国会質問

<第186通常国会 2014年04月11日 経済産業委員会 9号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、四人の参考人の皆様から、それぞれの専門のお立場で貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。
 最初に、喫緊の課題であります汚染水問題について、大西参考人に伺います。
 やはり地下水の全体の挙動把握が必要だ、そういう点でも大西参考人は御専門でございますが、全体状況はどの程度把握をされているのか。私は、この間、地下のさまざまな水の流れの中で、浅い透水層だけではなくて、深い透水層も一定の放射性物質の汚染があるのではないのか、こういう指摘もし、一部東電のデータなどでは、それに類いするような検出もあったというふうにお聞きしているんです。
 そういった地下の汚染状況について、それがさらにまた海洋まで及ぶような状況もあるのではないのか、こういう御専門の方からの御指摘もあるんですが、この点についてぜひお聞かせいただけないでしょうか。

○大西参考人 ありがとうございます。
 汚染の範囲につきましていろいろ問題点が指摘されていますのは、実は、爆発当時のフォールアウトも含んだ形で、どこまで汚染というふうに定義をするかということにもかかってくるかと思いますが、今、汚染水対策としてやっている範疇では、そういう透水層の深いところの汚染はないだろうというふうに見ております。
 それで、いろいろな数値モデルを使って計算をしておりますが、その範囲も、当初、昨年の八月ぐらいまでは割と幅の狭い範囲で検討しておったわけです。その後、いろいろな専門家の方々の指摘を受けた上で、そういう人たちも加わってモデルのつくり直しを行って、相当広い範囲をカバーして水文学的な検討及び汚染の伝播についていろいろ調査をしましたが、それほど深部、いわゆる五層より少し下の方につきましては汚染はないだろうというふうに見ております。

○塩川委員 いろいろ懸念の声もあるものですから、そういった観測、検査ポイントなどもふやしていただく、こういう取り組みなどもぜひお願いしたいと思っております。
 対策として、凍土壁の有効性の話もございました。同時に、多重でやることが必要ではないのか。そういう点でも、さらに陸側の遮水壁や海側の遮水壁とか、次なる対策ということも必要ではないかと思うんですが、この点について、大西参考人としてはどのようにお考えでしょうか。

○大西参考人 ありがとうございます。
 この点につきましては、予防的、重層的な対策ということで、フェーシング及びそれに付随した遮水壁というものが非常に効果的ではないかというふうなレポートを出しております。
 遮水のためのフェーシングというのは、全体的には有効なんですが、効果が出るまでに相当時間がかかるだろう。あの敷地内を遮水、フェーシングしても、多分数年から五年ぐらいかかってその効果が出てくるだろう、今、我々が当面課題にしているような問題にはなかなか対処しにくいということで、現在は、凍土壁をベースにして、それに補強的にそうしたフェーシングを徐々に進めていくという対策を考えております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、諸葛参考人にお尋ねいたします。
 お話の中でも、現場の作業者の方々が大変高い放射線量下の中で困難な作業に当たられている、これは、ハイテクであってもローテクであっても、困難さは同様に大変厳しいものだ、難しい作業を行っておられるというお話がありました。
 私も、特に現場でのさまざまな作業をしておられる方の労働条件の改善をこの委員会でも取り上げてまいりました。特に、放射線量が高い中での作業、健康管理の問題、安全対策の問題もあります。同時に、それに見合うような賃金、日当なのかという点も含めてあるわけであります。
 実際、お聞きしますと、現場の労働者の方の日当が一万五千円とか一万三千円、除染作業で、環境省がやっている事業で受け取る日当よりも少ないような状況がある。これでは、本当に意欲を持ってできるのか、モチベーションが働かないじゃないか。東電としてもそれは上げる方向でと言っているんですが、重層下請構造というのはなかなかくせ者でありまして、実際に現場までしっかりと手当てができる状況ではない。
 こういう点について、全体を本当に前に進める上で何ができるのか、その辺でお考えのところがありましたら、ぜひ教えていただけないでしょうか。

