国会質問

<第186通常国会 2014年04月11日 本会議 17号>




○塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、電気事業法等改正案について質問します。(拍手)
 本法案による電力システム改革の直接の契機は、三年前の東電福島第一原発事故です。
 大量の放射性物質がまき散らされ、福島県では、東京二十三区の倍の広さの地域が無人の地とされ、今なお、十四万人もの方々が避難生活を強いられています。このことを抜きに、エネルギー政策の議論は成り立ちません。
 以下、三つの角度から伺います。
 第一に、本日閣議決定したエネルギー基本計画です。
 計画は、原発を、安くて、安定供給でき、温暖化ガスを出さない、重要なベースロード電源として活用するとしています。
 総理、福島原発事故は、賠償から廃炉まで含めると、コストが幾らかかるかわかりません。これで、どうして原発コストが安いと言えますか。稼働率ゼロでも、安定供給だと言うのですか。放射能汚染の現実を踏まえてなお、温暖化対策になるから環境にいいとでも言うのですか。核のごみは、どうするのですか。エネルギー基本計画は撤回をすべきであります。
 総理は、選挙の公約で、原子力に依存しない社会の構築を明言されました。原発を、いつまでに、どこまで減らすのか、数値目標をなぜ示さないのですか。
 基本計画は、原子力初めエネルギー分野における日米の一体的体制を基調にしています。現在、GE、日立、東芝、ウェスチングハウス、三菱重工業の原発メーカー五社を中核とするいわば日米原発利益共同体が、世界の原発市場の四割近くを占めています。日米同盟を基礎としたトルコなどへの原発輸出は、これまでの資機材輸出から原子炉本体のプラント輸出をもくろむ原子力産業界、財界の思惑に沿うものです。
 特に、NPT非加盟国で核兵器を保有するインドとの原子力協定交渉は、私が二月の予算委員会で明らかにしたように、まやかしの軍民分離計画のもとで行われています。唯一の被爆国で、原発事故を経験した日本が絶対にやってはならないことであり、直ちにやめるべきです。
 第二に、福島復興指針と、東電の新しい総合特別事業計画、いわゆる東電再建計画の問題です。
 この中には、柏崎刈羽原発をことし七月から順次再稼働する計画が織り込まれています。総理は、世界で最も厳しい水準の新規制基準によって安全性が確認された原発は再稼働させるとしています。
 しかし、新規制基準は、事故原因の解明と検証を行わずに作成されたものです。原子力規制委員長は、規制基準の適合性確認が規制委員会の役割であって、絶対安全は言えないとしています。
 総理があくまで世界で最も厳しい水準の安全規制だと強弁するなら、その理由、根拠を明確に示してください。
 国は、地方自治体に避難計画の策定を押しつけていますが、そもそも、高齢者、障害者などは避難が困難です。多くの人々に無用の被曝を強いた福島原発事故の悲劇を繰り返してはなりません。
 国土面積が狭く、人口の多い日本では、原発の立地そのものが不可能ではありませんか。再稼働など論外であります。
 再建計画では、国が前に出るとして、原賠機構を通じた東電への支援枠を五兆円から九兆円に引き上げ、さらに、税金投入の仕組みもつくりました。福島復興を名目に、原発事故被害者を分断し、切り捨てる一方で、国民負担によって東電とメガバンクを救済するなど、断じて許されません。
 問題の根本には、東電を絶対潰さないとした、原賠機構のスキームがあります。しかし、東電に汚染水対策でも当事者能力がないことは明白であり、東電任せにせず、国が前に出るのは当然です。
 しかし、その実施主体と、誰が費用負担をするかは、厳密に区別すべきです。まず、大株主やメガバンクなど利害関係者の責任と負担が問われなければなりません。また、原発を推進してきた国の責任と反省なしに、無原則な国費投入など認められません。
 原賠機構法を見直し、事実上債務超過の東電を破綻処理して一時的に国有化することを、電力システム改革と一体に行うべきです。答弁を求めます。
 第三に、本法案についてです。
 法案では、電気の小売参入を全面自由化して、消費者の選択肢を拡大するとしています。その肝になるのは、多種多様な再生可能エネルギー発電をいかに爆発的に普及するかにあります。そのためにも、再エネ電源ごとの明確な数値目標と具体策を示すべきではありませんか。
 固定価格買い取り制度により電力会社には接続義務が課されていますが、接続拒否事例が相次いでいます。地域独占の一般送配電事業者には、より強い責務を負わせるべきです。あわせて、欧州のような、再エネの優先給電の仕組みを盛り込むべきではありませんか。
