国会質問

<第186通常国会 2014年04月09日 経済産業委員会 8号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 原子力損害賠償支援機構法改正案について質問をいたします。
 最初に、汚染水処理対策について質問いたします。東電の廣瀬社長においでいただきました。
 まず、地下水の挙動把握の問題ですけれども、私も当委員会でもこの問題を取り上げてまいりました。要するに、地下水の挙動把握、粘土層のさらに下の深い透水層において汚染がどのようになっているのか、調査が必要ではないのか、こういうことについても取り上げてきたわけですが、これまでより深い岩盤の中の中粒砂岩層の地下水からも比較的高い放射性物質が検出されたと聞いております。
 この下部透水層の水質調査状況について説明をしていただけますか。

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 秋の臨時国会の経済産業委員会で先生からその御質問を承りまして、そのときに、下部透水層についてはこれから調査だということを申し上げたと思いますが、それ以降、十二月から一月にかけて、いろいろな穴から下部の透水層の水をくみ上げようということで、何度もトライしてまいりました。
 その中で、はかるたびに多少のばらつきが出てしまいまして、そのはかり方をしっかり整えませんと、正しく下部透水層の水をちゃんと採取しているのかどうかというのがはっきりいたしませんで、いろいろな試行錯誤をしております。その間で得られた数値がばらついております。ただ、総じて、いわゆるトレンチから水が漏れているような、そうした高度な汚染の状況ではなくて、非常に低いレベルで、ただ、数字が少し一定しないという状況が続いております。
 そこで、採取の仕方等々について、専門家の先生方も含めて、どうやったらうまいとり方があるだろうかということで本当にいろいろ試行錯誤して、今やっと、こういう方法がいいのではないかという形が見えてまいりまして、近々、その方法でもう一度またトライをしようという状況に来ております。

○塩川委員 経産省にお尋ねいたします。
 一定量の放射性物質が下部透水層から出ているということでもあります。もちろん、検査体制ですとか検出方法とか、いろいろ工夫はされるということですけれども、調査ポイントも二カ所ということでもありますし、やはり改めて、汚染の全体状況を把握するためには、ポイントをふやすですとか、あるいは深さについても工夫をするとか、より一層深層の地下水を含めた調査対策が必要ではないのか、私はこのように考えますが、この点についてはいかがですか。

○糟谷政府参考人 一番上の透水層が中粒砂岩層で、その下が互層であります。互層の水質がどうかということについては我々も大変関心を持って見ておりまして、今、先ほどの十一月から一月にかけて採取をした井戸が二つなんですけれども、それ以外にも互層の水質を確認する観測井を掘ってもらうようにということを依頼して、それは進みつつあります。
 この二カ所以外にも、もっと海側で確認をするとどうなるか、護岸の際ではかるとどうなるか、そういうことの体制が整いつつありまして、互層の水質については引き続きフォローをしていきたいというふうに考えております。

○塩川委員 ぜひ、全体的な把握と同時に、動的な把握ということが重要だと思いますので、こういう点でのしっかりとした調査等々を進めていただきたいということです。
 次に、地下水の流入抑制策の関係ですけれども、その点で凍土方式を進めているわけであります。
 ただ、タービン建屋そのものが、もともと削って、底に地下水がかなり流れ込むという場所でもありますし、一定のところ、埋め立ても含めて整地をしているという経緯で、当時の状況でいいますと、海側に盛り土をしたような部分というのがしっかりとした転圧などが行われているのか。
 そういう点でいいますと、凍らせるという場合においても、一定の均質な土壌など地質状況で可能ではないのかと思うんですが、塊を含んでいるような不均質な地盤のような場合に凍土方式ではなかなか凍りにくいのではないのか、こういう懸念もあるわけです。こういった不均質な地質状況においてこの凍土方式というのは有効なのか、この点についてはどのように受けとめておられますか。

