国会質問

<第185臨時国会 2013年11月27日 内閣委員会 9号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 国公法の改正案について質問をいたします。内閣委員会での質問は久しぶりですので、どうぞよろしくお願いいたします。
 最初に、幹部人事の一元化、一元管理についてお尋ねをいたします。
 今回の幹部人事の一元管理において、各大臣と総理、官房長官の任免協議が行われます。この法改正では、幹部職員の任用に当たって、各大臣は、幹部職への昇任、転任等を行う場合には、あらかじめ総理、官房長官に協議をする。その際、官職への適性とともに、政策推進上最適な者となっているか、また、政府全体の人事方針との整合性の観点から協議が行われる。そして、総理、官房長官は、幹部職員について、適切な人事管理を確保するため必要と認めるときは、各大臣に対し、協議を求めることができる。これは、幹部人事一元管理における任免協議の中身だと思いますが、確認でお願いします。

○川淵政府参考人 お答え申し上げます。
 任免協議でございますけれども、幹部職員を任免する際に、あらかじめ適格性審査を経て幹部候補者名簿に掲載されている者の中から任命権者たる各大臣が作成した人事案について、大臣と内閣総理大臣及び官房長官が協議を行うものでございます。この任免協議におきましては、個々の人事案について、官職への適性及び政府全体の人事方針との整合性等の観点から協議し、大臣は協議に基づいて幹部職員の任免を行うということでございます。

○塩川委員 幹部職員について適切な人事管理を確保するため必要と認めるときは、総理、官房長官は各大臣に対し協議を求めることができる、そういうふうになっているということはよろしいですか。

○川淵政府参考人 委員御指摘のとおりでございます。

○塩川委員 これまでは、任命権者の大臣が幹部の任免を行ってまいりました。この法案で、総理、官房長官が幹部職の任免の事前チェック、あるいは任用後の変更も求めることができるようになります。
 そこで、お尋ねしたいのが、適切な人事管理を確保するため必要と認めるとき、これはどのような場合を指しているのでしょうか。

○川淵政府参考人 適切な人事管理のために必要と認めるときでございますけれども、任命権者、各大臣から示された案に対しまして、さらに適切な人事があり得るのではないかというときには協議を求めることができるということでございます。

○塩川委員 適切な人事を求めるときには協議ができる、つまり、適材適所の人事管理の観点から、その職員をより適合する職員と交代させる方がいいと判断する場合などを想定しているということでよろしいですか。

○川淵政府参考人 委員御指摘のような場合を想定しております。

○塩川委員 ですから、要するに、政府の方針との関係でよりふさわしい者を差しかえるということもできるということを想定しているということです。幹部人事に当たりまして、総理大臣の権限が強化をされるという中身であります。
 そこで、菅官房長官にお尋ねいたします。
 菅官房長官が、先週末ですか、十一月二十三日の発言が紹介されておりました。官邸のリーダーシップの件ですけれども、今回の法案は、第一次安倍内閣から始まった公務員制度改革を引き継ぐもので、人事の柔軟性を高め、官邸のリーダーシップを強めて縦割り行政を打破し、やる気のある大きな視点を持った公務員を育てて、官僚機構の力の発揮を目指すものですと述べておられると承知をしております。
 そこでお尋ねしたいのが、この幹部人事の一元化、一元管理とは、縦割り行政を打破するために、官邸のリーダーシップ、つまり総理のリーダーシップ、これを強めるということが大きな目的と受けとめましたけれども、その点についてはいかがでしょうか。

○菅国務大臣 私がブログの中に書いたところでありますけれども、やはり今回の法案というのは、政府として総合的人材戦略を担う内閣人事局を新たに設置し、幹部職員の人事一元化によって内閣の重要政策に対応した戦略的人材配置を実現すること等によって、職員一人一人の職務の意欲を引き出して、政府一丸となって国益や国民のために迅速に対応できるような、そういう目的のためにこうした法案を出させていただいておるところでありまして、そういう意味におきまして、官邸のリーダーシップを強める、そういう表現をさせていただきました。

