○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
先週に引き続きまして、福島第一の構内労働者の賃上げを初めとした労働条件改善問題について、大臣と東電の廣瀬社長にお伺いいたします。
先週もお示ししました東電の取り組みについて、最初に確認ですけれども、先週金曜日の答弁で、装備等の違いにより異なる設計上の割り増し額の具体例として、全面、半面マスクをつけている場合には一万円から二万円に、また、ボンベをしょったりアノラックを着ている場合は二万円から三万円に、このように増額についての明記をしているということでしたが、現場の方のお話を伺いますと、タングステンベストを着ている、つまり放射線量が高いような場所で作業しておられる方がいる。重さが十五キログラムになるような大変重いもので作業しておられるわけですが、こういった装備において作業している方については、実際に手当てしているのはどのぐらいの額としているのか、この点についてまず教えていただけますか。
○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、タングステンベストというのは、かなり線量の高い場所での作業のときに着用するものでございます。最近ではもうほとんどございませんが、仮にそうしたことということになれば、当然三万円以上になっていくのではないかというふうに思っております。
また、状況等々、条件等々、その辺をしっかり見て決めていかなければいけないと思っております。
○塩川委員 三号機の建屋カバーの建設作業の現場でタングステンベストを着用しているというお話を伺いました。非常に線量が高いということもあって、一日平均にするとそれこそ一ミリシーベルトに当たるような線量だということで。
しかし、実際にもらっている賃金は幾らかといいますと、いわゆる日当相当分で一万円があって、危険手当相当分というのが三千五百円で、その上に出張手当、遠くから来ているということで五百円、ですから、合わせて一日一万四千円だと。これではいわゆる環境省の除染作業の日当、賃金よりも低いという状況が、あの三号機の高放射線量のところで実際に作業している方の賃金だということでは、実際に作業している方は、危険できつい仕事で割が合わない、もうやめようかと思っている、そういう声も上げているということをお聞きしているところです。
労働条件改善あってこそ、安全で確実、迅速な廃炉作業が進むと思います。この点でしっかりとした対応を求めたいと思います。
その関連で、四月二日の参議院で、我が党の井上哲士議員が廣瀬社長にお尋ねしました。そのときの答弁で、二万円が三万円になったり、三万円が四万円になったりという話があったんですけれども、四万円という額というのも示しているものがあるということなんでしょうか。
○廣瀬参考人 四万円という額も、実際の問題としてはお示ししてございます。
○塩川委員 それは具体的にどんな装備によるものを指しているわけなんでしょうか。
○廣瀬参考人 これまでになかった、これからの新しい作業ということで、非常に厳しい条件の中でやっていただく作業ということでございます。
○塩川委員 あわせて、井上議員の答弁のときには、マスクを着用される作業は三万円にしますと、この例の挙げ方なんですけれども、三万円という数字があったんですが、たしか先週の私のときには一万から二万という言い方をされているんですけれども、それはどっちなんでしょうか。
○廣瀬参考人 一万円から二万円というのが正しい数字でございまして、ちょっと参議院の原子力問題特別委員会のときにどういうふうにお答えしたか正確には覚えておりませんけれども、一万円から二万円でございます。
○塩川委員 わかりました。
それから、構内で大型の搬送作業に従事しております宇徳についてですけれども、四号機の使用済み燃料の取り出し作業を請け負っているとのことです。使用済み燃料を取り出してキャスクに入れる、それをクレーンで運んで置いて、そこからふた閉めをして、キャスクの除染作業をしてトレーラーに積み込むという作業については宇徳が請け負っているというふうに伺っております。
そういう点でいえば、非常に線量が高いような環境だと思うんですけれども、こういった宇徳の四号機使用済み燃料取り出し作業の請負については、設計上の割り増し額というのはどんなふうになっているんでしょうか。
○廣瀬参考人 お答えいたします。
四号機の使用済み燃料の取り出し作業は、基本的には、皆さん、いわゆるタイベックと呼んでいる白いつなぎを着てやっていただくものでございます。したがって、そうしたことで単価を決めておりますし、プール際で万が一にも水をかぶる可能性のある方々にはアノラックを着ていただいておりますので、アノラックを着ていただく場合は先週もお答えした金額を示すということになると思います。
○塩川委員 タイベックを着ている、その点は当然、全面マスク、マスクをしている環境ということですから、二万円相当ということでよろしいんでしょうか。
○廣瀬参考人 通常の方は二万円になると思います。
○塩川委員 汚染水がかかるような環境であればアノラックも着るということで、三万円にという話であります。
