国会質問

<第186通常国会 2014年04月18日 経済産業委員会 11号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 九番バッターということで、大臣の期待に応えて、しっかりと試合を決めてまいりたいと思います。
 きょうは発明の日ということで、記念日にこういう審議をするというのも大変意義あることだと思っております。
 特許について、私の出身、埼玉県の日高市というところなんですが、御縁がありまして、というのは、民間の特許第一号というのが埼玉県の日高市出身の方なんですね。特許の第一号というのは、宮内省の技師の人の軍艦に塗る塗料が第一号で、第二号以降、民間の第一号というのが高林謙三の茶葉を蒸す機械。
 埼玉は、昔、室町からの川越茶で知られ、その後江戸時代から狭山茶がありまして、非常に江戸時代から明治にかけて産業も盛んで、そういう中での近代化を図る特許の二号、三号、四号というのがこの高林謙三でありまして、これは埼玉でも偉人として紹介をされている。そういう点でも非常に誇りにも思いますし、こういう特許制度というのが国民生活の向上に資するものになるように、ぜひとも私どもとしても努めていきたいと思っております。
 そこで、きょうの質問の中では、最初に、商標法の改正案で色彩と音のところがございます。今回の改正案において、他国では既に広く保護対象となっております色彩、音といった商標を我が国における保護対象に追加するということです。
 これまで、色彩は、文字とか図形とか記号などと合わさって初めて商標の構成要素となる付随的な構成要素であったわけで、そのため、輪郭のない色彩のみから成る商標はこれまで登録が認められてこなかったということであります。
 そこで、質問ですが、こういう色彩のみから成る商標登録について、どのように登録を行っていくのか。カラーコード、パントーンとかいろいろあるんでしょうけれども、欧州などでどういうふうになっているのか、この日本でそれをどういうふうに具体化していくのか、この点について最初にお尋ねしたいと思います。

○羽藤政府参考人 色彩の商標の関係でございますけれども、実際に出願されることになります商標の色合い、鮮やかさ、明るさといった具体的な特性を考慮した上で、商標としての類似性を厳格に審査する、そういう基準を作成するということが今後まず必要になってくるというふうに考えております。
 そのため、自己の商品を他人の商品と区別するのに、カラーコードといった、それぞれ企業が持っております、いわば色の見本のコード、こういったものを用いるということも一つ大事な点ではありますけれども、ただ、それを用いれば登録が可能であるというふうに基準として定めるというだけでは不十分ではないかというふうに考えております。実際に自己の商品を他人の商品と区別するのに使用することができるのかどうか、そういった観点から商標登録の可否を判断してまいりますので、今後、実務家や有識者から成る検討会において、そういった基準づくりについての検討を進め、明確化、客観化を図ることとしたいと考えております。

○塩川委員 色にはいろいろ種類も当然あるわけで、JISの規格などでもそういう種類もあるでしょうし、それぞれの企業の色見本というのもカラーコードとしてあると思います。
 日本の場合には古来から使われてきた伝統色もございます。そういう点では、あかね色ですとか藤色とかもえぎ色とか、こういう色などについてもきちんと定めていくようなことが可能となるものになるんでしょうか。

○羽藤政府参考人 繰り返しになりますが、どのような商標が既に登録されている商標と類似するのか否か、そして他人の商品と区別するのにどういう形で使用できるのかどうかという点について、今後、基準の中で、今御指摘の点も含めて、明確化、客観化を図りたいというふうに考えております。

○塩川委員 次に、音から成る商標登録についてですけれども、実際、どんな音か、音符であらわすのかどうかというのもありますけれども、記録媒体に標章を記録することとありますが、この条文上の規定を踏まえて、どんなふうなやり方というのが考えられるものでしょうか。

○羽藤政府参考人 音の商標についてのお尋ねでございますけれども、やはり、その具体的な内容を特定できるように、他人の商品との識別ということがまず不可欠になります。そのためにも、音を記録した記録媒体の提出を求めるということがまず必要であろうと考えております。
 改正を今お願いしています法律が成立いたしました暁には、この法律の規定に基づいて、記録媒体の具体的な種類については経済産業省令において定めたいというふうに考えております。また、今回のこの法案の成立後速やかに、実務家、有識者から成る検討会において検討をいたしまして、パブリックコメントなどの所要の手続もとり、具体的な記録媒体などの提出についての方策について内容を定めてまいるというふうに考えております。
 現時点では、その音を録音したCD、DVDといったものをまず想定しておりますけれども、今後、技術進歩、IT化のさらなる進展などによって、出願人の利便性に即した手続が可能となるよう、必要に応じて検討を進めてまいりたいと考えております。

○塩川委員 出願者の利便性に即した、当然、記録媒体もよりよいものが出てくるでしょうから、そういう点に配慮した取り組みということに配意していただきたいと思います。
 次に、異議申し立て制度の創設についてですけれども、その理由は何なのかについて御説明をいただけますか。

