国会質問

<第186通常国会 2014年04月08日 総務委員会 13号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、保健所を例に挙げて、権限移譲の問題点について質問をいたします。
 第三十次の地方制度調査会の答申では、中核市、特例市制度について、「人口二十万以上であれば保健所を設置することにより中核市となるという形で、中核市・特例市の両制度を統合することにより、一層の事務の移譲を可能とすべきである。」「移譲すべき事務としては、例えば児童相談所の事務などが考えられる」、このようなことを指摘し、これらを踏まえて地方自治法の改正案を提出されているところであります。
 総務省にお尋ねいたしますが、この地制調の答申を踏まえた法案の中身ということでは、中核市の人口要件が二十万以上に引き下がるということだと思いますが、その点、確認をさせてください。

○門山政府参考人 お答えいたします。
 中核市制度と特例市制度でございますけれども、これはいずれも、市町村への権限移譲を規模、能力に応じまして段階的に進めるということで設けられたものでございますけれども、今お話ございましたように、昨年六月の第三十次の地方制度調査会の答申におきまして、中核市、特例市の両制度を統合することにより、一層の事務移譲を可能とすべきとされたところでございます。
 この内容でございますが、中核市制度と特例市制度、今回の地方自治法改正案におきましては、答申を踏まえまして、特例市の制度を廃止し、中核市の人口要件を人口二十万人以上とする形で、中核市制度と特例市制度を統合するということと同時に、現在の特例市につきまして必要な経過措置を設けるというものでございます。
 これによりまして、人口減少社会において、暮らしを支え、地域経済を牽引していく核となる都市の形成に資するという考え方でございます。

○塩川委員 特例市の制度をなくして、中核市の人口要件を二十万以上に引き下げるということでした。
 この新中核市は、当然のことながら保健所必置ということだと思うんですが、その点も確認させてください。

○門山政府参考人 お答えいたします。
 中核市につきましては保健所を必ず置くということになっておりますので、人口二十万人以上の新しい中核市につきましても保健所を置くということになります。

○塩川委員 特例市と中核市、事務、権限の移譲の範囲というのは異なるわけですけれども、一番違うのが保健所の設置の有無であります。
 あわせて、特例市についての必要な経過措置を設けるというお話もございました。その点について教えていただきたいんですが、現行の特例市が現行の権限移譲の範囲でいいという場合についてはどのように対応することになるのか。特例市という名称を使えるのかどうか、その点も含めてお答えください。

○門山政府参考人 お答えいたします。
 中核市制度と特例市の制度を統合した後でございますけれども、現時点で特例市であります市が中核市になるためには、それぞれの団体の判断に基づきまして、地方自治法の規定により指定を受けることが必要でございます。したがいまして、特例市という制度が廃止された後も、現在の特例市である市のうち、中核市に移行しないという団体は存在し得るわけでございます。
 その場合に、これまで特例市として担ってきた事務について、これを都道府県に戻すということではなくて、引き続き、やはり現在の特例市である市が処理することが適当と考えられますので、この二つの制度を統合する際に、特例市であります市が特例市固有の事務を引き続いて処理することができるようにということで、経過措置を設けることとしております。
 なお、中核市に移行しない特例市でありましても、法律上は、附則に施行時特例市という規定を置いておりまして、そういう位置づけを行うことによりまして、現在特例市である市が、法律の改正後も引き続き特例市であり続けるということになるものでございます。
 また、名称でございますけれども、例えば特例市の市長会といったようなものもございますけれども、それについては、特例市市長会というふうにおつけになるか、新しいお名前をおつけになるかといったようなことはそれぞれの団体で御判断されることと思っておりますが、名前としては、特例市というふうに使っていただくことは可能なものと思っております。

○塩川委員 特例市という名称を使うことは可能という話でした。
 あわせて、地制調の答申には、移譲すべき事務として児童相談所の例示があるんですけれども、この児童相談所を例示している理由というのは何なんでしょうか。

