国会質問

<第186通常国会 2014年04月23日 経済産業委員会 12号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 廃炉経費を誰が負担するのかということが問われております。
 昨年十月に、電気事業会計規則の改正が行われました。原発の廃止措置の制度を二つの点において変更するもので、一つが発電所設備の減価償却、もう一つが解体引当金に関する見直しであります。
 きょう取り上げるのは発電所設備の減価償却に関してのところですが、廃止措置中も電気事業の一環として事業の用に供される設備について、運転終了後も原子力発電設備に含まれる旨を電気事業会計規則に明確に規定するとあります。
 そこで、経産省にお尋ねします。
 この改正において、廃止措置中も電気事業の一環として事業の用に供される設備というのはどういうものなのか、原子炉の廃止に必要な固定資産とは何なのか、原子炉の運転を廃止した後も維持管理することが必要な固定資産を含むというのは何を指すのか。この点について御説明をいただけますか。

○上田政府参考人 昨年十月一日に、電気事業会計規則を改正いたしました。その中で、電気事業固定資産として二つのものが含まれることになったわけでございます。一つは、委員御指摘のとおり、原子炉の廃止に必要な固定資産、もう一つは、原子炉の運転を廃止した後も維持管理することが必要な固定資産でございます。
 最初の、原子炉の廃止に必要な固定資産でございますが、これにつきましては、例えば、燃料取り出しのためのクレーン、あるいは解体時に使用する工具等々が含まれるわけでございます。
 それから、原子炉の運転を廃止した後も維持管理することが必要な固定資産ということにつきましては、平成十九年五月の総合エネルギー調査会電気事業分科会原子力発電投資環境整備小委員会におきましてその一覧というものが示されておりますが、具体的には、例えば、使用済み燃料プールの水温維持等を行う冷却設備や、使用済み燃料プールへの給水設備、あるいは各設備機器に要求される機能を維持するための変圧器等の電源設備、あるいは原子炉格納容器、原子炉容器、蒸気発生器等の放射性物質の外部への漏えいを防止するための障壁の機能を有する設備等々のものがこれに該当すると考えております。

○塩川委員 次に、この廃止措置においては、事故を起こした原子炉も対象としているのか。その点で、事故炉の廃止措置に向けて新たに取得する設備というのは具体的にはどういうものを考えているのか。御説明いただけますか。

○上田政府参考人 お答え申し上げます。
 今の御指摘は、事故を起こした原子炉というものも廃止措置に含まれるのか、新たに取得する設備はどんなものかという御質問でございました。
 先ほど申し上げましたように、原子炉の廃止に必要な固定資産、それから原子炉の運転を廃止した後も維持管理することが必要な固定資産として、減価償却費を料金原価に含み得るということとした設備でございますが、これには、通常に運転を廃止した原子炉に係る設備のみならず、事故炉に係る設備も対象に含まれると考えております。
 平成二十五年九月に取りまとめました廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループの報告書におきましては、今回の見直しにより、例えば東京電力の場合、制度改正前までの引き当てにおいて見積もられた設備のほかに事故炉の廃止措置に向けて新たに設備の取得が必要となる場合には、この減価償却費が追加的に原価算入され得るということでございます。
 事故炉の廃止措置に向けて新たに取得する設備の具体例ということでございますが、これは、現状、東京電力のこの事故の話がございます。
 御案内のとおり、東京電力は、福島第一原発の一号機から四号機までの廃止措置の費用といたしまして、昨年十月までに合理的な見積もりが可能であった範囲内で、これまで九千六百八十九億円を費用計上しているわけでございますが、これは既にもう引き当てているわけでございまして、これらの引当金を取り崩して設備を取得したとしても、これらは料金原価ということにはならないわけでございます。
 事故炉の廃止措置に向けて新たに今後取得する設備ということでございますが、今申し上げました、費用計上いたしております九千六百八十九億円以外の設備というものでありまして、例えば、今後増設される予定になっております多核種除去設備、ALPSといったものや、あるいはフランジ式のタンクであって、今の九千六百八十九億円に入っていなかった部分等々が想定される、こういうことでございます。

