国会質問

<第185臨時国会 2013年11月28日 内閣委員会 10号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょう、四人の参考人の皆さんから、それぞれの御専門の立場から貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。
 それで、私の方からは、きょうは労働基本権に関連して御質問をいたします。
 最初に、島田参考人と宮垣参考人に、ILO勧告の意義についてお尋ねしたいと思っております。
 島田参考人は、労働学の立場から公務員制度を研究され、二〇〇八年の基本法において自律的労使関係制度を措置するとされたにもかかわらず、今回の法案では置き去り、バランスに欠ける、実現のめどを示さないのは妥当性に欠けるということを述べておられ、ILO勧告についても触れられました。
 政府のILO勧告についての受けとめ、答弁を聞きますと、ILOからは、我が国の公務員の労働基本権の制限に関して勧告されていますが、その内容は、基本的に、公務員制度改革について関係者と十分話し合うことや、改革の進展についてILOに対する情報提供を続けることを要請したものと認識しているという、非常に何か軽んずるかのような答弁として受けとめておるわけですけれども、その点で、島田参考人、ILO勧告の意義、重みについてのお考えをお聞かせいただきたいということ。
 あわせて、宮垣参考人も、全労連、国公労連としてILOへの申し立ても行ってきたということで、八度の勧告も行われております。ILO勧告の意義、重みについて、意見陳述に加えて補足的なことがございましたら、御意見を賜れればと思っております。

○島田参考人 御質問ありがとうございます。
 ILOという組織は、政労使によってつくられている三者機関なんですが、この勧告を出しているのは結社の自由委員会でございますので、専門家集団でございます。
 専門家というのをどう評価するのかというのがなかなか我が国では難しいところがあるのかと思うんですが、どういう方々かというと、国際労働法の権威と言ってはなんですが、そういう方々が集まられています。その方々が、もちろん、ILOというのはあくまでも勧告でございますので、拘束力があるものではございませんので、国内の政府のさまざまな努力というのも勘案して、その時々に応じて、適切な文言で必要なことを勧告している、こういうふうに考えております。
 では、これは最終的にどうなるのかといえば、最後の最後に行けば国際司法裁判所ということになるんでしょうけれども、そういうことになったとしても、これはILOの専門家の話を聞いたところなんですが、結局、そういうときに選ばれるのは自分たちのような専門家なので、ILOの結社の自由委員会での意見というのは最終的な判断と考えてもらっていいんだというふうに聞いております。
 そういう意味では、確かに勧告ではありますけれども、非常に重要な重みを持っているというふうに私は考えておりまして、そういう点からいいますと、表現は、国際機関が国に対して言っているので、かなり温和な形をとっておりますが、やはりそこの言葉の真意といいますか、この間、一貫した流れがあると思いますので、それを踏まえて読んでみますと、やはり早急にこの問題は解決をすべきであるということは読み取れるのではないかというのが私の意見でございます。

○宮垣参考人 ILOの国際労働基準から見ても、日本では、公務員の労働基本権及び政治活動の自由が大幅に制約をされているわけでございます。先進諸国では公務員にも労働基本権がおおむね認められていますし、そういう点では、ILO勧告というのは、先進国の国際社会が日本政府に対して、日本の公務員の労働基本権を速やかに回復するように求めているものだというふうに私どもは考えているわけであります。
 ヨーロッパの労働組合と懇談をしたり、あるいはILOの労働者側委員のところに行きますと言われるのが、日本政府のおっしゃっていることは、日本の中では主張をされていても、ILOの国際舞台の場では世界の非常識になってしまうということをよく言われているわけでございまして、そういう点では、国際社会の要請に日本政府も応えていただきたいというふうに考えてございます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 続けて宮垣参考人にお尋ねをいたしますが、このILO勧告の受けとめとして、政府が、公務員制度改革について関係者と十分話し合うこと、こういう要請と認識しているということなんですが、当事者として、公務員制度改革についての関係者と十分な話し合いを政府が行っているのか、この点について、経緯等を含めてありましたら御意見を賜りたいと思います。

