国会質問

<第185臨時国会 2013年11月12日 経済産業委員会 5号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 産業競争力強化法案について質問いたします。
 きょう午前中、参考人質疑がございまして、各参考人の方から貴重な御意見を賜りました。
 その中で、私は、企業実証特例制度を労働規制緩和のいわば一つのツールとして使うことについて、経団連の佐々木参考人と連合の神津参考人にお尋ねいたしました。経団連からは使えるものは使いたいというお話がございましたし、また、連合の神津参考人は、労働規制の緩和措置のツールとして使うことについては認められないということをおっしゃっておられました。
 本会議や先日の委員会でもこのことをお尋ねしまして、大臣は、企業実証特例制度を活用し、労働規制に関する規制緩和の提案があった場合には、事業所管官庁がその内容、必要性などを精査した上で、規制所管官庁である厚労省と協議、調整を行っていくことが想定されると述べ、前回の質問では、個別企業が求める労働規制に関する規制緩和提案については、事業所管官庁が受け付ける際に特段の制限はないということを確認いたしました。
 一方、規制官庁である厚労省は、労基法等に定めるルールは労働者が人たるに値する生活を営むための最低基準であり、企業によって差をつけることは困難と述べておりました。
 厚労省に改めて確認をいたします。
 厚労省としては、企業単位の労働規制の緩和は認められないという立場なのか、この点についてお答えください。

○大西政府参考人 一般的に申し上げまして、労働基準法などに定めます最低労働条件につきましては、労働者が人たるに値する生活を営むための最低基準としてひとしく保障される必要があること、あるいは企業間の公正な競争を確保する必要があることから、労働条件の基本的なルールにつきまして、企業によって差を設けることは一般的には困難であると考えております。

○塩川委員 労働法制の基本的なルールについて、企業によって差をつけることは困難という話でありました。
 日本再興戦略において、労働時間法制の見直しを掲げています。その中で、企画業務型の裁量労働制の見直しを求めております。
 厚生労働省にお尋ねします。
 この企画業務型裁量労働制の緩和については、日本経団連としても要望されていると承知しておりますが、その点についてお答えをいただけますか。

○大西政府参考人 お答えいたします。
 経団連の要望でございますけれども、四月に要望が出されたというぐあいに私どもは承知しております。
 その要望の中では、労働基準法が極めて画一的であり、企業実態を反映していない部分は、集団的な労使自治を尊重する仕組みに見直すべきということとした上で、個別の労働時間制度の規制改革を求めているというぐあいに承知しているところでございます。
 労働時間法制につきましては、サービス経済化とかグローバル化の進展といった経済社会の変化に対応するため、労使協定や労使委員会決議等を要件とする各種の弾力的な制度を設けてきたところでございますが、こうした制度改正の前提といたしましては、最低労働基準の確保を初めとする労働者の保護の観点を十分踏まえる必要があるものと考えております。労使の議論を尽くした上で対応してきたところでございます。
 御指摘の企画業務型裁量労働制につきましては、現在、労働政策審議会におきまして企画業務型裁量労働制を初めとして労働時間法制に関する総合的な検討を行っておるところですが、そうした検討に当たりましても、労働生産性の向上と同時にワーク・ライフ・バランスの観点もしっかり踏まえて進めているところでございます。

○塩川委員 労働時間規制の問題について、経団連として裁量労働制の弾力化などを要望しているわけですが、私は、労働時間規制の緩和というのは、そもそもこれ以上の緩和をやっていいのかというのが大きな問題だと思うんですね。
 現在も長時間労働せざるを得ないフルタイム労働者の過重労働が一層深刻になる、長時間労働というのが、仕事や家庭生活の両立が困難になること、少子化を加速すること、過労やメンタルヘルスといった問題を引き起こすということで、過労死や過労自殺が増加傾向にあるということも問われなければなりません。こういう長時間労働を一層拡大しかねない規制緩和はそもそも認められないと考えます。
 大臣にお尋ねします。
 日本経団連の提言では労使自治の尊重を強調し、例えば、企業実証特例制度の活用において、労使の協議が調えば安全性等を確保する措置が実施されているということで、企業単位の規制緩和も可能ということになりはしないかという懸念を覚えるわけですが、大臣のお考えをお聞かせください。