○糟谷政府参考人 凍土方式の遮水壁でありますが、これは設計をしていきなり施工するわけではございません。フィージビリティースタディーを行っております。
 具体的には、配管など埋設物がある場合、それによって不均質な地質になっている場合でも凍結可能であることは、実験槽において既に確認をしております。また、地下水の流速はサイトの中では一日当たり〇・一メートルというふうに考えておりますが、これを上回る流速、一日当たり〇・七メートルでも凍結が可能であるということも確認をしております。
 これは実験槽において既に確認をしたことでありますけれども、それだけではなくて、さらに、福島第一原発のサイトの中で、実際に十メートル四方の小規模の遮水壁を設置して、今凍らせております。こういうことで実際に凍結することを確認した上で、実際の本施工に入っていきたいと思います。
 この間、検証で得られた成果は、順次設計にも反映をいたします。また、施工に当たっては、先行ボーリングを行って地盤の確認も行いますし、必要に応じてグラウティング等を行って地下水の流速を抑えたり、または凍結材の温度を下げて確実に凍らせることができるようにする、そんな対策を講じるということにしているところであります。

○塩川委員 凍土方式の有効性をしっかりと検証していただくと同時に、それだけに頼るというものではないということは、当然、東電も、経産省、政府としても取り上げていることであります。
 そういう意味では、敷地全体を視野に入れた、こういった遮水を図るような地下水流入抑制策、そういう点で敷地全体を周りの地域から隔離する、そういう取り組みが必要だというふうに思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

○糟谷政府参考人 まさに敷地全体に対する対策ということで、凍土方式の遮水壁に対する重層的な対策ということで、表面遮水といいますか、フェーシングを検討しております。これは、建屋に流入をしている地下水の大半が、福島第一原発のサイト内もしくはそのサイトの周辺に降る雨水が地下水になったものだということが、地下水の動態、挙動を専門家によって把握していただく中で明らかになりまして、したがって、雨水が地下にしみ込んで地下水になるということを防ぐ対策が非常に有効であるということであります。
 これは非常に広範に、二平方キロメートルぐらいの表面遮水をやると相当効果がありますし、仮にそこまで広くやらない場合には、表面遮水をやり、その表面遮水の際に追加的な遮水を行うということで、二平方キロメートルより狭い場合であっても同等の効果が確保できるというようなことを専門家の検討により確認をしていただいております。

○塩川委員 ぜひ、多重、多層の取り組みということで進めていただきたい。
 次に、トリチウム対策についてであります。
 やはりトリチウムの除去というのは大きな課題となっているという点で、いろいろ技術提案もされていると思うんですが、トリチウム除去に関しての技術提案でどのようなものが取り上げられてきているのか、その点について御紹介ください。

○糟谷政府参考人 昨年の十月二十三日までIRIDが行った汚染水対策に係る技術提案の募集では、合計七百八十件の情報が寄せられたわけでありますが、このうち、トリチウムについては、トリチウムの分離技術でありますとかトリチウム水の貯蔵方法について、百八十件を上回る情報をいただいております。
 具体的に申し上げますと、トリチウムの分離技術につきましては、原子力分野で既に研究をされている分離技術、例えば電解法ですとか、CECE法という化学交換電解セル複合法等の技術、それから、原子力分野で研究をされているもの以外の分離技術も、凍結濃縮法であるとか、吸着材であるとか、そんなものが提案をされております。
 また、トリチウム水の貯蔵方法につきましても、鋼管を地下に埋設して鋼管内に汚染水を注水する方法ですとか、深度百メートルから五百メートル程度の地下の深いところに直接注水をする方法ですとか、二重殻、ダブルハルの構造のタンカーの技術を活用して、海から隔離した陸地に保存するという方法ですとか、大規模な地中タンクをつくってはどうかというような方法ですとか、こういう御提案をいただいております。
 いずれにしましても、トリチウム水については、この取り扱いを最終的にはきっちりと明らかにしなきゃいけないわけでありますが、分離技術だけではなくて、大量のトリチウムの貯蔵を長期間やる場合または放出する場合のリスク、それから環境影響、費用対効果なども含めて、総合評価を今行っているところでありまして、汚染水処理対策委員会のもとのトリチウム水タスクフォースで、きょう、第七回目を開いておりますけれども、これまで検討を進めております。

○塩川委員 タンカーなどは非常に不安でもあるわけで、そういう点でも、安定的な貯蔵方法、同時に分離技術というところで大いに進めていただきたい。
 大臣にお尋ねしますけれども、やはりこれまでも大量の放射性物質で海が汚染をされているわけですから、もうこれ以上放射能で海を汚さない、こういう基本原則に立った対策に全力を挙げていただきたい。この点についての決意をお聞かせください。

