国会質問

<第185臨時国会 2013年11月19日 本会議 11号>




○塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、産業競争力強化法案に対し、反対の討論を行います。(拍手)
 安倍総理は、この臨時国会を成長戦略実行国会にすると述べ、日本再興戦略を具体的に実行するために、産業競争力強化法案を国会に提出しました。ところが、本法案が審議入りした十月二十九日、総理の姿は議場にありませんでした。原発売り込みのトップセールスのため、トルコを訪問していたのです。
 半年足らずで二度の訪問という熱のこもったセールスのおかげか、三菱重工業や伊藤忠商事が加わった日仏企業連合が原発建設を受注することが実質的に合意をされました。
 福島原発事故は依然として事故原因の究明にすら至らず、ふえ続ける汚染水の処理すらままならない中、我が国同様世界有数の地震国であるトルコへの原発輸出など、無責任きわまりありません。福島では、震災から三度目の冬を前にして、いまだ十四万人以上の方が厳しい避難生活を強いられています。福島県民の苦しみに背を向けるものであり、厳しく抗議をするものであります。
 産業競争力強化法案の根本的な問題点は、世界で一番企業が活動しやすい国に日本をつくりかえると称し、産業再編の促進策や企業単位の規制緩和の仕組みを盛り込んでいることです。
 しかし、この二十年間に及ぶ構造改革と規制緩和の結果はどうだったでしょうか。自動車、電機などの大企業が世界に名立たる多国籍企業に成長しただけで、国民には貧困と格差しかもたらさなかったのであります。
 多国籍企業の競争力を強化することが、国民の利益と一致しないばかりか、対立するものとなっていることは明白であり、本法案は、この矛盾を一層深めるものにしかなりません。
 反対理由の第一は、本法案が、株主資本利益率、ROEの向上を最優先とした、大企業のリストラ支援法である産活法を継承するものだからです。
 産活法の経産省認定企業のおよそ半分は、多国籍企業であります。政府は、産活法によるリストラ支援に加え、持ち株会社の解禁や会社分割など大企業の組織再編は熱心に整備する一方、労働者保護に係る制度の整備は放置したままであります。その結果、持ち株会社や企業を実質支配するファンドらによる不当労働行為を招き、労働者の地位は不当に害されているではありませんか。
 それなのに、産業競争力会議では、雇用分野を岩盤規制だと敵視し、さらなる労働法制改悪をたくらむなど、絶対に許されません。
 第二は、企業実証特例制度やグレーゾーン解消制度を突破口に、規制緩和を全国展開する仕組みとなっているからです。
 これらの制度で企業が提案できる規制には、何ら制約がありません。労働者が人たるに値する生活を営むための最低基準である労働法制を企業単位で緩和するなど、断じて認められません。企業ビジネスのために国民の暮らしや安全を損なう規制緩和の仕組みは、容認できません。
 第三は、法案と一体に整備される与党税制改正大綱による減税措置を加えても、多国籍企業の国内投資と雇用がふえる保証が全くないからです。
 質疑で明らかにしたように、海外法人の資金の国内還流を促進するとして導入され、毎年度四兆円にも及ぶ海外子会社配当益金不算入の実績を見ても、国内での投資も雇用もふえませんでした。結局、多国籍企業の内部留保の積み増しを加速し、国と地方の税収に大穴をあけただけであります。
 多国籍企業、大企業の応援ではなく、国民の所得をふやし、中小企業と地域経済を応援する方向に政策を切りかえてこそ日本経済全体の発展につながることを最後に指摘し、反対の討論といたします。(拍手)