国会質問

<第186通常国会 2014年02月21日 経済産業委員会 2号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 東電の福島原発事故の対策に係る費用負担のあり方の問題について、きょうは質問をいたします。
 最初に、環境省にお尋ねをいたします。
 放射性物質汚染対処特措法に基づいて講ずる措置は、原賠法の規定により、原子力事業者、東電の負担のもとに実施するとされておりますが、その理由は何でしょうか。

○三好政府参考人 いわゆる除染特措法につきましては、これは議員立法でおつくりいただいたものでございますけれども、先生お尋ねのとおり、特措法の第四十四条第一項で、原子力損害賠償法の第三条第一項の規定により東電の負担とされております。
 これは、これまでの環境行政のいわゆる汚染者負担の原則と整合的なものというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 原発事故を起こした東電が、汚染者負担原則に基づいて除染経費を負担することになっているわけです。東電は、求償があった場合には、速やかに支払うよう努めなければならないとされております。
 次に、経済産業省にお尋ねいたします。
 東京電力に寄せられた、除染に関する自治体の賠償請求の現状がどうなっているか。市町村などが除染を行っています。これは、いわゆる除染特措法などによって措置されるものもありますし、この後聞く特交や復興特交で財政的に措置されるものもあるわけですけれども、それ以外も含めて、東電に直接賠償請求をしている事例があります。その自治体の請求金額と自治体数を教えていただけますか。

○上田政府参考人 お答え申し上げます。
 東京電力からの報告によりますと、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う除染経費を東京電力に請求している地方公共団体は、全国で十三都道府県、百四十一団体ございます。それらの地方公共団体から除染費用として請求された額は、約九十六億円であると承知しております。

○塩川委員 百四十一団体、九十六億円ということです。この請求に対して、東電が自治体に支払った額というのはあるんですか。

○上田政府参考人 現時点では、東京電力からは、先ほどの百四十一の地方公共団体からの除染費用請求に対して、同社がお支払いをしているものはないと聞いております。

○塩川委員 支払った例はないということです。
 除染経費について、多くの自治体が東電に賠償請求をしております。汚染者負担原則に立ち、事故を起こした東電が負担する責任があるからであります。原賠法において、原子力損害の賠償責任は原子炉の運転等に係る原子力事業者にあると規定されております。
 総務省にお尋ねいたします。
 復興特交や特交において措置された除染経費というのがあります。市町村などが除染を行った場合について、それは特別な財政需要として、復興特交の対象地域であれば復興特交で、そうでないところでは特交措置ということが行われているわけですけれども、このような復興特交や特交で措置した除染経費は、汚染者負担原則に立って東電に負担を求めるのが筋じゃないでしょうか。

○青木政府参考人 お答え申し上げます。
 総務省は、地方団体が地域の実情に応じて、環境省の国庫補助の対象とならない地方単独事業として実施する除染について、震災復興特別交付税または特別交付税により財政措置を講じております。
 このほか、災害復旧事業として、文科省や厚労省所管の除染に係る事業も実施されておりますし、また、除染以外にも関係府省でさまざまな対応がとられているところでございます。こうした対応のうち、除染特措法に基づく除染と中間貯蔵施設の費用以外の費用の求償につきましては、政府の方針がまだ決まっていないと承知しておりまして、政府全体として検討していくべきものと考えております。

○塩川委員 政府方針が決まっていないということなんですけれども、賠償の担当でもあります茂木大臣は、この件についてはどんなふうにお考えですか。

○茂木国務大臣 除染に係る賠償といいますか、費用負担、私は担当いたしておりません。

○塩川委員 政府方針としては決まっていないということでありますから、そのことについては追ってまた質問します。
 東電に求償しないまま復興特交や特交で措置するということは、加害者の東電が除染経費を負担せず、いわば被害者である住民や被災者の方に負担を転嫁する。結局は地方共有の財源であります地方交付税を充てているわけですから、それは当然のことながら、住民の負担ということにつながるわけで、汚染者負担原則から逸脱するということにならざるを得ないわけで、この点でもきちんとした対応を求めることが必要ではないかと考えます。
 そこで、昨年十二月二十日に閣議決定いたしました「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」ということで、いわゆる復興指針の原発事故に係る費用負担に関する部分についてお尋ねをいたします。
 まず、その復興指針の中では、これは茂木大臣ですかね、避難指示解除準備区域それから居住制限区域の除染実施後のさらなる取り組みは、復興のインフラ整備、生活環境整備という公共事業的観点で実施とあります。ですから、いわば戻ることを前提にして、除染はするけれどもさらなる取り組みが必要だという場合については公共事業的観点でとあるわけですが、この費用というのは国費を投入するものなんでしょうか、それとも東電に負担を求めるものなんでしょうか。

