国会質問

<第186通常国会 2014年03月26日 経済産業委員会 4号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 貿易保険法の質問をいたします。
 最初に、経産省に確認をいたしますが、貿易保険のユーザーの上位企業三十社、これは資本金の規模で見るとどういうような分布になっているのか。ユーザー上位三十社で保険の引受額というのは全体の何割を占めるのか。この点についてまず教えてください。

○横尾政府参考人 まず、貿易保険の保険金額の引き受け上位三十社の資本金の規模区分ごとに見た場合でございますが、三億円以上十億円未満の企業が三%、十億円以上百億円未満の企業が七%、百億円以上の企業が九〇%となっております。
 それから、引き受けた保険金額の多い上位三十社の保険金額の合計額は、日本貿易保険が引き受けた保険金額全体に占める割合でございますけれども、過去五年間で見ますと約八割でございます。

○塩川委員 資本金の大きいところの話がありましたけれども、例えば、一兆円以上については三社、これはメガバンクということに当然なるでしょうし、一千億円以上が十三社とか百億円以上が十一社、こういう中には当然、大手のメーカーですとかあるいは損保会社が加わっているわけで、リスク軽減のために使われているわけです。
 今回の法案で、海外の子会社や販売拠点からの輸出やサービスにまで貿易保険の付保を拡大する。全体の九割を上位三十社が占めるわけですから、特定の大企業に対して大きな貢献をするということにもなるわけです。
 続けてお聞きしますが、日本及び欧米主要国における輸出額全体に占める保険金額の貿易保険分の割合がどのぐらいになっているのかを教えていただけますか。

○横尾政府参考人 輸出全体に占める貿易保険金額の割合でございますが、日本は一〇%でございます。英国が一・二%、フランスが二・三%、ドイツが二・〇%、アメリカが〇・四%となっております。

○塩川委員 今お聞きしたとおりで、欧米の国々が一%とか二%、それに対して日本が一割ということです。
 大臣にお尋ねしますけれども、欧米諸国に比べて日本の公的保険がカバーする範囲が随分広いんじゃないかなと思うんですが、そういう現状についてはどのように受けとめておられますか。

○茂木国務大臣 それぞれの国の企業の国際展開のあり方によって、貿易保険としてカバーすべきエリアというのは変わってきますので、一律に日本だけが広いということにはならないと思っております。
 それから、先ほど政府参考人から、上位三十社で全体のボリュームの八割という答弁をさせていただきましたけれども、一般のビジネスの世界でいいますと、特にBツーBのビジネスであったりとかは、例えば、売れ筋のお客さん、それから売れ筋の商品、これはエイティー・トゥエンティーというんですよ、二割の客が八割なんです。これが一般的であります。もちろん、これから、中小企業に対する貿易保険、こういったものをふやすための努力、現在でも半数を占めておりますけれども、続けていきたいと思っております。
 今回は、地方の中小企業への貿易保険の普及、こういった観点から、日本貿易保険の引受能力及び民間の損害保険会社の全国的なネットワーク、販売網という両者の長所をあわせることが効果的かつ効率的と考えられることから、日本貿易保険が民間損害保険会社の対外取引向けの保険に再保険をつけることができるよう措置いたしまして、これによりまして民間の損害保険会社がより充実した対外取引向け保険を地域の中小企業、小規模企業に提供することができるようになる、このように考えております。

○塩川委員 ヨーロッパ、EUでは、民間市場によってリスクをカバー可能な、短期の公的輸出信用保険の付保は認められないという方針を示し、二年以内の短期保険は民間損保会社が商業ベースで対応し、国は、リスクが高く、国策と連携した中長期保険について公的保険を実施するという役割分担を行われております。
 一方、日本では、NEXIが短期及び中長期双方の貿易保険を取り扱い、国が再保険を引き受けているわけで、短期保険分野もカバーしているという点でいえば、メーンユーザーの大手企業にはリスクを負担する体力も資金力もあるわけで、公的保険がカバーする範囲が広い、そういう点でも、諸外国にはない特定大企業への優遇策ではないのか、このことを指摘しておきます。
 そこで、原発輸出について質問をいたします。
 経産省にお尋ねしますが、NEXIが引き受けを行った原子力案件の件数と付保実績はどうなっているでしょうか。
    〔委員長退席、江田(康)委員長代理着席〕

○横尾政府参考人 日本貿易保険が原発に関連する案件について引き受けた件数と金額でございますが、二〇〇一年度から二〇一三年度までの累計で、件数では五十三件、金額では千七百十六億円でございます。

○塩川委員 続けてお尋ねします。
 昨年五月に政府がまとめましたインフラシステム輸出戦略においては、インフラシステム輸出の原子力分野における日本企業の海外受注額について、現状と将来推計を示しております。
 二〇一〇年の現状と二〇二〇年の将来推計はそれぞれ幾らとしているのかについて、お答えください。