○諸葛参考人 ありがとうございます。
 企業経営の立場では、ある二つの社内カンパニーがあって、同じような仕事の職種で、こちらで百円だったものがこっちに行くと百五十円になるというのは、やはり経営者の立場ではなかなか難しいかと思います。
 ですから、今回の組織改革で社内カンパニー制にされたのは、そういう待遇面で横並びを少しでも改善しようという東電の経営努力の一つだと思いますが、さらに踏み込んで、私が御提案させていただいたような別会社の仕組みにすれば、今先生がおっしゃられたような待遇の改善は、さらに手が打てる可能性はあるのではないかと考えております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、除本参考人にお尋ねいたします。
 先ほど、丸山委員の御質問で、賠償のスキームのお話もいただいたところです。その点について、御説明いただきましたように、原賠審が指針をつくって、東電の方が基準をつくり、その際に、いわば申請書式まで東電が聞きたいことを聞くという書式で、被害者の方々の訴えが反映しにくいというスキームのお話がございました。
 こういった中で、被害者の声が反映されない、届かない、そういう思いというのが原発事故の被害者の皆さんにあると思うんですが、その辺で、例えば現地の方に行かれて、そういった被害者の具体的な声とかお聞きになっていることがありましたら、こういう機会でぜひ御紹介いただけないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○除本参考人 ありがとうございます。
 賠償に関して被害者の方々からの声を聞きますと、東京電力の対応は非常に不誠実に見えるんだという声がやはり多いわけですね。福島民友という地元紙でも、大きな賠償の記事が出たときにそういう声が紹介をされていました。
 何でこんなようなことになるのかといいますと、東京電力が今は無過失責任で賠償するということになっていまして、結局、事故に関する責任というものの検証が、確かに事故調などがありましたけれども、十分ではないのではないかということであります。
 東京電力からしますと、まだ訴えられている裁判の中でもいろいろな主張をしてきていて、さすがに非常に巨大な天災による免責というところまでは言わないにしても、実際のところ、本音でどう考えているのかわからないような主張まで出てくるということがありまして、そういう中で、加害者としての自覚があるんだろうかというような指摘が被害者サイドから出ています。
 そうした状況を変えていくためにも、やはり東京電力のステークホルダーの責任をきちんと追及していくということが必要なのではないかなというふうに考えております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 その点で、今後どうあるべきかというところでお聞きしたいんですが、被害者と加害者の合意形成が必要だというお話も先ほどありました。
 昨年十月に、研究者の方々から、原発事故被害者の権利回復に関する意見なども出されたというふうに聞いております。
 本当に被害者の立場に立ってこの賠償を進めていくという点で、今こういう方向でまずは進める、将来的にはこういうことを目指す、その点での具体的な方向性などについて、お考えがございましたら、お聞かせいただけないでしょうか。

○除本参考人 まず、きちんと金銭で賠償すべきところはするというところが必要ですし、それだけではやはり今回の被害というのは回復できないというところで、地域の再生あるいは復興というところの政策も総合的に打っていく必要があるだろうなというふうに感じています。
 というのは、金銭の賠償というのは個人の被害に対するものですけれども、今回の場合は、自治体が消滅の危機に立たされているというような地域レベルでの被害というのがありまして、これはなかなか賠償というスキームに乗りにくい。こうした地域の再生ということになりますと、やはり政策的な措置も必要になってくるだろうということであります。
 ですので、賠償でできるところ、それから政策的な措置をきちんと打つところ、こういうものを総合的に組み合わせて、被害者の方々の権利回復を図っていく必要があるのかなというふうに大枠では考えております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 それから、引き続き除本参考人にお尋ねしたいのが、今回の法改正ですけれども、除本参考人は、もともとこの機構法をつくるときの参考人でも陳述いただいたわけであります。そのときと今回、特に、東電への資金援助のスキームでどういう違いがあるのかというところをお尋ねしたいんです。
 そもそも私は、機構法のスキームそのものが、加害責任のある東電を存続、延命させる、こういう仕組みであること自身に問題があると考えておりますけれども、そうはいっても、当初の機構法には一定の枠があったわけでありまして、今回、それがどのように変わっているのか。その点について幾つか整理して御説明いただけるとありがたいんです。

○除本参考人 ありがとうございます。
 先ほど一番最初に、四十一条の問題について少し申し上げました。四十一条がどのように今後機能していくのかというところが、非常に重要な問題かなというふうに思っています。
 東京電力に対する資金援助として、資金交付とか資本注入とか、いろいろな形態があるわけですけれども、今の制度では、資金交付、つまり返済義務のない交付というのは、賠償の履行に充てるためだというふうに限定がされているわけですね。今回、四十一条の三項が入ることによって、ちょっとその位置づけがよくわからなくなってしまっているところがある。
 つまり、賠償というものを超えて、廃炉とか事故収束にまで資金交付というのが広がっていくというふうになると、例えば、支援機構法ができたときに、資金交付というのは賠償に限るというような附帯決議も国会で、参議院だったと思いますが、なされています。こういうものに反するような無原則な東京電力救済、加害企業救済みたいなものが進んでいくというのは、非常によろしくないだろう。先ほど申し上げた被害者サイドから見た場合の問題ということも考えると、より一層問題になるのではないかなというふうに思われます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 関連して、事故炉の廃炉の費用について、電気料金に上乗せするという仕組みの話もございました。
 昨年十月に、廃炉関係規則の省令改正で、廃炉中も電気事業の一環として事業の用に供されるものとして整理されるものは、事故炉についても、運転終了後も引き続き減価償却費を料金原価に含め得るものとした。
 私は、こういった事故炉の廃炉費用も電気料金に上乗せするような仕組みであると、これはやはり国民の理解を得られないんじゃないのかと率直に思うんですが、この点についての除本参考人のお考えをお聞かせください。

