国会質問

<第185臨時国会 2013年11月29日 内閣委員会 11号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、最初に、内閣人事局の事務、新設となっております総人件費の基本方針について質問いたします。
 まず、十一月十五日の閣議決定の文書、「公務員の給与改定に関する取扱いについて」、これについてお尋ねをいたします。
 総務省にお尋ねいたしますが、この十一月十五日の閣議決定の文書で、給与については人事院にどのような要請を行ったんでしょうか。

○笹島政府参考人 お答え申し上げます。
 十一月十五日に、「公務員の給与改定に関する取扱いについて」の閣議決定を行いました。この閣議決定におきまして、給与につきましては、地場賃金をより公務員給与に反映させるための見直し、五十歳台後半層の官民の給与差を念頭に置いた高齢層職員の給与構造の見直し、職員の能力、実績のより的確な処遇への反映など給与体系の抜本改革に取り組み、平成二十六年度中から実施に移すこととし、早急に具体的な措置を取りまとめるよう人事院に要請するとされているところでございます。

○塩川委員 ことしの人事院報告にあります給与制度の総合的見直しに即した要請を行っているということです。
 これまで人事院においては、給与構造改革で引き下げてまいりました地方の職員や高齢層職員の給与をさらに引き下げようというものとなります。また、昇給制度の見直しや、技能労務職員の一層の削減、賃下げを行うものともなります。国家公務員の給与引き下げが地方公務員の給与引き下げにも波及する、ひいては、地方公務員給与を参考にする民間給与にも影響するという点では、極めて重大な中身だと考えております。
 次に、この閣議決定において、国家公務員の定員についてはどのような取り組みを行うとしているでしょうか。

○上村政府参考人 お答えいたします。
 定員につきましては、今現在行っておりますめり張りのある定員配置を進めまして、現在の定員合理化計画を大幅に超える純減を目指すとともに、新たに設置されます内閣人事局におきまして、新たな定員合理化計画を作成する、そういうふうな内容になっておると承知してございます。

○塩川委員 ここに内閣人事局が出てくるわけですけれども、内閣人事局において、新たな定員合理化の計画等を策定するという文言もあります。
 現行の合理化計画、つまり定員合理化計画の達成状況というのはどのようになっておりますか。

○柴山委員長 上村審議官、少し大きな声で御答弁ください。

○上村政府参考人 お答えいたします。
 現行の定員合理化計画でございますが、平成二十二年度から二十六年度までの五年間に、平成二十一年度末定員、これは約三十万二千人でございますが、これの一〇%以上、数値といたしますと、定員数三万二百四十四人以上を合理化するとされているところでございます。
 実績といたしましては、二十二年度から二十五年度までの四年間で二万六千八百五十九人の合理化を達成しているところでございます。

○塩川委員 閣議決定の文章では、「平成二十六年度予算において、現行の合理化計画の目標数を大幅に上回る合理化を達成する」とありますけれども、どのような規模、内容になるんでしょうか。

○上村政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、この閣議決定では、現行の合理化計画の目標数、すなわち三万二百四十四人を大幅に上回る合理化を達成するようということでございまして、現在、まさに各府省との間で調整をしているところでございます。
 この方針を達成すべく、平成二十六年度の予算編成過程で結果を得られますように鋭意努力してまいりたい、こう思っているところでございます。

○塩川委員 定員合理化計画の目標を大幅に上回る合理化を達成するという点では、もともと、今、日本の国家公務員の数が少ないというのは、国際比較でも言われているところでありますし、東日本大震災の対応も含めて、本当に現場で懸命に頑張っておられる国家公務員の方の数が少なくなっているというのがやはり行政サービスの低下をもたらす、こういう懸念の声というのは広がっておりますし、現場では、大変な長時間労働も強いられるような職場なども現に生まれているわけで、こういった定員の合理化ということについては容認することはできません。
 定員合理化計画は五年間で一割とありますけれども、いわゆる片道でありまして純減ということではありませんが、この閣議決定の文章では「重要課題には適切に対応しつつ増員を抑制し、これまでに引き続き、大幅な純減を目指す。」とあるが、これはどういうことでしょうか。現在、政府としての純減目標はないと承知しておりますが、その点はいかがですか。

