国会質問

<第186通常国会 2014年04月16日 経済産業委員会 10号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 原子力損害賠償支援機構法の改正案について質問いたします。
 最初に、廃炉等技術委員会についてです。
 廃炉等技術委員会は、原子力工学など、廃炉に関する技術的知見を有する専門家の方などで構成し、廃炉等関係業務の意思決定機関として新たに法定する機関と承知しております。
 そこで、経産省にお尋ねします。
 廃炉等技術委員会が決定した廃炉関係業務について、運営委員会と食い違いがあるような場合、そういうときには技術的知見を有する廃炉等技術委員会の決定というのが優先されるのか。この点について、何らかの制度的な担保というのはあるものなんでしょうか。

○糟谷政府参考人 廃炉等技術委員会でありますけれども、廃炉等技術研究開発業務実施方針の作成など、廃炉等技術委員会が特に必要と認める事項の議決を経なければならないということを法律上明確に位置づけているところでございます。
 他方で、運営委員会は、予算、定款、業務方法書の変更ですとか機構の組織全体の運営に関して重要な事項を議決する役割、これも法文上位置づけております。廃炉等技術委員会は廃炉等に係る業務の技術的判断に関して重要な事項を議決する役割ということでございますので、両者はそれぞれ基本的役割が異なるというふうに考えております。
 すなわち、廃炉等技術委員会で議決されるべきもの、つまり技術的判断に関するものについては、運営委員会においても廃炉等技術委員会の判断を尊重するべきものというふうに考えておりまして、政府としても、機構に対する指導監督という観点から、両方の委員会がそれぞれの職責をきっちり果たせるようにチェックしてまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 運営委員会においては廃炉等技術委員会の技術的な判断について尊重するというお話ですが、ただ、技術的な判断の際に、当然、お金がかかる、経費が膨らむというような場合について、経営上の観点から運営委員会が物を言う、そういうことというのもあり得る、想定されるんですけれども、そういう点で、技術的な知見が生かされないような事態になりはしないのかという懸念も浮かぶんです。その点はどうですか。

○糟谷政府参考人 これを別々の機関につくった場合には、まさに別々の意見が出て、それを誰が調整するのかという問題が生じたところでありますけれども、今回、同じ機構の中に二つの委員会で、技術的な事項については廃炉等技術委員会が議決して決定するということでありまして、その技術的判断を機構として尊重していくということになるというふうに考えております。
 東京電力も、資金が原因でやるべき廃炉がおくれてはならない、そういうことはいろいろなところで言っておりますし、特別事業計画にも廃炉をしっかり進めるということが大事だということを書かせてまいりますので、そういう中で、資金が理由になって廃炉がおくれる、そういうことは断じてあってはならないというふうに考えております。

○塩川委員 断じてあってはならないということが本当に生かされるという点がどうなのかということが問われてくると思います。
 次に、機構法に基づく資金援助のスキームについて確認いたします。
 最初に、四十一条の資金援助の申し込みについてですけれども、この四十一条で定める資金援助のスキームには一号から五号まであります。これらについては、使い道、使途に制限というのがあるんでしょうか。

○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、機構法第四十一条には五種類の資金援助の方法を規定してございます。
 このうち第一号のいわゆる資金交付と法律上呼んでいるものにつきましては、損害賠償の履行に充てるための資金を交付することという定義がなされておりますので、この資金は損害賠償のためのみに使われるということになっております。
 第二号から第五号までの株式の引き受け、資金の貸し付け等については、第四十一条の柱書きにおいて、原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施及び電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に資するために行うということになっておりますので、第一条の賠償に限定するというのとは異なりまして……(塩川委員「一号」と呼ぶ)第一号は賠償に限定されておりますが、第二号から第五号につきましては、電気の安定供給、賠償の履行等の幅広い目的のために資金援助をすることができることになっております。

○塩川委員 一号の資金交付は損害賠償の履行に限定されるということで、そういう点では、安定供給等々が含まれる例えば廃炉経費に対しても、一号は除いて、二号から五号については機構は東電に対して資金援助を行うことができる、そういう資金援助の種類があるということでよろしいですか。

○藤原政府参考人 今回お願いしている法改正の中で、第二号から第五号までの資金援助につきましては何ら改正を加えていないところでございますが、法律の解釈として申し上げれば委員御指摘のとおりであります。
 他方、これまでの審議の中で御説明してまいりましたが、実需の問題としては、東京電力は、既に引き当てている約一兆円、それから今後引き当てる一兆円の枠の予定がある中で、廃炉のための資金援助を必要とする状況にはないと承知しております。