○茂木国務大臣 まず、汚染水問題につきましては、三つの基本的な方針、地下水を汚染源に近づけない、そして汚染源そのものを取り除く、そして汚染水を漏らさない、こういう原則のもとで、アクションプランを昨年の九月十日につくりまして、そういったアクションプランが十分に機能しない場合や潜在的なリスク等々を考えまして、より重層的な、予防的な対策も現在とっているところであります。
 そういった中におきまして、海洋の状況等々のモニタリングを定期的に行っておりますが、委員も御案内のとおり、外洋におきます汚染水の影響につきましては、基準値をはるかに下回る値、そしてまた検出できないほど低い値、こういう状況が継続的に続いております。こういった状況を維持するとともに、汚染水問題を抜本的に、先ほど申し上げたような大きな方向のもとで解決することが汚染水の影響を海に及ぼさない上で極めて重要だと考えております。

○塩川委員 フローで数値が低いと言われても、ストックでもう大きくなっているということを前提での対策が必要だ。
 そういう点でも、トリチウムについては、放出が選択肢として挙げられているという点では、私は、そういうことをとるべきではないと。トリチウムの健康、人体への影響についてはまだまだ諸説あるわけで、安全サイドに立った対策をしっかりと行うと。ですから、トリチウムを含めて放射性物質を海に流さないという立場での取り組みをしっかりと行うべきだ、このことを強く求めておくものであります。
 次に、原子力規制庁にお尋ねをいたします。
 原子力規制庁から、福島第一原子力発電所における主なトラブル一覧表というのをいただいております。
 福島第一原発のトラブルの件数がどのくらいであって、そのトラブルの特徴がどのようなものか、この点について御説明をいただけますか。

○山本政府参考人 お答えいたします。
 まず、一覧表の全体のスコープでございますけれども、福島第一が事故を起こしました二〇一一年の三月十一日から本年二〇一四年の二月二十五日現在で取りまとめたものでございます。
 それで、トラブルあるいはトラブルに準ずるものという形で私どもは抽出しているわけでございますけれども、まず、全体件数としては百七件ございます。このうち、汚染水が漏えいしたものあるいは堰の亀裂など汚染水関係のトラブルは、この百七件のうち八十七件ということで、約八割程度、こういう状況になっているものでございます。

○塩川委員 今御説明いただきましたように、主要なトラブルというのは汚染水です。
 ですから、そういう点で、言われているように、福島第一の事故というのは、廃炉に向けて何よりも困難なのが汚染水対策だということが改めて浮き彫りとなるわけであります。スリーマイル島やあるいはチェルノブイリにもない重大なトラブルであるのがこの汚染水問題です。
 東電においては、汚染水対策について後手後手に回るような対応だった。そういう点で、当事者能力がないということは昨年四月以来の対応で明白であります。
 本法案は、政府が昨年決定しました汚染水問題に関する基本方針及び福島復興指針に基づいて、原賠機構に事故炉の廃炉関係業務を追加し、新たな体制を構築するものですが、東電と一体となって経営を支えてきた機構がこの汚染水対策でどのような役割を果たしたのか、このことが問われるわけであります。
 経産省にお尋ねしますが、当委員会でも昨年来議論が行われましたけれども、二〇一一年六月の東電株主総会に向けた時期に、債務超過の懸念から約一千億円の遮水壁構想の公表が見送られ、結果としてうやむやになり、採用されなかった。このことが昨年議論となったわけですけれども、こういった時期に機構の運営委員会では汚染水問題についてどのような議論を行ったのか、どのような対策を東電に求めたのか、この点について御説明ください。

○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 原子力損害賠償支援機構法に基づきまして、特別事業計画というのが政府に出されるわけでございます。これは、原子力事業者である東京電力と原賠機構が共同して政府に申請をすることになっているものでございます。機構では、この政府の申請に先立って、運営委員会の議決を経るということになっているところでございます。
 直近のことし一月二十日に認定をした新・総合特別事業計画において、廃炉・汚染水対策につきましては、汚染水・タンク問題に対する反省と今後の取り組み、あるいは廃炉カンパニーの創設といったことが盛り込まれているところでございますが、このようなものが盛り込まれた特別事業計画は、機構の運営委員会において議論が行われて、議決を経た上で政府に申請されたものと承知をしております。