○上村政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、現在、政府において、前もって純減数を定めるというような計画は策定されておりません。
 以上でございます。

○塩川委員 閣議決定では、今議論をしております国家公務員法の改正案に基づき設置される「内閣人事局において、国が果たすべき役割を踏まえ、今後の総人件費の基本方針、新たな定員合理化の計画等を策定する。」とあります。
 そこで、稲田大臣にお尋ねをいたしますが、内閣人事局が発足すれば、その事務として、国家公務員の総人件費の基本方針が新設されますが、この総人件費の基本方針とはいかなるものでしょうか。

○稲田国務大臣 今回の法案では、国家公務員の人事管理に関する戦略的中枢機能を担う組織として内閣人事局を新設するとともに、その機能の一環として、同局が総人件費管理機能を担うため、国家公務員の総人件費の基本方針を定めることといたしております。
 この総人件費の基本方針とは何ですかというお尋ねでございますが、国家公務員の総人件費のあり方についての中長期の方針及び毎年度の方針を事前に定めるというイメージをいたしております。

○塩川委員 総人件費の管理機能を担うために基本方針をつくる、中長期の方針、毎年度の方針を立てるということであります。
 総人件費ですから人数掛ける単価ということになるわけですけれども、この閣議決定に、内閣人事局において新たな定員合理化の計画等を策定すると言われています。この新たな定員合理化の計画というのはどんなもので、そこには、今は持っていないという定員の純減目標、これを書き込むようなことが想定されているのか、お尋ねをいたします。

○稲田国務大臣 新たな定員合理化の計画は、今回の改正で内閣人事局が定員管理機能を担うことに伴って、内閣人事局設置後に、内閣総理大臣、官房長官のもとで策定することになります。その具体的な内容を、現時点で確たることを申し上げることは困難でございます。
 また、内閣人事局として、十二次にわたる定員合理化計画の成果を適切に評価するとともに、各府省の現場の実情を的確に把握し、できるだけ早期に内閣人事局を設置して、同局で十分に検討を行うことができるよう努めてまいりたいと思います。

○塩川委員 今の段階では具体的な内容は申し上げられないということでありますが、この閣議決定の文章では、「我が国の厳しい財政状況に鑑みれば、総人件費の抑制など行財政改革を引き続き着実に推進しなければならない。」としています。
 そうしますと、総人件費の基本方針を事務とする内閣人事局が立てるとなったら、この総人件費の抑制ということを踏まえて行うことになるのではないのか。つまり、結局、総人件費の基本方針というのは人件費削減方針になるんじゃありませんか。

○稲田国務大臣 現時点で具体的な内容まで申し上げることは困難でありますが、総人件費の抑制なども含む公務員の効率的、効果的な運用ができるように行財政改革を進めるという観点から策定されるものというふうに承知いたしております。

○塩川委員 総人件費の抑制も含むということをおっしゃいました。
 総人件費の改革ということでいいますと、二〇〇六年に行革推進法というのがありました。五年間にわたって行革の目標を立ててそれを達成するというプログラム法でありますけれども、二〇〇六年から二〇一〇年ということですから今の時点では切れているわけですが、法律そのものは残っているわけであります。この行革推進法の四十二条に、総人件費改革の趣旨を規定しております。
 そこで、お尋ねしますが、行革推進法の四十二条では、総人件費改革は、人件費の総額の削減を図ることにより行われるとあります。つまり、この行革推進法の四十二条というのは、総人件費の削減が総人件費改革の趣旨というふうに述べていると思うんですが、確認です。

