国会質問

<第186通常国会 2014年04月03日 総務委員会 12号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 電波法改正案について質問をいたします。引き続きいい質問をやっていきますので、よろしくお願いします。
 今回の法改正で、携帯電話に関する電波利用料の料額の見直しが行われます。電波利用料の見直しに関する検討会報告書は、国民の生命財産の保護に著しく寄与するに係る特性係数、軽減係数については、災害時において携帯電話等が国民にとってなくてはならないものとなっている中、ハード部分について、東日本大震災においても通信基盤の迅速な復旧や新たな災害対策の取り組みを行うなど、非常時対応に費用負担を負っていることを踏まえて、携帯電話等にも適用すべきだとしております。いわば、災害時の通信基盤の整備に伴う費用負担があるので、電波利用料の負担軽減を図るという趣旨でもあります。
 そこで総務省にお尋ねいたしますが、この移動系の停電対策ですね、基地局がどうなっているのか。それが一番問題となったのが災害時でありました。主要な通信事業者の取り組み状況がどのようになっているのか、あわせて、万全な体制に向けて今後どのように取り組んでいくのか、この点についてお答えください。

○吉良政府参考人 お答え申し上げます。
 東日本大震災では大規模な停電等によりサービスの提供に多大な支障が生じたというようなことから、総務省におきましては、平成二十三年四月から、大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方に関する検討会を開催しまして、今後の大規模災害に対応できるよう、通信手段の確保に焦点を当てた検討を行ったところでございます。
 平成二十三年十二月の検討会の取りまとめを受けまして、通信サービスの耐災害性の強化を図るべく、十分な燃料の備蓄、それから補給手段の確保といった停電対策の長時間化、それから電気通信回線の複数経路化などの技術基準の見直しを行いまして、平成二十四年九月に改正省令を出したところでございます。
 今後ですが、この省令改正を受けまして、主要な携帯電話事業者は、都道府県庁や町村役場の重要拠点をカバーします基地局の二十四時間化を進めておりまして、本年三月末現在で、NTTドコモは九五%、それからKDDIは九九%、ソフトバンクは九八%まで、それぞれ二十四時間化を実現しているところでございます。

○塩川委員 ぜひ二十四時間化の対応で、一〇〇%になっていないわけですから、これは今後はかなり困難な場所というふうに承知しておりますけれども、引き続きしっかりと、万全の体制がとれるような対応を事業者に求めてもらいたいということを申し上げておきます。
 関連して、災害時の通信手段確保の問題で、私、公衆電話の問題をこの間取り上げてまいりました。災害時、公衆電話の役割が改めて見直されたというのは、東日本大震災のときでもあったわけであります。
 そこで、きょうは、特設公衆電話についてお尋ねをいたします。
 東日本大震災の後の二〇一一年の五月に当委員会で、避難所に公衆電話があればすぐ連絡がとりやすいということを取り上げて、避難所への公衆電話の設置を要望しました。当時の片山大臣は、避難所に公衆電話があらかじめ設置されてあれば非常に有効だ、公衆電話のあり方についての一つの検討課題だと答弁をしております。その後、この問題をどのように対応されたのかをお聞きします。
 総務省にお尋ねしますが、災害時の避難所に事前設置をされる特設公衆電話、この設置を事業者が進めているということですけれども、この特設公衆電話の設置の考え方について御説明いただけますか。

○吉良政府参考人 お答え申し上げます。
 災害発生時に避難所等で利用される特設公衆電話につきましては、東日本大震災発生時の教訓を踏まえて、災害時に迅速な利用が可能となるよう、あらかじめ加入者回線を用意しておきます事前設置型の特設公衆電話の設置が、NTT東西によりまして進められているところでございます。
 これにつきましては、震災直後に総務省におきまして開催しました検討会の最終取りまとめを踏まえまして、電気通信事業者が取り組んでいるものでございまして、平成二十五年の三月末現在で、NTT東西合計で約一万八千台が全国に設置されているところでございます。
 今後のことでございますが、NTT東西では、都道府県知事が指定した避難所につきましては、市区町村から設置要望があった施設や、大量の帰宅困難者の発生が想定される都市部におきまして自治体等が指定した、いわゆる帰宅困難者対策拠点につきましては、市区町村から設置要望があり、かつNTT東西と協議が調った施設を対象として、施設収容人員百名当たり一台を基本として事前設置を進める予定というふうに聞いております。
 こうした考え方に基づきまして、特設公衆電話の事前設置を進め、平成二十八年度末で全国に八万四千台の特設公衆電話を事前設置するということを見込んでいるところでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 避難所にあらかじめ加入者回線を引いておいて、さらに公衆電話そのものも奥の方にしまっておいて、実際の災害時にあれば、それを出してきて接続して、そこから電話ができるというのが特設公衆電話であるわけです。
 やはり、東日本大震災のときにも、二日、三日途絶する、携帯が使えないという状況がありました。そういったときに、この公衆電話というのが優先になっている、また無料でも使えるということもありまして、それについての有効性が非常に高かったということが教訓となっているわけであります。そういうのも踏まえて、特設公衆電話の事前設置ということが進められているわけです。
 次に、内閣府防災にお尋ねします。
 昨年六月の改正災害対策基本法で、指定避難所を定めました。この指定避難所の法律上の位置づけがどのようなものになっているのか、あわせて、避難所の総数というのはそもそも幾つぐらいなのか、この点について御説明いただけますか。