○塩川委員 直近の話は聞いていないんですよ。
 そもそも、二〇一一年六月に議論があって、この遮水壁の問題、陸側をどうするかという議論があって、結果として、二〇一一年から一二年にかけて、海側はやるけれども陸側はやめておきましょうね、こういう話になった。そういうときに機構は既に存在をしていたわけですから、このときに機構の運営委員会ではこういう汚染水対応についてどういうことを検討したのか、そこが聞きたいんですよ。

○糟谷政府参考人 機構は賠償資金の支援をするという役割を担っておりますので、その観点からの議論をしておったというふうに承知をしております。

○塩川委員 その中身を教えてください。

○糟谷政府参考人 申し上げましたのは、具体的に汚染水対策をどうするか、それから廃炉をどうするかということについては、東電と政府の対策本部で決定をしていたということでございます。

○塩川委員 いや、機構の役割がどうか、つまり、今回機構も廃炉を請け負うわけですから、そういう点で、そもそも、この廃炉、特に汚染水対策の問題についてどういう議論を機構の運営委員会で行ってきたのかということを知りたいんですよ。そこについてのしっかりとした総括があってこそ、今後の問題につながってくるんじゃないですか。
 こういった遮水壁の問題、例の陸側遮水壁もつくりましょうという当時の馬淵補佐官の提案、東電の方もそれを受けたというふうに言われているわけですけれども、その経緯についてはどんな議論をされたんですか。

○茂木国務大臣 当時は我々の政権でありませんでしたので、政府と東電のやりとりの詳細については、私個人としては承知をいたしておりません。
 一方、機構におきましては、主要な業務は賠償の支援ということでありまして、交付国債の枠を決めるということで円滑な賠償を進める、こういったことを重立った業務として進めてまいりました。
 廃炉支援、これは今回お願いしております法律の改正におきまして新たに機構の機能としてつけ加えたいと思っているところでありまして、そこの中に、特別事業計画における廃炉の実施状況、実施体制の整備について記載をすることに今後なっていくわけであります。そうしますと、それを見た上で、機構においても、さらには主務大臣におきましても必要なチェックができる、こういう体制になってまいると考えております。

○塩川委員 どんな議論をしたかということの紹介がないんですよ。
 賠償支援ということでの機構の役割のお話がありましたけれども、先ほど藤原調整官の方からの説明もあったように、特別事業計画を東電と一緒に出すのは機構ですけれども、平成二十四年五月の総合特別事業計画を見ると、機構による一兆円の財務基盤の強化、その目的は賠償と着実な廃止措置と電力の安定供給を掲げているわけで、汚染水を含む廃炉、廃止措置に関与することが当然目的として挙げられているわけです。だからこそ、どんな議論をしたのかというのをはっきりさせてほしい。
 まともな議論もしていないんだったら、こういう機構が汚染水を含む廃炉を扱うにふさわしいのかどうかというのが問われているんだ、そのことを聞きたいんですが、いかがですか。

○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど大臣の答弁にもありましたとおり、これまでの機構は、東京電力の経営全体をチェックしつつ、損害賠償の支援を行うという機能を果たしてまいりました。今回私どもが法改正で追加をお願いしているものは、廃炉につきまして、これは東電の経営上重要な事項であることはもとよりでありますが、その部分について技術的、専門的な支援を行うことにしたいという趣旨のものでございます。
 したがって、これまでの個々の運営委員会の場で廃炉について議論があったかどうかというのは、これは機構の内部の会議の問題でございますので、私どもとして承知する立場にないところでございますが、経営の問題の一つとして議論されていたものと考えております。

