国会質問

<第186通常国会 2014年04月16日 経済産業委員会 10号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは東電の廣瀬社長においでいただきまして、福島第一原発構内労働者の皆さんの労働条件の改善、特に危険手当の増額の問題と医療体制の改善強化の問題について御質問いたします。
 最初に、設計上の労務費割り増し分の増額の件ですけれども、先日もお伺いしましたが、その後、どうなっておりますでしょうか。具体的に賃上げの事例というのが生まれているのかどうなのか、この点について、廣瀬社長、お聞かせください。

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 先日の塩川先生からの御質問に対して、十二月発注分工事以降、今回の労務費増分単価の割り増しというのを始めますということで、現時点で対象の工事が四十八件あって、そのうち二月末までに三件の工事が完了したというふうにお答え申し上げました。
 その三件について、元請さんに、これは口頭ですけれども確認をいたしました。その結果、元請会社さんからは、しかるべき労務費が渡っているということを確認しております。ただ、これはまだ口頭だけですので、この後しっかり確認をして、しかるべき方まで行っているかどうかというのをチェックしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 元請から渡っているという話で、その増額分について元請から下請事業者の方に渡っている、あるいは元請から下請事業者に渡り、さらにはそれが現場の労働者の方の賃上げにつながっている、そこについてはどうでしょう。

○廣瀬参考人 現在確認がとれているのは、元請から一次の方にちゃんと渡っているというところでございますが、繰り返しになりますが、ちゃんと下まで行っているかどうかというのは今後確認してまいりたいと思っています。

○塩川委員 元請から一次下請のところについては、今言った事例のように増額分が渡っているという確認をされたということですが、これが実際に現場の作業員の方、労働者の方々の賃上げとなって、やはりこういう困難な作業の中で、しっかりとした賃金が上がる環境をつくるというところに引き続き取り組んでいただきたい。現時点では労働者の賃上げ事例の確認はされていないということでもありますので、引き続きこの点での取り組みを強く求めるものであります。
 そういう点でいいますと、これは重層下請のもとですから、発注者の東電が元請に契約上で求めたとしても、それが実際に下請を通じて労働者にどのようにきちんと担保されるのかという点では、必要な点検をしないとわからないということです。
 ただ、元請の中に東電のグループ企業もあるわけですね。そういう点では、関電工ですとか東京エネシスとか東京パワーテクノロジーなど、東電グループ企業の労働者への労務費割り増し分の増額が実際に賃上げとなってあらわれる、これはやはり東電のグループとしてできることじゃないか。だから、東電の本社として、しっかりとグループ企業の労働者の皆さんの賃上げに反映をする、こういう取り組みは直ちに行うことではないかと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。

○廣瀬参考人 今回の労務費の割り増しについては、東電グループの会社が元請であろうが、どこが元請であろうが、全くそうしたことでの違いはないと思っております。私どもは、とにかく、実際に作業されている末端の労働者の方のところまでに行き渡らせたいというのが我々の思いでございます。
 したがいまして、先生おっしゃったような関電工であるとか東京エネシスであるとかパワーテクノロジーであるとかといった会社が元請だった場合も、そこでしっかり調査をし、そこの会社が元請として一次、二次、三次と行くんだと思いますけれども、そこについてもしっかりチェックをしていきたいというふうに思っているところでございます。

○塩川委員 現場の労働者の方のお話を伺うと、やはり期待はあるわけですよ。それが現実には賃上げという形であらわれておりませんので、そういう点で、落胆とか不満の声になっているというのが実態であります。そういう中で、例えば、プラントメーカーの系列の下請の労働者の方においては、この先上がるようだという話が聞こえてきたりとか、一方で、東京エネシスとかパワーテクノロジーの方は、どうも上がるような話が聞こえてこない、こんなことも現場ではうわさとして出ているそうです。
 そういう点で、こんなことであっては東電そのもののまさに親企業としての責任の問題も問われますから、これはしっかりと賃上げに反映するという取り組みをぜひ強めていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○廣瀬参考人 もとより、うちの関係企業だけしっかりやればいいというものではもちろんないですけれども、率先垂範して、そうした会社がちゃんと私ども発注者の意図に沿ってしっかりとした賃金を渡していくということは必要だともちろん思っております。
 なお、前回お答えしたときにも申しましたが、今、各元請会社さんから、賃金がちゃんと渡っているかどうかをチェックする仕組みを伺っています。したがって、必ずしも全部の会社が同じようにやる必要はないと思っておりますし、工事の重層構造の状況にもよると思いますので、それぞれの会社さんがこうしたやり方でそれをしっかり担保する、確認するということを今ヒアリングしております。
 その過程で、我々もむしろしっかり突っ込むところは突っ込んで、こういうやり方だとここは残ってしまいますよねとか、こうやるとここはどうやって担保するんでしょうかということを今ヒアリングさせていただいているところですので、それぞれの会社さんがこういうふうにちゃんとやりますというのを今伺っていますので、まさに、それをはっきりさせた上で、それにのっとってちゃんとやっていないじゃないですかということがもしあれば、そのとおりにそれを確認していくということをこれから、これはグループ会社も、当社と直接関係のない一般の元請さんも同じようにやってまいりたいというふうに思っているところでございます。

