国会質問

<第186通常国会 2014年04月10日 総務委員会 14号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 法案について質問をいたします。
 今回の法改正は、現行の勤務評定を廃止して、人事評価制度の導入を図るものであります。最初に大臣に伺いますが、この人事評価制度というのはいかなるものなのか、この点について御説明をいただけますか。

○新藤国務大臣 人事評価とは、改正案の第六条において、「任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価」、このように定義をさせていただいているわけであります。いわゆる能力評価と業績評価の両面から、この人事評価を行うものとしているわけであります。
 能力評価につきましては、職員の職務上の行動等を通じて顕在化した能力を把握して行うということでありまして、国においては、企画立案や専門知識、協調性、判断力、こういった求められる能力を十分に発揮しているかどうかなどの評価を行うことにしております。
 また、業績評価につきましては、職員が果たすべき職務をどの程度達成したかを把握して、上げた業績を評価するものでありまして、国においては、担当する職務に関し、具体的な業務の目標、課題を設定し、当初に設定したものが仕事の期末においてどのように達成したか、こういったもので評価する仕組みを実施しているところでございます。

○塩川委員 人事評価制度というのは能力評価及び業績評価の二つの要素から成る、この両面から人事評価を行うということであります。
 今の答弁とも重なりますが、この人事評価制度というのは賃金とリンクするものだと思いますが、その点はいかがでしょうか。

○三輪政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の改正法案の第二十三条第二項におきましては、「任命権者は、人事評価を任用、給与、分限その他の人事管理の基礎として活用する」、このようにしているところでございます。したがいまして、給与につきましては、その人事評価というものが給与についての基礎として活用される、人事管理の基礎として活用される、そういう仕組みでございます。

○塩川委員 人事評価制度は賃金にリンクをする、人事評価の基礎として活用されるということです。
 そこで、総務省は、本改正を行う以前から、人事評価制度の導入を地方に要請してまいりました。これはいつから地方に対して人事評価制度の導入を求めてきたんでしょうか。

○三輪政府参考人 平成十九年に国家公務員法の改正が行われまして、人事評価制度というものが法律上導入されましたのを受けまして、地方公務員においても同様の人事評価制度の導入というものを私ども助言してまいったわけでありますが、それ以前から、行政改革の方針というようなことが政府において閣議決定をされました。平成十六年十二月の閣議決定でございますけれども、それを踏まえまして、平成十七年三月の総務省の総務事務次官通知におきまして、地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針というようなものが示されまして、この中で、能力、実績を重視した人事評価制度の導入というものを地方公共団体に助言してきたところでございます。

○塩川委員 国公法改正は平成十九年ですが、それに先立って、平成十六年十二月の閣議決定を踏まえ、平成十七年三月の新行革指針で、能力、実績を重視した新しい人事評価制度の導入が求められるとしたわけです。二〇〇五年以降、毎年自治体に通知を発出して、人事評価制度の導入を働きかけてきたわけです。
 大臣にお尋ねしますが、国が人事評価制度の導入を地方に求めてきた、その理由というのはどういうものなんでしょうか。

○新藤国務大臣 地方公共団体におきましては、地方分権の一層の進展によりその役割が増大する一方で、厳しい財政状況の中、高度化、多様化する住民ニーズに的確に対応していくための、個々の職員について困難な課題を解決する能力と高い業績を上げることが従来以上に求められているもの、私はそのように思っています。そして、そういった能力や業績に基づく人事管理の必要性が高まってきているんだということを承知しております。
 これに関しまして、これまでの勤務評定においては、先ほども申しましたけれども、評価項目が不明瞭であったり、あらかじめ明示をされていない、また、評価結果が部下に知らされていない、人事管理に十分活用されていない、こういったような課題も指摘されておりました。
 そうしたものに対しての人事評価は、能力と業績を両面から評価することによって人事管理の基礎とすることを規定するとともに、評価基準の明示、また評価結果の本人への開示などの仕組み、こういった、これまでの課題に対応するようなものになっているわけであります。
 従来の勤務評定に比べまして、能力・実績主義を実現するためのツールとして客観性、透明性を高めるものである、それが今地方自治に求められている、より能力本位の人事管理、また、それぞれの公務員の特性を引き出せるものではないか、このように期待をしているところでございます。