○宮島政府参考人 今御指摘の行政改革推進法四十二条におきましては、総人件費の削減を図ることにより行われるものとするという趣旨が書かれております。

○塩川委員 ですから、総人件費の削減ということが総人件費改革の趣旨であって、行革推進法が現行も生きているということであります。
 そうなりますと、この行革推進法がある以上は、大臣、内閣人事局の国家公務員の総人件費の基本方針は、この行革推進法の四十二条を反映して総人件費の削減を図るということになるんじゃありませんか。

○稲田国務大臣 何のために内閣人事局をつくるかというと、限られた人材の中で戦略的に人材配置を行うということでございます。その趣旨から考えまして、単に総人件費を削減すればいいといったようなものではなくて、行政需要、政策課題の変化に対応した、めり張りのある内容にしていきたいというふうに考えます。

○塩川委員 めり張りとおっしゃいました。
 では、行革推進法では人件費の総額の削減を図るとしているわけですけれども、これに縛られずに、いや、人件費はふえますよということもあるということですか。

○稲田国務大臣 繰り返しになりますけれども、単に削ればいいというようなものではなくて、限られた公務員、国民共通のインフラを最大限効果的に発揮できるようにその方針を策定していくというのが本来の姿であろうというふうに思います。

○塩川委員 いや、ですから、行革推進法で総人件費の削減というのをうたっているんですけれども、では、総人件費の削減という行革推進法はもう無効です、とらわれなくていいというお考えということですか。

○稲田国務大臣 無効というわけにはいかないですね。しかも、削減した方がそれはいいに決まっておりますけれども、ただ削減すればいいという問題ではなくて、内閣人事局が設置された目的に合致するように、戦略的な人材配置ができるように、行政需要への対応ということも重要であるということを指摘しているわけでございます。

○塩川委員 無効というわけにはいかない、削減した方がいいというお話ですけれども、削減ありきという話に結果としてはなるわけで、私は、それでは本当の意味での国民全体の奉仕者としての国家公務員の役割を果たすような業務を果たすことができないということを言わざるを得ません。
 行革推進法の四十二条二項では、わざわざ、平成十七年度と二十七年度の比較で、GDP比において国家公務員の人件費総額の割合を半分にするために、できる限り近づけると書いてあるわけですよね。
 この目標に照らすと、平成十七年度のGDP比が一・七%で、直近の数字が出る年度としての二十三年度は一・二%で、対十七年度比では七一・三%、七割ですから、半分となるとさらに大幅に減らす、こういう行革推進法に基づいたらさらなる削減という話にならざるを得ないわけで、やはりこういう大幅なリストラ計画につながるような総人件費の基本方針というのはあってはならないと思いますが、改めてお尋ねします。

○稲田国務大臣 数ありきの議論であってはならないというふうに思います。今御指摘の行革推進法四十二条の二項は、あくまで政府が留意をすべき目安であるということを御理解いただければと思います。

○塩川委員 留意すべき目安ということで、それが反映をした総人件費の基本方針ということになるのではないのかということが懸念をされるわけで、私は、この人件費削減方針を結果として立案することになる内閣人事局の役割というのが、率直に言って、公務リストラの司令塔となるんじゃないのか、こういうことを強く危惧せざるを得ません。
 次にお尋ねしたいのが、級別定数の件であります。
 国家公務員制度の改革の根本問題は、私は、労働基本権の回復だと申し上げております。そもそも日本国憲法は、公務員を含む全ての労働者に基本的人権として労働基本権を保障しております。ところが、憲法制定の直後、一九四八年に、公務員の争議行為の禁止を日本政府に押しつけたマッカーサー指令によって、この基本権が公務員から剥奪をされ、以来、その回復が我が国国家公務員制度の根本的な課題となってまいりました。国際的にも、ILOのたび重なる勧告によって、公務員の労働基本権制約の解消が指摘をされてまいりました。
 この課題をどのようにやり遂げていくかが問われているときにもかかわらず、今回の法案は、この根本問題を取り上げず、一方で使用者側の権限を強めているのではないのか、こういう指摘が昨日の参考人質疑でもございました。その一つが級別定数の問題であります。
 人事院にお尋ねしますが、これまで、労働基本権制約のもとで、級別定数については人事院が所管をしてまいりました。なぜ人事院が所管をすることになっていたんでしょうか。