○上田政府参考人 昨年の十二月二十日に閣議決定がなされておりますが、先生御指摘のとおり、現在計画されている除染を実施した後のさらなる取り組みについては、復興インフラ整備、生活環境整備という公共事業的観点から、帰還者、移住者の定住環境の整備等、地域再生に向けた取り組みとして実施するということが決定されているわけでございます。
 具体的にどのような形でどういう事業を行っていくかということは今後のことでございますので、その事業の性格等を見ながら、負担の観点を検討していくことになると考えております。

○塩川委員 事業の性格等を見てからということですけれども、公共事業的観点といいますと、まさに公共ですから、国費、公費ということが想定されるような文言ですが、この点についてはいかがですか。

○上田政府参考人 御指摘のとおり、これは、公共事業的観点から、定住環境の整備等、地域再生に向けた取り組みとして実施すると書いてございますので、除染とその後のさらなる取り組みが、さまざまな観点、特にインフラ整備、生活環境整備、まさに地域再生という観点からの事業であれば、それは公共事業としてなるということも当然あり得ると考えております。

○塩川委員 インフラ整備、生活環境整備といっても、何でそんな事業をしなければいけないかというと、原発事故が起こったからであるわけで、そういう点では、原因者であります東京電力のまさに責任、負担が問われてくるわけで、その場合の最終的な負担は東京電力に求めるということについては、この中ではどのように位置づけておられるんですか。

○茂木国務大臣 まず明確にさせていただきたいのは、除染特措法に基づきます現在計画されている除染、これについては当然、法律上、求償させていただく。さらなる取り組みというのはその後の話でありまして、そこの中で、公共事業的観点から、帰還者、移住者の定住環境の整備等、地域再生に向けた取り組みとして実施するということです。
 前政権の時代、全て東電の責任だと。福島の復興は進んだでしょうか。極めておくれてきたのは間違いないんですよ。やはり、福島の復興をしっかり進める、そのためにはどういった事業における、また費用負担における役割分担がふさわしいか、こういう観点から、今、復興のさまざまな事業を進めさせていただいております。

○塩川委員 まさにその点を議論することが大事だと思っております。
 福島の復興ということを大いに前に進める、同時にやはり、こういう事故が、結果がなぜ生まれたのかということを前提とした、しっかりとした費用負担のあり方について整理をするということが重要だ。いずれにせよ、東電に負担を求める云々のところは、はっきりしないままの中身になっているわけです。
 それと、この復興指針の中では、実施済みまたは現在計画されている除染、中間貯蔵施設事業の費用は東電に求償としています。
 環境省にお尋ねします。
 それでは、計画のない帰還困難区域の費用はどうしていくのか、除染、あるいは中間貯蔵施設を設けるような場合等々、その費用は東電に求償するということなんでしょうか。

○三好政府参考人 お答えいたします。
 今先生お尋ねの帰還困難区域における除染、これは現在除染が計画されておらない地域でございまして、私どもとしては、除染モデル事業の結果などを踏まえまして、放射線量の見通しでございますとか、今後の住民の方々の帰還意向でございますとか、将来の産業ビジョンや復興の絵姿を踏まえて検討することとしておるところでございます。そういう中で、この除染をどういう形で進めていくのかということも、地元とともに検討を深めていくべきものと考えているところでございます。
 先ほど来御答弁がございますとおり、さまざまな形での取り組みが進められると思っておりますけれども、私ども、改めて、放射性物質汚染対処特措法に規定する除染という形で実施するという部分がございますれば、これにつきましては、その法律に基づいて求償していくということになろうかと考えているところでございます。

○塩川委員 放射性物質汚染対処特措法で措置すべきような部分については当然東電に求償するということですけれども、それ以外の部分もあると想定されるということですか。

○三好政府参考人 お答えいたします。
 先ほど御答弁をさせていただきましたとおり、帰還困難区域における除染の方針につきましては、今後、地元とともに検討を深めていくということでございます。
 さまざまな取り組みが進められるというふうに考えておるところでございます。

○塩川委員 まだ決まっていないところがあるということです。
 それから、実施や計画段階の除染費用について、機構保有の株式売却益で回収するとしておりますけれども、これが想定の株価で売れないような場合、不足が生じた場合は、負担金の円滑な返済のあり方について検討するとありますが、これはどのようなことを考えておられるんでしょうか。