それで、東電の「設計上の労務費割増分の増額に関する取組み」では、新規契約開始時期によって作業員の割り増しの時期も変わることになります。
そうなりますと、どこかで切れば、賃金が上がっている作業員の人と、上がっていない作業員の人が混在するような状況に当然なるわけで、作業環境とすれば、厳しい環境は変わっていない。そういう中で、当然、その厳しい環境に見合って上がっている人もいるんだけれども、もとのままという方もいるというのは、かえって現場でのいろいろな不満も強くなるのではないのかと思うんですが、こういう点についてどう考えておられるのか、お聞きしたいと思います。
○廣瀬参考人 この問題につきましては、先週も先生から御質問いただきましたが、基本的にはこれからの契約ということで、十二月発注分以降のものについて、新しい割り増しの考え方を取り入れて今始めております。
契約行為でございますので、当然、どこかで契約を変えていかなきゃいけない、どこかで線が引かれるということになりますが、万が一にもそういうケースがございました場合には、先週もお答え申し上げたところでございますが、元請の会社さんと協議させていただいて、しかるべき対応をしていきたいというふうに思っているところでございます。
○塩川委員 東電の取り組みの中で、元請会社に対して、末次の下請会社までを網羅した施工体系図の提出を要請するとしております。従来から施工体系図というのは把握しておられるのではないかと思っておりますし、以前も施工体系図をいただいたことがございます。
今回、こういう形で取り組みとして書かれているというのは、これまでの把握が不十分だったということなのか。また、この間、東電は、重層下請は余りよろしくないということで、三次より多い多重下請については認めないという方針をお持ちだということを耳にしたことがあるんですが、これは事実かどうか。今回、施工体系図の把握を通じて、重層下請について何らかの改善、是正措置をとる考えがおありなのか。この点についてお聞かせください。
○廣瀬参考人 施工体系図につきましては、これまでも、工事が始まる際に、どういう会社の方々がきょう作業に入っていらっしゃるかということをしっかり把握し、安全に工事管理を行っていくというために、現場で施工体系図をいただいておりました。
今般の取り組みは、まさに契約行為をする際に、契約の見積もりの中で、私どもが割り増しした分が最後のお一人まで届いているかどうかということをしっかりこれから把握していく必要があるだろうということで、契約方でも、同じものになってしまうのかもしれませんけれども、いただいてしっかり把握して、今後の調査なり取り組みの徹底に生かしていきたいという考えで、いただいておるところでございます。
それから、三次以上の多重構造についてというお話でございましたけれども、私どもはそうした方針は今持っておりません。
これはいろいろ考え方があるとは思いますけれども、四次、五次となっていくものを、どこかのところでこれ以上はだめだというふうに区切った場合、それよりもまた下流にいらっしゃる方々が無理にそこに入って、例えば違法な請負になったり、偽装請負になったりというおそれもございますので、今、三次でくっきり切って、もうこれ以上はだめだという方針は今持っておらないということでございます。
むしろ、何次の契約構造になっていようと、施工体系図でしっかり把握し、最後の方までちゃんと、労働条件が適切に行われているかどうかを把握しようという考えに今立っておるところでございます。
○塩川委員 一人親方の方なんかも現場に入っていたりするというのは結構あるものですから、そういった場合にもしっかりと、実際上は労働者でありますので、必要な労働条件の改善の対象として対応するということこそ求められているということでも。
実際の賃金が上がるように、全体を把握する上での施工体系図の把握という趣旨だということはわかりました。本当に、現場の最先端の方の賃上げにつながるような働きかけに結びつくことを求めたいと思います。
それと、「設計上の労務費割増分の増額に関する取組み」の中で、「作業員の方の賃金に反映させる施策の検討・進捗状況についての報告を元請へ依頼(一月二十四日)。現在、集約中。」とあります。これがどういう中身なのかの御説明をいただきたいのと、集約中の中身がもしわかれば教えてもらえないでしょうか。
○廣瀬参考人 これは、元請会社さんから、今後、私どもの割り増し金がちゃんと下まで行くかどうかということをこういう方法で徹底させます、そういうことを今求めておりまして、今まさに集まってきておりまして、それを私どもの方で確認して、これからもしっかり調査して、やっていきたいというふうに思います。
それをお示しするということに関しましては、当然、いい取り組みであれば、これはほかの会社さんにも、ぜひこういう取り組みを、某社でやっているので、おたくでもやってほしいというようなことの水平展開といいましょうか、共有についてはぜひ考えていきたいというふうに思っているところでございます。
○塩川委員 わかりました。
