国会質問

<第186通常国会 2014年04月17日 総務委員会 16号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、第四次一括法案に関連して、権限移譲の問題について質問をいたします。
 第二次一括法におきまして、一連の権限移譲が行われております。その一つに、社会福祉法人の認可等の権限移譲も含まれております。
 この点について、厚生労働省に、その内容、あわせて、幾つぐらい一般市に移譲されたのか、このことについてお尋ねをいたします。

○古都政府参考人 お答え申し上げます。
 社会福祉法人に関する権限移譲につきましては、委員御指摘のように、第二次地方分権一括法の施行に伴いまして、平成二十五年四月一日から、事業区域が一般市を超えない法人に限り、所轄庁に係る権限が都道府県から一般市へ移譲されております。
 具体的には、社会福祉法人の設立の認可、指導監査、解散命令などの権限が移譲されたところでございます。
 この権限移譲によりまして、平成二十五年四月一日現在で、全国一万九千八百十法人のうち九千百三十一法人が一般市の所管となっておりまして、その割合は約四六%となっているところでございます。

○塩川委員 都道府県から一般市に、多数の社会福祉法人の設立認可等の権限が移譲されたということであります。
 この第二次一括法のときの権限移譲について、内閣府が状況調査を行っております。具体的な支障があると回答の多かったものとして、今御紹介いただいた、社会福祉法人の設立認可等の権限移譲があるわけですが、具体的な支障の中身、社会福祉法人の設立認可等に係る権限移譲に対してどんな支障があるという声が地方から出されているのか、このことについて教えていただけますか。

○末宗政府参考人 お答えいたします。
 平成二十五年の七月に、第二次一括法による基礎自治体への権限移譲の施行状況の調査を行いまして、その中で、権限移譲における支障とあわせて、それへの対応状況も調べたところでございます。
 今御指摘の、社会福祉法に基づく社会福祉法人の定款認可の事務に関してでございますが、幾つか例を申し上げますと、定款の認可については、法人の状況だけではなく、関連している施設状況の把握が必要となるため、施設を監督する都道府県との密な連携が必要となってくること、そういう支障に対しましては、同一法人に係る情報については都道府県と相互に共有を図る、そういう対応をとったというようなことがございます。
 また、社会福祉法人の会計面における検査を行うに当たりましては、財務諸表等の内容を理解する専門知識が必要となってきた、そういった課題が出てきたわけでございますが、それに対しては、嘱託員を新たに採用して配置をして対応したというようなことが出てきたところでございます。
 それぞれ、いろいろな支障、課題に対して各自治体でいろいろな工夫を凝らして対応しているという調査結果が出ております。

○塩川委員 財務諸表等、社会福祉法人について独自の会計もあるということで、そういう点での手間が非常にかかる、業務量が大きいということが具体的な支障の中身として出されているということが紹介されました。
 ここで、兵庫県の事例を取り上げたいんですが、権限移譲となりました法人への指導監督について、県と市が委託契約を結んで、当面、これまでどおり、一般市に権限移譲されたさまざまな権限を県が執行するということができるようにしたわけですけれども、こういった内容については御承知でしょうか。

○末宗政府参考人 承知をしております。
 極めてレアケースでございますけれども、兵庫県においては、市町村と話をした上で、希望のあるところについて県が事務を引き受けるという例があると聞いております。

○塩川委員 これは、兵庫県からのお話をお聞きしましたが、第二次一括法の施行により、二〇一三年四月から社会福祉法人への指導監督等の事務、権限が一律に一般市におりることになりました。
 しかし、県に対して幾つかの市からは、人的な体制がない、ノウハウ、専門性がないとの懸念の声が寄せられて、県としても、市としてはつらいことになるのではないのかと受けとめて検討した結果、権限移譲となった法人への指導監督について、県と市が委託契約を結び、当面、これまでどおりの事務処理を行うことができるとすることにしました。
 ただし、法律で権限移譲が定められているので、いつまでもというわけにもいかないということで、二〇一四年度までを期限として、それ以降は各市で行ってもらうという対応ということであります。
 やはり法人への指導監督では専門知識やノウハウ、一定の経験が必要となります。定款のチェックですとか、年一回の現状報告等、その報告に基づく点検などがありますし、法人からの相談があれば、それに応える必要も出てまいります。
 行政の窓口が頼りにならないと法人としても困ることでありますし、特に、社会福祉法人の会計基準がこの間改められて、一般の財団や社団とは違って特殊であって、監査業務が非常に大変だという声が上がっているわけであります。県はこういった監査の部署があるので、当然、県としてはノウハウを持っているわけですけれども、市の方にはそれがない、それが困難さとなっているわけです。
 ですから、先ほど内閣府が状況調査で紹介をしたようなこの支障ありという実態というのは、まさにこういうところにあらわれている。そういう中身について、よく御承知になっておられるんでしょうか。その点、どうですか。