○上田政府参考人 今回の閣議決定は、できるだけエネルギーの安定供給を図りつつ、国民負担を抑制するということを目的としているわけでございます。
 この除染費用、約二・五兆円程度と想定されているものにつきましては、改革を前提としながら東京電力が再生していく、その中で賠償もしっかり行い、除染等についての支払いも行っていくんだ。そのことを前提といたしながらまずは東京電力がしっかり改革し、株価を上げていく、株価の収益が上がれば、その費用をもって除染費用に充てていくんだ。したがって、そこで重要なことは、東京電力がしっかりと成長していく、その上で株価を上げていくということであると考えております。
 今御指摘の点につきましては、仮にそういったことが十分行われなかった場合、その不足分については、先ほどの費用負担の考え方に基づいて、今後どのようにしていくのかということを総合的に検討していくことになると考えております。

○塩川委員 東電がしっかり成長することを前提にということがいわば復興指針の基本にあるということで、そのことはこの後また少し話すとしても、総合的に検討していくということで、決まっていない部分もあるということです。
 それで、除染費用二・五兆円というのがありますけれども、例えば、産総研の研究グループが試算を出しておりますね。その中では、帰還困難区域の部分も入れているところもあるのかもしれないけれども、最大五兆円とかという数字なんかも出ているんですよ。
 そういう点では、この二・五兆という推計そのものが妥当かどうかというのもあるんですけれども、そこは、経産省か環境省か。

○三好政府参考人 二・五兆円と申しますのは、いわゆる除染関連の経費とか汚染廃棄物処理関係の経費、それから中間貯蔵施設の関連経費がございますが、そのうちの除染関連経費と汚染廃棄物処理関連の経費で二・五兆円ということをおっしゃられているのではないかというふうに考えているところでございます。
 この試算につきましては、現在の除染の方針でございますとか労務単価等を前提として算出させていただいておるところでございまして、そのような条件が変わった場合には増減の可能性があるというふうに考えておるところでございます。

○塩川委員 ふえる可能性もあるということです。
 経産省にお尋ねします。
 復興指針では、機構法に基づく交付国債の発行限度額を五兆円から九兆円へと、これは予算の総則にも出てくるわけですけれども、この九兆円の根拠というのはどんなふうに示しているんでしょうか。

○上田政府参考人 この閣議決定の中に記載されておりますけれども、先ほどの環境省の試算というものをベースといたしまして、これによれば、現時点におきまして実施済みまたは現在計画されている除染費用が約二・五兆円程度、それから、中間貯蔵の施設費用は約一・一兆円程度と見込まれております。これに賠償の五兆円程度を加えまして、さらに若干の余裕を見て、交付国債の発行限度額の上限を五兆円から九兆円に引き上げるということにしたものでございます。

○塩川委員 中間貯蔵施設の一・一兆円という数字も出してまいりました。
 中間貯蔵施設費用の一・一兆円について、電気料金に上乗せ徴収されている電源開発促進税を流用するということなんですが、これをちょっと説明していただけますか。

○上田政府参考人 中間貯蔵施設の費用でございますが、中間貯蔵施設は、長期にわたって安定的に管理し、国がその費用の確保に万全を期す必要があると考えております。
 中間貯蔵施設の費用は、先ほどの除染特措法に基づきまして、環境省から東電に対して求償される。その資金繰りにつきましては、国から原賠機構への交付国債の交付により支援することとなるわけですが、その場合は、電力会社による負担金などを原資として、原賠機構から国庫納付するということになるわけでございます。
 しかしながら、従来の考え方そのものに従いまして、被害者の方々への賠償に加えまして、この中間貯蔵施設の費用相当分ということも電力会社の負担金で回収するという場合には、負担金の年間支払い額が非常に大きくなる可能性がある等々の理由から、国民負担の増大を抑制する、かつ電力の安定供給に支障を生じさせないようにするという観点から、機構法の六十八条に基づきまして、必要な資金をエネルギー特会に計上することといたしました。

