国会質問

<第186通常国会 2014年04月15日 総務委員会 15号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、この間取り上げてまいりました関東甲信地方を中心とした大雪被害対策について、被災農家の支援策の現状について、農水省を中心にお尋ねをいたします。
 最初に農水省にお尋ねしますけれども、関東甲信地方におけるこの二月を中心としました大雪被害の被害額がどのくらいになったのか、その被害額の集計について、当委員会でも質問しましたように、再取得価額に基づいて農水省は集計しているということだったんですが、その点がどうなったのか、この二点についてお答えいただけますか。

○高橋政府参考人 お答えいたします。
 今冬の豪雪による被害、これが、昨日、四月十四日時点で申し上げますと、農業用ハウスや畜舎の損壊が二万八千六百三十五件、被害金額が約一千八十億円となっております。農林水産業の被害総額が約一千五百二十三億円となっております。このうち、二点目の、農業用ハウス等の被害額については、三十四の都道府県から報告を受けておりますが、これらについては、いずれも再取得価額または復旧額で被害額が算定されているところでございます。

○塩川委員 農業用ハウスや畜舎の被害が一千八十億円、また、全体、丸めると一千五百二十三億円、再取得価額、復旧額で集計したもの、これは全国集計なんだと思うんですけれども、その多くは関東甲信地方ということでよろしいんですか。

○高橋政府参考人 今ちょっと数字を積み上げておりませんが、この大部分が関東甲信というふうに考えていただいて差し支えございません。

○塩川委員 観測史上最高の大雪が降った関東甲信地方におきまして、過去にない甚大な大雪被害がもたらされたということであります。
 重ねてお尋ねしますが、今回、被災農業者向け経営体育成支援事業で農業用ハウスの撤去費の創設や再建費補助の大幅な上乗せが行われたわけですが、この制度の趣旨について御説明ください。

○高橋政府参考人 お尋ねの被災農業者向け経営体育成支援事業、今般打ち出しました対策の趣旨ですが、今冬の豪雪により地域の基幹産業である農業が壊滅的な被害を受けているという状況に鑑みまして、産地の営農再開及び食料の安定供給に万全を期するため、地方公共団体の復旧支援を後押しするための、今回の豪雪に限った特例的な措置として、農業用ハウス等の再建、修繕に要する経費及び再建の前提となる倒壊したハウス等の撤去に要する経費、これらについて助成するものでございます。

○塩川委員 地域の基幹産業である農業が壊滅的な被害を受けている、このことを踏まえて実施をされたものということであります。
 この農業用ハウスの再建補助は国が十分の五で、この支援対策においては、地方公共団体の補助が十分の四となった場合には農業者の負担は十分の一となると記載をされておりました。農水省の通知文書でも、「都道府県及び市町村は、農業者の負担を最小化するための助成を行うよう努めるものとする。」とあります。
 そこで、お尋ねしますが、関東農政局管内の自治体における負担割合は、実際どんなふうになったんでしょうか。

○高橋政府参考人 お答えいたします。
 関東農政局管内、これは十都県ございます。この十都県が公表をした、あるいは農林水産省から直接聞き取ったところによりますと、まず、一番多いのが六県ございまして、埼玉、千葉、神奈川、山梨、長野、静岡、この六県については、まず県負担分二〇%、これを県負担の上限にしつつ、そこは市町村が同率を負担するということを前提に県が負担をする、これが六県でございます。それから、茨城県につきましては、市町村が二〇%負担することを前提に県が二〇%以内を負担する。それから、栃木県は、市町村が一〇%負担することを前提に県が二〇%を負担する。それから、東京都は二〇%負担する、群馬県は二七%負担する。そういう状況と承知しております。

○塩川委員 市町村についての対応に若干のばらつきはありますけれども、基本は、農水省からの要請を踏まえて十分の四相当について支援を行っていこう、特に被害が大きい地域においてはそういう対応を行ってきているわけであります。そういう点でも、被災農家の負担割合を一割にする、小さくする、そういう点での自治体の取り組みというのがここにもあらわれているわけです。過去にない被害に対して、過去にない支援策となったわけであります。
 ですから、こういった支援策について、被災農家の方からは、本当に助かるという歓迎の声も寄せられております。同時に、改善を求める意見や要望も寄せられているところです。
 その一つが、農業共済との兼ね合いの問題です。これは栃木県の栃木市でお聞きした話ですけれども、アスパラやニラを生産している農家の方ですけれども、園芸施設共済に入っていてその共済金が三月の上旬に既に振り込まれた、ところが、その後、この経営体育成支援事業、ハウスの再建補助の説明会があって、その説明会の場では、もらった共済金の二分の一に相当する額は経営体育成支援事業による国庫補助額分と相殺して返してもらう、こういう仕組みになっているということが伝えられたということであります。
 ですから、農業共済を掛けている方にすれば、こういうときのために共済も掛けているんだということで、半分相当額が減額されるというのは非常に大きい、何とかならないのかという声が農業者の方からたくさん上がっております。
 また、あるトマト農家の方は、施設そのものが五年以内の比較的新しいものですから、共済金そのものも二千八百五十万円という額もおりた。そういう点では、共済金の額そのものも大きかったわけですけれども、二分の一相当額が減額ということになりますと、そういった経営体育成支援事業に基づく再建補助が全体としては上乗せされるわけだけれども、やはりトマトの生産を継続しようかどうしようかということをちゅうちょするような、そういう声も上がっているということです。
 そういう点では、経営体育成支援事業によるハウスの再建補助と、それから農業共済を掛けてきた方にすると、共済を掛けてきたかいがない、こういう声が上がっているわけですけれども、そういった声に対して農水省はどのようにお応えになるのですか。

