国会質問

<第186通常国会 2014年02月04日 総務委員会 1号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、原発事故に伴う、自治体による除染事業に関する財政措置についてお尋ねをいたします。
 原発事故によって、多くの自治体が除染事業を行っております。その場合の自治体の費用負担というのは、おおよそ三通りであります。一つが、除染特措法に基づく国庫補助及び文科省や厚労省の補助事業があります。二つが、震災復興特別交付税及び特別交付税で措置をされている。三つ目が、自治体の自主財源で行われているものもあります。
 そこで、最初に、環境省及び総務省にお尋ねをいたしますが、環境省には、いわゆる除染特措法に基づく市町村助成についてはどのような仕組みで実施をしているのか、また交付実績はどうなっているのかをお答えいただき、続けて総務省には、震災復興特別交付税及び特別交付税の交付はどのような基準で行われているのか、その交付実績はどうなっているのか、それぞれお答えください。

○小林政府参考人 お答えをいたします。
 放射性物質汚染対処特措法に基づきまして除染を行っておりまして、これは、平成二十三年十一月十一日付で基本方針を閣議決定し、国として一元的にやっているものでございます。
 具体的に、お尋ねございました市町村が実施する除染につきましては、特措法において、国からの法定受託事務ということにされておりますので、これに必要になる費用の全額を環境省が市町村に対して補助をするということでやっております。
 それで、福島県につきましては、県の基金を通じて出しておりますが、これが三千四百六十二億円、これは二十三年度から二十五年度までの交付実績でございます。それから、福島県以外のところにつきましては、直接市町村に交付をしておりますが、三百六十九億円というような状況でございます。

○佐藤政府参考人 地方団体が国庫補助対象以外で単独事業として実施する除染につきましては、それぞれの団体が地域の実情に応じて行っておるわけでありますが、これについて、震災復興特別交付税あるいは通常の特別交付税によって財政措置を講じております。
 まず、実績から申し上げますと、二十三年度から二十五年度の十二月までの実績としては、震災復興特別交付税が三十九億円、通常の特別交付税が十四億円となっております。
 その措置対象ですが、環境省の補助事業としては、除染特措法に基づいて、市町村単位で汚染状況重点調査地域というものが指定されます。ここで年間の被曝線量一ミリシーベルト以上の地域を対象に除染計画をつくって除染する。これに国庫補助が出るわけであります。
 震災復興特別交付税や通常の特別交付税による措置は、この国庫補助事業の対象とならないところについて自治体がやる場合に手当てをする。具体的に申し上げますと、汚染状況重点調査地域の市町村内ではあるけれども線量が一ミリシーベルトを下回るために国庫補助の対象とならない地域における除染でありますとか、それから汚染状況重点調査地域の市町村以外の市町村であるために国庫補助対象となりませんが、こうした団体にも、いわゆるホットスポットのように部分的に線量が高い場所があります。こういったところについて行う除染、こうしたものを特別交付税の対象としているところでございます。

○塩川委員 特措法の基本方針に基づいて国が行うべき除染については、一元的に環境省が補助を行った上で、地域の実情に応じ地方が実施する除染について、総務省が特交ないし復興特交で財政措置を講じているということです。
 一方で、一部の地方自治体では、自主財源で除染事業を行っているという例があります。
 そこで、会計検査院にお尋ねをいたします。
 会計検査院が昨年、二〇一三年十月、「東日本大震災に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境汚染に対する除染について」、報告書を出されております。
 ここの報告書によると、除染の実施に当たって自主財源を活用した地方自治体の例を紹介していますけれども、これはどのぐらいの団体数があるのかを教えていただけますか。

○堀部会計検査院当局者 お答えいたします。
 茨城県等五県管内の市町村における二十四年度末現在の除染等に要した経費の財源を調べましたところ、自主財源のみで実施している地方公共団体が二十三団体見受けられたところでございます。

