。
 一つは、旭化成のグループでございますけれども、これにつきましては、事業再構築の過程におきまして、産活法に基づきます計画の開始前に一万八千九百二十七人であったものが、計画後には一万七千九百五十四人になったというケースがございます。
 それからもう一つは、流通のグループでございますけれども、西友グループでございまして、こちらにつきましては、産活法の計画適用前に二万九千五百十二人であったものが、計画後に二万四千六百八十九人になったというケースがございます。

○塩川委員 こういう形で、雇用者数を減らしたという例もあるわけですが、全体の構図を考えたときに、例えば昨年、電機情報産業で大きなリストラ計画がありました。全体を足し上げると十三万人とも言われるような計画が大きな問題となりました。そういう中で、人減らしの計画を上げている企業、名立たる大企業であるわけですが、パナソニックが四万人とか、ルネサスエレクトロニクスが一万四千人、NECが一万人、シャープが一万人。これらは皆、過去に産活法の認定を受けた企業ばかりであります。
 ルネサスエレクトロニクスの例を紹介すると、これは、昨年、ことしと続けて早期退職の募集を行っておりますけれども、そのやり方がひどい。
 昨年の早期退職募集に続けて、ことしの早期退職の募集などでは、社員に繰り返し面談を強要する、整理解雇をするとおどしながら、応募するように迫ってきているということで、例えば、課長級の職員を降格する。そうなると、非組合員という状況です。ルネサスでは、労働組合との協定によって、組合員に対する面談は二回までという上限があるんです。繰り返して強要してはならないという労使の協定で、面談は二回までとなっているわけですけれども、課長を降格された職員は非組合員ということで、それが適用されないという形で、繰り返し繰り返し面談が強要される。中には八回も強要されるような方もいた。
 ですから、そういった中で退職を迫るということが行われたというのが、まさにこの産活法の認定を受けたルネサスエレクトロニクスの実態だったわけであります。
 過去、幾つも合併してきたルネサスエレクトロニクスですけれども、二〇〇三年に認定を受け、あるいは二〇一〇年にも認定を受け、また、産活法のスキームに入っております産業革新機構は、昨年十二月にこのルネサスエレクトロニクスに一千三百八十三億五千万円の出資も行うことになった。そういう会社において、こんな大規模なリストラの強要が行われているということであります。
 大臣にお尋ねします。
 産活法においては、従業員の地位を不当に害するものでないと定めていますけれども、実際には、産活法のもとでリストラが強行されて、労働者の権利と地位が不当に害されたということは、このルネサスエレクトロニクスの事例を見ても明らかではないでしょうか。いかがですか。

○茂木国務大臣 委員御指摘のとおり、産活法におきましては、企業が事業の選択と集中等によります事業再構築を行い、生産性の向上を図る取り組みの過程で、やむを得ず雇用者数を減らしたり、配置転換等を行わざるを得ない場合も想定されることから、従業員の地位を不当に害するものでないことを計画認定の要件として、労働組合等と協議により十分に話し合うことを求めてきているところであります。
 確かに、個別の事例におきまして、認定者の中で雇用者数を減らした実例というのはあります。ただ、考え方だと思うんですけれども、例えば事業の再構築を進める、もし進めていなかったときにどうなっているのか。いろいろな業種を私も見てきました。多いのは、事業再編に早く取り組んだ企業の方が最終的には雇用を維持している、こういうケースが多いことなんですね。
 例えば、先ほど旭化成の例を紹介させていただきました。認定開始前は一万八千九百二十七人で、終わった時点では一万七千九百五十四人、確かに減っておりますけれども、現在のグループの従業員数は二万八千三百六十三人、ふえているんですよ、確実に。事業を再編することがあったからこそ、雇用も維持し、ふやすことができた、こういう形になっている。
 個々の企業全てについて、どうであるという評価はできませんけれども、全体としては雇用の確保に資してきた、そのように考えております。

○塩川委員 ルネサスのように産業革新機構が出資した企業において、産活法で支援していた企業においてまさに違法なリストラが強要されている事態が生まれている。このこと自身、私はやはり、こういった雇用破壊の背景として、事業再編の名のもとに、国の施策がリストラにお墨つきを与えるような形になっているということを言わざるを得ません。多国籍企業のリストラ支援となっている、雇用破壊を推進したのが産活法だということを強く指摘しておくものであります。
 そこで、この産活法を引き継ぐ今回の法案がどうなるのかをお尋ねします。
 この点では、企業実証特例制度をきょうはお尋ねします。
 本会議での大臣の答弁で、企業実証特例制度を活用し、労働規制に関する規制緩和の提案があった場合には、事業所管官庁が、その内容、必要性などを精査した上で、規制所管官庁である厚労省と協議、調整を行っていくことが想定されるとあります。
 そこで、大臣にお尋ねします。
 こういった個別の企業が求める労働規制に関する規制緩和の提案については、企業側が提案する内容について特段の制約というのはあるのかないのか。

○茂木国務大臣 ございません。

○塩川委員 そういう場合で、例えば、労働の規制緩和であれば規制官庁は厚労省ですから、事業官庁が企業からの提案を受けて、それについて事前に内容などをチェックするということで、代替措置をきちんと対応するということも当然でしょうけれども、そういうことで厚労省に話を持っていく、協議、調整する。その意味でも、別に厚労省に事業官庁が持っていくところにも特段の何らかの制約、制限というのはないということであるわけですね。

