国会質問

<第185臨時国会 2013年11月15日 経済産業委員会 7号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。最後の質問でありますが、税の問題についてお尋ねをいたします。
 最初に経産省にお尋ねをいたします。産業競争力強化法案に伴う減税措置の一つであります生産性向上設備投資促進税制の創設について、その趣旨及び減収額についてお答えください。

○菅原政府参考人 お尋ねの生産性向上設備投資促進税制でございます。
 委員御案内のとおり、ここ数年、設備投資が進まなかったゆえに、製造業の設備の老朽化が生じまして、これまで日本企業の強さの源泉となっておりましたマザー工場としての役割を果たせないような状況に立ち至っております。
 デフレから脱却して、我が国の産業競争力を強化するとの観点から、生産性の高い設備への投資を加速する必要があるとの認識のもと、生産性の高い先端の機械装置への設備投資に対し、即時償却や税額控除を認める措置を講じていくこととしております。特に、その中でも中小企業については、よりインセンティブが高く、より幅広い多くの中小企業をカバーできるような大胆な設備投資減税の内容となってございます。
 お尋ねの本税制の減収額は、四千四百億円程度を見込んでおります。

○塩川委員 中小企業向けも含めてということですけれども、民間設備投資活性化のための税制改正ということで、リーマン・ショック前の水準から民間設備投資が約一割低下、今後三年間の集中投資促進期間においてこれを回復させることを目指すということです。
 大臣にお尋ねしますが、この促進税制で投資が、また結果として雇用がふえる保証はあるんでしょうか。

○茂木国務大臣 高い目標だと思っております。しかし、達成できる目標だ、こういう思いで全力で取り組んでいきたい。
 デフレから脱却をして、さらに中長期的に我が国の産業競争力を強化していくためには、省エネ性能のよりすぐれた設備の更新を含めた設備投資を促進していくことが極めて重要だと考えております。
 ことし一年がどうなるかということでありますけれども、本年一月の緊急経済対策で講じました立地補助金、そしてまた設備投資減税の効果により、本年度の設備投資は前年度に比べて約一・八兆円増加する見込みになっております。六十三兆から七十兆に持っていくということでありますから、七兆円、大体一割になると思います。
 ことし講じました施策に加えて、十月一日に決定をいたしました経済政策パッケージにおきまして、設備投資をさらに促進するために、これまでにない大胆な設備投資減税を決定いたしました。産業競争力強化法案におきましても、リース手法を活用した先端設備投資の促進策を新たに盛り込んでおるところであります。
 こういった措置も含めまして、予算、税制、金融措置などあらゆる政策手段を動員いたしまして、今後三年間でリーマン・ショック前の水準であります七十兆円以上の年間設備投資額を実現してまいりたいと考えております。

○塩川委員 増加をする見通しというお話がございました。七―九月のGDPにつきましても、やはり輸出や個人消費の落ち込みもあります。先ほどの答弁で、設備投資について堅調というお話がございました。四―六月期に比べれば減速している状況はもちろんあるわけであります。
 きょうの朝日新聞に、ホンダが埼玉県寄居に立ち上げましたマザー工場のことが紹介されていました。ホンダの伊東社長によると、市場の拡大が望めるのは新興国で、工場建設も海外が中心、こういう言葉もあるわけであります。これまで行ってきた国内設備投資の促進策がどうだったのか、この点での総括が必要だと考えます。
 二〇〇九年度から実施をされております外国子会社配当益金不算入制度は、経産省の説明によりますと、国際展開する我が国企業の外国子会社が獲得する利益について、税制に左右されずに、必要な時期に必要な金額を国内に戻すことが可能となるよう国際租税制度を整備する、国内に還流する利益が設備投資、研究開発、雇用等幅広く多様な分野で用いられ、我が国経済の活力向上につながることが期待される、このように述べております。国内設備投資促進や雇用につながることを期待された制度であります。
 国税庁にお尋ねをいたします。
 この外国子会社から受ける配当等の益金不算入額について、二〇一〇年度分及び二〇一一年度分が幾らなのか、その額をお示しください。

○上羅政府参考人 お答え申し上げます。
 国税庁の会社標本調査によれば、外国子会社から受ける配当等の益金不算入額の総額は、二〇一〇年度、平成二十二年度は三兆九千四百十七億円、二〇一一年度、平成二十三年度は三兆九千三百八十四億円となっております。
 以上でございます。

○塩川委員 数字が出ています二〇一〇年度分、二〇一一年度分、約四兆円ということであります。その九割が資本金百億円以上や連結法人企業、いわゆる多国籍企業でありまして、当然、当該企業には減税効果となり、国、地方には税の減収となる措置であります。
 そこで経産省にお尋ねしますが、この外国子会社配当益金不算入制度導入後の対外直接投資収益と配当金の推移はどうなっているのかについてお答えください。

○横尾政府参考人 お答え申し上げます。
 日本銀行の国際収支統計によれば、対外直接投資収益は、二〇一〇年の三・二八兆円からふえておりまして、二〇一二年に五・三九兆円になっております。
 これは、御指摘のとおり、外国子会社における内部留保と国内還流した配当金等に分けられるわけでございます。外国子会社における内部留保につきましては、二〇一〇年〇・一五兆円、一一年一・二三兆円、一二年二・一二兆円。また、国内還流した配当金等につきましては、二〇一〇年三・一三兆円、一一年三・二三兆円、一二年三・二七兆円という推移になってございます。