○塩川委員 自主財源だけで二十三ということですけれども、今のお話のように、国庫補助特措法に基づく補助事業、あるいは復興特交、特交措置とあわせて自主財源もやったところもあると思うんですけれども、それも含めて、自主財源を充てたというのは幾つになりますか。

○堀部会計検査院当局者 お答えいたします。
 先生おっしゃられました、自主財源を使用した団体数ということでございますと、六十七団体になるところでございます。

○塩川委員 平成二十四年度末での調査ですから、その後交付されている場合がありますので、自主財源が実際六十七団体そのままかどうかというのはわかりませんけれども、少なくとも昨年度末においては六十七団体、自主財源ということで、会計検査院の報告の中で取り上げられています。
 総務省にお尋ねしますが、こういった除染経費について自主財源を使っている団体があるということは承知しておられますか。

○佐藤政府参考人 おっしゃる意味での自主財源というものが何を指しているのかというのは私はよくわからないんですけれども、国庫補助金と違いまして、地方団体が独自に地域の実情に応じて除染をします場合には、まず自分の財源でするということでありまして、そうした財源を使った場合に、震災復興特別交付税なり特別交付税で後から財源措置、手当てをするというのが我々の仕組みでございます。

○塩川委員 会計検査院の報告は、市町村ごとの一覧表がありまして、そこにその財源の区分があって、環境省の補助事業があり、復興特交があり、特交があり、そして自主財源なんですよ。ですから、復興特交や特交で措置した以外に自主財源を充てているという団体が、昨年度末で六十七団体あるということなんですよ。それは、本来、復興特交や特交で措置すべき除染経費が充てられていないということを意味していると思うんですけれども、その点での認識が総務省として問われるんです。
 私が聞いた首都圏のある市の話でいいますと、確かに、多くは特交措置を、対応してもらったということなんですけれども、例えば除染の泥を入れるコンテナバッグとか、あるいは除染の作業のときの手袋ですとかマスクとか、そういうのは要するに自主財源という整理にされたということで、実際には、除染に係る支出であっても特交措置に当たっていない、そういう整理をしている団体もあるんですよ。
 ですから、本来、こういった除染の泥を入れるようなコンテナバッグとか、あるいは手袋とかマスクとか、それは当然特交に当たるんだと思うんですけれども、それは可能なんですよね。

○佐藤政府参考人 我々は、特別交付税の措置をします場合に、それぞれの団体に、どういう事業でどういうお金がかかったかということは全部照会をしております。その中では、今おっしゃったような経費も、当然、除染に伴う経費として対象にするということにしておりますので、対象にしていないということはありません。

○塩川委員 昨年度末で六十七あるんですよ。その中では、既に、今年度の中で特交や復興特交で措置したところもあるでしょう。しかし、全部が全部そうなっていないというのが、私がヒアリングした中では出ているわけですよね。
 北関東のある町村では、環境省のガイドライン、表土から三センチ削るというのが、実際にはもっと深く削らなくちゃいけないようなところもあるわけですから。そうなると、特措法で手当てできないねといった際に、本来、復興特交や特交で充てられるところがそうなっていなくて、自主財源でやっているという団体なんかもあるんですよ。
 新藤大臣、ぜひこれは、会計検査院がこういうふうにそれぞれの団体に当たって、県経由で実態をつかんでいるわけですよ。だから、復興特交や特交で本来充てられるものが自主財源になっているというのは、ちょっとこれは、総務省の対応として問題がありはしないのか。この実態についてしっかりとつかんでいただきたいと思うんですけれども、その点、いかがですか。

○新藤国務大臣 そもそも、会計検査院が取りまとめた報告書、この作成に我々が関与するわけではないので、私たちがわからないという実態があります。
 それから、そういったもので、もし自治体の御相談があれば、私たちはそれをきちんと受けとめて対応するようにしてきている、今局長が申したとおりであります。
 ですから、六十七団体、交付税を受けながら、特交を受けながら、プラス自主財源もあわせてやっている、こういう団体があるということですね。ですから、それぞれ個別のケースがあるならば、それは御相談いただければ、我々適切に対応しなければいけない、基準というものがありますから、そういったものを照らし合わせながら。
 でも、私たちとすれば、そういう経費を見るというのが原則ですから、そういった対応はしていきたい、このように思います。