○塩川委員 今大臣の答弁にありましたように、国としては、人事評価制度の有用性を訴えて、導入を働きかけてきたわけであります。
 そこで、総務省にお尋ねしますが、人事評価制度の導入状況がどうなっているのか、実施状況についてお聞かせください。

○三輪政府参考人 人事評価制度の実施状況でございます。
 現在の法律の制度であります勤務評定の制度の運用といたしまして、国の人事評価制度と同様の取り組み、すなわち、能力評価及び目標管理型の業績評価でございますけれども、そういった取り組みを行っている団体、平成二十四年度でありますけれども、都道府県で三十七団体、指定都市で十九団体、市区町村で五百六十三団体、全体で六百十九団体、全団体の約三四・六%、このような状況になっております。

○塩川委員 能力評価及び目標管理型の業績評価の実施状況としてお話しいただきました。
 これを見ると、市区町村では、千七百二十二に対して今五百六十三とありましたけれども、三分の一にも満たない。市町村など多くの自治体が実施をしておりません。国が繰り返し助言をしてきたわけですが、地方は自主的に判断をしてきたわけです。
 特に市町村で導入が進んでいない。これはどういう理由というふうにお聞きになっておられますか。

○三輪政府参考人 人事評価制度につきましては、地方公務員につきましてはまだ法律上の位置づけがございませんで、助言などによって普及に努めてきたところでございます。
 こういったこともございまして、特に市区町村におきまして、まだ十分な情報などが浸透していないという側面もあろうかと思いますし、また、人事評価制度に対する懸念や心配、あるいは地方公務員法の改正を待っての導入というようなことを想定している団体、そういった団体があるというようなお話も伺っているところでございます。
 具体的に、例えば、実際の団体のお話として、小さな町では、職員の顔が見えるので評価や開示が難しい、あるいは窓口などのルーチン業務における目標設定の方法が難しい、こういったような御意見があるというようなことも承知をいたしております。
 総務省におきまして、いろいろな適切な運用方法について、るる助言等に努めてまいりました。国の人事評価と同様の取り組みを行っている団体、先ほど、二十四年時点で五百六十三団体と申しましたけれども、平成十七年の段階で百八十四団体でございました。少しずつでありますけれども、着実に増加をしてきているところでございます。
 今回の法改正を踏まえまして、人事評価制度の円滑な導入ができますように、総務省としても引き続き必要な助言などを行ってまいりたい、このように考えております。

○塩川委員 情報が浸透していないといっても、もうこの十年来ずっとやってきているわけですし、さまざまな研究会の報告などでこれを推奨するという働きかけを行ってきた。その上でも懸念や心配があるというのが地方団体の現場の話で、御説明もありましたけれども、小規模団体では、実施は顔が見えるのでなかなか難しいですとか、あるいは窓口での目標設定が難しいとか、そういう点については、これは単に情報が浸透していないのではなくて、現場の実情に即したら、やはりやるのは困難だという声があるわけで、そういう状況のときに、何か上から、法律上措置されていないからやっていないんだという話にはならないというふうに思うわけです。
 大臣にお尋ねしますが、今回、法改正まで行って、地方に人事評価制度の実施を迫ることになりますが、自治体職場でやはり自主的に決めているわけですから、何か法改正まで行って変えなければならないような問題というのはあるのか。要は、地方の自主性を尊重すればいいんじゃないのかと率直に思うんですが、いかがですか。

○新藤国務大臣 それはICTの話と共通するんですね。
 私は、制度というものは、ルールというものは、やはり公務員として、全般、同じルールの中で、それぞれの地域で頑張ってもらいたいというふうに思います。その評価や運営については自主的な取り組みが求められておりますから、そこでそれぞれの事情に応じて実施されればよい、こういうふうに思うのであります。
 そもそも、平成十九年の時点で、国と地方は同じように法律を出してきたわけであります。しかし、国会の審議の関係によって、これまで法案の審議がなかなか進まなかったということでありまして、内容そのものは、もう平成十九年のときから言われてきたことであります。
 さらに加えて、今回の国家公務員の方の人事評価制度の結果を踏まえて、そうした運用改善も含めて、むしろ、またさらによい制度になるのではないか、こういうふうになっているわけでありまして、強制的に何かをするということではなくて、これは公務員としてみずからの業務を追求していく、また、地方公共団体が最大の成果を上げるように、さまざまな最適な人事管理を行って職員の配置をしていくこと、これは国民が求めることである、このように考えております。