○門山政府参考人 お答えいたします。
 児童相談所につきましては、政令指定都市の側からも、政令指定都市で実施することが適当ではないかという御意見もある事務でございます。そういうことで、答申の中では、「今後、都道府県から中核市・特例市に移譲すべき事務としては、例えば児童相談所の事務などが考えられる」というふうに言っておられるわけでありますが、この場合も、条例による事務処理特例制度というのは使えますので、答申の考え方としては、そういうことを活用することで対処できるのではないかというふうに整理されたところかと思っております。

○塩川委員 さまざまな制度に基づく保健所あるいは児童相談所、当然、人手もかかるし、お金もかかるし、専門性も発揮されなければいけないという点では、なかなか、市にしてみると、引き受けるについてもちゅうちょするような状況があるというのが現状でもあるわけです。
 全国特例市市長会が全特例市を対象とした権限移譲に係るアンケートを去年実施しているわけです。保健所設置に関しては、保健所設置を積極的に検討している、あるいは検討していく市は四十市中九市、既に設置している市を含めると十二市ということですが、ここにとどまっているのが現状だとのことであります。
 お尋ねしますが、現状、特例市の多くはこの保健所設置には消極的なんじゃないのかと思うんですが、その点、いかがですか。

○門山政府参考人 お答えいたします。
 特例市の市長会、今先生がおっしゃったようなアンケートがあるということでございますが、私どもは直接、特例市の市長さんからいろいろな機会にお話を伺うことがございます。その際も、やはり保健所を持つというのは大変なことであるという声は非常に多くの市長さんからお聞かせいただいております。
 その要因としては、一つは、保健所というのは現在県が行っておりますので、これをスムーズに移管してもらうことができるのかどうかとか、あるいは、大きな運営経費がかかる機関でございますので、財政的にどういう措置がされるのだろうか、それから、保健所長さんについてはお医者さんでなきゃならないという規制がございますので、お医者さんの確保をどうしていくのかといったようなことで、課題があるということは伺っております。
 したがいまして、移行して保健所を設けようとする際には財政措置も含めてできるだけ対応措置も考えてほしいという御要望はいただいているところでございます。

○塩川委員 人的、財政的支援をしてほしいという要望とセットで今のような実態についてのアンケートになっているわけですけれども、これまでも保健所の市への移譲などが行われてきていますが、そういった中でいろいろな問題点が出ているということの指摘があるわけです。
 例えば、自治労連の調査で、都道府県職の部会の調査が二〇〇八年に行われておりましたが、保健所の市への事務移譲で評価された点という点でいえば、対人保健業務は連携がよくなり一元的なサービスが提供できるようになったとか、意思決定が早くなった、こういう例もあるということは取り上げながらも、問題点としては、分権と並行して規制緩和が進んで、かつ、保健所の市設置の拡大で保健所間の業務水準に格差が生じているということ。
 また、監視や指導業務の内容、水準で後退が見られる。これらは、各自治体の方針や基準設定、試験検査能力、監視員の専門性などに関連しますし、この点では、食品衛生法のいろいろな規制緩和もあったというふうにお聞きしておりますけれども、一市一保健所では体制や専門的な蓄積が弱く、業種別の立入検査等でも、県では年一回となっていたものが、ある市の保健所では実情に応じてという形で後退をするということなんかもある。
 また、専門職配置では、県職員の派遣等も行われていますが、医師や獣医、薬剤師等の安定的な確保が大変で、年齢、経験のアンバランスもあること、また、スタッフの厚みがないと専門職としてのレベルアップや緊急体制がとれない、異動の範囲も限定され、専門職としてのモチベーションの維持が懸念されること。
 さらには、県の保健所の管轄地域に飛び地ができてしまう。市が設置をする場合には、その一帯をエリアにしていた県のエリアが崩れてしまって、飛び地が生まれるとなると、実際には住民の利便性が低下をするという事態も生まれる。
 こういう点で、現在の人口三十万程度という運用規模での保健所の権限移譲でも課題が山積しているわけです。
 そういったときに、保健所設置に伴ってこういうような重大な課題が生じているわけで、三十万でもいろいろ問題が出ているときに、二十万以上の市に引き下げるというのでは、問題が一層深刻になるだけじゃないのか、このように考えますが、大臣、いかがですか。