○原政府特別補佐人 現行の給与法におきまして、労働基本権制約の代償措置として、勤務条件法定主義のもとで勤務条件について法律で定めるとともに、その細目は法律の委任を受けて私ども第三者機関である人事院が定めるものとされております。
 級別定数につきましても、勤務条件としての側面を持つことから、人事院が設定、改定を行っているところでございます。

○塩川委員 級別定数についても勤務条件の側面を有しているから人事院の所管ということでありました。
 労働基本権制約のもとで、その代償機能を人事院が果たすためにその機能を人事院が所管をしてきたわけですが、この機能を使用者側の機関となる内閣人事局に移行するのであれば、人事院の代償機能が損なわれることになるんじゃないのか、こういう声が出てくるわけですけれども、これはどうなのか、運用上の仕組みにおいてもそれが担保されるのか、この点についてお伺いいたします。

○原政府特別補佐人 今回の法案におきましては、級別定数が組織管理としての面をも持つということに着目をいたしまして、内閣人事局に移管されるものと承知してございますが、級別定数は勤務条件としての側面を持つ以上、代償機能がこれまでと同様に確保されることが必要であります。
 今回の仕組みにおきましては、級別定数の設定、改定は内閣人事局が所掌することとなりますが、その際、職員の適正な勤務条件の確保の観点からする人事院の意見を聴取し、これを十分尊重するものと法律で定めることとされています。
 その運用におきましては、各省要求に始まる予算編成過程におきまして、人事院が労使双方の意見を聴取し策定した設定、改定案を意見として内閣人事局に提出し、内閣人事局はそれに基づいて級別定数の設定、改定を行っていただくことが基本になると考えてございます。これによりまして、労働基本権制約の代償機能が確保されるものと考えている次第でございます。
    〔委員長退席、関委員長代理着席〕

○塩川委員 稲田大臣にお尋ねいたします。
 人事院は今、級別定数を内閣人事局が所掌することになっても、人事院の意見を聴取し、十分に尊重するということで代償機能は損なわれない、その点での運用面においては、各省要求に始まる予算編成過程において、人事院が労使双方の意見を聴取して作成した設定、改定案を意見として内閣人事局に提出し、内閣人事局がそれに基づいて級別定数の設定、改定を行っていただくことが基本になると答弁をされました。
 大臣にお尋ねするのは、人事院はこのように述べているわけですが、政府はこのとおり行うということでいいんでしょうか。運用上の仕組みも含めて、政府の考え方をお聞きしたいと思います。

○稲田国務大臣 午前中も、この級別定数の法的な性格について、かなり詰めた議論がございました。ポストの格付自体、ポストの重要性自体は勤務条件ではありませんけれども、それが個人に結びつき、全体として勤務条件に関連する部分もあるということで、今回、人事院の意見を十分に尊重するということを法律上明記したわけであります。
 一方、級別定数を移管して、そして機動的に重要政策に対応するように人材配置をするためには、二重にとか、今まで以上に事務の過重があってはならないということもまた、今回の人事局を設置した目的からして当然のことだと思います。
 そういう意味において、今申し上げた点を実現できるような運用にしていきたいというふうに思います。

○塩川委員 もう一回お尋ねしますけれども、重複しないようにという趣旨でおっしゃったんだと思うんですけれども、そうはいっても、具体の話として、人事院が言うような、つまり、人事院が労使双方の意見を聴取して級別定数の設定、改定案を意見として内閣人事局に提出する、そういう手続も含めて、これは政府の方は了承しているということですか。

○稲田国務大臣 私が答弁いたしましたように、また、午前中の質疑の中にあったように、今回、人事局を設置した趣旨が十分生かされるような運用というものをこれから検討したいというふうに思います。