○塩川委員 人事評価制度そのものの問題点についてはこの後議論しますけれども、国公並み、並び、同じルールと言うけれども、やはり国家公務員と地方公務員は置かれている状況も違います。規模も違います。
 そういう点でいえば、上から一律に同じルールですよというやり方というのは、本来、地方自治を尊重する立場から、やるべき方向ではないということを申し上げたい。そういう点でも、地方の自主性を尊重する、地方は地方でしっかりと決める、こういうことを担保するようなものであるべきで、いいものであれば導入するわけですから、そういうことこそしっかりと見ておく必要があるということです。
 そこで、この人事評価制度についてですけれども、業績評価の点ですが、先ほども目標管理型の業績評価というふうに御説明がありましたけれども、業績評価において目標管理というのはどのように位置づけられているんでしょうか。

○三輪政府参考人 業績評価でございますけれども、これは職員の属する組織において職員が果たすべき職務をどの程度達成したかということを把握して、上げたその業績というものを評価する、そういうものでございます。
 例えば、国におきましては、担当する職務に関しまして、具体的な業務の目標あるいは課題というものを期首に設定いたしまして、期末にその達成度について評価をする、こういった仕組みで実施をしているところでございます。
 今回の改正案におきましては、人事評価の基準や方法などにつきましては、これは各地方公共団体のそれぞれの任命権者で定めるということにいたしているところでございますけれども、御指摘の目標管理という点に関しましては、これは以前の有識者による研究会の報告などでもいただいた御意見でございますけれども、人事評価の狙いである公務能率の向上や評価結果の客観性や納得性を確保し、評価結果を人材育成に活用する観点からは、評価者と被評価者が期首に目標を確認し合い、明確な目標を設定した上で、その達成度をはかる目標管理に基づく業績評価を行うことが望ましい、こういったような御意見もいただいておるところでありまして、私どもといたしましては、こういった目標管理に基づく業績評価を行うということが望ましいのではないか、このように考えているところでございます。

○塩川委員 公務能率の向上ですとか客観性、納得性や、あるいは人事管理に役立つ、こういった点で目標管理の重要性ということでの御説明がありました。
 同時に、では、目標管理を具体的にどう行っていくのかという点で、平成二十一年三月に、地方公共団体における人事評価の活用等に関する研究会が報告書を出しております。これは、国が人事評価制度導入を地方に働きかける際のよき参考書として推奨した報告書であります。
 この報告書の中で、業績評価の基本的考え方として、「業績評価は原則として目標管理の手法との連携が望ましい。」「目標管理は、まずトップが具体的な戦略等を示し、できるだけ数値目標として示した上で、各階層の部下が目標を詳細かつ具体的にブレイクダウンすべき。」「どんな組織や階層にも達成すべき目標は存在する。定型的な業務部門でも目標管理の弾力的取り扱いを含め目標管理の導入が望ましい。」と、いわばトップが決めた目標、それも数値目標を現場まで徹底するということを行うことが基本的考え方として述べられているわけですが、こういうふうに書かれておりますね。

○三輪政府参考人 お答え申し上げます。
 累次の研究会を実施しておりまして、毎年のように報告書が出ておりまして、ちょっと今、その二十一年三月というのが手元にございませんけれども、御指摘のように、目標管理につきまして、まずトップが具体的な戦略を示す、できるだけ数値目標を示す、こういったような趣旨の報告というものが専門家の方の研究会報告等でなされている、そういったものがあるということは承知をしておるところでございます。