○茂木国務大臣 企業実証特例制度につきましては、これまでも答弁申し上げておりますように、分野の制限というのは設けてございません。
 ただ、労働規制に関する提案がどれくらい出てくるかとなると、恐らくでありますけれども、電動の自転車の話とかを例で出していますけれども、私は、例えば、エネルギーの分野、それから社会保障、公的保険の隣接分野、予防医療であったりとか、そういった分野の提案は相当ふえてくるんじゃないか。これから健康長寿社会をつくっていく、そういう中での新しいビジネスであったり、現在の三・一一以降のエネルギー制約を乗り越えるための新しい事業展開、こういったものを期待いたしております。
 その上で、労働基準法に定めるルール、これは御案内のとおり、最低の基準であります。ただし、労使合意のもとで、その最低基準に反しないものについて企業ごとに定められている場合もある。
 例えば、労働時間については、一週間四十時間以内というルールがありますが、労使合意を行った企業については、その時間を延長して労働させることができるようになっております。
 また、賃金の支払いについても、通貨で直接支払わなければならない、こういうルールがあるわけでありますが、労使合意を行った企業については、賃金の一部を、持ち株会での株式の購入費用などとして、控除して支払うことができることとされているわけであります。
 したがいまして、仮に、企業実証特例制度において、労働規制に関する新たな規制の特例の提案があった際、事業所管省庁において、当該提案が最低基準を逸脱するものではないと判断される場合には、規制所管省庁である厚生労働省と協議、調整を行っていくことを想定いたしております。

○塩川委員 現行の労働時間規制の緩和、労使合意、その実態というのは、結果として長時間労働をつくり出しているというところにこそ目を向けるときで、私は、そういうものをさらに緩和する方向では行うべきではない、現時点でも労働団体からはこの企業実証特例制度を労働規制緩和のツールとして使うことは認められないという、国民合意がないままで進むのかということを指摘しておくものです。
 次に、産活法の生産性向上の問題についてお尋ねいたします。
 産活法では、計画の認定基準として幾つか指標を設けて、企業の生産性向上の数値目標を求めているわけです。
 そこで、経産省にお尋ねします。
 最も活用されている事業再構築計画は幾つか生産性向上の指標を持っていますけれども、その中に、ROE、株主資本利益率の向上というのも掲げていると思います。その点、確認させてください。

○西山政府参考人 お答え申し上げます。
 産活法では、今お話のございました事業再構築計画も含めまして、生産性の向上度合いを客観的に判断できるように、複数の認定基準を選定しているところでございます。
 今お尋ねの事業再構築計画につきましては、いわゆるROE、有形固定資産回転率、それから従業員一人当たり付加価値額の三つを指標として示しておりまして、そのいずれかが計画期間中に、具体的には三年間でございますけれども、達成する度合いというのを確認しているところでございます。

○塩川委員 例えば、ROEにおける生産性向上の目標の達成状況というのは、どんな感じかわかりますか。

○西山政府参考人 今手元にあります資料では、計画別、指標別ということにはなっておりませんけれども、総じて申し上げれば、平成十一年の産活法の制定以来、平成二十五年十月一日の時点で、全省庁で六百九件、経済産業省分で四百件の計画を認定しておりますけれども、経済産業省が認定し計画が終了した約三百五十件のうち、八割超が計画期間中に法律の求める生産性の向上のうち少なくとも一つを達成しているというふうに認識しております。

○塩川委員 ROE向上を含めて、指標に定めたものについて八割が達成しているという話であります。
 産活法の認定において、株主利益の増加につながる企業の生産性向上の目標の一つとなっているのがROEの向上でありますが、今、資本の構成において外資の株式保有比率が高まっているという状況にあります。
 金融庁にお尋ねいたします。
 外国法人等の投資部門別株式保有比率について、上場企業についての調べがあると思うんですけれども、二十年前の一九九二年度と直近の二〇一二年度における外国法人等の比率がそれぞれ何%かについて、教えていただけますか。

○遠藤政府参考人 お答えいたします。
 証券取引所が本年六月に公表いたしました調査結果によれば、投資部門別株式保有比率の推移におけます外国法人等の比率でございますけれども、一九九二年度、平成四年度は六・三%でございます。それに対して、平成二十四年度は二八・〇%となっております。