○上田政府参考人 インフラシステム輸出戦略でございますが、二〇二〇年の海外受注額の将来推計というのをしております。エネルギー分野全体で九兆円程度と見込んでいるわけでございますけれども、そのうち原子力分野については二兆円程度と考えて推計をしております。
 推計につきましては、IAEAの将来における原子力発電に関する予測というものの設備容量を勘案いたしまして年当たりの設備容量増加分を算出し、二〇二〇年時点における海外市場規模を推計する、また、日本企業の割合といったものを乗じながら、今申し上げたような数字を推計しているところでございます。

○塩川委員 二〇二〇年の推計は二兆円ということですが、二〇一〇年の現状は幾らで、どんなふうに出したのか、簡単に説明してもらえますか。

○上田政府参考人 このインフラシステム輸出の推計におきまして、二〇一〇年の数字は約〇・三兆円というふうに考えております。

○塩川委員 〇・三兆円ということ、これは日本の原発のメーカー三社に聞き取りをしたということでお聞きしております。この十年間でいわば〇・三兆円が二兆円ですから、七倍程度に大きく原発輸出を拡大しようとしているわけです。これを後押しする取り組みの一つが今回の法改正でもあるわけです。
 今紹介しましたインフラシステム輸出戦略には、日本貿易保険、NEXIなど公的金融による支援強化として、公的信用付与の条件の一つとなる、原子力関連の十分な安全確認制度を早急に整備するとあります。これはどのようなことを検討しているのか。現時点で措置されていないと承知しておりますが、その理由は何かについてお答えいただけますか。

○上田政府参考人 お答えいたします。
 原子力発電所の安全確保でございますけれども、基本的に、当該発電所の立地する国が安全確保を行うということが国際的にも確立した考え方でございます。
 他方、OECDのガイドラインにおきまして、融資や保険などの公的な信用を供与する場合には、プロジェクトの環境、社会への潜在的な影響を事前に評価するということが決まっているわけでございます。
 いわゆる原発輸出の安全確認というものには、このOECDのガイドラインも踏まえまして、原発関連の輸出に公的信用を供与する場合に、株式会社国際協力銀行あるいは独立行政法人日本貿易保険からの照会ということに基づきまして、経済産業省が輸出相手国の原子力の安全規制体制等々について確認するということにより、安全確保に関する配慮を確認する手続がございます。
 これ自身につきましては、原子力規制委員会の設置後につきましては安全確保の配慮の確認が必要となる案件はなかったということもありまして、安全確認を実施していないわけでございまして、原子力規制委員会設置後の安全配慮の確認手続の詳細につきましては、現在政府において検討を進めているところでございます。
    〔江田(康)委員長代理退席、委員長着席〕

○塩川委員 原子力安全の規制等について確認をする仕組みだということです。詳細については検討中ということなんですけれども。
 これは、今答弁にありましたように、これまでは経産省にありました原子力安全・保安院で確認を行っていたわけです。その確認の中身というのは、安全規制を適切に行える体制の整備とか、安全確保等のために整備されている国際取り決め等を受け入れ、それを遵守していることとか、こういう確認というのをするわけですが、実際にその調査票を拝見しますと、要するに、イエス、ノーのチェックリストなんですね。ですから、そういう点でいえば、何でこんなのがいまだに検討課題なのかというのがわからないんですけれども、それは、何が足りないから、あるいは何を加えると考えているのか。その辺の背景について、もう少し説明してもらえますか。

○上田政府参考人 原子力発電所の安全確保に対する配慮の手続をどのようにしていくかということでございますけれども、従来のところは、先生御指摘のとおり、例えば、その国における体制が整備されているかどうかとか、国際的な取り決めを受け入れてそれを遵守していることであるかどうかとか、製造業者が積極的に対応していく、こういったことを確認項目といたしまして、チェックリストという形でそれを確認してきたところでございます。
 しかしながら、御案内のとおり、原子力規制委員会の設置後、これらの確認手続を、どういった項目について、どういうふうにしていくのかということにつきましては、例えばその体制の問題、国内の規制基準の進捗、進化というものを踏まえまして、どのような項目にすればいいか、そういうことについて検討を行っているところでございます。

○塩川委員 ですから、従来のチェックリストのままであれば、別に、経産省がやるというのは当然すぐできる話だと思うんです。
 今、原子力規制委員会が発足して、旧原子力安全・保安院がやっていたチェックについては規制委員会は引き受けませんよということを言ったというお話があったわけですが、それは、そもそも原子力規制委員会というのが、推進と規制を分離する、その規制を担うという立場から、推進にかかわるような原発輸出についてはその事務、業務には当たらないということで、規制委員会の仕事ではありませんという整理になっているからですよね。
 そういう点で、推進の経産省がチェックをするということについての妥当性というか、信頼性の問題、それはそれであると思いますけれども、原発推進を図ろうという経産省として、まさにインフラシステム輸出戦略に課題として挙げられている、原子力関連の十分な安全確認制度の整備について、いまだに対応していない理由というのがわからないんです。
 これは要するに、現行の調査票、イエス、ノーで聞いているような、原子力安全条約に入っているとか入っていないとか、公開情報で、すぐわかるような情報に加えて、新たな確認制度、安全確保策を盛り込むことを考えているということですか。

