国会質問

<第185臨時国会 2013年11月20日 経済産業委員会 8号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、一般質疑ということで、東京電力から石崎副社長にお越しいただきました。
 早速質問をいたします。
 十一月八日に、東京電力が緊急安全対策を発表いたしました。作業員の労働環境において、設計上の労務費割り増し分の増額として、敷地内作業に適用する設計上の労務費割り増し分の増額が日当たり一万円を日当たり二万円ということで、十二月発注分以降の実施となっております。
 この趣旨について、まず御説明をいただけますか。

○石崎参考人 お答えさせていただきます。
 私どもは、廃炉作業そのものは三十年も四十年もかかる作業でございます。そういった作業で、今、国民の皆様に大変な御迷惑、御不安を与えていることを、この場をおかりしましてまずはおわび申し上げます。本当に申しわけございません。
 そして、この作業は、これから作業員の方を長く確保しなければいけない、そういう作業でございまして、今までも私どもは設計上の割り増し単価というものを設けておりましたけれども、それをさらに今回はっきりと、一万円から二万円という金額を具体的に公表させていただきまして、元請会社からいわゆる下請の会社の作業員の方にしっかりとそういった数字が認知される、そしてしっかりとその分が渡るということを期待しまして公表させていただいたものでございます。
 それによりまして、これからも、長い間の作業員の確保、そして作業をやっていただける方のモチベーションの維持というものも期待しているところでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 作業員を長く確保する必要がある、この額を公表することで元請、下請作業員に認知されることを期待しているという話であります。現場におきましては歓迎の声もございますし、同時に、本当に上がるのかという疑念の声があるのも率直なところであります。
 そういう点では、確実に、現場の作業員の方の賃金、日当が上がるということに、やはり発注者として責任を持って取り組む必要があるんじゃないのか。ですから、発注者として、現場作業員にとって確実に賃上げにつながる措置をとっていただきたいと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

○石崎参考人 おっしゃるとおりでございまして、私どもはまずは、こういった数字は今まで公表しておりませんでしたけれども、公表したということに一つ大きな意味があるというふうに思っております。数字を公表したからには、元請の会社からしっかりと下請の作業の皆さんに渡るということを大きく期待しているところでございますけれども、その確実性の担保という意味ではいろいろこれからも工夫をしなければいけないと思っております。
 一つは、私どもが直接下請の方に指示をするわけにはいきませんけれども、アンケートというような形で、実際にどういうふうに賃金を受け取っておられるか、そんなこともやる必要があるというふうに考えておりまして、既にやっている部分もございますけれども、そういった工夫をこれからもやりながら、実態をしっかりと注視してまいりたいと思います。
 もし何かあれば改善を、さらに元請の会社さんにもしっかりと私どもから注意喚起をするというようなこともあわせてやってまいりたいと思います。
 以上でございます。

○塩川委員 確実性の担保が必要ということで、アンケートなど、実際にどういうふうに賃金を受け取っているのか、こういうことの確認もしたいということです。
 もともと、去年アンケートをし、ことしもアンケートを行っている。去年のアンケートの賃金については、最賃との関係で上ですか下ですか、こういう中身でありました。ことしはそういう項目もなくて、契約上の中身がしっかり守られていますかという趣旨のアンケートになっているわけです。
 ですから、私はぜひ、アンケートということであれば、やっていただきたいのが、確実に賃上げにつなげるためにも、作業員の方の賃金の実額について、幾らですかと。その実額を把握する実態調査のアンケートを実施する、こういうことについてはいかがでしょうか。

○石崎参考人 お答えいたします。
 今御指摘の点も含めて、私どももまだまだ工夫の余地があろうかと思っております。そういった点も含めて、幅広く検討、努力をしてまいります。
 以上でございます。

○塩川委員 過酷な労働環境に見合った賃金に引き上げるために、全力を挙げていただきたいと思います。
 次に、東京電力への金融機関の資金供与の問題についてお尋ねをいたします。
 会計検査院においでいただいております。
 会計検査院が、東京電力株式会社に係る原子力損害の賠償に関する国の支援等の実施状況に関する会計検査の結果について、十月に報告書をまとめ公表しております。その内容に沿って何点か、会計検査院にまず伺います。
 総合特別事業計画においては、財務基盤の強化として金融機関に要請をするというふうになっているわけですけれども、金融機関に対しどのようなことを求めているのか。この点について教えてください。

○太田会計検査院当局者 お答え申し上げます。
 総合特別事業計画におきましては、金融機関に対しまして、社債市場への復帰等自律的な資金調達力が回復するまでの間、借りかえなどにより与信を維持すること、新規融資等の実行、短期の融資枠の設定等を行うこと、二十三年三月十一日から同年九月末日までの間に東京電力から弁済された額と同額の資金供与を行うことについて、協力要請を行うことが記載されたと承知しております。