○塩川委員 外国法人等の株式保有比率について、一九九二年度が六・三%、二〇一二年度が二八・〇%ということで、この二八・〇%というのは、これまで最高だった二〇〇六年度を上回って、過去最高の水準ということであります。
 資料を配付させていただきました。
 一枚目に「投資部門別株式保有比率の推移」を載せてあります。ごらんいただくとわかりますように、上場企業の株主の構成は、この間、外国法人の比率が大きく増加しております。
 あわせて、二枚目以降をごらんいただきますと、これは、日本経団連役員企業の大株主の上位十社について掲載したものであります。経団連役員企業の株主構成を見ると、産活法の認定を受けている企業も多いわけですけれども、二枚目が、一九九〇年時点の経団連役員企業の大株主上位十社です。網かけをしているところが外国資本ということですけれども、昭和シェル石油を除けば、大株主は皆国内資本だったわけです。
 三枚目と四枚目が、二〇〇六年度の日本経団連役員企業の大株主上位十社で、網かけをしている外国資本の割合が非常にふえているというのが見ていただけると思います。ステート・ストリート・バンク・アンド・トラスト・カンパニーとか、ザ・チェース・マンハッタン・バンク・NA・ロンドンとか、幾つものこういった外国資本の名前が見てとれるわけです。整理できているのがこの二〇〇六年の時点までのデータでありますけれども、現状を見ても同じ傾向にあるということが言えます。
 そこで、大臣にお尋ねします。
 先日の質問への大臣の答弁で、企業活動が国際化するに従って株主や従業員、顧客などのステークホルダーも多様化する、そうなると、相対的に企業は特定の国の利益のみを優先しづらくなると述べておられます。
 ここにありますように、外資の比率が高まることによって、その企業の利益とその国の国民の利益が一致しなくなるのではないのか。この点については、大臣、どのように受けとめておられますか。

○茂木国務大臣 お配りいただいた資料ですけれども、二つのポイントに注意する必要があると思うんです。
 大株主の一位、二位等々を並べていただいておりますけれども、例えば、三分の一以上の株を持つ、過半数の株を持つということで決定的に経営に影響力を及ぼす状態にはなっていない、このように思います、この数字からは。
 もう一点、こういった株式といいますか、海外からの投資は、日本の企業だけではなくて、外資系の企業そのものも同じような形でありますから、外資系の企業もグローバル化して、一つの国の、アメリカの企業であろうとも、アメリカの国益だけを代表する立場ではなくなっている。
 そういった意味で、双方においてこういったグローバル化が進んでいる、このように理解いたしております。

○塩川委員 一九九二年の通商白書の指摘もそうだと思うんです。
 ある国の資本による企業の利益がその国民の利益と一致する度合いが減少しつつある。かつては、一国の企業活動の活発化はその国の雇用を増大させ、豊富な財を提供することによって国民生活に貢献するものであった。しかし、国際展開が進んだ企業は、資本の国籍にかかわらず、現地の市場を中心として財、サービスを提供する。したがって、自国籍企業の収益向上が直接に国民生活と関係するところは、収益の分配が主として当該国の投資家に対して行われるという点に限定されていく傾向を有する。さらに、投資家が国際的に分散していけば、その意味すら失われる。
 これが九二年の通商白書の指摘であります。
 ですから、株主が外資中心になるということで、企業の利益とその国の国民の利益と一致する度合いが一層減少していくという、九二年の通商白書の指摘どおりの事態が進んでいるのではないかと私は思うんですが、重ねていかがでしょう。

○茂木国務大臣 まず一点、数字の上からいいますと、それだけ顕著な割合かという問題が一つあります。さらに申し上げると、今、国際的に一つの製品をつくるとなっても、サプライチェーンがアジア全域に広がる等々によりまして、その一つの製品をつくる上での各国の役割分担も特に進んでいるわけでありまして、そこの中で、いかに例えばマザー工場の機能を日本に残すか、さらにはキーデバイスについては日本で製造する、こういったことがより重要な国益につながる状況になってきているのではないか。
 まさに今、日本再興戦略においても、この産業競争力強化法案においても進めようとしていることは、グローバル展開が企業で進む中で、そこの中で一番日本の企業が、また国民にとって収益が上がる、利益を持続的に確保できる、こういった戦略を着実に実施していくことだと思っております。