○末宗政府参考人 確かに、実際、調査をさせていただいた中で、人的な面ですとか、ノウハウをきちっと伝承するようにとか、いろいろな課題は承知をしております。その内容につきましては各自治体でも共有するようにし、あるいは、その具体の対応について、内閣府ないしは厚生労働省と連携をして、事務が円滑にいくような取り組みをしているところでございます。

○塩川委員 本当にわかっているのかという点もあるんですが。
 ある市の担当者は、本来は県がやるべき業務だと思う、現場は、よりよい福祉をつくろうと、事業内容の向上のために事業者と一緒になってやっている、そのときに同時に監査もやるとなると、どうしてもぎくしゃくすることになるということで、結局は、少ない人数の中を、いわば、事業者への支援に当たる部門と、監督に当たるような、監査に当たるような部門と分けざるを得ない。こういうのは、一般市の、それも規模が小さいようなところで本当に可能なのかどうなのか、こういったことについてしっかりとした実情を見るべきじゃないでしょうか。
 そういった点で、では、実際に権限移譲がされた場合に、必要な財源がどうなっているのか、人手についての保障がどうなっているのか、こういうことがまさに問われてくるわけであります。
 総務省にお尋ねいたしますが、社会福祉法人の監督等の、都道府県から一般市への権限移譲に当たって、財源措置というのは具体的にどういうふうになっているのでしょうか。

○佐藤政府参考人 社会福祉法人の定款の認可及び監督に係る事務については、従来は、都道府県分の単位費用に計上して基準財政需要額を算定しておりました。その上で、指定都市及び中核市分については補正で、その年に需要額を加算し、一方、同額を関係する都道府県の需要から減額するという措置をしておったわけであります。
 今回、この権限が一般市にまで移譲されております。移譲に要する経費を内閣府で調べましたところ、全国で十三億円という見積もりでありました。したがって、二十五年度の算定からは、従来のやり方をやめまして、この十三億円の全額を市町村分の基準財政需要額に算入するということにしたところでございます。

○塩川委員 こういうことが実際に数字上は行われていたとしても、現場が実感できないというのは、別に担当の現場において人がふえたわけじゃないという形になってあらわれるわけです。
 ですから、一般市の小さいところで、今言ったように、事業者に新たに事業所をつくってもらいたいとか、そういった社会福祉法人への支援や相談をする活動と同時に、そうはいっても、適切に執行がされるような監督も行わなくちゃいけない。そこは両々、なかなか矛盾するところでありまして、人の面で、組織の面でのきちんとした区分というのもやらないと、本当の意味での住民福祉の向上につながらないという点、それにふさわしいような財源や人的な支援になっているのかということについていえば、現場の声で紹介をすれば、この権限移譲に当たって人員や財政面での新たな措置はないと感じている、臨時、非常勤の増員はあったけれども、職員定数は増員されていないというのが実態であります。
 こういう、県がもう一度委託を受けるということを行う際に、地元の神戸新聞が報道しておりますけれども、豊岡市の声を紹介していましたが、市内の十四法人を県に委託する豊岡市は、わずかな権限を受けるのに担当者を置くより、数十万円の委託料で済むならありがたいと。権限移譲が実態に合っていないんじゃないのか、こういうところに見てとれるんじゃないでしょうか。
 こういった社会福祉法人の権限移譲が行われる。さらには、地域主権戦略大綱では、社会福祉法人だけでなく、施設に関しても、一般市までの権限移譲を求めております。これはどのような内容でしょうか。

○末宗政府参考人 お答えいたします。
 地方分権改革推進委員会の第一次勧告を踏まえて検討、調整を進めた結果、平成二十二年の地域主権戦略大綱においてでございますけれども、児童福祉施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホームの設置認可等については、基礎自治体の実態調査を行った上で、移譲に向けた具体的対応策を年内に得られた場合には権限移譲を行う旨が位置づけられているところでございます。

○塩川委員 今お話があったような児童福祉施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホームの設置許可等の権限移譲について、結果としては、どのように現時点で措置されたのかどうなのか。

○有岡政府参考人 お答えいたします。
 まず、児童福祉施設に関する検討でございますけれども、基礎的自治体への移譲を検討いたしましたけれども、幾つか理由はございますけれども、とりわけ小規模な自治体におきましては、財政的あるいは人材的に多大な負担を強いることになるのではないかという結果となっているところでございます。その結果、都道府県、指定都市、中核市が権限を有するという状況でございます。
 一方、特別養護老人ホームあるいは養護老人ホームでございます。これにつきましては、今申し上げましたような背景もございますが、あわせまして、入所者が市町村の区域を超えるということを想定しておりまして、この設置認可等につきましては、広域的な視点からの対応が必要だというふうに考えておりまして、そういった点を考えますと、市町村が適切に事務を行えるかどうかということに懸念がございましたので、現在のような状況になっているところでございます。