○塩川委員 いや、経営の問題であれ何であれ、説明を求めても説明がないじゃないですか。それだから、そもそも廃炉を担うような資格があるのかどうかということが問われているんですよ。経緯として重大な問題で、前の政権のときであれ、継続しているわけですから、そういった機構が継続した業務の中でどんなことをやっていたのか、このことが問われているわけです。
 もともと機構の成り立ちを考えると、二〇一一年の五月十三日の関係閣僚会合や六月十四日の閣議決定にあるように、東電に対する機構の援助には上限を設けず、必要があれば何度でも援助し、原子力事業者を債務超過にさせない、こういう合意に基づいてつくられているのが機構であって、いわば東電は潰さないという約束に基づきつくられたものであります。
 そういう点では、当事者能力のない東電の汚染水対策を含む廃炉対策を機構が担う資格そのものがないということも重ねて申し上げておきたい。
 その上で、国は、技術的に困難ということを理由にして、廃炉や汚染水対策にこの間税金を投入してまいりました。復興指針では、国が前面に立って原子力災害からの福島の再生を加速する、国と東電の役割分担とあります。この復興指針に基づき機構法に廃炉等の業務を付加することで、資金援助の枠組みを利用できることになり、いわば際限のない国民負担、電気料金アップ等、税金投入の道を開くことになるのではないのか、このことが問われているわけであります。
 そこで、東電にお尋ねをいたします。
 この廃炉経費についてでありますけれども、福島第一の一―四号機の廃止措置完了までの費用総額について、これまでの一兆円の内訳についてはどのようなものかを御説明ください。

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 現時点で最新の決算が終わっておりますのが、昨年の十二月末、いわゆる平成二十五年の第三・四半期末の決算値でございますが、その段階での計上額が九千七百億でございます。
 その内訳としましては、事故が起こった年の十二月までのいわゆるステップ1、2と言われていたときでございますが、そのときに要したお金が千八百億でございます。これはもうほとんど終わっておるところでございます。そのほかに、まさに今、中長期ロードマップで、これから、燃料デブリを取るとか使用済み燃料を取り出すとか、それから汚染水対策をする、タンクをつくる、こういったようなことで約六千億を計上しております。そのほかに、いわゆる解体費用というんでしょうか、最後の解体のために千九百億。以上で九千七百億を引き当てております。

○塩川委員 今、六千億ということで御説明がありました中長期ロードマップ対応費用のその内訳についても御説明いただけますか。

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 これもちょっと細かいのですが、大きく四つのカテゴリーがあると思っております。
 プラントの安定状態の維持継続、これはずっと注水をして温度をしっかり保つというようなことでございますが、それで約千三百億程度。それから、発電所全体の放射線量の低減、汚染水の拡大防止対策、これで約四百億でございます。それから、使用済み燃料の取り出しで千六百億。それから、燃料デブリその他中長期的な課題で二千六百億強。合計で約六千億、これが中長期ロードマップの内訳でございます。

○塩川委員 燃料デブリ取り出しなどその他の中長期課題に係るものが二千六百億強ということを含めて、内訳についての御説明をいただきました。
 追加の一兆円の部分についての使途はどのようになっておりますか。

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 今申しましたように、現時点で既に九千七百億を引き当てておりますが、実際に使っている、その中からお金として使われて取り崩されてしまったというのは、まだ三分の一程度でございます。
 したがいまして、まだ緊急的にお金が足りなくなるという状態ではございませんけれども、ただ、これからまた長い期間にわたってそうした対策をとっていく際に、例えば、万が一にも予算的あるいは資金的な制約から本当に必要な工事ができないというようなことがあってはゆめゆめいけないと思っておりますので、今回、特に、何に幾ら、何に幾ら、何に幾らということで一兆円と積み上げたものでなくて、今後の大きくかかるであろうというものに備えて一兆円というのをこれから積んでいこうということでございます。
 とは申しましても、ある程度、既にこれから使っていかなければいけないというのは出てきておりまして、それは、ALPSであるとか、それからタンクのリプレースであるとか、こうしたものは既に計上した九千七百億には入ってございませんので、今度積んでいくその一兆円の方から使っていこうというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 ALPSの増強やタンクのリプレースという具体の話がありましたけれども、もうちょっと全体に係る話で、丁寧な御説明を事前にもいただいているんですけれども、そういう丁寧な説明でお話しいただけますか。

○廣瀬参考人 一兆円の使途ということでいいますと、現時点ではっきりしておりますのは、今申し上げたタンクのリプレースであるとかALPSの新しいものというようなことであります。
 それ以降については、これから経常的に出ていく、例えば、今、あちこちで穴を掘ってサンプリングをして、それを解析しておりますが、そうしたことの委託費であるとか、それから水をぐるぐる回していくための費用であるとか、そうした費用として出ていくものももちろんこの一兆円の中から使っていこうと思っておりますが、何か新しく建設して何かのためにということであると、今現在ではっきりしているものは先ほどの二つということでございます。

