国会質問

<第186通常国会 2014年04月22日 総務委員会 17号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 地方自治法改正案について、総理に質問をいたします。
 地方自治制度を考える上で、平成の大合併の総括が不可欠であります。本会議での私の質問に、総理は、平成の大合併について、市町村の規模が拡大したことにより、行財政基盤の強化が図られるという効果が認められる一方で、住民の声が届きにくくなったとの課題も指摘をされていると答弁をされました。
 そこで、総理にお尋ねしたいんですが、私は、あの平成の大合併というのは、結果として、住民の福祉の後退につながった、特に小規模団体の住民にとっては大変デメリットが大きかった、こういうものだったと考えますが、総理のお考えはいかがでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 この平成の大合併については、いわば、少子高齢化が進んでいる中において、我々、行政の規模、そして行政のコストを考えていく上において、合理化を図っていくことも住民の要望に応えていくことにつながっていく、こういう考え方もあるわけでございます。その中におきまして、平成の大合併を行っていく上において、いわば行政改革という視点も捉えながら、将来の住民負担を減らしていくという観点も持ちながら、他方、地域の皆さんにとっての住民サービスがなるべく低下をしないようにという観点もしっかりと据えつつ、この大合併を行ったわけでございます。
 この平成の大合併については、市町村の規模が拡大したことによって、行財政基盤の強化が図られたという効果はある一方で、住民の声が届きにくくなったという声がある、こう指摘があるということを我々も認識しているところでございます。
 今後、合併をした市町村が一体感を醸成するような努力を続け、名実ともに一つの自治体となっていくことによって、市町村合併の効果がさらにあらわれていくものと考えているところでございます。

○塩川委員 合併することで住民の要望にも応えることになる、一方でサービスがなるべく低下しないようにということですが、住民の声が届かないというデメリットもあるというお話がありましたが、全国町村会が、平成の合併をめぐる実態と評価という調査報告書を出しております。その中で、財政支出の削減の問題については、財政論としては確かに支出は減った側面があるが、これをメリットとしてそのまま捉えてよいのか甚だ疑問だとして、実際には、財政支出を節約しただけであって、地域の特性に合った行政を行うことで生じる効率性や従来のサービス水準などを犠牲にしながら財政支出を縮小しただけではないか、地域の特性に合った行政効率化や住民サービスを犠牲にした財政支出削減は合併のメリットとは言えないという声を紹介し、一方で、合併によるマイナス効果については、行政と住民相互の連帯の弱まり、財政計画との乖離、財政規律の低下、周辺部となった農村部の衰退、過大な面積を持つ市町の五点を指摘し、現場からは、議員や職員の削減で合理化は進んだが、行政に守られているという安心感が大きく後退をした、本庁舎がある地区から遠い周辺部が衰退をした、日常生活圏を超えた広域合併で、周辺部に行政の目が行き届かなくなったという声が上がっている。これが、全国町村会の調査報告の中身であり、まさに地方の、特に小規模団体の実態をあらわしているわけであります。
 そういったときに、さらなる市町村合併につながりかねない懸念が示されているのが、道州制の問題であります。
 この点で、全国町村会は、「繰り返し道州制が、新たな集権体制を生み出し、大都市圏への集中を招き、地域間格差は一層拡大し、市町村合併が事実上強制されることなど問題点が少なくないことを指摘し、懸念を表明してきた」、こういう意見表明も行っているわけであります。
 総理にお尋ねしますが、全国町村会は、この道州制推進基本法案の国会提出と道州制の導入に断固反対という意見を述べておりますが、こういう意見こそ受けとめるべきではありませんか。

○安倍内閣総理大臣 道州制の導入は、国のあり方を根底から見直す大きな改革でありまして、その検討に当たっては、当事者である地方団体の声も聞きながら、国民的な議論を深めていく必要があると考えております。
 現在、与党において、道州制に関する基本法案について、基礎自治体のあり方も含め、地方団体とも丁寧に意見交換を重ねるなど、精力的な議論を行っているわけであります。
 こうした議論の中におきまして、さらに合併が強引に進められていくのではないかという議論があるわけでございますが、我が党の中におきまして議論しておりますのは、そういうことではなくて、国の権限、どういう権限を国は持つべきか、あるいは身近な行政とは何なのかという基本的な議論を深めながら、国がやるべきことを国がやっていき、そして道州という存在、さらには基礎自治体、こういう中においてそれぞれ適切な権限と責任と役割を持っていくべきではないかという議論がなされているところではないか、このように思います。

○塩川委員 自民党の道州制推進基本法案の骨子案というのが示されているということですが、その中で、道州と基礎自治体の二層制ということがあって、基礎自治体についての理念などの定めが入っております。そこでは、基礎自治体は、都道府県及び市町村の権限をおおむねあわせ持ち、住民に直接かかわる事務についてみずから考え、かつ、みずから実践することができる主体とすることとあります。
 そうなりますと、都道府県の権限も受けとめることができるような市町村を想定しているということで、これでは、小規模団体ではそもそも無理じゃないのか、道州制というのがさらなる市町村合併を推進するものとならざるを得ないのではないのか、こういう声が上がるのは当然ではないでしょうか。こういう声にはどうお答えになりますか。

○安倍内閣総理大臣 まさに今議論を進めているところでありますし、そもそも、この我々の法案を通した中におきまして、この国民会議の中において、今委員が御指摘になったような点も含めて、さまざまな課題について議論が深められていくのではないか、このように考えております。

○塩川委員 まさにその点が問われているわけで、国民の議論という点でも、まさに全国町村会のような全国の小規模団体の中で、合併しないでも大いに頑張っているという団体が多数あるわけであります。そういった団体が、こういう道州制で、上からやるような改革によって、結果として市町村の独立性が損なわれるような、結果として住民自治が損なわれ、住民福祉の後退になりかねない事態が懸念されるという声こそ、しっかりと耳を傾けるべきであります。
 改めて、こういう道州制の導入そのものはやめるべきじゃないのか。この間、自民党が選挙政策で掲げている、こういう公約だからこそ、現場から厳しい危惧の声、懸念の声が上がっているわけですから。
 道州制の導入は、市町村合併にもつながり、住民自治の後退にもつながりかねない、こういう点に応えて、道州制の導入をやめる、このことこそ応えるべきではないのか、改めてお答えいただきたいと思います。

○安倍内閣総理大臣 道州制につきましては、我が党におきまして、これはJ―ファイルにおいてお示しをしていることというふうに承知をしておりますが、我々、先ほど申し上げましたように、まさに国の、あるいは地方の行政のあり方を定める大改革でございますから、しっかりと議論を行っていく考えでありまして、政府としても、与党と連携をしながら、また、地方自治体の声にもしっかりと耳を傾けながら議論を深めていきたい、こう思っているところでございます。
 いずれにいたしましても、道州制を進めていく中において、地域の希望に反して、上から強制的に合併を行っていくという考えは毛頭ないということは申し上げておきたい、このように思います。

○塩川委員 結果として、権限移譲によってその受け皿づくりというのが強要されてきたというのがこの間のやり方であるわけで、こういったやり方そのものが大問題だ。道州制というのが、結果として、国家制度の大改変と同時に、地方分権などではなくて地方自治の変質につながる、そういう大問題だということを指摘し、この撤回を強く求めて、質問を終わります。