○佐々木政府参考人 二十五年の災害対策基本法の改正におきまして、被災者が一定期間滞在する場としての避難所につきまして、円滑な救援活動を実施し、また、一定の生活環境を確保する観点から、市町村長が学校や公民館等の公共施設を指定避難所として指定することを法律の改正として盛り込んだところでございます。
 この規定は本年の四月一日から施行ということでございますので、この法律に基づく数字というのは現在のところまだ把握できておりませんが、報告規定が整備されておりますので、別途、今後、各自治体から報告が上がってきたところで把握をしていきたい、こういうふうに思っております。
 なお、消防庁が公表しております地方防災行政の現況という資料におきましては、平成二十五年四月一日現在で、地域防災計画に避難所として位置づけられている数を申し上げますと、千七百二十四団体で十万五千九百一施設が位置づけされているというふうに承知をいたしております。

○塩川委員 この避難所の役割、そういう意味では、一時的な避難の避難場所と区別をして、一定期間避難をせざるを得なくなるような、そういう環境としての避難所をきちっと定めて、そこにおける、健康面でのいろいろな配慮ですとか、食料品などの備蓄を行うとか、そういった環境をきちっと整えるということを制度化したのが、昨年の災害対策基本法の改正の中身でありました。
 そういう点で、こういう避難所がしっかりと、一定期間、避難の環境を整えていくという点では、私は通信手段の確保というのも欠かすことができないものだと思うんですが、その点についてはいかがですか。

○佐々木政府参考人 災害対策基本法の改正におきましては、あわせて避難所の生活環境の整備といった規定を別途入れております。これを受けまして、内閣府として、ガイドライン、取り組み指針を出させていただいております。
 その中におきましては、被災者の情報環境の整備といった視点も重要であるということ、これは市町村の参考ということで提供させていただいておりますが、そういった視点も盛り込みをさせていただいているところでございます。

○塩川委員 ガイドラインに情報環境の整備、そういう点では、通信手段の確保というのが欠かすことができないものであるわけです。
 そういった避難所が、内閣府防災としての集計はこれからですけれども、現行、消防庁が把握をしている、地域防災計画に位置づけられている避難所の数は、全国で十万カ所以上ということです。
 それでは、特設公衆電話が設置をされている避難所の数が現状幾つなのか。一カ所に複数の台数となっているわけですけれども、避難所の箇所数、現行が何カ所か。あわせて、二十八年度末で八万四千台の設置を見込んでいるというお話ですけれども、これは台数ですから、二十八年度末の数字で、避難所における設置箇所数の見込み、これはわかりますか。

○吉良政府参考人 お答え申し上げます。
 避難所におきまして、NTT東日本では、箇所数にしますと三千四十四カ所でございます。それから、NTT西日本につきましては二千五百三十四カ所ということで、合わせて五千五百七十八カ所ということでございます。

○塩川委員 今のは平成二十五年三月末の数字ということで、五千五百七十八カ所ですけれども、もう一問お聞きしたんですが、二十八年度末における避難所の設置箇所の見込み。