○塩川委員 東電からファクスでいただいたペーパーによりますと、この追加一兆円について、汚染水対策を初めとした廃炉に向けた取り組みを着実に進めるため、これまで手当てしてきた一兆円と同程度の支出が必要になっても対応できるように、既存投資計画の削減や費用の抑制により一兆円捻出することとしている。
 主な使途は、投資関係、十カ年で七千四百億円程度。その中身としては、新事務棟など労働環境の抜本改善や、多核種除去設備の増強、フランジ式タンクのリプレースなど汚染水対策などとされています。費用関係については、十カ年で三千億円超。内容については、放射線管理業務委託費、汚染水処理装置運転委託費、汚染水処理装置の点検・保守費用などとなっております。
 これは、このとおりでよろしいですか。

○廣瀬参考人 はい、そのとおりで結構でございます。

○塩川委員 労働環境の改善や汚染水対策への投資ということで、汚染水対策のランニングコストなどを使途としているわけですけれども、これは一応、見積もりとすると十カ年ということですね。それより先のものについてはどうなんでしょうか。

○廣瀬参考人 これは、今後十カ年で我々が一兆円を手当てしていこうということでございますので、その十カ年間に全てのお金が出ていくということでもございませんし、必要な場合には必要な額が出ていくということでございますので、十年目以降にもお金がまだ残っていれば、十年目以降の工事その他費用についても当然そこから出していくということになろうと思います。

○塩川委員 残る場合もあるかもしれないし、足りなくなる場合もあるかもしれませんけれども、そういう意味では、一応この追加の一兆円の使途というのは十カ年という見通しですから、十カ年より以降のことについては新たな手当てが必要だということが基本にあるということであります。
 そういう点では、汚染水対策などに継続的に経費がかかるのは当然なわけで、いわば廃炉経費が二兆円におさまることはないということも今の東電の御説明の中にあったわけであります。
 そこで、その中で、経費の算定について一点お聞きしたいのが、燃料デブリ取り出し費用等の算出方法に対する検査院報告書を踏まえたものであります。
 会計検査院が一連の東電の会計上の問題について報告書を出しております。先ほどの東電の説明では、燃料デブリ取り出し費用等は二千六百億円強という御説明がありました。会計検査院報告によりますと、東電は、燃料デブリ取り出し費用等について、スリーマイル島事故の実績に基づき二千五百億円と算出、しかし、福島第一原発は、スリーマイル島と異なり、原子炉格納容器の気密性が失われていたり、原子炉圧力容器が損傷していたり、さらに損傷燃料が圧力容器外にも溶出していたり、放射線量が非常に高い状況となっていたりしていることなどから、上記の金額は不確実性の高い概算額であり、実際の燃料デブリ取り出し費用等は今後変動する可能性があると。
 つまり、このスリーマイル島事故などをもとに算出をした燃料デブリ取り出し費用等の二千五百億円、先ほどの二千六百億円強にも対応する部分ですけれども、もっとかかるかもしれないということの指摘です。燃料デブリ取り出し費用がもっとかかる可能性があるという指摘については、どのように受けとめておられますか。

○廣瀬参考人 これは現時点での見積もりということでございますので、現時点で見積もった場合には今申し上げた金額に相違ないというふうに思っております。
 もとより、この引き当ては、御存じのとおり、毎決算ごとにいろいろな、工事が完了するものももちろんありますし、予想しない支出が必要になってくるものもございますので、毎期毎期見直していくものでございます。当然、そうした中で、今後とも必要があれば見直すことになっていくというふうに理解しております。

○塩川委員 廃炉経費が二兆円におさまる見込みはない、こういった経費を誰が負担するのかというのが問われているわけです。
 経産省にお尋ねします。
 昨年十月、廃炉関係規則の省令改正が行われました。廃炉中も電気事業の一環として事業の用に供されるものとして整理されるものは、事故炉についても、運転終了後も引き続き減価償却費を料金原価に含め得るとしたわけです。つまり、事故炉の廃炉費用まで電気料金に上乗せをすると。
 これは、国民の理解が得られないんじゃないですか。