○塩川委員 電促税ですから、電気料金に乗せられているわけで、利用者の皆さんが負担しておられるわけですけれども、閣議決定した復興指針というのは、こういう点でも国費の投入の部分も含まれているわけであります。
 この復興指針を踏まえた新総特、東電と機構がつくりました新総特では、いわば東電がダイナミックに再生しようということを掲げております。それは、先ほど経産省からの答弁にもありましたように、復興指針においても、東電はしっかり成長するということで、株価も上げて、その売却益で回収する云々という形になっているわけです。つまり、事故を起こした東電が生まれ変わるということを前提としているわけです。
 しかし、いまだに十三万人を超える方々が避難生活を強いられておりますし、その一方で、株主や金融機関の責任が十分問われていないという現状はおかしいという声が上がるのも当然であります。政府が国が前面に出ると言って、国費投入の仕組みをつくろうとしておりますし、負担が曖昧なところも含めて、さらに国費投入がふえることになりかねません。
 大臣にお尋ねします。
 復興指針では、国が前面に立って原子力災害からの福島の再生を加速する、国と東電の役割分担とあります。国が前面に出て、廃炉ですとか、汚染水対策ですとか、除染や復興に主体的に取り組む。この点は重要だと思いますけれども、主体的に取り組むということと、その費用を国が負担するということはイコールではないわけで、これはきちんと区別して考え、対応するということが必要じゃありませんか。

○茂木国務大臣 なかなか、こういった難しい事業を進めるに当たって、口は出すけれども金は出さない、これではやはり済まないんだと思います。
 では、実際にどうだったか。事故が起こってから二年半、廃炉の問題についても、汚染水の問題についても、ほとんど手がつかないような状態というのが続いてきた。
 一日も早く福島の復興を進めるためには、これはもちろん、炉の設置者であり、これまでさまざまな作業の経験も積んできた東電には、実施主体としての責任をこれからも引き続き果たしてもらわなければいけないと思っております。
 しかし、例えば、廃炉に係る難しい研究開発であったりとか、汚染水を、地下水を含めいかに防御していくか、制御していくか、難しい課題もあるわけでありまして、それを全部東電に任せて、うまくいってきたのならそれでいいんです、いろいろな問題が生じてきた、これをもうストップさせようといったことで国も前面に出る。事業をやる以上、資金面でも役割分担は当然必要になってくると考えております。

○塩川委員 国が負担するというのであれば、国の原発事故に当たっての責任ということも問われなくちゃいけないんじゃないですか。やはり、原発を推進してきた中でこういう事故につながったということへの反省が本来あってこその国費の投入というのがある。
 そういうときに、私は、原発の再稼働なんて進めるのはおかしいと。そういうところこそ改めるべきだということが、本来、国費を投入するというのであればやるべき、教訓、反省を踏まえた政府の、国の対応じゃありませんか。

○茂木国務大臣 塩川先生、いい議論をされるんですけれども、時々論理が飛躍するんですね。
 お金を出すからにはその責任をとれ、そういうことではなくて、今一番大切なことは、誰の責任だからどうだ、こういう後ろ向きの議論ではなくて、きちんと一つ一つの課題を解決することによって、十三万人とおっしゃいました被災者の方々がふるさとに一日も早く、明るい表情で帰れる、そういった環境をつくるというのが国の責任だ、そのように思っております。

○塩川委員 もともと費用負担のあり方の議論をしてきているわけですけれども、冒頭、環境省から答弁がありましたように、原発事故に伴う汚染について、汚染者負担原則をやはりしっかりと据えなければならない。また、国民負担を最小化するという立場に立つのであれば、負担の順番というのがあるだろう。私は、そういう点では、事故を起こした東電が真っ先にあり、その株主があって、あるいはメガバンクを初めとした債権者があって、電気を利用する需要家があって、最後に国民というのが本来の基本じゃないかと。
 こういうような負担の順番について、しっかりとした整理こそ改めて必要なんじゃないですか。

○茂木国務大臣 負担の順番、これは法律上決まっているものもあるわけであります。電力債についてどうなるか、よく御案内のとおりだと思います。法律を過去に遡及して変えるということはなかなか難しいと私は考えております。
 そういった中において、それぞれの立場の人間がそれぞれの役割を果たすということが何より大切だと考えております。

○塩川委員 交付国債五兆から九兆円へというのも、もともと一昨年に東電の下河辺会長からの要望もあり、そういう流れの中で行われてきているものでもあります。そういう点では、機構法そのものが東電延命の仕組みとなっているわけですから、機構法の抜本見直しが必要であるわけで、機構法の附則の三条にあるように、ステークホルダーに負担を求めるとか、こういう観点での措置こそ行う必要がある。
 私は、また改めて議論しますけれども、事実上破綻している東電の法的整理や、また、国が責任を認めた上で費用負担をするということであれば、その反省の上に、原発の再稼働などは行うべきではないということを申し上げて、終わります。