○塩川委員 ブログの中身ということで、官邸のリーダーシップ、総理のリーダーシップを強めることで縦割り行政を打破して、戦略的人材配置を行っていくということであります。
 稲田大臣にお尋ねいたします。
 総理のリーダーシップのもと、縦割り行政の弊害を排除するため幹部人事の一元管理を行うということですけれども、ここで言っている縦割り行政の弊害、これはどんなものを具体的に指しておられるのか、御説明いただけますか。

○稲田国務大臣 各省がそれぞれ人事をやり人材戦略をやっているだけでは、政府一丸となった人材戦略というのは図れないと思います。
 そういう積極的な意味における縦割り行政の弊害という意味もありますし、また、規制改革をやっている中で、規制官庁がなぜ規制を強化し続けるのか、もう不合理になった規制を放置したり、また法律以上に規制を強化しているのはなぜなのかと考えたときに、きちんと規制を排除した官僚が登用される仕組み、また行革、行政事業レビューをやっている中でも、無駄な事業を排除する、予算を排除する、なぜ進まないのかというと、その省にとって無駄な事業を排除し予算を削減した人がきちんと、省益には合致しないかもしれないけれども、大きな政府の中では登用される仕組みが必要であるということを痛感したということでございます。

○塩川委員 無駄の排除などを進めていく、省益にこだわらないという立場での改革が必要だ、そういう点での人材配置ということもありますし、規制改革の観点からということで、今の御答弁でも、不合理な規制とか法律以上の過度な規制とか、こういうものが縦割り行政の弊害としてあるというお話でありました。
 これは、過去、稲田大臣の記者会見等々の発言でも、岩盤のような規制ということをおっしゃっておられます、その規制改革との関係で。
 例えば六月二十五日の記者会見では、規制改革会議を見ていても、やはりこの縦割り行政の弊害というのは排除しなければならないと思っている、なぜこんなに岩盤のような規制がいつまでも残っているのかというと、やはり省庁ごとの縦割りがあって、なかなかその規制を取り払うことのインセンティブが働かない、省庁を横断した形の人事をやるということは、縦割り行政の弊害を除去することについて非常に有益だ、このように述べておられます。
 縦割り行政の弊害というのは、岩盤のような規制を取り払うインセンティブが働かないことだということですけれども、ここでおっしゃっておられる岩盤のような規制というのは何を指しておられるんでしょうか。

○稲田国務大臣 いわゆる岩盤のようなというのは、なかなか規制改革が進まない現状について表現をしたものであります。
 今、規制改革が進まない理由、それから、行政改革、事業の無駄が排除できないことも行政の縦割りの弊害であるし、それ以上に、積極的に、例えばTPPだとか、その省庁だけではなくて政府横断的な人材戦略が要求されている時代でもあるというふうに思います。

○塩川委員 岩盤規制が縦割り行政の弊害として例示をされて、それを取り除くための幹部人事の一元管理ということですから、岩盤のような規制がどのようなものかというのは大事な点だと思います。
 稲田大臣が担当されておられます規制改革において、規制改革会議の場でも、今、五つのワーキンググループですか、そこでは、健康・医療や農業、雇用のワーキンググループがあるわけであります。
 例えば、第十二回の規制改革会議の議事録を拝見しますと、六月の五日ですが、稲田大臣は、各ワーキンググループでヒアリングをし、岩盤のような役所を相手にいろいろな突っ込みをやっていただいたなどと述べておられます。
 ですから、岩盤規制という場合には、ワーキンググループで取り上げているような医療とか農業とか雇用とか、こういったものに岩盤規制があるという受けとめということでよろしいですか。

○稲田国務大臣 その時々で表現をいたしておりますので、六月五日にどういう趣旨だったかはちょっと覚えていませんけれども、多分、例えばインターネットの薬販売ですね。これは、何回も何回もずっと長年規制改革会議で提言をしながら、なかなか改善することができなかった。ことしの一月に最高裁判決が出て、初めて一類、二類、三類のインターネット販売ができるようになったわけであります。
 それは、法律では規制していなかったものを、法律ではない省令において規制を強化していた。それもまた、私は、岩盤の一つであるというふうに認識をして発言をしたのではないかというふうに思います。