○糟谷政府参考人 昨年十月の関係省令の改正でありますけれども、これは、現行の電力会社の会計制度が円滑かつ安全な廃炉を行う上で適切なものとなっているかどうかということを会計の専門家等によって審議をいただき、その結果、発電と廃炉は一体の事業であるとの考え方に立ち、ルールを見直すことが適当と整理をされたものであります。
 その中で、委員御指摘のように、減価償却について、廃炉中も電気事業の一環として事業の用に供される設備として整理されるものは、運転終了後も引き続き減価償却費を料金原価に含め得ることとするとされたものであります。
 まず、そもそも通常の廃炉作業においてでありますが、原子炉の格納容器ですとか使用済み燃料ピットなどが廃止措置資産に該当するというふうに考えております。これに加えて、事故炉においては、使用済み燃料プール内の燃料の取り出しですとか燃料デブリの取り出し等の作業に必要となる設備等が該当すると考えております。ただ、とりわけ事故炉の場合に、廃止措置に当たりどのような設備が必要となるかということは、あらかじめ、一概に規定することは困難であると考えております。
 いずれにしましても、これは、廃炉にすると残存簿価を一括損金計上しなきゃいけないために廃炉が進まないんじゃないかとか、そういう批判もある中で、廃炉を円滑に進めるためにどのような会計制度が最も適切かという観点から検討いただいて改めたものでございます。

○塩川委員 いや、国民利用者は納得できないですよ。事故は別に国民の責任じゃないわけですから、原因者の東電の責任になるわけで、それを電気料金に転嫁するということに納得できないという声が上がるのは当然であります。
 パブリックコメントでも、国民の厳しい批判の声が寄せられております。事故炉の廃炉費用までも電気料金で回収できるものとなっており、無策のツケを電気使用者に回すものと言わざるを得ないであるとか、事故炉の廃止措置で発生した新しい設備の減価償却を電気料金で回収するのは虫がよ過ぎる、事故による廃炉の費用を消費者に負担させることには絶対反対だ、これは当然の声であります。
 こういった省令改正ですが、そもそも、平成二十四年七月に、経産省が、東電の供給約款変更認可申請に係る査定方針を示しております。その中を見ると、この福島第一原発事故に伴い、事故収束や、今後の廃止措置に向けて費用が発生することとなるが、特損として認識して処理した費用については、料金原価に含まれることはない、また、これ以外に新たに必要となる経費のうち、資本的支出、設備投資が生じた場合、当該設備は将来の収益を生むものではなく、資産性が認められないため、会計上、資産価値が特別損失処理され、減価償却費が発生しないことから、原価にも算入されない。こういう形で、当初は、原価算入を認める費用は、プラントの安定状態維持継続に係る経常費用に厳に限るということで、この設備投資分を上乗せするということを認めていなかったんじゃありませんか。

○茂木国務大臣 御指摘の点は前政権において決めた方針でありまして、我々は我々として新たな方針を決定させていただいた。
 これは廃炉等を円滑に進める上でも極めて重要だ、そんなふうに考えておりまして、恐らく委員も、前政権下で汚染水対策や廃炉対策がきちんと進んでいたとお考えだったら別です、私はそうではなかった。だから、国が前面に出てこういった問題についてしっかりした取り組みをしていくというために、我々は一昨年の十二月に政権に復帰をいたしましたけれども、最初につくりました補正予算で九百四十五億円措置をいたしまして、廃炉に対する研究開発を進めることにいたしました。汚染水問題につきましても、昨年、新たな方針、アクションプラン等々も出しております。必要な関係閣僚会議もつくってまいりました。
 機構について、以前、この廃炉について十分な議論が行われていなかったじゃないか、こういう御指摘もあったところでありますけれども、国もそうだったんですよ。それをやはり変えていかなくちゃいけない。それが廃炉・汚染水対策の解決につながり、そして福島の復興の加速化につながる、そのための法案である、こんなふうに我々は考えております。

○塩川委員 国が前面に出るという実際の業務の話と、その費用負担を税金や電気料金で負担するということは、イコールじゃありません。そういう点でも、しっかりと原因者の東電を初めとしたステークホルダーに負担を求めることが必要である、国民負担は最小化するという原則があってこそ国民の納得が得られる、こういう改革であるべきだということを申し上げて、きょうのところは終わります。