国会質問

<第186通常国会 2014年03月28日 経済産業委員会 5号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、福島原発の構内作業員の賃上げ問題について質問いたします。
 この件については、昨年の十月、十一月、構内作業員の方々の労働条件、大変過酷な中で、厳しい状況のもとで、実際に日当が非常に低いということが大きな問題となって、この改善ということを求めてまいりました。
 そんな中で、昨年十一月八日に廣瀬社長が記者会見で、設計上の労務単価を一万円から二万円という例示で示したわけですけれども、十二月以降の契約においてこのことを具体化していくというお話でありました。このことについてお尋ねをいたします。
 資料を配付いたしましたが、これは、茂木大臣をチーム長とします廃炉・汚染水対策チーム、その会合の第三回事務局会議、二月二十七日に東電が配付をした資料であります。「設計上の労務費割増分の増額に関する取組み」、その内容について質問をするものです。
 具体的な施策として、一、二、三と書かれております。これがどのような中身となっているのかについて、まず廣瀬社長からお答えいただきたいと思います。

○廣瀬参考人 それでは、先生のお配りになった資料に基づきまして、御説明差し上げます。
 具体的な施策、御指摘のように、真ん中よりやや下に、一、二、三と書いてある、このことでございます。
 一というのは、これは、私どもが工事をお願いする際に請負工事会社さんから見積もりをいただくわけですが、その際に留意事項としてお願いしますということの内容でございます。
 これは、まさに先ほど先生から御指摘がありました、いわゆる労務費の割り増し分を今回私どもはどういう考え方で設計上の単価として考えていますよということを一つ一つ明記いたしました。例えば、全面、半面マスクをつけている場合には二万円ですよとか、これはちょっと例えばなのであれですけれども、それからあるいは、ボンベをしょわれたりアノラックを着られたり、そういうようなカテゴリーごとに違いますので、そうした場合は三万円。今回、これは増分した後に、例えば、一万円を二万円にしますよといった場合は二万円ですよ、アノラックを着たりしたものを、二万円を三万円にした場合は三万円ですよということを一つ一つ明記いたしました。
 この狙いは、請負会社さんから私どもに見積もりをする際に、私ども発注者側はそう考えているんですよ、したがって、それを踏まえて見積もりをしてくださいよ、つまり、それをしっかり反映させてくださいよということで、お願いする意図を持ってこうしたことをいたしました。それが一つ目であります。
 二つ目は、三つポツがございますけれども、一つ目は、これはまさに、適切な賃金が末端のお一人お一人までちゃんと行き渡るようにいろいろな対策を考えてください、その対策の進捗状況もちゃんと結果を教えてくださいと。これは、そのまま、そのとおりのお願いでございます。
 それから、二つ目のポツは、そうした対策をとられたとしても、例えばよろしくない事例が出てくるというようなことがあった場合には、私ども発注者側としてもしっかり対策をとらせていただきますよ、御社がやられた対策を、ちゃんとPDCAを回して、ちゃんとできているかどうか、私どもとしてもしっかり関与させていただきますよという意味でございます。
 三つ目は、皆さんから御指摘いただいているいわゆる多重の下請構造についても、私どももしっかり把握をしておくべきだということで、元請各社さんに、それぞれの、一次、二次、三次といく施工の体系図を出してくださいというお願いをした。これが二つ目であります。
 そして三つ目は、例えば、私どもが今度発注をさせていただく総額一億円の工事があったとしますと、今回のいわゆる労務費の増分はその中に一千万円入っていますよと。ここは、一万円から二万円、二万円から三万円にふえる、その一万円の分、ふえた分については、今回、総工事費一億円の中に例えば何百万円入っていますよ、一千万円入っていますよということをしっかり明記したことで、これもあわせて、そうしたものをしっかり踏まえてくださいよという意味を込めて、こうしたお願いを三つ差し上げたということでございます。

○塩川委員 わかりました。
 先ほど、割り増し額の明記のところがありましたけれども、これはカテゴリーとして、今お話しになったような、アノラックがどうとか全面マスクがどうとか、それは後でいいんですけれども、目安となるのはどのぐらいなのかというのを教えてもらえますか。

○富田委員長 後で資料をいただくということですか。

○塩川委員 ということで要求したいんですが、よろしいですか。

○廣瀬参考人 例えばということで今御説明させていただきましたけれども、一つ一つは個別の民民の契約ですので、お示しすることは、申しわけございませんが、御勘弁いただきたいと思います。

○塩川委員 例示でわかるような形で整理してもらうので結構なんですけれども、考え方について、改めてこれは要求したいと思います。
 それから、三のところですけれども、このような、「各契約件名における割増分の増額金額など、元請会社が施策を実行するにあたって必要な金額情報を、可能な範囲で当社から元請会社へ提供」。ここにありました、一億円のうち数百万とか一千万とか、別枠で明記をするということであります。
 「可能な範囲」と書かれているんですが、基本はきちんと明記をすることなしには現場ではわからないわけですから、原則全て行うという立場だと承知していますけれども、その点はよろしいですか。