○塩川委員 インターネットの薬の販売の最高裁の判決というのは、そもそも本来法律で決めるようなことを省令でやっているのはまずいよというところがポイントであって、やはり安全にかかわる規制は必要だという点は変わりがないわけであります。そういう点でも、岩盤規制と言われている中身として医療とか農業とか雇用というのがあるというのは、私は、暮らしや安全にかかわる規制という点でも見逃すことはできないなと思っております。
 例えば、産業競争力会議の議員でもあります竹中平蔵氏は、この会議の場で、農業と医療と労働などの領域を岩盤規制として、その見直しということを強く主張しておられます。縦割り行政の打破などといって、労働規制など、国民の暮らしと安全にかかわる規制を取り払うような、そういうものとして幹部人事の一元管理が使われるようであれば、極めて重大だと言わざるを得ません。
 総理がリーダーシップを発揮されるという点でいえば、成長戦略で日本再興戦略がございます。その中でも、成長戦略の一丁目一番地としては規制改革を挙げておりますし、規制改革の中身としての規制緩和では、労働時間法制の見直しですとか労働者派遣制度の見直しなど、労働規制の見直しも掲げております。
 大臣も御存じだと思いますが、三層構造で規制緩和するという話がありまして、国家単位と戦略地域単位と企業単位の三層構造で規制改革、規制緩和を進めるということが挙げられておりますけれども、この日本再興戦略、総理のリーダーシップとして行う成長戦略である日本再興戦略の具体化を目指す実行計画としているのが、経済産業委員会で議論をしております産業競争力強化法案であります。
 この中で、企業単位の規制緩和を進める仕組みとして、企業実証特例制度というのがあります。要するに、企業から事業官庁に対して、こういう分野についての規制緩和を求めたいといった際に、代替措置とセットで提案をすることで、事業官庁がそれを受けとめれば、規制官庁と協議を行っていくという仕組みになっているわけですね。
 ですから、そういう意味では、企業の代理人として事業官庁がいて、規制官庁と交渉する仕組みというのが、この企業実証特例制度になっております。
 私は、そういう仕組みと今回のを重ねたときに、非常に懸念があるわけですけれども、本来、事業官庁と規制官庁は立場が違うわけですけれども、それを入れかえるようなことがあれば事が速く進むんじゃないかとか、そういう話というのは出てくるわけです。
 総務省にお尋ねいたしますが、これまで、経産省と労働規制などを担当する厚労省の間で、審議官級以上の幹部の人事交流というのはあるんでしょうか。

○笹島政府参考人 お答え申し上げます。
 本来、総務省といたしましては、各省間の具体的な人事交流の内容について把握する立場ではございませんけれども、今般、経済産業省及び厚生労働省から聞いたところで申し上げますと、両省の間において、平成二十五年四月一日現在で、審議官級以上の人事交流はなされていないというふうに承知しております。

○塩川委員 過去にさかのぼってはどうでしょうか。

○笹島政府参考人 これについても、過去五年間についても聞いてみたところ、両省の間におきまして、審議官級以上の人事交流はなされていないと承知しております。

○塩川委員 ですから、三層構造の規制緩和の一つ、企業単位での規制緩和を行うための企業実証特例制度は、企業の代理人として事業官庁が規制官庁と協議をしますという仕組みになります。そういったときに、幹部人事において、規制官庁の規制の担当の部署の幹部に対し、事業者、企業の代理人として働いている経産省のところから幹部が厚労省に入るということがあると、非常に事が速く進むんじゃないかということを思うわけです。
 仕組み上としては、プールをつくるという今回の一元管理において、今言ったように、事業官庁と規制官庁の間の幹部の入れかえというのも、それは可能という仕組みなんですよね。