○塩川委員 ここに一九九九年九月三十日付の日本経済新聞があるんですけれども、「トヨタ、NY・ロンドンに上場」「資本の国際化推進」「ROE一〇%目指す」と。ですから、当時五%、六%というトヨタのROEについて、倍以上にしようということがある、これが紹介されているわけです。
 一方で「問われる日本的経営」という見出しも立っているように、私は、株主資本利益率の向上を掲げて外資を初めとした株主の利益向上を目指すことが、その企業にとって、労働者や下請取引業者、地域社会などとの矛盾を拡大せざるを得なくなるのではないのか、この法案は、そういう矛盾を包含する、一層拡大するものになるのではないのかということを指摘しておきます。
 九二年の通商白書はもう一つ指摘をしておりまして、国家の産業競争力が当該国企業の産業競争力と厳密に一致しなくなっていると述べているわけで、まさにそのような事態が生まれているのではないのか、このことを指摘しておくものであります。
 残る時間で、ファンドの問題について何点かお尋ねします。
 金融庁にお尋ねします。
 本会議で麻生大臣にもお答えいただきましたが、日本で販売された内外ファンドの運用財産額は、平成二十五年三月末で二百十一兆円であります。その中で、集団投資スキームは約十五兆円となっています。この点はちょっとわかれば教えてほしいんですけれども、平成二十四年度の集団投資スキームにおいて、商品分類別の販売額、ビークル別の販売額というのは、今お手元に資料はありますか。

○池田政府参考人 ただいまのお尋ねは、国内で販売された集団投資スキームの販売額と……(塩川委員「商品分類別の販売額」と呼ぶ)販売額ということでございますと、全体が平成二十四年四月から二十五年三月までの間で一兆四千二百二十六億円でございます。
 その商品分類額の内訳は、不動産ファンドが四千百七十五億円、現物ファンド、これは事業ファンドを含みますが、これが千三百五十四億円、バイアウトが千二百二十九億円、ベンチャーが四百五億円、事業再生が三百七十二億円等となっているところでございます。(塩川委委員「続けてその後もちょっと紹介してください。メザニン以降も」と呼ぶ)さらに、メザニンが三百三十八億円、ファンド・オブ・ファンズが三百二十億円、ヘッジファンドが百四十億円、その他五千八百十四億円となっているところでございます。

○塩川委員 経産省にお尋ねしますが、今回の法案で、ベンチャーファンド支援との関係で、事業拡張期のベンチャー企業に投資する、ハンズオンも行う、こういったこの法案で支援するファンドについてですけれども、これは投資事業有限責任組合法、LPS法で定める投資事業有限責任組合だと思います。
 今、金融庁の方で紹介してもらったビークルの中で、このビークルとの関係では、この法案で取り上げているLPSに、ビークルとして排除されているものは何かあるんでしょうか。

○西山政府参考人 お答えを申し上げます。
 まず、産業競争力強化法案に基づいて、この税制の対象になりますのは、いわゆるLPS、投資事業有限責任組合ということになります。その中で、この法案のもとでは、特に事業拡張期のベンチャーに対して投資を行い、なおかつ、それを育成するという意味で、それに対する経営支援能力をきちんと有しているものというものを対象にしております。
 したがいまして、そういう要件を満たさないものは対象にならないということでございます。

○塩川委員 そうなると、例えばバイアウトですとか再生ファンドとか、こういったものについては一応含み得るということでよろしいですか。

○西山政府参考人 繰り返しになりますけれども、基本的には、事業拡張期のベンチャーに対して投資するもの、それを目的とするものを対象にいたしますので、それに該当しないもの、基本的には、いわゆる事業再生とかバイアウトというのはそういうことではないというふうに認識しておりますので、そういうものは対象にならないということであります。

○塩川委員 ただ、いわゆるベンチャーファンドに限定されているものではないと。今言った要件に合致すれば、LPSであれば対象だよということになっているわけですね。

○西山政府参考人 やや繰り返しになりますけれども、今回の税制の対象になっておりますファンドというのは、基本的には事業拡張期のベンチャー企業に投資するということを事業活動の内容としているファンド、LPSということに相なりますので、例えばそのファンドがいわゆる事業再生案件ということに投資することを事業活動の内容にしているということであれば、それは今回の計画認定あるいは税制の対象にはならないということであります。

○塩川委員 続きはあした行います。
 ありがとうございました。