 託送料金の認可手続に先立つ公聴会を廃止しようとしていることも問題です。
 電気料金は、公共料金でもあり、原価の透明性の確保が必要です。総括原価のブラックボックスに光を当ててきた公聴会の廃止は、電気代の見える化を求める国民の要求に反します。大規模な電気事業者に対する原価情報の開示等、情報公開を一層進める仕組みを講じるべきではありませんか。
 最後に。
 今求められているのは、原発のような大規模集中型ではなく、再生可能エネルギーを初めとする小規模分散・地域経済循環型電力システムです。そのためにも、電力独占への民主的規制と国民的監視を強める電力事業体制の民主的改革、電力民主化が必要です。
 原発ゼロへ向かう電力改革を強く求め、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 塩川鉄也議員にお答えをいたします。
 原発のコストや、環境への影響についてのお尋ねがありました。
 原発のコストについては、東日本大震災後に行った試算では、原発の事故対応費用や使用済み核燃料の処理コストも含めた上で、石炭火力、LNG火力や再生可能エネルギーと比較して、必ずしも高くないとされています。
 今回のエネルギー基本計画では、原子力については、すぐれた安定供給性と記載されていますが、これは、稼働した場合の原子力のエネルギーとしての特性を示したものであり、実際に稼働するかどうかについては、原子力規制委員会の科学的、技術的な安全審査を経て、個別に判断されることとなります。
 また、運転時に、二酸化炭素の排出がなく、他の電源と比べても温室効果ガスの排出が少ないため、再生可能エネルギーと同じく、低炭素なエネルギー源としています。
 高レベル放射性廃棄物の最終処分については、これまでのやり方を見直し、責任を持って最終処分場を確保すべく、国が前面に立って取り組みを進めてまいります。
 原発の低減と数値目標についてお尋ねがありました。
 原発については、安全性の確保を大前提に、徹底した省エネルギー社会の実現と、再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、原発依存度は可能な限り低減するというのが基本方針です。これは、これまでの自民党の公約を踏まえた、一貫した方針です。
 原発依存度を含む日本の将来のエネルギーミックスに関しては、再生可能エネルギーの導入状況、原発再稼働の状況などを見きわめていく必要があることから、今回は数値を示しておりませんが、できるだけ早くエネルギーのベストミックスの目標を設定していきたいと考えております。
 原発輸出とインドとの原子力協定交渉についてお尋ねがありました。
 東京電力福島第一原発事故の経験と教訓を世界に共有することにより世界の原子力安全の向上に貢献していくことは、我が国の責務であると考えております。私も数多くの首脳と会談してきましたが、日本の原子力発電の安全性や信頼性に対する期待は極めて高いと実感しております。
 原発輸出については、こうした相手国の意向や事情を踏まえつつ、対応してまいります。
 また、インドとの原子力協力については、インドはNPTを締結しておらず、政府としても、国際的な核不拡散体制を損なうことになってはならないと考えます。
 他方、原子力関連技術等の輸出管理の指針を定める原子力供給国グループは、インドとの原子力協力を可能とする決定を行っています。この決定の前提である核実験モラトリアムの継続、原子力施設の軍民分離等のインドによる約束と行動は、インドとの原子力協力の当然の前提であることを、インド政府との間で確認しております。
 インドは、この約束を着実に実施してきており、軍民分離計画に従って、これまで、二十の原子力施設を民生用としてIAEAに申告していると承知しています。
 新規制基準についてお尋ねがありました。
 新規制基準については、原子力規制委員会において、国会事故調などにより明らかにされた情報を踏まえ、米国を初め海外の規制基準も確認しながら、我が国の自然条件の厳しさ等も勘案した上で、世界で最も厳しい水準の規制基準を策定したところです。
 新基準では、福島第一原発の事故の教訓を踏まえ、地震や津波に耐える性能の強化に加え、巨大地震や大津波により万一過酷事故が発生した場合にも対処できる十分な対策を取り入れています。
 原発の立地についてお尋ねがありました。
 原子力発電所の立地の可否については、独立した原子力規制委員会が、世界で最も厳しい水準の新規制基準に基づき、最新の科学的知見に照らして、科学的、技術的に審査を行います。