○除本参考人 事故炉の廃炉とか賠償というような事故対応のコストというのをあたかも経費であるかのように電気料金に転嫁をしていくやり方は、やはり非常に問題だろう。これは、経営者の責任を問うということもありますし、きちんと利潤から出していく、損失としてみなしていくという仕組みが本来必要なのではないだろうかというふうに思います。

○塩川委員 ありがとうございます。
 残りの時間で山名参考人に御質問いたします。
 IRIDに、汚染水対策を初めとして、いろいろな技術提案が寄せられたところであります。国内外の知見が寄せられた。そういう中で、大西参考人にも伺いました汚染水対策との関係で、トリチウムについてです。
 幾つか選択肢も示しながら、トリチウムについて、これを取り除く技術、あるいは安定的に貯蔵する技術、海洋放出というのも選択肢として挙げられているわけですけれども、私は社会的な合意が得られないと考えております。
 そういう点で、トリチウムを取り除く技術について、どんな技術提案があって、その可能性あるいは課題、その辺について、どんなものになっているのか御紹介いただけたらありがたいんです。

○山名参考人 まず、冒頭にお断りしますが、IRIDは、汚染水のさまざまなアイデアの世界からの公募を、エネ庁から受けまして担当いたしました。ただ、この内容についての技術的な判断、あるいは今後どうするかという判断は全て、閣僚等会議のもとの汚染水処理委員会が担う、つまり、大西先生の委員会で御判断いただくというたてつけになっております。したがって、私がここで答えるべきではないというのが一つございますが、私どもが世界から集めた公募案件の七百九十何件のうちのある部分はトリチウムのことであります。
 技術的に申し上げますと、トリチウムの濃縮技術に対する提案というのは、その中でかなり入っているわけです。トリチウムの濃縮技術といいますのは同位体濃縮でありまして、一般的には、重い水素ですから、普通の軽い水素との質量の差による化学的な違いを利用して、微々たる分離を行っていこうということです。これは、蒸発において発生する分離を求めたり、電気分解において発生するわずかな化学的な違いを利用したり、あるいは固体にする場合の違い、いろいろな方法がありまして、それぞれを網羅するような提案が各国からあったと思います。
 各国なりに、それぞれの経験に基づいて、有効な手段である、つまり分離効果が高いものであるという主張を各国がしてきたというように記憶しておりまして、そういういろいろな提案を、今後、大西先生の汚染水処理委員会で検討、今、現にタスクフォースというのがありまして、そこでもんでおられるというふうに理解しております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 それと、今回の法案においては、機構の業務として追加されるものの中に、廃炉業務を通じて得られた知見情報の国内外への提供というのがあります。そういう点で、廃炉業務を通じて得られた知見というのが知的財産として発生するものもあります。
 こういった知的財産の所有権というのはどういう扱いになるんだろうか、その辺について少し、お考えがありましたら教えていただけませんか。

○山名参考人 これは非常に難しい問題で、少なくとも私の立場でお答えできるものでも実はないんですが、今までIRIDの研究開発に従事している中で、幾つかIP上の問題なんかを見ていますと、情報の中身によると思います。
 まず、わかりやすい例からいきますと、事故がどうして起こったかとか、事故の結果、どういう反応が起きていたかというような情報というのは、これはある特定のセクターや会社に属す情報というよりは、むしろ原子力安全にかかわる、世界的に共有すべき知見というような、公的な財産的な位置づけのものがやはりかなりあるというように感じております。
 一方で、廃炉を進めていく中で、プライベートな資金が入って開発したものによって出てくる成果ですとか、あるいは、もともと東京電力のプラントに付随しているようなものについては、確実に知的財産の所有権がその部分にかぶさっているというところがあるわけです。
 ですから、その扱いについては、それぞれの知的財産の所有者がどういう判断をするかということが、どこかで議論されるべきであるというように思います。
 一言申し上げますと、技術開発的に扱ってきたものについては、今、IRIDに参加していただいている法人の間では、そこを明確に定義しております。どちらかというと、共有していこうよという理念を大切にしようという思いが参加している組合員にはあります。
 ただ、これはあくまで参加している組合員の話なので、今後、東電を初め、ほかの世界の多くの組織に対してそれをどう知的財産として扱うかというのは、まさにこれからかなり戦略的に考えていくべきものだと思いまして、情報提供のあり方は、まさに新機構の仕事として、これから戦略として考えていくものに入っているというふうに理解しております。

○塩川委員 時間が参りました。ありがとうございました。