○塩川委員 通常の廃炉だけではなくて事故炉も対象になるということと、あわせて、特損で処理しました九千六百八十九億円を超えて費用が出た場合についても、ALPSの増設や、あるいはフランジ式のタンクの増設などがこの九千六百八十九億円を超えて費用として出た場合には対象となり得るという話であります。
 要は、この会計規則の変更を議論しました廃炉会計制度検証ワーキンググループでは、事故を起こした原子炉かどうかにかかわらず、原子力を利用して電気の供給を行うに当たっては、運転終了後も長期にわたる廃止措置が着実に行われることが大前提と、通常廃炉と事故炉を区別せず議論がなされているわけであります。
 もう一つお尋ねします。こんなことがあってはなりませんけれども、今後、原発事故が発生するようなことがあったら、その事故炉の廃炉の費用というのも対象になるという考えでしょうか。

○上田政府参考人 委員御指摘のとおり、また先ほども申し上げましたけれども、事故炉につきましては、廃炉に関する会計制度検証ワーキンググループの検討の結果も踏まえまして、まず第一に、運転終了後も長期にわたる廃止措置が着実に行われるということが電気の供給を行うための大前提であるといったこと、それから二番目に、廃止措置中も電気事業の一環として事業の用に供される設備につきましてはそういうふうな形で使用している実態があるということから、運転終了となる原因いかんにかかわらず、廃止措置に向けて新たに設備の取得が必要となる場合には、その設備の減価償却費というものを料金原価に含め得るということにしたものでございます。

○塩川委員 今後事故が起こるようなことがあった場合でもそれは対象となり得るという話で、これはやはり、電気料金のそもそもの原則を考えたときに、こういうことでいいのかということが問われてまいります。
 電気料金は原価主義の原則、公正報酬の原則、公平の原則をもって定められるというのが電気事業法の規定でありまして、電気料金は能率的な経営のもとにおける適正な原価でなければならない、このことが電気事業法の十九条二項一号で定められております。
 今回の会計規則の改正に当たって、この十九条二項一号に基づいてどんな議論が行われたんですか。

○上田政府参考人 お答え申し上げます。
 廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループの議論というものの中で、具体的には、事故炉の廃止措置に向けて新たに取得する設備の減価償却費計上ということにつきまして、仮に今後、原子炉設置者である電力会社が事故を起こしたとしても、廃止措置に係る費用については料金で回収することが可能となることによってモラルハザードが引き起こされることがあってはならないといったような御指摘がございました。
 他方で、廃炉が確実に行われると安心して見ていられるからこそ発電が行えるのであって、発電と廃炉を一体の事業と見るべきであるといったような議論もございました。
 こうした議論を踏まえまして、御案内のとおり、最終的な報告書では、運転終了となる原因のいかんにかかわらず発電、廃炉は一体の事業と見ることができるとされたわけでございまして、したがいまして、事故炉であったとしても、廃炉に向けて活用される設備につきましては、その減価償却費を料金原価に含め得るということとしたわけでございます。

○塩川委員 いや、電気事業法の十九条二項一号に即した議論が行われたのか、あったのか、なかったのか、その確認なんですけれども。

○上田政府参考人 これは議事録が公開されておるわけでございますけれども、その議事録によると、十九条の一条が云々ということよりも、今申し上げましたような、事故炉の話につきまして、事故を起こしても最終的に事業者は料金で助けてもらえる印象につながるようであれば嫌だなと思っておりまして、そういうふうな印象にならないようにしてほしい等々の議論があったと承知しております。

○塩川委員 十九条二項一号に即した議論というのはないんですよ。議論が行われておりません。
 大臣にお尋ねします。
 能率的な経営のもとにおける適正な原価ということが、電気事業法で定める電気料金の定め方の基本の一つであるわけです。そういったときに、事故を起こすような経営そのものが能率的な経営なのか、このことが問われていると思うんですが、その点ではいかがですか。

○茂木国務大臣 能率と事故に直接相当因果関係があるということはどう考えてもあり得ない、常識的に考えて私はそうであると思っております。では、能率だけを追求すれば事故の発生確率が減っていくか。全く逆の方向に行くんじゃないかな、私はこんなふうに考えております。
 その上で申し上げますと、事故炉の運転終了の原因にかかわらず、先ほど来政府参考人から答弁させていただきますように、廃炉に向けて活用される新たな設備の費用も見るということでありますけれども、これは、電気料金の改定を行わない限り料金原価に算入することはできないわけであります。
 その際、電気料金は、電気事業法十九条二項一号に沿いまして、能率的な経営のもとにおける適正な原価に適正な利潤を加えたものであることが認可基準として規定されているために、仮に電気料金の値上げ申請があった場合には、事故炉の廃炉に係る費用についても、能率的な経営のもとにおける適正な原価として認められるかどうか、厳正な審査を行うことは当然のことであります。