○塩川委員 前回指摘したように、二兆円の枠でおさまるのかという問題が当然出てまいりますので、どこまで膨らむかわからないような廃炉経費についてこの四十一条を使った資金援助のスキームが行われ得るという点でも、今回、廃炉についてしっかりと明示的にも書かれたということも含めて、さらなる資金援助が行われ得るということは改めて問われなければなりません。
 次に、五十一条の資金の交付についてです。
 この五十一条に基づく資金の交付というのは、使途、使い道に限定というのがあるんでしょうか。

○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘の第五十一条には、
  政府は、機構が特別資金援助に係る資金交付を行う場合において、第四十八条第二項の規定による国債の交付がされてもなお当該資金交付に係る資金に不足を生ずるおそれがあると認めるときに限り、当該資金交付を行うために必要となる資金の確保のため、予算で定める額の範囲内において、機構に対し、必要な資金を交付することができる。
と規定されております。
 この中に資金交付という用語が出てまいりますが、これは四十一条第一項第一号と同じ意味で資金交付という用語を使っておりますので、第五十一条の規定によって交付されるものは、損害賠償の履行に充てるためというように、使途が限定されることになります。
 なお、実態として申し上げれば、これまで、第五十一条の規定に基づいて資金が交付されたことはございません。

○塩川委員 賠償に限られるということで、五十一条を活用した事例はないということです。
 この五十一条に基づく資金の交付というのは、要するに、贈与といいますか、返さなくてもいいお金という位置づけということですか。

○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 機構法の中で、国庫納付の規定、機構が国庫に納付する規定がございます。第五十九条でございます。この第五十九条の解釈に照らしますと、第五十一条の資金の交付は交付国債を原資としておりませんので、機構は、第五十九条に基づいて国庫納付をする必要はないという解釈になります。

○塩川委員 国庫納付を行わなくてもいい、そういうお金ということです。
 次に、六十八条、政府による資金の交付についてです。
 六十八条に基づく政府による資金の交付は、今もお聞きしましたけれども、返さなくてもいいお金。つまり、原子力事業者の負担金増額の軽減という形で、結果として原子力事業者の負担の軽減、免除となる、そういうスキームではないかと思うんですが、確認です。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の原子力賠償機構法六十八条は、
  政府は、著しく大規模な原子力損害の発生その他の事情に照らし、機構の業務を適正かつ確実に実施するために十分なものとなるように負担金の額を定めるとしたならば、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営に支障を来し、又は当該事業の利用者に著しい負担を及ぼす過大な額の負担金を定めることとなり、国民生活及び国民経済に重大な支障を生ずるおそれがあると認められる場合に限り、予算で定める額の範囲内において、機構に対し、必要な資金を交付することができる。
と規定されてございます。
 この資金の使途でございますけれども、機構がその業務を適正かつ確実に実施しつつ、国庫納付のために必要な原資に充てることが想定されているものと考えてございます。
 また、この資金交付により、機構が交付を受けた資金を国庫納付に充てることによりまして、結果として、原子力事業者からの一般負担金及び特別負担金を原資として行う国庫納付額が実質的に減額されるということになろうかと考えてございます。

○塩川委員 特別負担金、一般負担金が結果として減額、軽減されるということで、原子力事業者の負担金を軽減するという仕組みになるということです。
 昨年十二月の復興指針において、「中間貯蔵施設費相当分については、」一・一兆円ですけれども、「事業期間(三十年以内)にわたり、機構に対し、機構法第六十八条に基づく資金交付を行う。」としております。
 これはどういうものなのか、説明していただけますか。

○上田政府参考人 御指摘のとおりでございまして、昨年末の「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」という閣議決定に基づきまして、中間貯蔵施設費用相当分につきましては、この六十八条に基づきまして、政府の電源開発促進勘定から予算をそこに支出しているという形になっているところでございます。

○塩川委員 電気料金に上乗せ徴収されています電源開発促進税を今後三十年間にわたって流用するということです。
 二〇一四年度、今年度の電促税収が三千二百七十億円で、毎年毎年三百五十億円というのは、それの一割を超えるような額になります。こういった額について流用する。これは原発のない沖縄電力の需要家にも負担をさせるというものであり、いわば原発事故の後始末の費用をツケ回しするというのは私はおかしいと。こういう流用というのはあってはならないと思いますが、その点いかがですか。