○茂木国務大臣 仮に、企業から雇用規制に関する規制緩和の提案があった場合には、まず事業所管省庁がその内容そして必要性などを精査した上で、規制所管官庁であります厚生労働省と協議、調整を行っていくということであります。

○塩川委員 労働分野を含めて、規制緩和要求自身には制限がないわけであります。安全性を確保する措置が実施されることなどを条件とすれば、あらゆる規制が対象になるわけであります。
 そこで、厚生労働省にお尋ねをいたします。
 本会議での田村大臣の答弁におきまして、労基法等に定めるルールは、労働者が人たるに値する生活を営むための最低基準であり、企業によって差をつけることは困難、このように答弁しておられますが、これはどのような趣旨なのか、御説明ください。

○赤石大臣政務官 塩川委員にお答えいたします。
 私も企業の経営者をやっていまして、リストラは一回もしたことはないんですけれども、おかげさまで、医療産業にいたものですから、ずっと成長してきました。
 企業の経営者は、総じて、やはり従業員のことを一番よく考えて経営していると私は思います。そして、会社をどうやって成長させるかということを常に考えているのが経営者だろうというふうに思っています。
 御質問の件でありますけれども、十月二十九日の衆議院本会議における塩川議員からの質問に対する田村厚生労働大臣の答弁の趣旨は、労働基準法等に定めるルールは、労働者が人たるに値する生活を営むための最低条件であるため、一般的に、企業ごとに労働基準法等に定めるルールに差を設けることは困難であるというものであると承知しております。
 以上です。

○塩川委員 最低基準である、企業ごとに差を設けることは困難だということであります。労基法等に定めるルールというのは最低基準ですから、これは当然守ってもらわなくちゃいけないということであります。
 国家戦略特区の議論のように、そういう緩和については、では全国展開でというのは私たちとしてとる立場ではありませんけれども、少なくとも地域単位とか企業単位で特例を設けるというのは困難だということでございました。
 そうしますと、重ねてお尋ねしますが、厚生労働省としては、企業単位の労働規制の緩和というのは認められないということでよろしいですね。

○赤石大臣政務官 お答えいたします。
 御指摘の要望については、労働基準法が極めて画一的であり、企業実態を反映していない部分は集団的労使自治を尊重する仕組みに見直すことが必要であるとした上で、個別の労働時間制度の規制改革を求めているものと承知しております。
 労働時間法制においては、サービス経済化やグローバル化の進展といった経済社会の変化に対応するため、労使協定や労使委員会決議等を要件とする各種の弾力的な制度を設けてきたところであります。こうした制度改正の前提として、最低基準の確保を初めとする労働者保護の観点を十分踏まえる必要があるものと考え、労使の議論を尽くした上で対応してきたところであります。
 現在、労働政策審議会において、企画業務型裁量労働制を初め、労働時間法制に関する総合的な検討を行っておりますが、そうした検討に当たっても、労働生産性向上と同時に、ワーク・ライフ・バランスの観点もしっかり踏まえて進めているところでございます。

○塩川委員 今、経団連の提言の中身についての御説明ということで、要するに、経団連は労働時間規制の緩和については労使協議、労使自治に任せるべきだということで、労使で合意すればそれをもって労働時間規制、裁量労働制の対象拡大などを図ってもいいじゃないかというスキームが、私は企業実証特例制度のスキームで行い得るのではないのかということを考えたわけであります。
 つまり、代替措置というのは、労使における合意をもってすれば裁量労働制の対象の拡大とかいうこともやってもいいんじゃないの、こういうのが企業実証特例制度でも使えるんじゃないのということだと思うんですが、大臣はその点はどうですか。

○茂木国務大臣 労働基準法、このルールは一つの基準というか最低の基準ということでありますけれども、では、そのルールが同じように全部の企業に適用されているかといいますと、例えば労働時間、一週間四十時間以内というルールでありますけれども、労使が合意を行った企業で弾力的な運用も行われております。
 そして、賃金の支払いについても、通貨で支払うということになっておりますけれども、持ち株会で株式の購入費用に充てたりとか、賃金の一部を控除して、違った形で支払うということもできるような形になっております。
 こういった最低基準に反しないさまざまな形の規制の特例の提案があった場合には、それにつきましては、精査の上でありますが、厚生労働省と協議、調整を行っていくことを想定いたしております。

○塩川委員 労働時間規制は企業ごとに違うという話であります。フレックスタイム制とか裁量労働制とか当然ありますけれども、しかし、今この労働時間で問題になっているのはやはり長時間労働なんですよ。現場は実際には、世界に冠たる長時間労働で、過労死しかねない状況。
 だからこそ、この労働時間規制の緩和は認められないというのは働く皆さんの共通の声になっているわけで、仕事と家庭の両立が困難になり、少子化が加速し、過労やメンタルヘルスといった問題を引き起こす、こういう長時間労働を一層拡大しかねないような労働時間の規制の緩和は認められない。
 私は、それに反するような日本経団連の要求は多国籍企業の利益を代弁するものということを言わざるを得ない、その突破口を開くような企業実証特例制度であってはならないということを申し述べて、きょうのところは質問を終わります。