○高橋政府参考人 被災農業者向け経営体育成支援事業、今回打ち出した内容では、この事業による国の補助金額、それと農業共済の共済金、これのうちの国費相当部分が共済金額の二分の一相当になってまいります、これを合計した額が事業費全体の二分の一になるように本事業の補助金額を調整する仕組みとしている、そこは御指摘の内容でございます。
 この理由につきましては、これも御案内のとおりですが、園芸施設共済に対する農業者の掛金の二分の一は国庫補助でございますので、被災された農業者が受け取る共済金のうち半分は国費相当とみなせるため、被災農業者向けの事業による国庫補助金との間で調整を行うのが適当であろうという考えが一つございます。
 それからもう一つは、先ほど来御質問がございますが、地方公共団体の補助に対して七割、八割の特別交付税措置を講ずることで地方公共団体による支援の後押し、これもセットで講じておりますので、農家の負担は大幅に軽減される。そういうことがございますので、最初に申し上げたような、農業共済との調整という措置をとっておるところでございます。

○塩川委員 もともと、過去にないような豪雪によって大きな被害を受けた、雪の降らない関東甲信地方でこういう支援事業を行うということは積極的だ。それを前提とした上で、同時に、共済を掛けていた方があるわけですから、であれば、その分も含めて上乗せした支援であってもいいじゃないのか、何で五割で線を引くのかということなんですよ。その点はいかがですか。

○高橋政府参考人 お答えいたします。
 園芸施設共済の加入者につきまして、加入していたかいがないかどうかということで申し上げますと、今申し上げたように、経営体育成支援事業の国庫補助額は調整はされますが、共済金額は全額払われますので、農家の方が御自分でお掛けになった掛金相当分、この分というのは、共済に加入していない農業者に比べて当然受取額は多くなりますので、農業共済加入のメリットというのは当然出てくるというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 そうじゃなくて、国庫補助を何で五割という上限で切るのか、上乗せしたっていいじゃないかということなんですけれども、その点についてどうですか。

○高橋政府参考人 今申し上げたのは、農業共済に加入されていない方とのバランス論ですが、御指摘の、なぜ二分の一で切るかということについては、これは最初から二番目の御質問でありましたように、今般の経営体育成支援事業というのは、被災農家が意欲を持って営農を再開できるように、そういうことで、先ほど来申し上げているように、国の補助と地方公共団体による補助に対する特別交付税措置、これらを組み合わせることで農家負担を最小化するように設計しているということでございます。
 そういう中で、国の補助金額について、農業共済金についての調整措置を今申し上げたように行っても、この目的、被災農家の方の負担を最小化して再建に取り組んでいただく、そういう目的は達成できるというふうに考えて、このような設計にしているところでございます。

○塩川委員 答えていないんですけれども、要するに、農地や農業用施設の災害復旧事業なんかであれば、例えば八割、九割の国庫補助というのは当然あり得るわけですよ。それはそういう制度設計があるからであるわけですけれども、別に五割にこだわる必要はないんじゃないのか。農業共済をやっている方が掛けてきたかいがあるような形で、その国庫補助分も含めて上乗せするようなことというのを本来考えてこそ、こういった農家の方の共済を掛けることへの意欲にもつながってくるんじゃないのか。そういう点でも、今回の措置というのは、率直に言って、非常に不十分だということを言わざるを得ません。あわせて、自治体による支援、これ自身も、自治体の取り組みとして重要であります。
 最後に、大臣にお尋ねしますけれども、今説明がありましたように、こういった再建補償に当たっての自治体の取り組みについては、特別交付税で七割の措置ということが行われます。この点でいえば、撤去の費用については八割の特別交付税措置であるわけですけれども、ここで特別交付税措置を引き上げることが、自治体の財政がさらに被災者支援に使えるような、そういう余裕にもつながるし、背中を押すような取り組みにもなるという点でも、この特別交付税措置の七割というのを引き上げる選択というのもあり得るのではないのか。この点について、ぜひ新藤大臣にお答えいただきたいと思います。

○新藤国務大臣 これは、安倍総理の指示のもと、今までになかったそういった甚大な被害に対して、国としても総合的な対策を講じようじゃないか、こういうことでやったわけであります。
 そして、農業用のハウスの撤去については、これは国と地方が二分の一ずつ負担をする、そのうち地方については、地方負担の八割に新たな特別交付税措置を加えた。この根拠は、環境省所管の災害廃棄物の処理事業と同等の措置率であります、この八割というのは。それは、地方負担が義務的に発生する、こういうことで、制度をそろえたわけであります。
 一方で、再建、修繕に係る農業者の助成につきましては、これは、地方団体の負担は任意であります。そして、地方団体による判断の余地が大きいことと、一方で、農業が壊滅的な被害を受けていることに対する支援を我々も手厚くやりたいということで、従来は地方負担に特交はなかったわけでありますから、それを、ゼロだったものを七割に設定した。
 例えば、別の被災事業者に対する特交措置としては、赤潮対策が五割、それから鉄道災害も五割なんですね。そういう中で、今回の甚大性に鑑みて七割、こういう設定をした。しかし、義務が生じていない、そういったものについては、やはり八割と七割の差というのはそこにある、このように考えております。

○塩川委員 実際には、十分の四のおつき合いというのを現にしているところが多いわけですから、そういった点でも、もう一歩踏み込んだ対応をぜひお願いしたいということを述べて、質問を終わります。
     ――――◇―――――