○吉良政府参考人 お答え申し上げます。
 二十八年度末で約三万五千カ所でございます。

○塩川委員 その数は、いわゆる帰宅困難者対策拠点を除いた避難所ということでよろしいですか。

○吉良政府参考人 都道府県から指定されました避難所でございます。

○塩川委員 要するに、帰宅困難拠点の方は外しているんですかと聞いているんですけれども。

○吉良政府参考人 この数字は外しております。

○塩川委員 避難所の数として、二十八年度末に三万五千カ所を見込むということが、事業者からの報告としてあるということです。
 大臣にお尋ねします。
 やはり避難所における通信手段の確保が重要だ、そういう教訓を踏まえて、特設公衆電話の事前設置が行われてきている、これ自身は大変結構であります。そういう点で、二十八年度末に三万五千カ所まで積み上げようということですけれども、全体は十万カ所以上あるわけですよね。
 そういったときに、やはりこういった避難所について、市町村が指定しているこういった場所にしっかりと特設公衆電話が置かれる、こういう環境こそ求められていると思うんですが、こういう働きかけを事業者にもぜひやっていただきたいと思いますし、総務省としても、こういった災害対策に万全を期すという点での取り組みについて、大臣からお言葉をいただきたいと思います。

○新藤国務大臣 この特設公衆電話は、まず通信規制の対象とならないということ、それから、停電時にも利用が可能であって、費用負担が軽減できる、こういう特徴のもとで、災害時の通信手段としては非常に重要だ、このように思っています。
 総務省におきましても、大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方に関する検討会、こういったものの中で、特設公衆電話の事前設置、これは、電気通信事業者等が中心となり取り組むべき事項と整理をされております。
 NTT東西が引き続き必要な施設への特設公衆電話の事前設置を推進すること、これは私も期待をしております。
 そして、あわせて、災害が発生した際に、機動的にこうしたものは対応しなければいけないというふうに思います。いずれにしても、避難所に一つあったところで、これまた全てを賄えるわけではありません。ですから、移動用の回線の、そういった臨時の回線車の貸与というのもありますし、さまざまな手段というものを確保することを想定しながら、その一環として、ぜひここの部分もさらに充実をさせるように期待をしております。

○塩川委員 もちろん、災害時には、すぐ、公衆電話の設置の取り組みなんかも事業者は行っておりますし、モバイルを含めて複数の通信手段の確保という点でも、事前の設置というところがやはりポイントでありまして、これは食料品の備蓄と同じような考え方だと思うんですよ。通信手段の備蓄、それが特設公衆電話だ、こういう立場でぜひ取り組みをさらに加速させるように、事業者への対応をお願いしたいと思います。
 あと、関連して、日本ろうあ連盟など障害者団体から、避難所においては公衆電話の配備だけではなく公衆ファクスの配備も必要です、こういう要望も出されております。こういう障害者団体の方からの要望をぜひ積極的に受けとめていただきたいと思うんですが、この点については、総務省、いかがですか。

○吉良政府参考人 お答え申し上げます。
 特設公衆電話用の回線につなげます電話機等は、原則として、特設公衆電話を設置する場所の施設管理者が準備する、こういうことになっております。
 NTT東西からは、特設公衆電話用の回線にファクス端末をつなぐことは可能であるというふうに聞いております。
 このため、総務省としましては、施設管理者におきまして、避難所ごとのニーズに応じて必要な対応を行っていただくことを期待しているということでございます。

○塩川委員 市区町村とよく連携をとっていただいて、障害者の方のしっかりとした支援につながるような、そういう取り組みに対応をいただきたいということを申し上げておきます。
 次に、コミュニティー放送について、一問、大臣にお尋ねいたします。
 この間、コミュニティー放送について取り上げてまいりました。この普及に当たっては、電波の不足の問題があります。首都圏や大阪では、総務省が周波数逼迫宣言を出しております。昨年十二月三日の当委員会でも、この逼迫宣言の解消を要望し、新藤大臣は、アナログテレビ放送の使用周波数帯の跡地、V―LOW帯について、コミュニティー放送に割り当てる方針を出した、周波数逼迫宣言は解消できるのではないかと答弁をされましたが、その後、どうなりましたでしょうか。周波数逼迫宣言は解消されたのか。さらに、この先どうしていくのか。この点についてぜひお答えください。

○新藤国務大臣 今御質問いただきました中で触れていただきましたが、昨年七月に、アナログテレビ放送の使用周波数の跡地であるV―LOW帯の周波数の割り当て、免許に係る制度整備というものを進めております。
 そして、昨年の九月には、災害放送等の地域情報のさらなる充実を図るために、コミュニティー放送の新規開局の促進を目指しまして、V―LOW帯の一部の周波数を、AM放送の難聴対策、災害対策に係るFM方式の補完中継局に割り当てるほか、コミュニティー放送にも割り当てる方針を策定したわけであります。
 現在は、まずは出力の大きいAM放送の補完中継局の免許申請の受付準備等を進めております。関東、近畿の周波数逼迫地域等でもコミュニティー放送の免許申請の受け付けを年内には開始できる予定ではないか、このように考えております。
 コミュニティー放送の周波数逼迫宣言の解消に向けて、関係者への十分な周知も含めて、今後しっかりと取り組んでまいりたい、このように考えております。