○稲田国務大臣 能力・実績主義に基づいて、適材適所の観点から、内閣官房長官、総理が任免協議ができるということでございます。

○塩川委員 ですから、適材適所ということで、成長戦略、日本再興戦略の具体化を図っていく。
 それで、日本再興戦略の中には、労働時間規制の見直し等々、労働法制の見直しについても書かれております。そういった規制を緩和するということにおいて、適材適所ということで、成長戦略、日本再興戦略を推進するというのを実行計画にしている産業競争力強化法案、そのツールの一つである企業実証特例制度を使って推進するということになれば、労働時間規制などを行うという企業側の要望があった場合に、経済産業省の官僚を厚労省の労働規制担当の幹部に任用するということで岩盤規制を突破させるということは、総理の一存で可能ということになるんじゃないでしょうか。

○稲田国務大臣 今委員は、たくさんの仮定を置いて、この場合はどうなるかという御質問ですので、具体的にはお答えできませんけれども、そのときそのときにおける適材適所を実現する、能力・実績主義を実現するということでございます。
 ただ、安倍政権が目指している、産業競争力をつけるというのは、単に経済成長だけということではなくて、国民全体の生活の向上であったり安全というものも目的としているわけでございます。

○塩川委員 労働時間規制については、労働団体は、厳しく批判、反対の声を上げております。それは、現時点でも長時間労働なんですよ。そういった長時間労働が強いられるときに、企画型裁量労働制をもっと柔軟にだとか、あるいは、残業代ゼロ法案とかというふうに言われてきたホワイトカラーエグゼンプションの導入などが図られるということになれば、それこそ天井知らずの長時間労働になりかねないという点での厳しい反対の声を上げているときに、日本経団連からは労働時間規制についての見直しの要望が出ているわけで、それに対してしかるべく歯どめをかけることなしには、国民の暮らし、安全を守ることができない。
 実際、世界で一番企業が働きやすい国をつくるというのが安倍内閣の方針だという点でいえば、私は、企業単位の特例をつくるという中で、労働時間規制を破るような、こういう仕組みにもなるようなことを行える、適材適所というふうにおっしゃいましたから、そういうことを可能とする幹部人事の一元管理というのは、国民の命と暮らしを守る規制を掘り崩す道具にもなりかねないという点で極めて重大だと考えております。
 官房長官、実際に運用されるのでお尋ねいたしますけれども、内閣の重要政策に対応した戦略的人材配置を実現するというこの幹部人事の一元管理というのは、例えば、人たるに値する最低限度の基準である労働規制など、暮らしと安全を守る規制を掘り崩す道具になりかねないのではないのか、こういう危惧の声に対して、どのように受けとめておられますか。

○菅国務大臣 そこは、全くの見解の相違かなというふうに思います。

○塩川委員 いや、大事なポイントであるからこそ議論を求めているわけで、改めてどうですか。見解の相違の、その相違の部分を説明していただけますか。

○菅国務大臣 どうしてそこまで拡大されちゃうのかなというふうに思います。
 やはり、先ほど来、稲田大臣の答弁にもありますけれども、現在の縦割り制度という中にあって、そこを戦略的に考える中で、内閣で人事を一元管理し、そして、国民のため、国益のために働くことのできる体制を私どもはつくろうとしているわけですから、そのことがなぜ、労働の、今委員の指摘のあったそうした問題まで波及するのかなということが理解できなくて、私は見解の相違じゃないかなということを申し上げました。

○塩川委員 いや、筋道を立てて御質問をしているわけで、そもそも、幹部人事の一元管理というのが縦割り行政の排除といった際に、縦割り行政の排除と言ったのは何ですかといえば、岩盤規制を取り除くことだと。岩盤規制というのは何ですかと言ったら、労働とか医療とかの分野においてそういったものがあるというのが、この間議論されていると。例示としても、規制改革会議でもまさにワーキンググループとして議論されているわけですから。そういう懸念というのは少なくない方のものだと思いますよ。
 そういったものに対して、今回のがそういうことにならないという保障というのは、どこにあるんですか。