○廣瀬参考人 可能な限りというふうに書いてございますけれども、私どもとしては、全て書こうと思っております。繰り返しますが、例えば一億円の工事の内数でございます。それらを積み上げて一億円の工事になるということでございます。

○塩川委員 十二月以降、新たな契約については、そういう形で明記もしていくということで、周知も含めて図っていくということですけれども、実際、現場で働く作業員の方の賃上げというのは行われているんでしょうか。

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 私どものお支払いは、工事の完了をもってお支払いさせていただくということになりますので、十二月以降、もう工事が終わっていれば、当然お支払いをされておりますので、その分が正しく最後の方まで行っていれば、もちろんそこへは届いておりますけれども、まだ工事が終わっていないと、そこまで届いていないということはございます。

○塩川委員 ですから、実際に届いているという実感があるのかどうかというところなんですけれども、そういう点でいいますと、十二月以降、新規の契約に入ったという案件がどのぐらいあって、対象になるような作業員の人、実際に賃上げになるだろうと推定される人がどのぐらいなのかというのは、件数を含めてわかりますか。

○廣瀬参考人 十二月以降の発注分で、二月末まででございますけれども、四十八件ございました。そのうち、工事が小さいものは当然その間で終わりますので、四十八件のうち三件は、既に工事が完了しており、お支払いもされておりますので、そうした方々のところにはもう手元に届いているというふうに考えられると思います。
 人数は、ちょっと申しわけございません、今手元にございません。

○塩川委員 人数についても、わかるところで後で教えていただきたいんですが、三件完了で支払っているということですけれども、そういった方々がちゃんと十二月分から上乗せされているのかというのがあるわけですよ。つまり、十二月からの新規契約が三カ月で終わりました、検査を三月でやって支払いましたということでいえば、それは十二月からちゃんと賃上げになっているということを求めるわけですよね。

○廣瀬参考人 私ども、もとより、そうした金額を含めて総額を決め、元請会社さんにお願いしておりますので、当然、途中で中抜きされるようなことがなく、我々の意図に沿って末端の方まで届くというのを我々としては意図しているところでございます。

○塩川委員 新規契約時に労務費割り増し分の増額を図るということになりますと、長期の契約で、十二月以前から契約があって、この先さらに長期にわたるという場合があります。かなり多くは一年以内の契約での作業なのかもしれませんけれども、お聞きしたところによりますと、作業の中身によっては、非常に長期になる、二年、三年になるのもある。そういった場合には上乗せ、割り増しが適用されないままいくんじゃないのかということでは、実際に長期に働いている方々の賃上げにつながらないということになるんじゃないのか。その点はどうなんですか。

○廣瀬参考人 そうしたケースにおきましては、元請会社さんと協議をさせていただいて、しかるべき対策をとっていかなければいけないというふうに考えているところでございます。
 なお、先ほどの御質問で人数というのがございましたけれども、私どもは、直接的には雇用契約でございませんので、この工事をやってくださいというお願いですので、私どもの設計上十人でお願いしていても、それが五人でされたり二十人でされたりということについては、私どもの方では把握できないというところを御了解いただきたいと思います。

○塩川委員 現場の方では、実際には賃上げにつながっていない実態があるわけで、賃金が上がると期待していたのに結果として上がらないということが、モチベーションを上げるどころか、かえって下げているという、現実にあるわけです。
 ですから、十二月以降の新規契約の場合ということは言っていたとしても、多くの労働者は引き続き働いているわけですし、そういった方々についてしっかりと賃上げが図られるということこそ、東電が発注者としてしっかり、現場の構内作業が確実に、迅速に、安全に行われる上でも不可欠のことだと思うんですが、先ほど、そういった長期の契約の元請との間では今後対応を考えていきたいということですけれども、そこは何か踏み込んでやる話というのは今あるんですか。

○廣瀬参考人 まさにこれは具体的な個別のケースでございますので、そうしたケースに対して元請会社さんと協議をするということになると思います。
 今の段階でそうしたことではございません。

○塩川委員 ですから、そういう場合に、いつからは上がるというようなことを作業員の人に言えるのか。そういうことこそ意欲を引き出す力になると思うんですけれども、その辺で東電として考えていることはないんですか。

○廣瀬参考人 今回のこの割り増し分の増額というのは、十二月発注分、既に契約が確定して工事をお願いしてしまっている分というのももちろんございますので、今回の割り増し分については十二月からの分ということで当初より適用させていただいておりますので、それ以降のおっしゃったような長いものについて、そういうケースが出てきましたら、それについては元請会社さんとしっかり協議をしていくということだと思っております。

○塩川委員 例えば、ことしの六月に切れて、そこから先、新たな契約を結ぶというような場合に、昨年の十二月からことしの六月分については、過去の契約分ですけれども、その期間も働いた人がいるわけですから、その人たちについては上乗せがされるということを新規の契約の際にきちっと組み込んだ、そういった契約を図るということも当然考えられると思うんですけれども、それがまた意欲を引き出すことにもなると思うんです。
 そういうことも含めて、やはり十二月以降に賃上げが図られるという、意欲につながるような対策として考えるというのはないのか、その点についてお聞きしたいと思います。