○宮垣参考人 お答えいたします。
 実は、二〇〇二年に全労連と連合が公務員制度改革でILOに提訴いたしました。
 その背景については、実は、日本政府が二〇〇一年六月の二十九日に公務員制度改革の基本設計を公表して、十二月の二十五日に公務員制度改革大綱を閣議決定しました。その大綱では、公務員の労働基本権の制約については、これにかわる相応の措置を講ずることを今後も確保しつつ、現行の制約を維持するとしていたわけであります。
 政府が、公務員のストライキの一律全面禁止、非現業公務員の団体交渉権の制限を意味する労働基本権制約の現状維持を国公労連などに提案したのは、実は、この大綱が決定をされる直前の二〇〇一年の十二月の十九日でございました。十二月二十五日には大綱を決定するわけでありますから、六日前であります。
 ところが、二〇〇一年六月のILO総会では、日本政府が公務員制度改革を労使協議も抜きに進めている状況に国際的な批判が集中をして、労働組合との交渉協議を国際公約せざるを得なかったわけであります。しかし、政府はその国際公約をほごにして、労働組合との誠実な交渉、協議の努力を尽くさずに、労働基本権制約の現状を維持したまま、人事院の機能、権限を縮小させて、政府、各省当局の人事管理権限を拡大する大綱を一方的に決定しました。
 そういうことから、全労連と連合が、現状の公務員制度がILO条約に違反する内容を持っていること、そして、公務員制度改革でその違反状況が一層深刻となることを中心に、二〇〇二年二月と三月にILOに提訴したわけであります。
 人事院の機能、権限を縮小させて、使用者たる政府の人事管理権限を拡大するのであれば、労働基本権の回復は当然のことという思いでありました。今でも、今回の法律案でも、その思いは一緒であります。
 政府の皆さんは、労働組合とのコミュニケーションを図るというふうに言われているんですが、今回の公務員制度改革をめぐっても、政府、公務員制度改革推進本部との交渉は五回ありましたけれども、そのほとんどが、政府の考えを一方的に説明するあるいは意見を聞くとの姿勢にとどまって、不誠実な態度に終始をされてきたわけであります。
 以上でございます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、級別定数に関して人事院から政府に移管をする点、この点について、島田参考人と下井参考人と宮垣参考人にお尋ねいたします。
 人事院がこの委員会で総裁答弁をしておりますけれども、級別定数の設定、改定は内閣人事局が所掌することになるが、今回の法案において、職員の適正な勤務条件の確保の観点からする人事院の意見を聴取し、これを十分に尊重することとされている、これによって労働基本権の制約の代償機能が確保されることになると考える、このように述べておるわけですけれども、これで代償機能が確保されると言えるのかという懸念を持つわけであります。
 例えば、実際に級別定数に対して意見を述べる、それに対して内閣人事局側で十分に尊重するといった場合でも、実際にその意見の重みを持つような、実際のその中身が伴わなければならないわけで、そういった作業を実動部隊としてやるような人員がどうなるのか。例えば人事院の給与二課が内閣人事局に移るようなこともあれば、実際にこの級別定数の問題について議論する、深めていくという、意見を述べるその中身も伴わないんじゃないのか。そういった制度設計そのものは、この国会には何ら示されていないわけであります。
 何か口約束みたいなだけで、それで大丈夫だと言われても、はたから見たらそんなのはちょっと容認できないよ、こういう声が上がるのも当然で、この代償機能が確保されているのか。級別定数の問題について、それぞれ島田参考人、下井参考人、宮垣参考人に一言ずついただければと思います。

○島田参考人 先ほども御質問にお答えしたことかと思いますが、あくまでも、級別定数というのは、これまで勤務条件に密接に関連をするというふうに捉えられてまいりまして、今の最高裁判例との関連で、人事院の代償機能という意味では非常に重要な位置だったと思っております。それがやはり内閣人事局に移るということですので、仮に意見を反映する可能性があるからといって、憲法上の基本権の代償措置としてはやはり不十分なものになっていったというふうに考えるべきだろうというふうに思っています。
 つまびらかにはできませんが、人事院としては、そういうことを言う権限を、意見を言う権限を残すことによって、言ってみれば、組織として守ったということはあるかもしれませんが、代償機能を守ったというふうには評価できないのではないだろうか、このように思っております。

○下井参考人 ありがとうございました。お答えいたします。
 まず、代償機能は弱まったということは否定できないと思われます。ただし、ほかの代償措置との比較を考えたときに、例えば給与勧告も拘束力がないわけですので、その意味ではバランスがとれているのかもしれません。したがって、代償機能が弱まったということは言えても、では、それが代償機能ではなくなったとは必ずしも言えないというのが私の意見でございます。
 なお、十分に尊重するという文言が条文にあるわけでございますが、これを多少敷衍した解釈としまして、例えば実際に人事院の意見が通らなかった場合に、内閣人事局の方で、なぜ人事院の意見を聞かなかったのか、そのことを説明しなければいけないといったような義務を課す、そういう解釈は可能であろうかと思っております。それによって、多少なりとも代償機能の弱まりは手当てができるかなと考えます。
 以上でございます。

○宮垣参考人 法律に十分に尊重するというふうに書かれていても、それが担保されるかどうかは非常に懸念があるところでございます。
 実は、雇用と年金の接続をめぐって、人事院が二〇一一年九月三十日に、定年延長を求める意見の申し出を国会と内閣に対して行いましたけれども、しかし、政府はそれを無視して、新年度目前の三月二十三日になって、従来からの再任用制度による雇用と年金の接続となることを決定したというのが実態でありまして、意見の申し出さえ無視をする政府が、法律に尊重すると書いてあったことを一〇〇%尊重していただかなければ、私は、労働基本権制約の代償機能を果たすことにならないというふうに思っているところでございます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 朝比奈参考人に、直接の意見陳述そのものは、幹部人事、政府全体における問題でしたけれども、労働基本権の回復の問題については、一般公務員における労働基本権の制約の問題、それに対する人事院という代償機能の役割の問題、これに関して、当然、今の法案に当たりました、級別定数の問題など課題もあるわけですが、その件について、朝比奈参考人のお考えについてお聞かせいただけないでしょうか。

○朝比奈参考人 御質問ありがとうございます。
 私は、代償機能については一定程度は確保されているというふうに認識しておりますが、先ほど申し上げた、一言、若手公務員としてのもとの立場で申し上げれば、やはりいろいろ、長期残業とか休日出勤とか、そういうのが常態化しておりまして、それが労働組合としての組合交渉の話と遊離した形で存在しているというところが結構問題の根源だというふうに思っております。
 結局、労務管理、そういったものに対する評価、こういったものが直接的には一番最初にきいてくるんだろうというふうに思っておりまして、その点を非常に今回、幹部人事等を考える際に勘案されるような流れというふうに聞いておりますので、その運用を期待したいというふうに考えております。

○柴山委員長 塩川君、質疑時間は終了です。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。