○稲田国務大臣 縦割り行政の弊害の排除というのは、基本法五条にも書かれております。
 私の理解は、明治以降からずっと縦割り行政というのはあって、そして、その縦割りの中で人事をやって、戦略を練っていれば、それで日本が成長するという時代はもう終わっていて、そうではなくて、TPPのように、省庁横断で国益とは何かということを考える、そういう人材戦略が必要であるという意味において、縦割り行政の弊害を排するために、今、政府全体としての戦略的人事を行うために、今回の改革は必要であるというふうに思っております。
 そして、規制改革会議でそういう発言をしたことは、先生御指摘でありますので、事実でございます。それは、私は、規制改革会議にも非常にレッテル張りをされていると思います。例えば、労働の問題についても、きちんと労働者側の意見も聞き、そして学者の意見も聞き、労働者が働きやすい環境をつくる、そして、多様な選択肢もあるというような観点から、さまざま検討しているわけでありまして、岩盤規制をなくすということが、また、国家公務員制度改革をやることによって、労働、医療、雇用の、国民の安全、安心を揺るがすような改革をしようという、そういう御批判はちょっと当たらないのではないかというふうに思っております。

○塩川委員 産業競争力会議の議論の中でもこの労働問題について進めようというのに対して、ILOの勧告にもありますように、政労使の議論をしっかり前提にすると。そういう点でいえば、労政審の議論というのが土台だというのは最低限のルールだと思っておりまして、それすら脇に置くような議論が横行しているというのが現状であるわけで、私は、内閣の重要政策に対応した戦略的人材配置といった場合に、やはり、政府の重要政策に位置づけられれば、規制緩和の問題であれ、それを突破するということが人事を通じて行われるという懸念というのは拭えないということを言わざるを得ません。
 そういう点でも、労働分野など、国民の暮らしと安全を守る規制を岩盤規制などと言って打破しようとする道具として幹部人事の一元管理が使われるのではないのかという懸念が拭えないということを申し上げておきます。
 残りの時間で、天下りの問題をお尋ねいたします。
 二〇一一年の七月と十月、この内閣委員会で、私は国土交通省の天下りあっせん疑惑の問題を取り上げました。国交省のOBからの告発に基づいて、国土交通省の前審議官の天下りあっせん疑惑について追及をしたわけであります。
 国交省は、この疑惑について調査委員会を設置しましたが、結論はいずれも白という判定で、この前審議官はその後、事務方のトップであります事務次官に就任をいたしました。
 その後、この案件は再就職等監視委員会の調査を行う案件となりましたが、再就職等監視委員長にお尋ねをいたします。天下りあっせんなどの違反行為があったのかどうか、この点についてお答えいただけますか。

○羽柴参考人 お答えをいたします。
 御指摘のとおりであります。
 当委員会は、海技振興センターの事案及び日本民営鉄道協会の事案、この二つの事案において、国土交通省の元職員が、在職中に国家公務員法第百六条の二第一項に違反する行為を行ったという事実を認定いたしました。その事実を本年三月二十六日に公表いたしております。

○塩川委員 ですから、黒という判定を監視委員会は行ったわけであります。
 そこで、稲田大臣にお尋ねしますが、国公法にはあっせん行為違反などの行為に対する罰則はありませんが、こういったあっせん行為違反についてはどのような対処、処分を行うことになるんでしょうか。

○稲田国務大臣 国家公務員の再就職に関して、平成十九年の国家公務員法改正により、癒着につながりかねない行為、あっせん、働きかけ等を直接的に規制するとともに、規制違反行為に関する監視体制を整備したところであります。再就職等監視委員会による監視のもと、現行の再就職規制を厳格に運用していくことで、天下りを根絶していきたいというふうに思います。
 今の先生の御指摘が、あっせん行為違反に対して刑事罰を導入すべきという御趣旨であれば、現行……(塩川委員「いや、そういうことじゃない」と呼ぶ)そういうことではありませんか。(塩川委員「現行がどうなっているか」と呼ぶ)はい。ということでございます。

○塩川委員 ですから、懲戒処分により対応するということですよね。(稲田国務大臣「はい」と呼ぶ)はい。
 そこで、国土交通省にお尋ねをいたします。
 この前事務次官が国公法違反行為に認定されたわけですけれども、国土交通省としては、この件についてどのような措置をとったんでしょうか。