○茂木国務大臣 ちょっと、流用という言葉は適切ではない、私はそのように考えておりますけれども。
 中間貯蔵施設につきましては、国が土地を取得して早期に建設する必要があります。その上で、国が責任を持って長期の事業期間にわたって安定的に管理していくことが福島の復興にとって不可欠であるという観点から、今回のような措置をとらせていただいた次第であります。
 福島の復興は沖縄の方に関係ない、こういう御主張でありましたら、私の考えとは違う。日本国民みんなが福島復興のためにでき得る協力をしていくということは、極めて重要だと考えております。

○塩川委員 事故の責任が問われる、その問題について、この点を曖昧にするやり方だということを申し上げているわけです。
 この六十八条については、衆議院の復興特別委員会で制定時の枝野大臣が答弁しております。六十八条というのは膨大な賠償額が生じている場合を想定しており、少なくとも今回の東電福島事故においてはこの条文に該当することを想定していないと答弁しているわけで、そういう点で、今回やったことは重大なそごがあるんじゃありませんか。

○茂木国務大臣 そのやりとりがあった前提といいますか、当初の賠償支援のための交付国債の発行限度額は二兆円であったと承知いたしております。
 その上で、実際の賠償であったりとか除染の費用の推移等を踏まえまして、我々は、国が前面に立ってこれらの問題に取り組むことが福島の復興につながる、このように考えまして、平成二十六年度予算におきまして、今後の賠償に万全を期すべく、交付国債の発行限度額の上限を九兆円に引き上げさせていただいた。この中には、賠償の費用、除染の費用、さらには中間貯蔵の費用というのが入ってまいりまして、それぞれどういったスキームで返還するかということも決めております。
 そして、中間貯蔵につきましては、先ほど申し上げたような形のエネルギー特会からということで決めさせていただいた次第でありまして、二兆円、九兆円、状況が変わってきておりますので、そこにおきまして、二兆円の段階で私が違った発言をしていたらそごがあるということであると思いますけれども、前提そのものが変わっていると考えております。

○塩川委員 二兆円が九兆円になって状況が変わってきているということです。
 ちょっと確認ですけれども、例えば二〇一一年の十月に枝野大臣の答弁がありました。でも、その直前でいわゆる下河辺委員会の報告も出されておりますけれども、その中の記述を見ても、「交付国債の発行枠については、政府において、現在の二兆円から、第三次補正予算で五兆円に拡大する方向で検討がなされている。」と。ですから、単に二兆円の話じゃないんですよ。そのときだって、もう五兆円というのは想定されているんです。そういうことでしょう。

○上田政府参考人 その当時におきましてさまざまな議論があったということはそのとおりかと思いますが、実際問題といたしまして、交付国債の発行限度額は当時二兆円でありました。二兆円を前提とした、先ほどの枝野大臣の発言であったと承知しております。
 今回は発行限度額を九兆円に引き上げた、今回の事態ということで。この状況変化の前提の大きな違いということは、交付国債の発行限度額の引き上げという意味では、今回の、最近の事象であると考えております。

○塩川委員 当時の経緯もよく承知もしないで、二兆円が九兆円なんてよく言えるのかと。そもそも、このときに、五兆円という話はもう既に出ているんですよ。だけれども、このような、この条文に該当することを想定していないという答弁なんです。
 そもそも、枝野大臣のその当時の答弁というのも、「今二兆円とおっしゃいましたが、これは現在の予算措置で二兆円としているものでありまして、当然、今後もし賠償額が大きくなっていった場合には、その都度、交付国債を予算措置でお願いする」ことになっている、こういうことを述べて、これは、だから、ふえていきますよということを想定した上で、しかし、今回の東電の福島事故においてはこの条文に該当することを想定していません、これを使うつもりはありませんと言っているんです。そういう点でいえば、二兆がもっと膨らむということを前提にした上でもこの六十八条は使わないというのが当時の大臣の答弁なんですから。そういう点でまさにそごがあるんじゃないですか。

○茂木国務大臣 私がある時点において答弁をして、そしてそれが状況とともに変わるということであれば、そごがあるということになるかもしれません。さらに申し上げれば、同じ政権の中で、大臣の交代によりまして発言が変わるということであれば、そごということになるかもしれません。
 しかし、枝野大臣の当時に想定されておりました二兆円、また、ふえる額として想定されておりましたのが恐らく当時でいいますと五兆円ということであります。現状は九兆円、政権も交代いたしております。

○塩川委員 いや、法律の執行の話ですから、それを踏み外すような形でやっているというのは、政権がかわった云々の話じゃないんですよ、法律そのものは同じもので続いているわけですから。それの執行をどうするのかという基本の立場というのが当時の法律を制定した時点での大臣の答弁にあるわけですから、そういったものを踏み越えて税金投入をするやり方というのはおかしいということを申し上げて、時間が参りましたので、終わります。