○塩川委員 ぜひしっかりとした対応を改めてお願いをするものです。
 残りの時間で、NHK予算に対する総務大臣意見の内容について、大臣と籾井NHK会長にお尋ねをいたします。
 今回の総務大臣意見では、成長戦略という言葉が三回も出てくるんです。
 該当部分を紹介しますと、「我が国の成長戦略の牽引力として期待されるスーパーハイビジョン等の先導的サービスの開発・普及、大規模災害に備えた公共放送の機能の強靱化等に向けた取組の一層の充実・強化を図ることとしており、おおむね妥当なものと認められる。」ですとか、国際放送に関連して、「我が国が正しく理解され、国際交流や成長戦略の推進に寄与するよう、国際放送の一層の充実・強化を図ること。」とか、「我が国の成長戦略の柱の一つであり、経済的側面や文化面での交流などさまざまな効果が期待される放送コンテンツの海外展開について、現地のニーズに合致したきめ細やかな対応を行う等、戦略的かつ積極的に取り組むこと。」とあります。
 ここで出てくる成長戦略というのはいかなるものなのか。大臣としては、何をNHK側に求めているのか。この点について、御説明いただけますか。

○新藤国務大臣 私たちは、今、二十年とも言われる長きの経済長期低迷の状態からデフレを脱却して、経済を回復させ、さらには成長のための持続的軌道に乗せていきたい、これが今、日本における国民が最も望んでいることであると思いますし、私たち安倍内閣は、そのためにさまざまな施策を打っていこう、このように思っているわけであります。
 そして、今、この経済状態を回復させ、よい方向に向けるとともに、将来の成長というもの、将来の希望、期待というものをつくってあげなければいけないと思います。その際には、官民さまざまな、国民活動も含めて、みんなで協力をして、この日本を成長させていきましょうと。この成長戦略は、国がやるべきものだけではありません。地方の団体の方もそうだと思いますし、民間企業の団体もそうだと思いますし、さまざまな機関、まさに国ぐるみで、皆さんで頑張っていこうではありませんか、その旗振り役を私たちはしている、それが政府の役割だと思っています。
 したがって、今委員の意図する御質問のところが、国の成長戦略をどこかの機関や何かに担任させる、このようにとられたのかもしれませんが、そうではなくて、それぞれの役割を果たして、それが国としての、国民が望んでいる成長に資するようにしていこうではないか、こういう趣旨で私は使わせていただいているわけでございます。

○塩川委員 経済の持続的な成長のための政策としての成長戦略ということで、官民力を合わせて行う、地方や民間も参加をする、その点は、担任という形ではなくて、それぞれの役割を発揮してもらおうという趣旨で、NHKもそのアクターの一人という話になるんだと思います。
 総務省の説明でも、成長戦略のトリガーとなる、そういう役割をNHKに求めているのが大臣意見の趣旨だというお話をお聞きしました。
 私は、やはり、政府以外のさまざまな機関が、成長戦略、この成長戦略の中身については、我が党としての評価、対応は違いますけれども、経済の持続的な発展の経済政策、産業振興策を行うといった際に、当然、官民の連携もあるでしょう。民間の主体が大いに頑張るということもあるでしょう。しかし、その際に、公共放送のNHKとしてどのようにかかわるかということについては、これは一定の節度が求められると思っているわけです。
 営利を追求する団体ではありません。NHKとしての公共放送、あくまでも視聴者あっての、視聴者のためのNHKであり、まさに受信料で支えられている、そういうNHKの運営に当たって、政府の産業振興策の実施主体としてNHKを組み込むというのは、私は、公共放送の独立性への配慮を欠き、踏み込み過ぎではないかと思うんですが、大臣はどのようにお考えですか。