○塩川委員 この平成二十一年の報告書以降でここまで詳しく書いてあるものはないということで、今述べた点は変更することもないというふうにお聞きしておりますので、こういう趣旨で自治体での取り組みを促しているということです。
 こういった目標管理の導入というのが自治体職場でどのような事態を生み出すことになりかねないのか、このことを、例えば、生活保護における徹底した水際作戦により餓死者や自殺者を出した北九州市の事例で考えてみたいと思います。
 これは、北九州市において、生活保護受給者が、就職したと市職員に虚偽報告を強いられ、生活保護を打ち切られた結果、孤独死した事件が発覚、大きな問題となりました。日記に、おにぎり食べたいと書き残したことが大きく報道されましたが、この日記の中には、せっかく頑張ろうと思ったやさきに切りやがった、書かされ、印まで押させ、自立指導したんかなど、福祉事務所への不満がうかがえる記述も残されておりました。
 北九州市では、職員に対して、生活保護の申請書の交付は月五枚までとし、廃止ノルマは年間五件といった数値目標を課していたとされております。このことは、北九州市がこの事件を契機に行った生活保護行政検証委員会最終報告書にも記載をされております。市当局は数値目標の存在を否定しましたが、検証委員会としては、数値目標の存在が否定し切れないとして、以下の引用を行っております。
 これは、社会福祉協議会が北九州市の生活保護の三十年という本を発行したわけですけれども、市の保護課と監査指導課が監修をした、こういう本であります。
 この中で、開廃差による目標管理という見出しでの記述があります。開廃差というのは、生活保護の開始見込み件数と廃止見込み件数の差、つまり、これがマイナスになるということが生活保護受給者が減るということですから、この開廃差のマイナスというのが目標値として設定をされるという趣旨です。
 年度当初に福祉事務所ごとに実施されていた民生局長ヒアリングにおいて、各福祉事務所における年間の開廃差を目標値として所長から報告させ、秋の中間ヒアリングではその進捗状況に応じて目標数値の修正が行われた。この廃止見込み件数の中に、当然、若年層を含む自立重点ケースを入れるようにとの指導が出され、監査でもその進捗状況が検証された。定例の福祉事務所長会では成果を報告、開廃差がプラスとなった福祉事務所は肩身の狭い思いをした。こういうことがこの生活保護の三十年の中にも記載をされているということです。
 検証委員会は、今回の検証事例でも、相談者の困窮状態や急迫した状態を認識しながら手を差し伸べることがなかった不適切な対応は、これらの数値目標が実態として職員を縛っているのではとの強い疑念を持たれるのはやむを得ないと指摘をしております。
 大臣、お尋ねしますけれども、今後導入しようというこの人事評価制度による業績評価において目標管理が行われ、トップから数値目標が示され、部下に詳細目標も示されて、達成状況をチェックされれば、この北九州市のような深刻な人権侵害にもつながるようなことが起こりかねないのではないか、こういう懸念を覚えるわけですが、この点についてどのようにお考えでしょうか。

○新藤国務大臣 まず、事件になったということは、それが問題であるということであって、通常の行政執行であれば事件にはならないわけであります。まずは、適切な行政の運営と事務の執行が行われる、その中で、その人がみずから定めた目標にどのように達成したか、それは絶対評価ですから、一人一人の自分の目標、そういったものにどのように達成したかということも入ってくるわけであります。
 そして、その仕事に対するやる気ですとかさまざまな企画力だとかそういったものもいろいろ複合、総合的に勘案されるわけでありまして、それが一律、何か強制をして、それによって行政をゆがめながら評価のみを上げるような、そういう結果にはならないし、そういったものはもとより地方公共団体は求めておりませんから、そういった事態は発生しないはずであります。発生しないように、そこは首長、そしてまた職員みずからがそれぞれ目的意識と使命感を持ってやっていただきたい、このように考えます。

○塩川委員 ですから、そういう事件となった問題を教訓に市の第三者の検証委員会が検証を行った結果、この数値目標というのが職員を縛ることになった、結果としてこの保護を廃止する、そういった措置につながったという点を取り上げているわけですから、私は、目標管理という形が結果としてこういうことにつながるのではないのかという懸念は拭えないと思うんですが、改めてその点、いかがですか。

○新藤国務大臣 まず、個別具体の事件に至るまでの経緯というものは徹底的に個別検証すべきだと思います。そしてそれが、組織的な何か問題点があるものであれば、反映されるべきだと思います。
 一律にこれが今回の人事評価、しかも能力評価、業績評価、こういったものを取り入れることとその事件の関連性というものは、それ以前の問題として、そもそもそういう業務執行が適正であったのかどうかというもの、そして何よりも、もう一回申しますけれども、個別案件については、個別案件についての徹底した調査、検証が必要だ、私はこのように考えております。