○塩川委員 具体的に賃上げに反映するような確認の取り組みをぜひ具体化いただきたいと思うんです。
 本来やはり、十二月以降、危険手当の増額という方向を打ち出したわけですから、それが実感できるような取り組みこそ必要であって、そういう点でも、私がこの間申し上げているように、一つは仕組みとして、重層下請のもとでなかなか末端まで行く際に確実にできるかどうかわからないということであれば、外出しでしっかりと支給する仕組み。それを作業環境の種類に応じて、この点について東電では装備に着目してやっていたわけですから、そういった形で、金額を一定示した上で外出しで支給するということが確実にそれぞれの労働者の方の賃上げにつながる、こういう取り組みこそ行うべきことではないのかということ。
 新規契約以降の話となりますと、現在、契約が継続しているような方には賃上げが及ばないという形になりますので、そういう点でも、私は、外出しという仕組みで、十二月以降にそれぞれの元請やそれぞれの下請に支給される、そういう取り組みこそ職場の士気を高めていく、こういうものにつながるということを改めて申し上げておくものであります。
 その上で、構内作業での死亡事故を踏まえた安全対策の問題であります。
 最初に、三・一一の事故後における一F構内作業での死亡事故例が何例あるのか、このことについてお聞かせください。

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 三年一カ月前の三月十一日の私どもの発電所の事故以降、津波が来た当日に、三年前の三月十一日ですが、私どもの社員が二名、津波に巻き込まれて亡くなっております。それ以降は、先月の三月二十八日、はつり作業をしているときにお亡くなりになった方の死亡事例が初めての事例でございます。

○塩川委員 そういう点でも、この三月二十八日の作業員の方の死亡災害を二度と繰り返さない、どう教訓としていくのか、対応策をしっかりととっていくということが求められているわけであります。
 この災害の概要をお聞きしますと、いわば、地上から掘り出した、そこの穴の中に入って、腰を落として斜め上で削岩をする、こういう環境での作業で、上からコンクリートが落ちてくる、土砂も落ちてくる、それに埋められるような格好で亡くなられた。
 そういった点でいいますと、そもそも作業環境として適切だったのかということも問われるわけです。ですから、座って斜め上で削れば、上から落ちてくる可能性というのは高いわけですから、そういった点でのしっかりとした作業環境の安全確保策がとれていたのか、こういうことがまさに問われるわけですけれども、そういうことについての実態の検証ですとか今後の対応策については今どのようにお考えですか。
    〔委員長退席、江田(康)委員長代理着席〕

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 三月二十八日の事故につきましては、先生御指摘のとおり、空の入れ物を置いておく倉庫の、地震等々が起きていますので、そこの基礎をしっかり確認しようということで、基礎のくいを確認するために工事を行っております。亡くなられた方は、ならしコンクリートと呼ぶんだそうですが、土の地面の上ですとでこぼこしていますので、それを一旦平らにして、そこの上に場所を決めるような絵を描いたりする、本当にそのための、本当に簡単に平らにするためだけのコンクリートがそこに挟まっておって、それをはつるというんでしょうか、少しずつ落としていくということの作業のところで、おっしゃったような事故が起こったということでございます。
 当然、関係の御当局が今原因を調査しているところでございますので、もちろんそれをしっかり踏まえて、私どもは今、その調査に対して全面的に協力させていただいておりますし、それがまずやるべきことだと思っていますが、それを踏まえて、事故原因をしっかり把握し、それに対してしっかりとした再発防止策をとっていきたいというふうに考えております。

○塩川委員 その概要の図でも出ていましたけれども、実際には、ならしコンクリートがあって、その上に土もあったわけですけれども、空隙があったということでありますと、実際、ならしコンクリートの削ろうとしていた部分が下がっていた、既に落ちていたんじゃないのかということも考えられるわけです。そういった点でも、作業環境がどうだったのか、作業手法がどうだったのかということについて、本当に事故を繰り返さないという立場からの検証をしっかり行って、二度と繰り返さないという点での取り組みを強く求めるものであります。
 そもそも、事故を起こさない、そういう点での取り組みが重要であるわけで、発注者の東電として、元請に対してもしっかりとしたこういった作業安全の確保策を図っていく、こういう取り組みの具体化というのを改めて求めたいと思います。
 同時に、こういった重大な労災事故が起こったときの救急医療体制の整備強化が必要であります。現場では、やはり不安の声が広がっているわけです。もし自分も事故に遭ったときに本当に大丈夫なのかという声があるわけです。そういう点で、今、一Fの構内においての医療体制がどんなふうになっているのかについて、わかるところで御説明いただけますか。