○塩川委員 ぜひそういう点では、総務省としての、実態を把握するという点で前向きな対応をお願いしたいと思っておりますし、もちろん地方団体から意見、要望があれば、それを受けるのは当たり前のことですから、そういう点で、総務省が前に出るという点で、しっかりと実態把握するというお考えはありませんか。

○新藤国務大臣 私どもとすれば、かなり細かく実態把握しているわけでございます。
 ですから、それでも、何かの理由で言っていただけないのかということになりますと、これは把握するというよりは、まず自分たちが、そういう経費をお使いになったならば、それはぜひ申し出をして相談をしてもらいたい、双方でそれぞれの取り組みをしていただきたいなと。
 私どもも、さらに何か事務的にできることがあればと思いますが、現状においては、それは連携をとりながら大半はカバーしているわけですから、あとは個別の御相談にはぜひ適切に応じたい、こういうことに思います。

○塩川委員 そういう点では、実態把握して、是正措置、是正すべき点があればしっかりやっていただきたいということを重ねて申し上げます。
 それで、この除染経費の問題ですけれども、環境省にお尋ねしますが、そもそも特措法に基づいて講ずる措置というのが、原賠法の規定により、原子力事業者、東電の負担のもとに実施するとされておりますけれども、それは、そもそも、汚染者負担の原則に基づいて行われるものだと思いますけれども、その点についてお答えください。

○小林政府参考人 この放射性汚染物質対処特措法は、議員立法でおつくりをいただいたものでございます。四十四条で、原子力事業者、東電の負担でやるというようにお決めになっていただいたということにつきましては、環境行政がこれまでやってまいりました汚染者負担の原則というものとも整合しているものであるというように考えているところでございます。

○塩川委員 汚染者負担の原則に基づいて、原発事故を起こした東電が除染経費を負担することとなっております。東電は、求償があった場合には速やかに支払うよう努めなければならないというのが特措法の規定でもあります。
 そこで、会計検査院にお尋ねしますが、一部の地方自治体は、自主財源で行った除染経費について東電に賠償請求を行っておりますが、把握しておられる団体の数が幾つかを教えていただけますか。

○堀部会計検査院当局者 お答えいたします。
 報告書におきましては、平成二十五年三月末時点で、二県八十八市町村が東京電力に対しまして賠償請求を検討または既に請求している状況でございました。

○塩川委員 昨年三月末時点で、二県八十八市町村が東電に対して賠償請求を検討または既に請求している状況ということです。
 経済産業省にお尋ねいたします。
 東電に寄せられた除染に関する自治体の賠償請求について東電に精査をお願いしましたけれども、その内容についてお答えいただきたいんですが、除染に関して東電に賠償請求を行った自治体数とその請求金額がどうなっているのか、お答えください。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 東京電力に確認をいたしましたところ、福島第一原子力発電所事故に伴いまして、除染経費を東京電力に請求している地方自治体は百四十一団体ございます。それらの自治体から除染費用との名目で請求された金額につきましては、合計で約九十六億円でございます。
 東京電力によりますと、除染費用という名目で請求されているものの中にもそれ以外のものも含まれている可能性があるので、細かな、正確な金額は、より精査が必要だということではございます。
 以上でございます。

○塩川委員 九十六億円、そこは精査が必要だということでありますけれども、百四十一団体から、除染に関する賠償請求が行われているわけであります。
 文科省にお尋ねします。
 賠償指針二次追補のQアンドAを見ますと、特措法の財政措置の対象とならない除染等に伴う損害も賠償対象となるのかという問いを起こしておりますけれども、これについてはどのようにQアンドAでは答えているんでしょうか。