○武藤政府参考人 委員御指摘のように、ことしの三月二十六日に、再就職等監視委員会より、元国土交通事務次官に国家公務員法上の再就職規制違反行為があった旨の調査結果が通知をされたところでありまして、まず、この結果につきましては真摯に受けとめているというところでございます。
 まず、当事者である元次官に対しましては、調査結果を受けて、同日、三月二十六日に、私の前任である官房長から調査結果を伝えた上で、今後は元職員としての再就職規制を遵守するように注意を促したところでございます。
 それから、委員会の方からは意見ということで、職員あるいは元職員に対してこの法規制についての周知を図るようにということで、それぞれ、職員、元職員に対する周知徹底を図ったところでございます。

○塩川委員 もうOBですから、OBとして規制に係ることについて注意してねということを言っただけで、具体的な処分もないわけであります。
 これは、国土交通省はもともと建設省と運輸省が一緒になりました。この元審議官、前事務次官は運輸省畑の人でありまして、運輸省の方だけのいわば天下りを扱っているわけですよね。ですから、公益法人を含めたさまざまな団体に天下りをする、その場合の玉突きをする、その全体の設計図を描く、そういう立場で実際に行っていたということが、その一部であれ、その実態を再就職等監視委員会が認定したわけであります。そういう意味で、本当に構造的に行われているということが非常によくわかる事案でありました。
 要するに、処分もないというと、一言、注意してねと言うだけなんですよ。それだけでいいんですかということなんですが、国交省はそれ以上何もないんですか。

○武藤政府参考人 委員御指摘のように、懲戒処分につきましては、元次官は辞職をしたということでございまして、先ほども申し上げましたが、こういった内容について、職員及び元職員に対しまして、法律の違反はこういうケースだということについて周知徹底を図ったというところでございます。

○塩川委員 こんなので本当に天下りの問題が解決するのかと言わざるを得ません。
 再就職等監視委員長にお尋ねをいたします。
 私、先ほど申し上げましたように、二〇一一年のこの委員会での質問を通じて、国交省は二回調査委員会を立ち上げているんですよね。二回とも、調査をした結果、あっせん疑惑はなし、白という調査結果を出したわけであります。
 再就職等監視委員会は、今回、前事務次官の違法行為を認定したわけですが、監視委員会の再調査において何か新しい事実を明らかにして、それをもって違法行為を認定したのか、それとも、国交省がこの間明らかにした、私なども質問させていただき明らかにした、そういう事実が、国交省の方は白としたわけですけれども、実際には白ではなくて黒だったということなのか、その点についてお答えいただけますか。

○羽柴参考人 お答えをいたします。
 私どもの委員会は独自に調査をいたしました。その結果、御指摘のような、国交省の委員会の認定よりも、より詳しい、より突っ込んだ認定はいたしましたけれども、基本的な事実関係はそれほど変わっておりません。
 それにもかかわらず結論が違ったのはどうしてかといえば、それはやはり、ある事実に対して法的な評価をする、国公法違反があったかどうかというのは法的な評価の問題ですから、法的な評価の点で私どもの委員会は国交省の委員会とは異なる評価をしたということが、結論が異なった大きな理由であります。

○塩川委員 つまり、二〇一一年当時の国交省の調査でも、曇りない目で見れば黒だということがわかったということだと思います。
 事務次官に昇進するどころか、もともと審議官が事務次官になっているわけですから、そのときに、審議官のときに行っていた行為ですから、昇進どころか、その時点で懲戒処分じゃないでしょうか。ところが、国交省は身内の判定を行ったために、事務方のトップが国公法違反者だったという前代未聞の不祥事になったわけであります。
 前事務次官は、こういう違法認定に際して、心外な判断だ、私の発言は法律が規制しているケースに当たらないとか、法律に抵触しないように業務に当たってきたつもりであり、監視委員会の判断は心外だ、このようにマスコミの報道へのコメントを出しており、全く反省もないわけであります。
 こういった、事務次官当時にも国交省のあっせん行為違反を繰り返した可能性が否定できないわけで、疑惑があっても、監視委員会で認定する前に退職してしまえば何の処分もないというのでは、抑止力も働かないんじゃないのかというふうに思います。
 官房長官にお尋ねいたしますが、こういった、退職した後に不祥事が発覚した際に、過去の退職金の返還を可能とするような法改正なども行われたんですけれども、こういった前国交事務次官の違法行為について、安倍内閣として、こういう違法行為を行ったトップ官僚をそのまま見逃すようなことを行うのか。この点について、何らかの対応が求められるのではないかなと思うんですが、いかがでしょうか。