○新藤国務大臣 今委員は、経済の成長戦略、このようにおっしゃいましたけれども、これは経済のみに限定されるものではないというふうに思うんですね。やはり、経済を成長させていきながら、豊かな暮らしを実現する、そして公共の福祉を増進させる、それは国家の目標であり、憲法が求めるところでもあります。
 そして、NHKは、公共放送として、特に国際放送においては、国際親善の増進や外国との経済交流の発展に資するようにしなければならない、これは放送法で求められております。ですから、NHKにはその役割があるわけであります。
 もう一回申し上げますけれども、国の経済政策の一員として公共放送がその役割を果たしてほしいと言っているのではなくて、NHKはNHKの役割の中で、公共の福祉の増進、そして豊かな国づくりのために、国民が幸せを実感できるような、そういう暮らしの実現に向けて自分たちの役割を果たしていただきたい、こういうことで申し上げているわけでございます。

○塩川委員 アベノミクスの三本の矢の三本目は成長戦略ですから、そういう意味ではまさに経済政策であるわけであって、産業振興策となっているわけです。
 この成長戦略については、過去の大臣意見で文言がありました。十年以上さかのぼって確認をしましたら、昨年と一昨年にも成長戦略という言葉がありました。ほぼ同じ文言でしたけれども、そこでは、「国際放送について、我が国の文化・経済等に係る情報発信の拡大を図ることを通じ、我が国が正しく理解され、国際理解・国際交流に資するとともに、その結果として成長戦略の推進に寄与するよう、効率性にも配慮しつつ、番組内容の充実、国内外の認知度の向上及び受信環境の整備を一層推進すること。」とあるように、NHKの取り組みが結果として成長戦略の推進に寄与するということであって、非常に抑制的に書かれていたものです。
 それが、今回の場合には、結果としてという文言もなしに、ストレートに成長戦略への貢献を求めるという点でいえば、私は、今回の大臣意見というのは、今までになく、一歩踏み越えた中身になっているということを指摘せざるを得ません。
 こういった大臣意見について、NHKとしてどのように受けとめておられるのかを籾井会長にお尋ねいたします。
 成長戦略について、ここまで踏み込んだ大臣意見というのは、過去、見たことがありません。かつてNHKが設置をしましたデジタル時代のNHK懇談会報告書は、公共的性格を備える放送は産業振興策の道具に使ってはならないと指摘をしております。
 会長にお尋ねしますが、NHKは、政府の産業政策に迎合せず、政府から独立し、商業主義にくみしない、こういう基本的立場を貫くべきではないかと考えますが、お考えをお聞かせください。

○籾井参考人 お答えいたします。
 NHKの国際放送の充実強化の取り組みについては、御指摘の大臣意見において、成長戦略への寄与に期待があるものというふうに受けとめております。
 今、大臣も少し触れられましたけれども、国際放送につきましては、八十一条第五項で、NHKに対しては、全部読むことは避けますけれども、大臣がおっしゃったように、「我が国の文化、産業その他の事情を紹介して我が国に対する正しい認識を培い、及び普及すること等によつて国際親善の増進及び外国との経済交流の発展に資するようにしなければならない。」というふうに述べられていることは委員も御承知のとおりだと思います。
 NHKとしましては、国際親善、国際放送についても、今後とも、放送法に基づき、国際親善の増進と経済交流の発展のために積極的に実施してまいりたいと思っております。
 それからまた、放送法第三条では、我々は何人からも影響されてはならないということもありますから、これは、「干渉され、又は規律されることがない。」というふうにもはっきり書いてあります。
 もう何度も申しておりますように、NHKは、国際放送をきっちり守っていくということで今後とも進みたいというふうに思っております。

○塩川委員 政府の産業政策との関係で、NHKのスタンスは過去も問われたわけですよ。NHKの歴史を振り返れば、苦い教訓もあるわけです。
 かつてのハイビジョンの問題も、それこそ前のめりでやって、結果としてはそれがうまくいかずに、その負担分というのがその後の受信料の値上げという形で視聴者にはね返ってくる、こういうことも過去あったわけですから、私は、産業政策に対してのNHKの関与のあり方については、改めてしっかりと見直すべき問題だということを言わざるを得ません。政府の側が前のめりになっているときに、NHK側がそれに追随するような形であっては、NHKとしての本来の役割を踏み外すことになる。
 先ほどの報告書でも、公共放送は技術的物珍しさや短期的収益性に惑わされることなく、直接的効果より間接的効果、経済的効果よりも社会的効果を担う役割を自覚すべきとしている。こういう立場に立ったスタンスこそ求められております。
 商業主義化と権力への迎合というのは、コイン、メダルの裏表だ、こういう指摘も識者の方からもいただいております。私は、産業政策に貢献するということが、結果として、NHK自身の独立性を損なうことにもなりかねない、こういう問題について厳しく指摘をして、質問を終わります。