○茂木国務大臣 まず、日本のインフラシステム輸出ですけれども、これは、高効率の火力発電、鉄道、水システム、こういったものも含めて、ニーズの高い分野について、日本のすぐれた技術であったりとかノウハウを積極的に展開していきたいということであります。
 そこの中で、原子力についてでありますが、御案内のとおり、昨年の夏に、原子力規制委員会によります新たな規制基準が定められたわけであります。
 そして、先ほど政府参考人からも答弁させていただきましたように、あくまで原発の安全性の確保につきましては当該立地国が責任を持って行う、これが国際的な共通の理解であると思っております。そういった体制とかそういったルール等がその国で整備をされているかどうか、このことにつきまして、安全確保の確認といった形で政府としても行っていくという形でありまして、当然、新しい規制基準というのも日本でつくったわけであります。
 そして、新しい規制委員会というのもできたわけでありますから、そういったものも踏まえながら、まさに、世界で最も安心、安全な原子力発電をいかにつくっていくか、同時に、それによりまして世界の原子力の安全の向上、原子力の平和利用に貢献していく、これが我が国としても責務である、このように考えております。

○塩川委員 質問に答えてもらっていないんですが、その新規制基準について、できましたと言うけれども、大臣がおっしゃるように、原子力の安全というのは相手国が責任を持つわけですから、日本の規制基準をそのまま相手に押しつけるという関係ではないということをおっしゃっておられるわけで、そういったときに、この安全確保、安全確認について、では規制基準を踏まえて何かやるんですかというのが、そこのところが不透明なままですよね。
 ですから、現行の、簡単にマル・バツ、イエス、ノーでチェックできるようなこの調査票に加えて、何を入れる作業をしているからいまだに表に出ていないのか、そこのところがわからないんですけれども、現場の方ではどうなんですか。

○上田政府参考人 今大臣からも御答弁申し上げましたけれども、原子力規制委員会の新しい規制基準がさまざまな形で進化をしているわけでございます。
 また、新しく原子力規制委員会というのが設置されたわけでございまして、その中で、中立的で公平な手続ということについては、どういった項目について、どういった形でその詳細な確認手続を定めていくのかということについてさまざまな角度から検討している、それにややお時間をいただいている、こういう状況でございます。

○塩川委員 いや、その中身がわからないんですけれども。
 では、例えば、安全確認制度の中には、シビアアクシデント対策とか、あるいは住民避難計画について確認をするとか、そういうことが入るということなんですか。

○上田政府参考人 この安全配慮手続、先ほども御答弁申し上げましたけれども、基本的には、安全性の確保というものは、原子力発電所の立地する国においてどういうニーズがあるかということでございます。
 先生御指摘のシビアアクシデント対策、人材育成、あるいは制度整備につきましては、今の配慮手続ということではなく、例えば、原子力利用国におきましても、安全の確保の観点から、先方の御要請があれば、人材育成、あるいは私どもの事故や廃炉の経験、こういう面でも我々は貢献していきたいと考えておるわけでございまして、具体的に、ベトナム等々、さまざまな国におきまして、専門家の派遣、あるいは現地における人材育成等々に関するいろいろな協力を行ってきているわけでございます。
 私どもは、こういったさまざまな努力を通じて、立地国における原子力安全の確保ということに貢献していきたいと考えております。

○塩川委員 結局、いろいろ言うけれども、規制基準云々の話というのは、相手の話だから、こちらからどうのということではないということであるわけで、要するに、今の原子力産業の要望、動向が変わってきたというのが背景にあるということなんじゃないですか。
 つまり、個別の部品の輸出というところから、プラントの輸出ですから。そういうプラントの輸出に対応した、しっかりとした取り組みが必要なんだ。より一層前向きに、前のめりに原発輸出を進めるといった際に、内部的に必要なチェックが求められていますねと。そういう意味では、原子力産業のプラント輸出に大きく踏み込んでいく、こういう支援策の一環として行うことが課題となっているということなんじゃないでしょうか。
 私は、大臣にその点をお聞きしたいのと、そもそも福島原発事故は終わっていません。いまだに十四万人の方々が避難生活を強いられているわけですし、原発立地地域の避難計画もつくられていないところが多数という状況の中で、原発事故の原因も究明されていない。原発輸出に対する国民の理解は得られていないと率直に思いますけれども、その点についてお聞きして、終わりたいと思います。

○茂木国務大臣 前のめりというのは当たっていないと思います。前向きと表現していただいたので、そこで意見が一致する部分もあるかな、こんなふうに思っております。
 東電の福島第一原発事故の経験と教訓を世界と共有していくことは、世界の原子力安全の向上や原子力の平和利用に貢献していくということでありまして、我が国の責務としてしっかりと果たしていきたいと考えております。

○塩川委員 原発輸出というのは、原発事故リスクの輸出にしかならないということを申し上げて、質問を終わります。