○門山政府参考人 保健所の行政というのは重要な行政でございますので、そういう意味でもいろいろな御意見があるということは承知いたしておりますが、現に、中核市になりますと、飛び地の問題なんかは今でも生じる問題ではございます。
 それぞれまた、体制をどうしていくか、一市一保健所の体制でどうやっていくか、専門家の確保をどうやっていくかというのは、やはり具体的にもお聞きすることでございますけれども、これは現在、都道府県の保健所が存在し、そこで仕事をしているわけでございますので、都道府県との間でどうやって円滑な引き継ぎといいますか連携をしていくのか、あるいは一市体制の保健所にするのがいいのか、圏域で協力したような形で保健所の事務を行っていくのがいいのかといったようなところを含めて、実際に保健所を設置していただくに当たりましては、都道府県、関係市町村でよく御相談いただく。私どもも、必要なアドバイス、できることについてはさせていただきたいと考えております。

○塩川委員 大臣にお尋ねしますけれども、例えば神奈川県の相模原市が、これは地域保健法に基づく保健所政令市で保健所を設置しました。これまでは県が、先ほど言ったように、年に一回の立入検査を行っていたようなところが、実情に応じてということで、実質、六、七年に一回の立入検査という形で、実際の現場における取り組みが後退をすることにもなっているという話もお聞きしています。
 そういう点で、県から市への権限移譲によって住民福祉が後退する事例も生じているわけですから、保健所の例を見ても、事務、権限の移譲については問題点も明らかになってきているわけで、改めて、事務、権限の移譲について立ちどまってしっかりと検証する必要があるんじゃないのか、このように思いますが、大臣はいかがですか。

○新藤国務大臣 まず、今回の中核市制度の見直しは、地制調において、各団体からの御意見等も踏まえて地制調の答申を得て、私たちとすれば進めていくというわけであります。実際に、中核市への移行準備のアンケート調査等も行っております。
 ですから、何か変化をするときには不安がつきまとうものでありますけれども、それが行政の後退にならないように、こういういろいろな工夫やよくよくの協議をしていくべきだ。これを原点に置いて、しかし、制度としては新しい形で前に進んでいこうということでありますから、これが円滑に推進していくことを私どもも取り扱っていきたい、このように思っています。
 そして、今委員の方から、立ちどまって検証すべきではというふうにお話をいただきました。
 その言葉遣いが問題なのでありますが、お気持ちとして、要するに、全体を見渡して、総括してきちんと進めていくべきだ、こういう趣旨だと私は受けとめさせていただきました。
 まさにそのとおりに、ちょうどことしが二十年目に当たるわけですから、この二十年の地方分権の歩みの中で、これまでの、テーブルに上げて、かつ、まだ上げ切れなかったものを、委員の言葉をおかりすれば立ちどまって、私からすれば全体を見渡して、その上で、上げられるものは上げようではないか。それが、約六割については、これまでの積み残しのものに道筋をつけることができたという意味では、非常にこれは努力がなされました。現実に、ただ単に簡単な話し合いでこのようになりませんので、かなり事務的にも、我々のスタッフも中身を詰めてやってきたわけであります。
 私が今回御提案をしているのは、第四次の一括法で上げられるものはきちんと上げましょう、それから、今回間に合わなかったものについては引き続き協議を続けていきます。その前提で、それに加えて、これだけ地方自治が多様性を持ってきている。私は何度も申し上げますが、人口五万人以下の都市が全体の七割でありますから、今、二十万以上です、三十万以上ですと、こういう議論をしておりますけれども、全体の七割は、はるかに及ばない五万人以下なんです。しかも、その五万人以下の都市は一律で活性化できないんです。
 だから、分権を進めるに当たっても、私は、今までの個性ある自立した地方をつくることに加えて、多様性と参加性を持ってこれを推進しようではないか。それが提案募集方式であり、また、取り決められた権限移譲を、手挙げ方式で、やる気のあるところにはできるようにする。こういう仕組みを取り入れて、また、さまざまそのほか工夫をしておりますけれども、そういう新しいステージに上げようではないか。今までのものを置いていくとかそういうことではなくて、全体をどうやって一緒に運んでいけるか。それには多様性と自立が必要だ、こういうふうに考えているわけでございます。