○羽藤政府参考人 今回の特許異議申し立て制度の導入についてでございますけれども、現行の特許法において措置をされております特許無効審判制度は、原則口頭審理とし、誰でもいつでも請求が可能な審判制度でございまして、この制度については引き続き重要な意義を持つというふうに考えておりますけれども、この特許無効審判制度に対しまして、まず一つには、特許権の無効を主張する請求者からは、請求料金や口頭審理の負担が大きいということ、また第二に、特許権を取得した権利者からは、権利を得たにもかかわらず、いつ誰から無効の主張を受けるかわからない期間が半永久的に続き、権利が極めて不安定であるということ、そして第三に、双方にとりまして特許権の成立後の紛争を早期に調整できる簡易かつ迅速な手続の導入が望ましい、こうした指摘が行われてまいりました。
 このため、制度利用者のニーズに対応しながら、特許権の早期の安定化を図るべく、今回の改正によって、簡易かつ迅速な特許異議の申し立て制度と、現行の厳正かつ丁寧に主張や立証を尽くす特許無効審判制度という二つの制度を並立させる、こういうふうに考えた次第でございます。

○塩川委員 現行の無効審判制度ですと、料金の負担が大きい、注文がつく期間もずっと長くなる、また簡易で迅速な制度の必要性ということ、いろいろ、知財部などについての負担の大きさの話なんかもあるということでお聞きしております。
 異議申し立て制度ですけれども、もともと異議申し立て制度があったというのは、きょうの審議の中でもありました。それを二〇〇三年のときに廃止したわけですけれども、二〇〇三年まで行われていた以前の異議申し立て制度と今回創設する異議申し立て制度というのは一体どこが違うのか。この点について御説明をいただけますか。

○羽藤政府参考人 お答えを申し上げます。
 今回お願いをしております特許異議の申し立て制度でございますけれども、二〇〇三年以前の制度と名前は一致をしておりますが、まず一つには、特許権者が異議申し立てに応じてみずからの特許権の権利範囲を訂正しようとする際に、請求者にも十分な意見提出の機会を与え審理を尽くすということで無用な特許無効審判の請求を抑制するということを考えております。第二に、全ての審理を書面による簡易な形式として、権利者にも請求者にも負担の大きい口頭審理は行わない、そういった改良を施しております。このことによって特許権の早期安定化を図りたいというふうに考えております。

○塩川委員 二点の理由についての御説明があったわけですけれども、二〇〇三年の特許法の改正のときに私どもは幾つかの理由で反対をしたわけですけれども、その一つがこの異議申し立て制度の廃止であったわけです。それは、広く国民が特許に異議申し立てを行う権利を狭め、費用の面からも制限することになる、これが二〇〇三年のときの制度改正に反対をした理由だったわけであります。
 そこでお尋ねしますが、無効審判の請求件数、それから旧特許異議申し立て件数、この推移について、二〇〇三年よりさかのぼって紹介をしていただけますか。

○羽藤政府参考人 二〇〇三年に廃止がなされました、前の特許異議申し立て請求件数についてのお尋ねでございますけれども、これは、おおむね年間三千件から六千件の間で請求件数が推移をいたしたという事実がございます。

○塩川委員 特許無効審判の数の推移はどうなっていますか。

○羽藤政府参考人 特許無効審判の請求件数についてでございますけれども、二〇〇三年に特許異議の申し立て制度の廃止がございました。この直前の二〇〇三年には二百五十四件でございましたけれども、廃止直後の二〇〇四年には一旦、三百五十八件という増加を見ました。その後は二百件から三百件の間で請求件数が推移をいたしております。

○塩川委員 資料を配付いたしました。
 これ自身が今お答えいただいた内容ですけれども、九七年から二〇〇三年まで、薄いグレーの方が旧特許異議申し立ての制度であり、下に小さくずっと続いている濃いグレーの方は特許無効審判の数であります。それ以前は特許異議申し立ての制度で三千から六千件ぐらいあったわけだけれども、この制度の廃止に伴って特許無効審判が一時的に、二〇〇三年の二百五十四件が二〇〇四年に三百五十八件、百件ほどふえたけれども、その後は落ちて二百件台でずっと続いているということであります。そういう点でいっても、特許に異議申し立てを行う、そういう国民の権利が結果として狭められたということを指摘せざるを得ません。
 次に、費用負担の面ですけれども、二〇〇三年以前の異議申し立て制度のころの負担と廃止後の無効審判制度における費用負担、今回新たに異議申し立て制度をつくるわけですけれども、その改正による負担というのは幾らぐらいを見込んでいるんでしょうか。