○塩川委員 これまでの資金供与については維持してくださいねという与信の維持、それからニューマネーの提供ということ、あと、事故後減った分についてはもとに戻してくださいねという復元、この三つということであります。
 そこで、総合特別事業計画の要請に沿って東電として金融機関に要請を行ったわけですけれども、会計検査院から、その結果がどうだったかについてお答えいただけますか。

○太田会計検査院当局者 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げました与信維持の協力要請を受けたものが七十七金融機関ございます。それにつきましては、弁済期限が到来した借入金を随時信託スキームの私募債引き受けなどによる資金供給にかえておりまして、平成二十五年三月末時点におきまして、借入金及び私募債の発行残高は四兆一千八百五十八億余円となっております。
 それから、新規融資実行及び短期融資枠設定の協力要請を受けました十一金融機関でございますが、二十四年七月に東京電力に対する三千九百九十九億余円の短期融資枠を設定するとともに、二十四年八月には信託スキームの私募債引き受けなどによりまして、協力要請額四千九百九十九億余円の一部であります一千九百九十九億余円を供給しております。また、資金供与の協力要請を受けました三十金融機関でございますけれども、二十四年八月に一千六百九十九億余円の融資を行っております。

○塩川委員 その資金供与において、ここに信託スキームの私募債引き受け等とありますけれども、この信託スキームの私募債というのはどういうものでしょうか。

○太田会計検査院当局者 お答え申し上げます。
 東京電力が信託受託者に金銭を信託することによりまして信託勘定を設定した上で、まず金融機関が信託勘定への融資を行い、次に信託受託者が当該融資をもとにして東京電力に資金を供給する信託スキームを利用することになったものでございますけれども、この信託スキームの中で長期資金につきましては信託受託者が東京電力の社債を引き受ける形態をとっておりまして、金融機関の融資に実質的に一般担保が付されることとなったと承知しております。

○塩川委員 一般担保が付された社債ということで、東京電力の石崎副社長に確認ですけれども、この私募債というのは一般担保つきの社債に相当するものだと思いますけれども、そのとおりでよろしいでしょうか。

○石崎参考人 お答え申し上げます。
 おっしゃるとおりでございます。

○塩川委員 そこで、重ねて石崎副社長にお尋ねします。
 総合特別事業計画を踏まえて、昨年八月以降ことし三月末までの金融機関からの資金供与というのは、そのほとんどが私募債ではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。

○石崎参考人 お答え申し上げます。
 結果として、私募債の残高は七千二百六十四億ございます。
 以上でございます。

○塩川委員 私募債の三月末の残高が七千二百六十四億。要するに、昨年の八月以降の金融機関からの資金供与において、私募債が大半を占めているんじゃないかということをお尋ねしたんですが、いかがですか。

○石崎参考人 お答え申し上げます。
 七千二百六十四億のうち四百九十九億円は新規融資分でございます。残額につきましては、与信の維持、復元に該当するというものでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 ニューマネーの部分について、昨年八月は二千億円、これは当然のことながら私募債に当たると思いますが、いかがですか。

○石崎参考人 お答え申し上げます。
 そのうちの一千五百億は、政策投資銀行からの融資ということになっております。
 以上でございます。

○塩川委員 政策投資銀行の融資については一般担保つきでありますけれども、政策投資銀行を除いた金融機関から昨年八月以降に資金供与を受けたものについては、短期のものを除いて、長期のものは私募債で対応しているということですね。

○石崎参考人 お答え申し上げます。
 私どもは今、非常に経営状況が苦しいということ、その中で廃炉や賠償や除染等々の責任を果たすためにはやはり金融機関の方からの御協力が必要だというふうに考えておりまして、私募債を発行せざるを得ないという状況につきましては何とぞ御理解を賜りたいと思います。そういう状況でございます。よろしくお願いいたします。

○塩川委員 改めてお答えいただきたいんですけれども、昨年八月以降に政投銀を除く金融機関から東電が資金供与を受けた、それは、短期のものを除けば、長期のものは私募債で対応してきたということでよろしいですか。

○石崎参考人 お答え申し上げます。
 政策投資銀行以外のものは私募債ということで御理解賜りたいと思います。よろしくお願いします。

○塩川委員 確認ですけれども、短期融資額の三月末の残高は九十五億円と承知しておりますけれども、よろしいでしょうか。

○石崎参考人 お答え申し上げます。
 そのとおりでございます。

○塩川委員 ですから、与信の維持、あるいはニューマネー、減った分を戻したという復元、こういうことで、総合特別事業計画を踏まえた金融機関への要請に対して、金融機関側からその要請に応えた対応というのは、昨年八月以降の資金供与においては、短期の九十五億円を除けば、残りの大半、長期のものについては私募債で対応してきた、その額が七千二百六十四億円というのは、改めてですけれども、よろしいでしょうか。