○菅国務大臣 御指摘をいただいています国土交通省の元職員による再就職のあっせんについては、先ほど再就職等監視委員会の委員長の御発言もありましたけれども、その調査によって国家公務員法に定める再就職あっせん規制違反行為として認定をされたわけであります。
 政府としては、こうした事案を受けて、再就職等監視委員会において談話を発表し、各府省の大臣に対し、所属職員に再就職規制を再認識するなど、制度の周知徹底というものを命じたところであります。
 今後とも、この再就職等監視委員会による監視のもと、不適切な行為を厳格に規制していくことで、再就職あっせん等を根絶し、再就職に関する国民の疑念を払拭していくことに努めていきたいと考えます。

○塩川委員 トップ官僚があっせん行為違反をしていても、何もないまま今日まで来ているということでは、私は、あっせん行為違反の実効性が問われているのではないのか。
 もう一つ、あっせん行為違反の認定に重大な問題があるという点で、私が指摘をした天下りの事件というのは、あっせん規定違反については、海技振興センターの事案と日本民営鉄道協会事案の二つがありました。もう一つ、そのほかに日本水先人会連合会の事案もあったわけで、これについては違反行為は認められなかったとしているわけですけれども、監視委員長にお尋ねしますが、これは白ということだったんでしょうか、グレーなんでしょうか。

○羽柴参考人 お答えをいたします。
 御指摘の日本水先人会連合会事案でありますが、私ども、規制違反があるのではないかということで調査をいたしました。最終的には、おっしゃるとおり、規制違反とは認定しておりません。
 詳しいことは、なかなかここで申し上げることはできないことでございますけれども、違反があるのではないかという疑いは率直に言って残りましたけれども、最終的に、規制違反があると断定をするには至らなかった。
 その理由、さまざまな点がございますが、例えば、証拠の中で、関係者の会話が出てまいりますが、いわゆる伝聞証拠であったということがございます。おわかりのとおり、伝聞証拠というのは、やはりある程度、証明力が劣るものというふうに考えられます。そういったもろもろの問題点がございまして、最終的に、総合的には、規制違反ありという認定には至らなかったということであります。

○塩川委員 つまり、海技振興センターと日本民営鉄道協会の件は、録音のデータがあったんですよね。それに対して、この日本水先人会連合会は伝聞証拠とおっしゃったという、そこの違いというのが、結果として、一方は黒で、一方は黒にならない、疑いがあるという、グレーということになったわけであります。
 私、これを見ても、このあっせん行為違反を認定するというのはなかなか難しいんじゃないのかなと率直に思うんですけれども、監視委員長としてはいかがですか。

○羽柴参考人 私の今の立場からすると、はい、難しいですということは申し上げるわけにいきませんので、一生懸命やっております。

○塩川委員 いや、つまり、私は、こういった天下りを根絶するという立場であるのであれば、そもそも、もともと事前規制だったものを事後規制にし、天下りの原則禁止からあっせんの禁止の規制へと変えてきたという経緯があるわけであります。
 官房長官に最後にお尋ねしますが、やはり、あっせん規制の認定が難しいということを考えても、私は、天下りの根絶ということを考えるのであれば、国公法の改正ということであれば、天下りの原則禁止の復活、禁止規定を強化する、こういう方向こそ必要ではないかと思うんですが、官房長官のお考えをお聞かせください。

○柴山委員長 質疑時間、終了しております。一言でお願いします。

○菅国務大臣 いろいろな経緯があって、現行の行為規制へと転換したところであります。この規制違反行為の監視体制として再就職等監視委員会が立ち上がり、そして国会同意人事を経て、委員会による監視体制のもとに現行の再就職規制を厳格に運用していくことで、天下りを根絶してまいりたいと思います。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。