○塩川委員 直接お答えいただいていませんけれども、人事院にお尋ねいたします。
 現在、級別定数の事務を行っている組織はどこでしょうか。何人ぐらいでどんな仕事をしているのか、教えていただけますか。

○古屋政府参考人 お答えいたします。
 級別定数の改定に当たりましては、各省からヒアリングを行うとともに、職員団体と中央、地方で会見を行って要望を聴取するなどして改定案を作成しているところでありますが、主としてこれを担う部署は給与局ということになるわけですが、地方事務局や職員団体担当部門の職員なども一連の作業を担っているところでございます。
 そういう意味で、数というのはなかなか難しいところがございますが、特に担当している給与二課ということであれば約二十名ぐらいおりますが、ここは逆に制度の企画立案等も含めておりますので、この人数ということには直接ならないというところでございます。

○塩川委員 給与二課二十名で、実際にそれは全部じゃないよということですから、級別定数についての担当班があって、そういう中で府省ごとに係を配置している、十名前後ぐらいという話もお聞きしておりますけれども。
 そうしますと、人事院としては、級別定数に係るスタッフはそのまま人事院に置いておくという考えということですか。

○古屋政府参考人 今回の法案の仕組みにおきましても、人事院が労使双方の意見を聴取し作成した設定、改定案を意見として内閣人事局に提出し、内閣人事局がそれに基づいて級別定数の設定、改定を行っていただくということが基本になるものと考えているということで、先ほど総裁が申し上げたとおりでございますが、そういうことでありますれば、人事院としては、基本的には現在とほぼ同様の体制は必要になるものと考えているところでございます。

○塩川委員 ですから、人事院としては、意見を尊重してもらうためにも必要な人員は当然確保しなければなりません。ですから、現行とほぼ同様のスタッフでやらせていただきますというふうにおっしゃっておるんですが、この点、稲田大臣はもうオーケーということなんですか。

○稲田国務大臣 何度も同じような答弁で恐縮ですけれども、きょう午前中でもこの委員会でさまざまな議論がありました。そして、人事局をつくることによって、機動的な人材配置をするために、必要な機能そして人員というものは確保しなければならないというふうに思っております。
 具体的な規模、体制については、今後予算編成の中で調整をしていくことになろうかと思いますが、具体的な数とか規模については、今後人事院と話をして決めていくことになろうかと思います。

○塩川委員 ただ、人事院の意見を聞き、その意見を尊重するとなったら、尊重されるほどのしっかりとした意見が出されなくちゃいけないわけで、当然、人事院としてみれば、そのためのスタッフというのは必要だということですから、ほぼ同様の体制でというふうにおっしゃっておられるわけです。
 そういうことでいえば、この法案にあるように、人事院の意見を聞き、その意見を尊重するということになれば、人事院のスタッフは残しますよということを指しているということになりませんか。

○稲田国務大臣 人事院の意見を尊重するのは、勤務条件にかかわる意見について十分尊重する、そういう役割分担にいたしております。
 先ほど来、人事院の御希望は承りましたので、今後、相談をしてまいりたいというふうに思います。

○塩川委員 人事院にお尋ねしますが、お話は承った、でも、オーケーは今の時点でしていませんが、その点についてはそれでよろしいんですか。

○原政府特別補佐人 今回の法案に対する私どもの基本的なこれまでの協議経緯といいますのは、級別定数につきましては、基本権制約のもとでの代償措置をいかにきちんとしたものにするかということ、それからさらにもう一つは人事行政の公正をいかに確保するか、そういう観点について基本的な考えに据えて協議を重ねてきた、そういう状況でございます。したがいまして、それを確保するための仕事は当然人事院でやるということになります。
 ただ、今大臣も申し上げましたように、そういった人事行政の公正の確保とか代償機能については一律的に人事院に委ねられておりましたから、全て人事院が所管してございました。今回の法律改正によりまして、必ずしも、勤務条件なり、あるいは人事行政の公正の確保といった観点だけではないような要素も私どもの人事院規則等に委ねられていた部分がございますので、そういったものは今回移管をする形になるかと思います。
 具体的な人間のやりとりにつきましては、今大臣も御答弁がございましたが、当然これから決めていく形になりますが、そういった趣旨を踏まえて必要な措置をとるというふうに考えてございます。