○石崎参考人 お答え申し上げます。
 今委員のおっしゃるとおりでございます。

○塩川委員 これは三月末の数字ですけれども、七千二百六十四億円の私募債は三月末ですが、その後、十一月まで来ているわけですけれども、直近の数字でこの私募債の発行残高がどのぐらいになっているかというのは、今おわかりになるでしょうか。

○石崎参考人 お答え申し上げます。
 先ほど三月末の数字は申し上げましたけれども、申しわけございませんが、直近の数字は今手元にございません。よろしくお願いいたします。

○塩川委員 この間の資金の供与というのも私募債で対応されてこられたのか。その点はいかがですか。

○石崎参考人 お答え申し上げます。
 私どもは、繰り返しになりますけれども、経営状況がこういう状況でございまして、その中で、私どもの責任、廃炉、賠償、そして除染等、さらには安定供給、これをしっかりと果たすためには私募債に頼らざるを得ないというような状況もございます。その点は何とぞ御理解賜りたいと存じます。よろしくお願いします。

○塩川委員 十二月末に資金供与という話も報道されております。これはニューマネーの部分ということで言われておりますけれども、一度ニューマネーの部分を返してまとめてとか、もう一回供与を受けるとか、いろいろやりとりはあると思うんですが、今後についても、例えば十二月に予定している資金供与というのも私募債ということになるんでしょうか。

○石崎参考人 お答え申し上げます。
 十二月に予定しておりますのは、まず新規与信として三千億、そして二千億の借りかえを予定しておりますけれども、そのうちの半分以上は私募債の形式をとらざるを得ないというふうに考えております。
 ただ、私募債の発行に当たっては、私どもは、公募債の償還の進捗ぐあい等に留意しながら、震災前に一般担保が付されていた総量を上回らないように努力をしてまいる所存でございます。
 いずれにしましても、今後も、経営状況を踏まえて適正な運営に努めてまいります。どうぞよろしく御理解賜りたいと思います。

○塩川委員 大臣にお尋ねいたします。
 昨年八月以降、金融機関が東電に供与した資金はほとんどが私募債ということになっております。金融機関では、それまでの担保なしの債権をいわば担保つきの債権につけかえるということが実際に行われています。
 今、原発事故の被害者の方々の賠償問題が解決しない。こういう原発事故被害者の賠償よりも、電力債に相当する私募債という形であれば、金融機関の債権の方が優先される、そういう状況については、私は、原発事故被害者の方々の理解が得られないのではないかと考えますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

○茂木国務大臣 恐らく、東電の資金繰りの問題については、事故前と事故後を比べてどうなっているかということから始めなければいけないと思います。
 御案内のとおり、震災後、東電が公募債を発行できない状況が続いている中で、金融機関によります融資が公募債の目減り分を基本的に補完している状況であります。
 公募債は、平成二十二年の三月期から平成二十五年の三月期でマイナスの一兆四千九百六十九億円、これだけ減っております。一方で、長期の借入金につきましては、同じ期間でプラスの一兆六千八百六十六億円、こういった形であります。これが基本構造の中で、長期の資金調達の手段として私募債という形式が一部とられるということになっている、このように理解をいたしております。
 私募債は、御案内のとおり、公募債より弾力的な発行が可能であります。ただ、法律に基づく一般担保が付されることになりますから、発行に当たっては公募債の償還等を踏まえつつ事故前に一般担保が付されていた総量を上回らないようにするという答弁が今ございまして、一般担保が付された社債、借入金の残高は、事故前が五兆五千六百六十七億に対しまして、平成二十五年三月期、一番新しい数字で持っておりますのは五兆百四十八億。五千億のうち半分以上が私募債であっても、この基準は満たすことになると思っております。

○塩川委員 会計検査院の報告書の中に、東電の資金調達先の推移があって、そこで、いわば一般担保つきの政投銀の融資を除く、担保がつかない金融機関の融資の額、二十三年の三月末、二〇一一年の事故後に担保なしで金融機関も融資しました、そのときの額が三兆五千百四十六億円なんです。それに対して、今の三月末でいうと、それが二兆八千四百八十一億円に減っているんですよ。そのかわりに、今言った一般担保つきの社債が七千二百六十四億円になっているわけですから、事故後で見て、今までの担保なしの債権が担保つきに切りかわっているというのが実態であるわけです。
 そういう点でも、東電への貸し手責任が問われる金融機関がみずからの融資を一般債権より優先して弁済される電力債に置きかえているというのは、私は、国民の理解を得られないし、ましてや原発事故被害者の理解が得られないということを言い、こういうスキームの検証と総括こそ必要だということを申し上げて、質問を終わります。