○塩川委員 手挙げ方式という話がありましたけれども、でも、今回の地方自治法改正案では、特例市の制度をなくすという形で、特例市の二十万以上のところについてはぜひ保健所もやってよという話ですから、これは制度としては逆なわけで、要らないと言っているものをやってくれという改正という点では、私は重大な問題があると思います。
 こういうときに、権限移譲の拡大について考えなくちゃいけないのは、基礎自治体のさまざまな権限を拡大するという議論ばかり出ますけれども、私は、今言ったように、五万程度の自治体が七割を占める、そういう自治体が本当に生き生きするときに、では、何でもかんでも受け皿になってくれという話じゃないわけですよ。中には、当然県がやるべき仕事もあると思うんです。
 ですから、こういう権限移譲の拡大ではなくて、広域自治体の県が担うべき仕事は何なのか、県の役割、機能が何なのかという議論が必要なんじゃないのか、そういう立場での検証も行うべきではないのかということを申し上げているんですが、その点はどうですか。

○新藤国務大臣 それはまさに、県ができること、それを例えば村の事務まで県がお手伝いできるようにしようではないかと。
 それから、今回の中枢都市圏というのは、牽引力のある町が周辺の地域と協力していろいろな負担をしていこうではないか。それから、自分たちでやり切れないものはお互いに助け合ってやろう。これは人口要件にかかわらず連携協約というものを自治体が結べるようにしよう、合併ではなくて、それぞれの自治体がありながら事務の連携をできるような、そういう協約も結ぼうではないか。これは、私どもは今、その先にあるのはシティーリージョンの考え方であります。
 それぞれの地域が生活圏に応じて自立性をどう発揮するか、そして自治を確立するか、こういういろいろなメニューをそろえたい、こういう思いでやっているわけでありまして、まさに今県としてやるべきこと、人口が少なくなって、これからさらに自治体を維持するのが難しい市町村がふえてくるんです。そういうものに対するきちんとしたセーフティーネットといいますか、お互いが協力し合ってその地域を維持していく、こういう工夫をしなければいけない。委員の問題意識は私は共有している、このように思っています。

○塩川委員 離島や山間地の団体を支援するという点で県が積極的な役割を果たしている、これはこれとしてあると思うんですけれども、それに限定するような話じゃないわけで、もう一度立ちどまって、県がやるべき仕事があるんじゃないのか、その機能や役割は何なのかという議論が必要じゃないかという点については、全体としての検証も行われていない、率直に検討も行われていない。
 私は、それは、背景には道州制の議論があるんじゃないかと思うんですよね。その点についてもお聞きしたいのと、そもそも今回ので、大臣はこの間の答弁で、地方分権と道州制などの統治機構の改革は同時並行で進めながら最終的には一致すると。ですから、道州制と地方分権というのは改革の方向が最終的に一致するというふうに言っているわけですけれども、では、今回の地方自治法改正案と道州制の関係というのはどうなんでしょうか。

○高木委員長 申し合わせの時間が来ておりますので、短くお願いします。

○新藤国務大臣 分権を進めて、まさに、私何度も申しますけれども、個性ある地方、そして自立した地方をつくるための、国民の生活を支援する地方自治の制度が必要だ、一方で、それは国全体の統治機構の強化にもつながるものにならなければいけない。その大きな解決策として道州制という議論がございます。
 その議論を進めていく上では、その前に、まず、今目の前でできること、これは分権はどんどん進めていきましょう。そして、いつかの時点で、仮に道州制になるのか、道州制にかわる別の統治形態になるのかわかりません、だけれども、今私は、道州制というものを推進していこうという形で研究を進めているわけです。
 そうすると、道州制を導入する段階においては、そのときに行われている地方分権をきちんと反映された道州制になるわけでありますから、ですから、作業は別々のように見えて、最終的には、分権をする、そして望ましい国家の統治機能をつくるという意味においては、そこで一致するということを私は申し上げているのであります。

○塩川委員 その関連があるという点について引き続き議論していきたいと思います。
 終わります。