○塩川委員 大臣は必要な人員の確保を図ることが必要だということをおっしゃったわけですから、そうなると、人事院から引き抜いてくるということもそれは選択肢としてあるわけですけれども、そうすると、人事院総裁とすると、引き抜きというのは考えていない、人事院の給与二課のスタッフを内閣人事局に引き抜かれるということはないというのが今の認識ですか。

○原政府特別補佐人 ただいまも申し上げましたように、人事行政の公正の確保、あるいは代償措置のきちんとした確保といった観点以外の部分もございます。級別定数に絡んで申し上げますと、幹部職員の号俸格付ということにつきましては、必ずしも勤務条件性の確保、代償機能の確保といった観点とは違う要素がございますので、それにつきましては内閣人事局において主体的にしていただくという方向で詰めつつございます。それが何人になるかというのは大変難しゅうございますが、そういった部分については当然移管の対象になるということでございます。
 そのほかの公正の確保にかかわる部分につきましても一部そういったものがございますので、そういった部分は、ただいまも御回答申し上げましたように、必要な部分について必要な措置をとるということでこれから詰めてまいりたいと思います。
    〔関委員長代理退席、委員長着席〕

○塩川委員 要するに、人事院から人が抜かれるようなことになれば、必要な人員が人事院として確保されなければまともな意見も述べることができないわけで、尊重することはないと軽んじられるわけですから、当然人の確保ということになってくるわけで、それを本当に政府が担保しているのかというところが非常に疑わしいという点で、懸念は拭えないということを申し上げたい。
 大臣にお尋ねしますが、意見は尊重するとありますけれども、意見は十分に尊重するけれども、その意見と異なる決定を内閣人事局が行うということもあるのではないかと思いますが、それとも、十分に尊重するというのは、人事院の意見は全部受け入れる、丸のみをするということでお考えですか。

○稲田国務大臣 十分に尊重しつつも、最終的に決定をするのは内閣であるという趣旨でございます。

○塩川委員 ですから、違う中身になる可能性もあるということで、当然のことながら意見は聞くけれども、決定するのは内閣人事局ですから、尊重すると言いますが、別な決定を行うこともある。そういう点で、私は代償機能が後退するということは明らかじゃないかと。
 きのうの参考人質疑でも、人事院は組織は守ったけれども代償機能を守ったとは評価できない、こういう指摘もありましたし、代償機能を弱めることになるといった意見陳述もあったわけで、まさにそのとおりにならざるを得ないのではないでしょうか。
 ですから、本来の労働基本権の回復こそ必要だ。内閣人事局が使用者機関としてこのような形で行われるのであれば、労働者側が労働基本権の回復を図ることこそ求められている。
 そこで、ILO勧告についてお尋ねをいたします。公務員制度改革については二〇〇二年にILO勧告が出ておりますが、どのような勧告でしょうか。

○川淵政府参考人 お答え申し上げます。
 平成十四年十一月に出されました、ILO結社の自由委員会の中間報告における日本政府に対する勧告でございますけれども、一つが、公務員制度改革の理念及び内容について、関係者と十分、率直かつ有意義な協議を速やかに行うこと、それから二つ目として、結社の自由委員会に対する情報提供を行うことを求めたものというふうに理解しております。

○塩川委員 勧告においては、政府は、その表明した公務員の労働基本権に対する現行の制約を維持するとの考え方を再考すべきであるというふうに入っていると思うんですが、その点はいかがですか。

○川淵政府参考人 御指摘の勧告につきまして、その趣旨は先ほど述べたとおりでございますが、今委員御指摘の点でございます。
 政府は、その表明した公務員の労働基本権に対する現行の制約を維持するとの考えを再考すべきである、勧告の中にそういう表現はございます。