それと、アンケートの実施の問題なんですけれども、現場がどうなっているのかをしっかり把握するという点で、現場の方の声として、現場の労働者の方にアンケートを東電としてお願いする、それは元請、下請経由で届くわけですけれども、それが返ってくるときには、元請経由で返ってくると、結局、アンケートの中身について元請がいわば目を通すような形になると、本音が書けないという声が労働者の側にあるわけです。
そういう点では、労働者から直接回収する、こういった方法が必要だと思うんですが、この点はどうでしょうか。
○廣瀬参考人 御指摘のように、まさに正直に記入をいただくということでの工夫はしていかなければいけないと思っております。
私どもは現在、御記入いただいた回答用紙を、別途封筒を御用意しております、その封筒に入れていただいて、封をしていただいて、当然、請負の体系図、そこに基づいて上がってきて、最後には元請さんが一括まとめて私どもが受け取るわけですが、その段階でももちろんしっかり封はしてあります。
したがいまして、できる限り正直なところを御記入いただけるような工夫はしていきたいと思いますし、また、例えば、投函するときの箱を直接私どもが用意して、封はしたままでいいと思いますけれども、そこに直接していただくというようなことも考えていかなければいけません。
ただ、元請さんを通じてアンケートをするためにアンケートの回収率が高いということもございますので、その辺もうまく組み合わせていく必要があるなというふうに考えております。
○塩川委員 要するに、本音が書けるという環境での取り組みということでお願いしたいのと、あと、賃金の実額を把握するというアンケートが必要だと以前もお尋ねしたわけですけれども、この点はどうでしょうか。
○廣瀬参考人 これについては前回もお話し申し上げたと思いますけれども、まさに労働条件がそれぞれ非常に違うケースがございまして、私どもの設計上のとおりにそれぞれの会社さんが工事をするかどうかというのは、それぞれ工夫していただいて、ぜひ、効率的に被曝量を下げてやっていただくという意味からも、幾らの絶対額の多寡でどうしたこうしたということはなかなか判断できにくいということがあると思っていますので、しっかりその辺の契約構造それから契約の中身を把握して、そのとおりいっているかどうかというようなチェックをしていきたいというふうに思っています。
○塩川委員 環境省の発注の除染作業について言えば、いわば危険手当相当分の一万円に加えて、福島の最低賃金の額が上乗せされて一万五千円強とかというのが日当で出るわけですけれども、実際にはそれを下回るような環境になっている。それは余りにも、劣悪、危険な環境の中での作業においては割に合わないという声が出るのは当然であって、その実額をつかむということこそ必要だということを重ねて申し上げておきます。
大臣にお尋ねします。
要するに、除染作業を下回るような福島第一の作業員の賃金では、本当に安全に確実に作業を進めていく、そういう環境が整わないと率直に思います。そういう点でも、この東電の取り組みがしっかりと実るような働きかけこそ必要だと思うんですが、現状の東電の取り組みについてどのように受けとめておられるのか、その点についてお聞かせください。
○茂木国務大臣 廃炉・汚染水の問題への対処には、高い放射線環境下における高度な技術を要する作業でありまして、また、専門性の高い人材が安心して、しかも相当長期間にわたって働けるような労働環境を整備することが不可欠だと考えております。
もちろん、個々の賃金につきましては、労働契約の中で決まっていく問題でありますので、私は、ボンベを背負っているから幾らとか、マスクをしているから幾らと申し上げる立場にはございませんが、それぞれ作業環境が違っているわけでありまして、そういった作業環境の中で、それぞれの作業者の方に対してきちんと作業内容を説明する、そして、この作業内容であるからこういう賃金になりますと納得して仕事をしてもらう、このことが極めて重要なんだろうと思っております。
今回の労務費の割り増し分の増額につきましても、こういった取り組みを通じて、作業員の方々のモチベーションの向上につながるという観点から東電でも進めてもらっている、このように理解いたしております。
○塩川委員 作業環境や作業内容によって、やはり支給額を定めて、外出しで作業員に支給する、そういう取り組みにした方が確実で早く公平に支給できるんじゃないか、そういう点での取り組みの具体化というのを求めていきたいと私は思っております。
現地では、いわき市などの住民の方々が原発労働者を励ます会というのをつくりまして、Jヴィレッジのところで、原発労働者の方にバナナを配ったりとか、アマナツを配ったりとか、入浴剤を配ったりとかというので非常に喜ばれているということをお聞きしました。これも、NPOの方々が音楽や講演の集いをやって、そこで募金を訴えた、そのお金でそういったものを購入して原発労働者の方を励ます、こういう取り組みというのは、やはり一日も早い廃炉、これがやはり共通の願いだということを示していると思います。
まさにそういう作業に従事しておられる原発労働者の方がしっかりと取り組んでいけるような労働条件の改善、作業環境の改善、この取り組みについても、ぜひ、政府としても全力を挙げていただきたい、当事者の東電にしっかりと頑張っていただきたい、このことを申し上げて、質問を終わります。
――――◇―――――