 なお、地域の防災計画や避難計画は、地域の実情に精通した県や市町村が災害対策基本法に基づき作成することとなっておりますが、政府としても、要援護者の方の避難のため、病院や屋内退避施設の放射線防護対策への財政的支援や、県、市町村、病院等の関係者が、避難先、移送手段などの確保のための調整を行うことができる、ネットワーク組織づくりの支援に取り組んでいます。
 引き続き、政府を挙げて、自治体を力強く支え、地域の防災・避難計画の充実に向けて、しっかりと取り組んでまいります。
 東電への資金支援についてのお尋ねがありました。
 福島の再生には、廃炉・汚染水対策のほか、賠償や除染など、十分な資金的手当てなくしては進まない事情が多いために、国と東電の役割分担を明確化することが不可欠であります。
 昨年末の閣議決定は、こうした観点から、賠償等を着実に実施し、東電改革を通じて、国民負担を抑制しつつ、福島復興の加速を推進するものです。東電や金融機関を救済することが目的ではありませんし、無原則な国費投入でもありません。
 株主や金融機関については、無配当の継続や、与信維持に当たり担保を外していくことなど、適切に責任を求めていきます。
 東電を破綻処理し、一時国有化することについては、賠償、廃炉への悪影響、電力の安定供給を直ちに確保できないおそれがあるため、適切ではないと考えています。
 再生可能エネルギーについてお尋ねがありました。
 再生可能エネルギーの普及は、エネルギー安全保障の強化、低炭素社会の創出に加え、新しいエネルギー関連の産業創出、雇用拡大の観点からも重要です。
 そのため、固定価格買い取り制度の着実な運用に加え、送電インフラの整備や、規制改革、技術開発など、再生可能エネルギーの最大限の導入に向け、必要な施策を総動員してまいります。
 また、再生可能エネルギーの目標を含む日本の将来のエネルギーミックスに関しては、再生可能エネルギーの導入状況、原発再稼働の状況などを見きわめ、できるだけ早くエネルギーのベストミックスの目標を設定していきたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

○国務大臣(茂木敏充君) 塩川議員にお答えをいたします。
 まず、原発輸出について、原子力産業界、財界の思惑ではないかという御質問でありますが、海外では、電力の安定供給やコストの観点から、原発計画を進めている国、検討している国も数多くあります。その際、単に建設するだけではなく、オペレーションのノウハウや関連する人材育成のニーズも高く、我が国への大きな期待があります。
 原発輸出は、こうした相手国の意向や事情を踏まえつつ行うものであり、原子力産業界や財界の思惑という御指摘は、全く当たりません。
 次に、一般送配電事業者の再生可能エネルギーの接続義務についてでありますが、現行制度上、再生可能エネルギーの発電事業者からの接続の申し込みに対し、一般電気事業者は、法令上認められている技術的に不可能なケースを除き、必ずこれに応じることが義務づけられております。
 今回の電気事業法の改正後も、同様の義務を一般送配電事業者に課すこととしており、円滑に系統への接続がなされるよう、固定価格買い取り制度の安定的かつ適切な運用に努めてまいります。
 次に、再生可能エネルギーの優先給電についてでありますが、現行の固定価格買い取り制度のもとでも、再生可能エネルギーを受け入れるに当たり、一般電気事業者は、みずから保有する火力等を抑制してでも再生可能エネルギーを優先的に受け入れるよう、優先給電が義務づけられています。
 今回の電気事業法改正後も、引き続き、この優先給電を維持することとし、再生可能エネルギーの導入が最大限進むよう、固定価格買い取り制度の安定的かつ適切な運用に努めてまいります。
 最後に、託送料金に関する公聴会の開催と、原価情報の開示についてでありますが、今回の法案においては、これまで届け出制であった託送料金について、公平性及び透明性を高めるために、値上げについては認可制としており、料金認可の審査過程を通じて、原価に関する情報が広く国民に開示されることになると考えております。
 また、現在の一般電気事業者の小売料金については、当分の間、経過措置として料金規制が講じられることから、同様に、審査過程を通じて情報の公開が行われることとなります。
 小売料金規制の撤廃後、事業者に対し、利用者の立場からどのような情報の開示を求めるかは、今後、しっかりと検討してまいります。(拍手)
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