○田中政府参考人 お答えいたします。
 原子力損害賠償紛争審査会が策定いたしました中間指針第二次追補におきましては、除染に係る損害について、「本件事故に由来する放射性物質に関し、必要かつ合理的な範囲の除染等を行うことに伴って必然的に生じた追加的費用、減収分及び財物価値の喪失・減少分は、賠償すべき損害と認められる。」と明記されてございます。
 すなわち、放射性物質汚染対処特措法に基づく措置に直接要する経費や当該措置に伴う財物損壊や営業損害等を含め、同法による財政措置の対象となるか否かにかかわらず、必要かつ合理的な範囲の除染に直接要する追加的費用、そのような除染の後で必然的に生じた追加的費用、除染等に伴って必然的に生じた減収分、財物価値の喪失、減少分は、賠償すべき損害と認められると考えられてございます。

○塩川委員 特措法によらない財政措置、追加的費用についても、必要かつ合理的な範囲ということであれば、賠償すべき損害と認められるということです。
 要するに、この除染経費について多くの地方自治体が東電に賠償請求をしておりますし、それは、汚染者負担原則に基づいて、事故を起こした東電が負担する責任があるからであります。原賠法において、もともと、原子力損害の賠償責任は原子力事業者にあると規定されていることも踏まえているわけであります。
 そこで、新藤大臣にお尋ねしますが、このように、そもそも原発事故がなければ発生しなかった費用の負担、それから原発事故によって追加的な費用負担が生じた除染の経費について復興特交や特交で見たというのであれば、その復興特交や特交にかかった経費を東電に賠償請求するのは当然だと思うんですが、いかがですか。

○新藤国務大臣 原子力発電所の事故に伴う対応、これは誠意を持って当たらなければならないと思います。
 その上で、関係府省においてさまざまな対応がとられているわけでありますが、政府が費用を求償、自分たちが使ったものに対して求めるかどうかということにつきましては、いわゆる除染特措法に基づく除染、それから中間貯蔵施設の費用、これ以外の原子力発電所の事故に伴う対応に要した費用の求償についての政府方針は、まだ決まっていないのでございます。
 ですから、さまざまなそういった問題が今起きておりますし、この対応を政府全体で考えていかなくてはいけない、このように思います。

○塩川委員 いや、そこでもう前に出るべきなんじゃないのかということなんですよ。
 そもそも、この特措法に基づいて、除染や中間貯蔵施設、それを東電に求償するということははっきりしているわけですから。ここに書かれているように、特措法に基づかないようなものであっても、必要かつ合理的なものであれば、東電に賠償請求するのは可能だという整理もしているわけですから。であれば、しっかりとした、特交や復興特交についても東電に賠償請求する。本来、地方共有の財源が、そういう形で東電の肩がわりで払われているというのはおかしい。
 そもそも、加害者の東電がそういう賠償責任を免れて、被害者の住民の皆さんの原資にしている特交や復興特交が充てられるというのは筋違いだと思うんですけれども、いかがですか。

○新藤国務大臣 これは、政府全体で取り組むべきことであって、みんなで努力するしかないというふうに思います。が、ゆえに、政府全体として調整をしていかなくてはいけないことだ、このように考えております。

○塩川委員 要するに、今政府が、十二月二十日の閣議決定で、加速化に向けてという方針の中では、さらなる税金投入の仕組みをつくろうとしているからなんですよ。
 この賠償についても、東電の責任を限るとか、あるいは、中間貯蔵施設についていえば電源開発促進税を充てるとか、そういった点では、いろいろな形で国民の負担に転嫁をする形で、結果とすれば東電の責任を曖昧にする。こういう方向に進んでいるからこそ、今のように特交や復興特交についても曖昧な態度になっているんじゃないのか、こういう点を厳しく指摘して、是正することを強く求めて、質問を終わります。