○廣瀬参考人 御指摘の趣旨はわかりますが、ただ、例えば、六月からやる工事が単純に、それまでの工事の継続、全く同じものなのかどうなのか。やはりどうしても、いろいろな工事がございますので、新しい工事であれば、新しいボンベをしょう方の人数であるとか、マスクをする方の人数であるとか、当然、全部変わってしまいます。
 したがいまして、新しい契約は新しい契約ということでやらせていただいて、これまでの分については、そうしたケースがある場合には協議をさせていただくということにさせていただきたいと思っています。

○塩川委員 であれば、やはり外出しでしっかり支給するような仕組みこそ考えるべきだ。
 それは、作業内容ですとか作業環境によって、例えば四万円とか二万円というのを現場の実態を踏まえて決めて、その額を支給しますよということを契約の中にはっきりと明記する。そういう形でいわば危険手当分ということを明記して支払うということであれば、現行の契約においても、それを付加するという形でやることも可能であるわけです。
 私は、そういうことも含めてやらないと、現場のモチベーションを上げる、安全な環境で確実に作業を進めていく、そういうことにつながらないと思うんですけれども、そういう外出しでの支給を含めるような契約というのは考えないんですか。

○廣瀬参考人 まさに請負契約の中でそうした私どもの考えを反映すべく、先ほど先生のお配りになった紙の三ですけれども、総額の工事費の中に私どもは今回こういうことを考えていますよということを明記させていただいて、その中で、それぞれの方にそうしたものがしっかり届くような取り組みに改めたわけでございます。

○塩川委員 それで、実際にはその既存の契約が続く限りは賃上げになりませんねということでは、多くの方々は今大変厳しい環境の中で働いている、実際には除染作業の方が賃金が高かったりする、それでは一層確保が困難になるでしょう。そもそも、それが出発点だったわけですから。
 確実に賃上げになるような、除染よりも厳しい環境で働く構内作業員の方の賃金の方が高いと少なくとも言えるような、そういうことこそ行うべきであって、既存の契約部分についても何らかの対策が必要じゃないですか。

○廣瀬参考人 まさにこれから、工事に対してしっかりとした作業員の方々を確保していくというために、これからの工事に対して、十二月以降、取り組みをしてまいっております。
 もちろん、繰り返しになりますけれども、引き続き協議をさせていただくということはやっていきたいと思いますので、ただ、基本的には、これからの工事をしっかり確保してやっていくために、労務費の増額を今回新たに取り入れて始めているということと御理解いただければと思います。

○塩川委員 とにかく、本当に賃上げができたと言えることこそ必要なわけで、それにつながるような取り組みというのを強く求めるものですし……(発言する者あり)もらっていないんだよ、現場では。
 宇徳についてお尋ねします。
 元請の一つの宇徳について、福島第一ではどのような業務に従事しているのか。また、宇徳は、現場に対して、設計上の割り増し額の支給は受けていないと主張していましたけれども、東電はどのように対応されたのか。宇徳が元請となった業務に従事する作業員の賃上げは図られたのか。この点について確認したいと思います。

○廣瀬参考人 宇徳さんは、御存じのように、運送事業を営まれている会社でございます。私どもも、特に重量物の搬送等の作業をお願いしております。
 それで、先生御指摘になった、割り増し分を我々は受け取っていないと御主張になったという宇徳さんのお話ですけれども、これについても、しっかり宇徳さんと話をさせていただきました。そこにちょっと我々と認識の違いというか誤解があったようで、今回の増分の話になったときに、宇徳さんは、そもそもの労務費の増分というのが、例えば、さっきの例でいえば、一億円の工事のほかに別途割り増し分というのが東京電力からあたかも出ているがごとく受け取られたようでありまして、そういうことは受け取っていないとおっしゃったというふうに認識しております。
 そこについては、我々のあくまでも設計上の考え方であって、それは総額の工事費の中の分ですよという話を御説明させていただいたとともに、今回の割り増し分の増分、例でいえば一万円を二万円にするという、その部分についても御理解いただいて、今後、宇徳さんの中の部分についてもそうしたことを反映していただくということをお願いして、おやりになっていただいていると期待しております。まだ確認をとれているわけではございませんけれども。

○塩川委員 改めて確認もしていただいて、実際に現場で賃金が上がったと言えるような状況をぜひつくっていただきたいと思います。危険手当の支払いを求めるような従業員、下請の方に対して、いや、かわりは幾らでもいるんだというような言い方もされたという現場の話も聞いているものですから、とんでもない話であって、こういうことは許されない。しっかりと賃上げにつながる取り組みをやっていただきたい。
 こういう取り組みにしっかりと政府としても後押しをするということで、大臣に一言いただいて、終わりたいと思います。

○茂木国務大臣 しっかりと指導してまいりたいと考えております。

○塩川委員 終わります。
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