○塩川委員 ですから、見直せと言っているわけですよね。
 二〇〇一年に公務員制度改革大綱が決定された際に、公務労働者の意見を本当に直前にしか聞かなかった、そういう手続がおかしいじゃないかということで、全労連や連合がILOに提訴したという経緯の中で出たのがこの二〇〇二年の勧告でありました。
 これに対して、二〇〇三年三月に、ILOの結社の自由委員会に対して詳細な政府追加情報を政府が提出しております。
 労働基本権の回復という根本問題で、二〇〇三年の政府追加情報においては、公務員の労働基本権については、地位の特殊性と職務の公共性に鑑み、一定の制約のもとに置かれる一方、その制約の代償として、人事院勧告等の代償措置が講じられている、このような仕組みは、これまでのILO結社の自由委員会の見解にも沿ったものというふうに述べておると思うんですが、確認したいと思います。

○川淵政府参考人 委員御指摘の、平成十五年三月に、日本政府がILO結社の自由委員会に提出した追加情報でございます。
 追加情報自体は非常に大部なものでございますが、主な点でございますけれども、公務員制度改革について、関係者に対し検討案を提示し協議を申し入れたこと、結社の自由委員会への情報の提供を続けること、これを情報提供いたしました。あわせて、我が国の公務員制度、それから平成十四年十一月の勧告において追加の情報提供を求められた事項について情報提供を行っているところでございます。

○塩川委員 直接触れられませんでしたが、要するに、二〇〇二年のILO勧告に対して、二〇〇三年の政府追加情報はゼロ回答だったわけであります。それが、民主党への政権交代の前の麻生内閣の二〇〇九年四月二十日に、この結社の自由委員会に対して政府の追加情報を提出しています。そこで労働基本権の検討の部分についてはどのように述べておりますか。

○川淵政府参考人 お答え申し上げます。
 平成二十一年四月に、日本政府がILO結社の自由委員会に提出した追加情報でございます。
 ここでは、関係者との有意義な意見交換を行っていることとあわせまして、平成二十一年二月に、国家公務員制度改革基本法に定める改革事項全体について、改革の全体像を示す「公務員制度改革に係る「工程表」について」を国家公務員制度改革推進本部において決定したこと、平成二十一年三月に、工程表に基づき改革の具体化を図るため、国家公務員法等の一部を改正する法律案を国会に提出したこと、労働基本権について、期限よりも前倒しで検討を進めることとその検討状況について情報提供を行っております。

○塩川委員 労働基本権の付与に当たって、前倒しで検討を進めることとしているということで、労働基本権回復に向けた具体的な作業が始まるという回答だったわけであります。その後の法案にはそういう中身が反映をされておったわけで、私は、このILO勧告を踏まえた政府の追加情報において労働基本権回復に向けた前向きの対応が始まっていたというときに、今回の法案には全くそういうのが触れられていないというのは、まさに逆行しているとしか言いようがありません。
 大臣に伺いますが、今回、これまでよりも後退するようなことがあってはならないはずで、ILO勧告に沿って自律的労使関係制度を措置することこそ、今行うべきことではありませんか。

○柴山委員長 稲田大臣、質疑時間終了ですので、短く御答弁ください。

○稲田国務大臣 労働基本権に関しては、平成二十一年十二月に報告書を取りまとめられて、二十三年六月には関連四法案が国会に提出をされました。四法案は衆議院解散により廃案となっており、廃案に至る状況、また環境の変化を踏まえれば、自律的労使関係制度については多岐にわたる課題がいまだに残っているものと考えております。

○柴山委員長 塩川君、質疑時間終了です。

○塩川委員 代償機能が損なわれるような事態が生まれているときだからこそ、労働基本権の回復こそ図るべきだということを申し上げ、防衛省の皆さん、失礼いたしました。
 以上で終わります。