○塩川委員 そういう点では、施設について、検討はそのままの状態になっているということであります。方向としてはその方向だということでもあります。
 重ねて厚労省にお尋ねしますが、介護保険法に基づく指定居宅サービス事業者の指定等の権限を都道府県から一般市に移譲することについて、内閣府に対する厚労省の回答では、一律な市までの権限移譲は適当でないとしておりますけれども、その理由というのは何でしょうか。

○有岡政府参考人 この点につきましても、先ほど申し上げました事情がございます。
 業務の内容からして住民の健康にかかわるということもございまして、やはり必要な財源措置や人材確保等が講じられなければならないということで、一律な対応は適切ではないというふうに考えたところでございます。

○塩川委員 住民の健康にかかわることであり、十分な財源、人的措置がない限りは困難ということで、一律な市までの権限移譲は適当でないという指摘というのは重要であります。
 大臣にお尋ねします。
 この法人についての権限移譲についても、現場では非常に苦労があります。さらに施設となれば、もっと、実際に業務しているわけですから、そういった点での自治体の負担というのは大変大きなものがあります。
 ですから、そういう点で、一般市におろすという場合でも、三十万規模の一般市もありますし、一方で四万とかいう規模の一般市もあるわけで、それを一律に権限移譲というのは実態に合わないんじゃないのか、一律の権限移譲というのは地方の実態に合わない、私はそういうふうに思いますが、大臣はいかがですか。

○新藤国務大臣 この権限移譲が、より身近な窓口において住民サービスが提供される、これはメリットだと思います。一方で、今委員が御指摘のような、そういうノウハウの蓄積ですとか専門職員の養成といったものも必要だと思いますし、財源だとか事務の執行について、そういった対応が出てくることも事実だと思います。
 ですから、これは、それぞれ、移譲を受けた団体では工夫を講じていただいておりますし、国においても、そうした課題については、事務、権限が円滑に執行できるように、都道府県と連携しながら、技術的な助言、そして職員の研修、派遣等の支援など、また確実な財政支援、こういったものもやりたい、このように思っております。
 基本的に、地方の団体なり、地方のこういった御要望に応じて権限移譲の要望が出て、それに対して対応してきておりますから、まずはそれを尊重していかなくてはならないと思いますが、現場におけるそういったスムーズな対応ができるように心がけてまいりたい、このように思います。

○塩川委員 いや、問題は、一律に権限移譲するというやり方がおかしいんじゃないのかということを聞いているわけですよ。現場はいろいろ、おりてきた以上はどうにかしなくちゃいけないとなるわけですから。でも、それがかえって大きな負担となっているんじゃないのかという問題であります。
 兵庫県内でも、一般市、人口の規模があります。例えば、社会福祉法人の数を教えていただきましたら、人口二十二万人の宝塚市は十一ですけれども、八万人のたつの市は二十もあります。また、人口十六万人の川西市は八つですが、五万人の小野市は十六もあるわけで、いずれも人口規模に対して、これはほぼ職員の規模に比例しますけれども、六倍の開きもあるわけなんです。
 そうなれば、やはり、小さな団体であればあるほど、一般市という区切りで見れば、さらに負担がふえるという結果になるんじゃないのか。そういうのも一律にやるというのはやはりおかしいということを言わざるを得ません。
 改めて、一律にやるのはやめるべきじゃありませんか。

○新藤国務大臣 まず、その地域における住民の御要望というのがあります。それから、地方分権を進めていこうという、国民のそういった期待と御要望があると思います。そういう中で、事務的な打ち合わせをして、私は、それが円滑に遂行できるように、そして適切な処置ができるような工夫は必要だ、このように思っているわけでありまして、自治体の職員の皆さんにとっての負担であるか否か、これは許容範囲でなければ困ると思いますよ。一方で、そうした地域における住民の方々のニーズというものも全国一律にあるとするならば、そういったものも勘案しながら総合的な判断をしていくべきだろう、このように私は思っております。

○塩川委員 対人サービスの点についてはしっかりと市町村で行う、それは積極的だ、こういうことはよくわかります。
 しかし、事業者に対する指導ですとか監督という業務において、やはりそれは適正な規模で行うというのは必要なんじゃないのか。

○高木委員長 塩川君、申し合わせの時間が参りましたので、短く。

○塩川委員 はい。
 例えば、高度な専門性が求められるような業務や、事務量が少なく、広域で行う方が効率的な業務もありますし、事業者の振興と規制の分離が求められる、公正性、中立性が求められるような業務など、広域自治体の都道府県が担う業務があるのではないのか。
 一律に権限移譲するやり方というのが、かえって基礎的自治体の業務に支障をもたらし、ひいては住民福祉の向上の障害となりかねない。法律での一律の権限移譲というやり方はやめるべきだということを申し上げて、終わります。
    ―――――――――――――