○塩川委員 資料をお配りさせていただきました。「国内還流した配当金の推移」ということで、今御説明があったとおり、「「外国子会社配当益金不算入制度」の導入等により、国内還流した配当金は〇八年の二・四兆円から、〇九年は三・〇兆円と約二割強の増加。」ここに制度が導入されたということがあるわけです。「二〇一〇年以降においても国内還流した配当金は安定的に推移。」と書かれております。このグラフを見ると、リーマン・ショック対応で一時的にふえ、その後、国内還流した配当金は横ばいで、一方、海外での内部留保が一貫して増加をするという状況であります。
 こういった外国子会社配当益金不算入制度ですけれども、制度を導入した趣旨でもありました国内の設備投資はこの制度を通じて実際にふえたのか。この点については大臣はどのように受けとめておられますか。

○茂木国務大臣 図をお示しいただいたんですけれども、こういう状況であるから、やはり成長戦略をきちんとつくらなければいけない。
 別に、民主党政権、その前の自民党政権、どこが悪かったと申し上げるつもりはありませんけれども、デフレ、円高だったんです。ですから、国内に資金を還流してもそこで新しい事業展開がなかなかできない、そして、国内の需要が低迷をしているという状況でありますから、そういったことが起こったんです。
 先ほどホンダの寄居工場のお話をしていただきました。御案内のとおり、あそこは、一旦つくり始めたのをとめたんです。ところが、安倍政権になって、新しいアベノミクスのもとで国内も変わっていくということで、世界の中心になるようなマザー工場をホンダもつくるようになってきた。こういった動きを我々は本格化していきたい。そのためにも、そのキードライバーとなる法案として、この産業競争力強化法案の早期の成立をお願いしているところであります。

○塩川委員 ホンダの埼玉工場は、私は狭山市のそばにずっと暮らしておりましたが、あそこ自体が手狭になったことも背景にあります。寄居に移る際には、地元自治体のいろいろな支援もあった中での建設でもあるわけです。そういったものがこの先、こういった大きな企業において、国内の設備投資に本当につながるような取り組みになってくるのかということが今問われているわけであります。
 この間ふえているのは海外での設備投資でありまして、最新の「我が国企業の海外事業活動」、経産省の貿易経済協力局がまとめているものですけれども、これによると、設備投資全体に占める海外の割合は〇九年の一五・九%、一〇年度一七・一%、十一年度二一・六%と上昇し、一方、国内設備投資は落ち込んだままであります。ですから、外国子会社配当益金不算入制度自体が国内設備投資促進につながっているものではないということが、この数字でも見てとれるわけであります。
 内部留保が積み上がっているわけで、その内部留保が、海外で留保するか、国内で留保するか、そのどちらかの違いでしかない。この制度によって実際に起こったのは、税収にその分穴があいたという現状であるわけです。
 そういった点で、ずっと議論してまいりましたように、多国籍企業への支援が国民の利益、日本経済の産業競争力の強化につながるのかということが問題です。
 経産省にお尋ねしますが、産活法の経産省認定企業約四百社のうち、いわゆる多国籍企業は何社あるのか、この点についてお答えください。

○菅原政府参考人 前回の塩川議員の御質問に対して、大臣から、多国籍企業の定義はOECDガイドラインによれば複数の国に拠点を設立している企業というふうにお答え申し上げたと思います。
 具体的には、日本企業であって他国に設立されている販売拠点や生産拠点を海外子会社として連結している企業などが多国籍企業に当たるものと考えられます。
 これに対して、議員御案内のとおり、産活法は国内で事業を営む事業者の国内事業の生産性向上の支援を目的としていることから、先ほど申し上げた、たとえ海外に連結子会社を持っている多国籍企業でありましても、国内で事業を行っている単体ベースでの申請を受け付けてございます。このため、産活法認定事業者については、厳密にOECDガイドラインの定義を適用しますと、ほとんどの認定事業者が多国籍企業ではない、国内単体事業者ということになります。
 ただ、もしお尋ねが、こうした産活法で認定した単体ベースの事業者を連結ベースでの企業グループとして見た場合にどれだけ多国籍企業があるかということでしたら、申請書には海外拠点についての記載はございませんので、正確な数字を把握することは不可能だと思っております。
 ちなみに、経産省が認定した四百社のうち東証一部に上場している企業は約百社ございます。東証一部に上場している企業であれば海外にも拠点を有していると推定されますので、少なくとも百社は連結ベースでは多国籍企業に当たるというふうに考えてございます。

○塩川委員 全体はわからないということで残念でありますが、海外拠点が多い企業は皆大手企業でありまして、私の事務所で九九年の発足から二〇〇四年六月までを数えました。もっとやりたかったんですけれども、時間がないものですから。そういう中で見ますと、百七十四分の九十四で、五四%が多国籍企業に相当する。しかも、巨大な企業でもあります。
 ですから、私が指摘しましたように、産活法そのものが多国籍企業支援法だと。九二年の通商白書をいつも引用しますが、国家の産業競争力が当該国企業の産業競争力と厳密に一致しなくなっている、こういう事態が生まれている。多国籍企業の産業競争力強化策は日本の産業競争力強化にはつながっていない。こういう点を改めて指摘して、時間が参りましたので終わります。