○羽藤政府参考人 お答えを申し上げます。
 特許異議申し立て制度が二〇〇三年に廃止をされましたけれども、それまでにこの制度において請求料金として設定されたものと今回想定をしておりますものでございますけれども、まず、特許異議の申し立て料金につきましては、約三万六千円という水準で今後運営をしていきたいというふうに考えています。
 この水準は、現行の特許無効審判の請求料金が約九万四千円、これはいずれも特許が登録される際の平均的な請求項数で試算をしたものでございますけれども、個別ケースによって額は変動いたしますが、こういった形で、当事者の負担を軽減するという視点から制度の運営をしてまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 新たにつくる異議申し立て制度については三万六千円ぐらいを考えているということですけれども、そもそも負担軽減になるという趣旨でおっしゃっておられたんですから、現行の無効審判でどのぐらいの経費がかかりますかというのをお聞きしましたし、さらにさかのぼって二〇〇三年まで続いていた異議申し立て制度についての費用負担というのはどのぐらいだったのかという質問なんですけれども、その部分、お答えいただけますか。

○羽藤政府参考人 現行の特許無効審判制度の請求料金が、先ほども申しましたように九万四千円ということでございまして、基本的には今後もこの水準を維持していくというふうに考えております。
 なお、かつて特許異議の申し立て制度のもとで料金の設定がございましたけれども、この点につきましては、先ほど申しましたように今三万六千円という水準まで若干下げましたけれども、八千七百円に請求項数を掛けて、個々のケースで異なりますけれども、大体四万円から五万円の水準であったということが、かつての異議申し立て制度での平均でございます。

○塩川委員 この辺は改めてまた確認したいと思いますけれども、今の説明のように、二〇〇三年以前の特許異議申し立て制度では五万円台だった。それが無効審判だと九万四千円。今後の特許異議申し立て制度については三万六千円。
 ですから、いわばもとに戻ったというか、そういう点でいうと、指摘をしたように、結局、特許異議申し立て制度を二〇〇三年に廃止したということが、費用負担の面からもユーザーに出費を強いるものとなって、結果として権利行使を制約するようなことになったことは否めなかった、それは我が党が指摘したとおりの事態であろうということを言わざるを得ません。
 大臣にお尋ねいたしますが、今回の改善点として先ほど説明のありました、異議申立人の意見表明の機会を新たに付与して当事者の不満をなくすとか、以前は口頭審理だったものを書面審理のみでオーケーとかというのは、二〇〇三年の廃止のときの議論でも課題になっていた話なんですよね。要するに、二〇〇三年まで続いた特許異議申し立て制度の不備として、不十分点として指摘をされていたものだったわけです。
 当時はそれを廃止の理由にしていたわけですよ、不備を。だとしたら、その二〇〇三年当時に、今回改善する、以前と違う新しい制度の特徴だと言っているものを措置していれば、このような権利を制約する事態は生じなかったんじゃないのか。こういうことについてはどのようにお考えでしょうか。

○茂木国務大臣 まず、費用面から申し上げますと、以前は、特許の異議の申し立て制度で、結局、申し立てた人間が意見提出できないということで、さらに特許無効審判制度に移行するとなりますと、それで十三万円、十四万円という費用になってしまうというのが、今回、意見提出の機会も含めまして三万六千円ということになるわけであります。
 これは、二〇〇三年当時、権利者、請求者双方から負担が大きいということで廃止をした制度であります。ただ、特許無効審判制度に一本化した上で、その後の経緯を見、そしてまた権利者、請求者双方の意見を聞いた上で、名称は一緒でありますが、運用を大幅に改善した今回の新たな特許異議申し立て制度を創設することにした次第であります。

○塩川委員 ですから、二〇〇三年当時にそういう改善を行っていれば、この権利者の不利益というのも解消する道があったんじゃないのかということを申し上げたわけですけれども、その点はどうですか。

○茂木国務大臣 当時は双方の負担が大きいということで廃止をいたしました。そして、今回、その後の経過を見ながら、双方からニーズが高いということで、制度に大きな改善を加えて新たに創設をすることになった次第であります。

○塩川委員 こういう異議申し立て制度がなくなったということが、特許の質の問題にも影響が出るんじゃないのかという指摘もあったわけです。
 今回の改正案に向けた議論を行った特許制度小委員会報告では、「異議申立制度に対するニーズを無効審判に吸収するという法改正時に期待された効果は十分に得られていない」、つまり、あのときの改正というのが期待された効果を発揮しなかった、不十分だったという指摘をしているわけです。「二〇〇三年当時、異議申立制度により年間二千件以上の特許権が取消し又は訂正の上で維持されていたことを考えると、現在も同様の割合で存在する可能性の高い瑕疵ある特許権が、現行制度下では、見直しの機会なくそのまま存在し続けている可能性があり、ユーザーからは特許の質に対する懸念が示されている。」と指摘をされているわけです。
 結果的に、異議申し立てを行う権利が狭められただけではなく、特許の質に対する懸念も生じているという点で、私は、あの二〇〇三年の廃止は不適切だった、本来はそういうことに対しての反省の言葉があっていいのではないのかということを一言申し述べて、質問を終わります。