○塩川委員 個別案件の検証の結果が、目標管理というのに問題があったと述べているというところが重要な指摘であって、こういうことにこそしっかりと学ぶべきだということを申し上げたい。
 こういった目標管理を伴う人事評価を賃金に反映させるというのが、いわば小規模団体には非常になじまない。それは、例えば百人規模の町村などの自治体職場でいえば、人事異動を行う場合、二、三年で異動しますけれども、そういったときに、一つの職場に習熟していればそれなりに業績にもつながるけれども、新しい職場では一からやりますから、それが適切に業績として反映されなくなってしまう、だったら異動したくない、こういうことにもなりかねないわけです。
 そういう意味でも、一律にこういった目標管理を伴うような人事評価制度というのは、人事異動そのものの障害にもなるし、小規模団体にはなじまないと私は思うのですが、この点についてはいかがですか。

○新藤国務大臣 私は、規模が小さいから、それでは違うレベルでやっていいのかということを全然考えられないんですよね。
 委員も市の職員でありました。私も市の職員で経験したことがあります。それは、町の規模だとかそんなものにかかわらず、自分は目的意識と使命感を持ってそこの組織にいるわけなんですから、その規模、その地域に応じて必要な目標というのはおのずと、それは町によって目標設定自体が変わってくることはあります、しかし、いずれにしても、自分がいる職場において目標を設定して、それを達成するための努力をしていく。これは国民に対する全体の奉仕者として当たり前のことであって、それが規模によって変わるということは、私は、あってほしくないし、また全国の自治体の職員はそういう気持ちでやっていない、このように思っています。

○塩川委員 それは必ずしも実情を踏まえたような中身ではありませんね。私は、やはり個々の実態を踏まえて行うべきであって、そこは当然、いいものであれば導入するし、そうでなければ工夫しながら行うということで、一律に人事評価制度の導入を求めることの方が機械的な対応なんじゃないのかということを言わざるを得ません。
 もともと、国公においても導入されていますけれども、そもそも、公務にこういった人事評価制度がなじむのかという指摘もあるわけであります。
 研究者からは、行政の目的は多元的であり、成果を測定する尺度を見つけにくい。目標管理制度を取り入れるにしても、民間企業と比べると明確な目標を定めることが難しい。そのため、制度導入のための目標設定といった本末転倒に陥るなど、制度そのものが絵に描いた餅になっているケースが多い。公務員の多くは、成果主義が前提としている典型的な経済人ではない。そのため、金銭的報酬を伴う成果主義は効果が期待しにくいばかりか、仕事そのものから生じる内発的なモチベーションをかえって低下させるおそれがある。これは太田同志社大学教授の指摘でもありますが、人事評価制度が公務になじまないのではないかという声があるわけであります。
 こういう制度をなぜ導入するのか。昨年十一月の閣議決定の、公務員の給与改定に関する取り扱いでは、我が国の厳しい財政状況に鑑みれば、総人件費の抑制など行財政改革を引き続き着実に推進しなければならない。国公給与については、職員の能力、実績のより的確な処遇への反映など給与体系の抜本改革に取り組む。地公給与についても、地方の意見を聞きつつ検討する。これの具体化を図っていく。そういう一環としての人事評価制度であるわけで、要するに、人事評価制度の導入の狙いそのものが人件費削減なんじゃないのか、こういう指摘、当然だと思うのですが、いかがでしょう。

○新藤国務大臣 私は、全く当然だとは思っておりません。そもそも平成十九年に法律を出しておりますし、その数年前からいろいろな指摘がなされて、総務省としてはいろいろな通知を発出してきたことは、答弁をさせていただいたところであります。
 そして、私が申し上げているのは、能力と業績を評価しましょう、そしてそれぞれの自治体にふさわしい目標設定をしましょうということなのであります。
 その大学の先生がおっしゃっているのは、何か、経済効率性を求めることが指標の全てであるかのような前提に立ってのお話だと思いますが、自治体における政策目標設定というのはいろいろな、もっと多面的なことがあるというふうに私は思っておりますし、自分たちで、正しい、そして求められる目標を設定した上で、それの達成度を評価していけばいいんだ、このように考えているわけであります。

○塩川委員 目標管理を伴う人事評価制度というのは賃金にリンクするというところでの問題ということで指摘をしているわけで、それをしっかりと受けとめるべきであります。
 地方の実情に合わない人事評価制度の一律の押しつけはやめるべきだ、地方の自主的判断を尊重する、このことを強く求めて、質問を終わります。