○廣瀬参考人 一Fには緊急医療の設備を持った施設がございまして、そこに緊急医師、救命士さん、それからいわゆる看護師さん、それと事務の方、四名に二十四時間体制で当たっていただいております。したがって、今回の事故もそうした方々の手をかりて事故対応に当たったわけでございますけれども、私どもの緊急体制としてはそういうことになっております。

○塩川委員 二十四時間三百六十五日対応、土日も皆さんは働いておられるわけです。そういったときに、実際に東電として医師を確保している数というのは、二十四時間三百六十五日に対応するものになっているんでしょうか。

○廣瀬参考人 二十名程度の方に登録をいただいて、当然、ローテーションをしていただきます。そのうちの一名は固定的な方でいらっしゃいます。

○塩川委員 厚生労働省にお聞きしましたら、今言ったように、固定して東電として確保している方は一名で、あとは医師の派遣だと。労災病院や救急医学会からの派遣の医師で対応しているということであります。
 私、この点、医師派遣というのは、やはりそれぞれの医療機関が大変な努力をして派遣をしているわけですね。全国的に医師不足も問題となって、特に救急関係は大変ですから。そういったときに、東電として、しっかりとした医師を二十四時間三百六十五日体制で強化していく、医師そのものをさらにふやしていく、このことが必要じゃないかと思うんですが、この点はいかがですか。
    〔江田(康)委員長代理退席、委員長着席〕

○廣瀬参考人 御指摘の点、私どもも考えておるところでございます。
 今、一名の方は固定させていただいておりますけれども、この方をふやすべく、今お願いを始めているところでございます。

○塩川委員 公立病院の運営というのは、医師を確保するかどうかというのが経営上の一番の問題です。そういったときに、首長さんの一番の仕事が医師を確保することというぐらい医師確保が大変な状況という点でいえば、私は、東電で三千人、四千人の方々が働いている、こういう環境の中で、あってはならないような労災事故があった場合にもしっかりと対応できる、そういう医療体制の確保ということは、やはり東電の社長としてしっかりとこれに取り組む必要がある。
 実際に、二名、三名とふやすという具体的な話というのは進んでいるんでしょうか。

○廣瀬参考人 まだ現時点では一名の方が固定しておるところでございますので、このあとの方をふやすようにお願いを申し上げているところでございます。

○塩川委員 ぜひ、この点が本当にしっかりとした安全確保の対策を進める上でも大きな根幹的な部分であります。この取り組みの具体化を求めるのと同時に、あわせて、ドクターヘリにおける救急搬送の問題があります。
 お聞きしたところでは、もともと事故後はああいう高放射線量下でしたから具体の話がありませんでしたけれども、ちょっと前に二Fのところにドクターヘリのランデブーポイントを設ける。今は二キロ先ぐらいの双葉町の海岸のところにそういう場所を設置したということですけれども、もともと事故前は構内にドクターヘリのランデブーポイントもあったということです。そういった点で、改めて構内に確保するような取り組みが必要なんじゃないのか。
 あわせて、その際に、ドクターヘリは実際には県が民間の航空会社に委託をする形です。航空会社としての民間の判断もあって、そういった放射線量が高いような環境に飛んでくるという問題についての配慮も必要なわけで、私はやはり一歩踏み込んで、ドクターヘリの運用についても東電としてしっかりとした資金を提供するとかいうことを含めて、確保するということまで踏み込まないと、本当の意味で救急搬送体制は確立できないんじゃないのかと思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、委託を受けていらっしゃるのは福島県立医大ですし、ヘリコプターの運航は中日本航空。この両者が判断をされていらっしゃるんですけれども、東京電力のためだけに使うヘリコプターではございませんので、一般の方々も普通の場合はお使いになるということで、ヘリコプターが汚染されてはいけないということも当然考えなければいけませんし、そこで働いていらっしゃる救命の関係の方々も、被曝のおそれがあるということから、今現状ではそうなっております。
 したがいまして、やはり問題は、福島第一の構内をなるべく早く除染して、そうしたヘリコプター会社、あるいは医療関係者の方々の御判断によって、ここならおりても大丈夫だという状態にしていきませんと、まずはそこが一番大事なところかなというふうに思っておりますので、今後も、除染を今我々は鋭意進めておりますので、そうした状況を見ながらまた御相談をしていくということになろうと思っています。

○塩川委員 除染と同時に、東電がやはりドクターヘリの運航に積極的に関与して保障していく、こういう取り組みをぜひ求めたい。
 そういう点で、最後に大臣に一言、この構内労働者の作業環境の改善というところでの取り組みに万全を期していただきたい。その点についてのお答えをいただきたいと思います。

○茂木国務大臣 きょうは、ダブルヘッダーで本当にお疲れさまでございます。
 九回の裏、ツーアウト、最後のバッター、最後の投球ということになるかもしれませんが、先日来、塩川委員から、作業環境の改善につきましてさまざまな御提案もいただいております。
 きょういただきました医療環境、この改善も含めて、現場で作業に当たる方々が安心して安全に働ける環境をつくっていく、このことを東電に強く求めたいと思います。

○塩川委員 終わります。
     ――――◇―――――