○塩川委員 厳正な審査を行う前提の規則が改正されているわけで、そこのところが問われているわけです。通常の廃炉と事故炉の廃炉というのを同列に扱っていいのかということが問われているわけです。
 その点につきますと、十九条二項一号に基づく議論というのは、その前の年に、平成二十四年七月の東電の供給約款変更認可申請に係る査定方針においては、その過程の中での議論が行われているわけですね。この査定方針においては、事故直後に特別損失として認識し処理した費用については、このときは約九千億円ですけれども、料金原価に含まれることはない、また、これ以外に新たに必要となる経費のうち、資本的支出、設備投資が生じた場合、原価にも算入されないと。こういう考え方に立って、原価から除外すべき、こういうことが査定方針の中で明らかにされたわけであります。それは、議論の中で、十九条二項一号に即した議論が行われていたからであります。
 二〇一二年五月二十九日の第三回総合資源エネルギー調査会総合部会の電気料金審査専門委員会におきましては、公認会計士の永田委員が、費用の原価性を認めるに当たっては、これは電気事業法十九条二項一号に書かれている料金が能率的な経営のもとにおける適正な原価であるかどうか、なおかつ、国民が認めるかどうかというのが重要なポイントだ、特損処理した九千一億円についてはまさしく非効率的な状況、経営環境の中で起こっており、非効率的な経営状況のコストであるので、当然として、これは原価算入は認められないと。
 こういう議論のもとで、原価算入を認める費用はプラントの安定状態維持継続に係る経常費用に厳に限ると、設備投資分を電気料金に上乗せすることを認めていなかったわけで、こここそやはり議論の土台であるわけで、それをこの問題についての議論もなしにひっくり返すということ自身の方が大問題じゃないですか。
 私は、そもそも、事故炉の廃炉経費を料金原価に含めるというのがこの電気事業法の十九条二項一号の規定を超えているんじゃないのか、そういうふうに率直に思いますが、大臣、いかがですか。

○茂木国務大臣 御指摘の九千六百八十九億円は既に計上済みでありまして、この範囲で支出される費用につきましては、現在の東京電力の料金原価に含まれておりません。
 また、今後新たに発生する設備費用についても、先ほども答弁申し上げましたように、電気料金の改定によらなければ料金原価に反映させられないわけでありまして、そこのところは厳正な審査を電気事業法に基づいて行っていくということであります。
 恐らく、認識が違うのは、能率的な経営を行う、これは、できる限り電気料金を抑えるという観点から行うわけでありまして、先生がおっしゃるように、能率的な経営をすれば事故が防げるという問題では全くない。では、能率だけを追求していったときに原発の安全性が保てるか、私は違うと思います。

○塩川委員 電気料金に転嫁するという問題だから大問題なんですよ。事故を起こした東電の責任、負担、これを曖昧にした形で電気料金に上乗せをするような中身になっているということが問われているわけで、そのときに、事故を起こすような経営そのものが問われているわけです。
 だからこそ、ここにも挙げてあるような、平成二十四年七月の査定方針における、その前の過程の議論の中で、封じ込めのランニングコストそのものを電気料金に転嫁するかどうか、これ自身も議論が必要だと思いますけれども、さらなる設備投資をするものについては切り分けて、電気料金の原価には認めないという整理を行った議論の中にこの能率の原則を取り上げて議論を行っているわけですから、それをひっくり返すようなことについて何の議論もなしに改定を行うということが、そもそも、規則でやるような、省令でやるような話じゃないんじゃないのかということが問われているんじゃありませんか。

○茂木国務大臣 安全性を重視した経営を行ってもらわなきゃなりません。それが事故を起こさないことにつながっていく、重層的な対策をとらなければいけない。一方で、能率的な経営を行う、これによりまして国民負担をできる限り抑え、料金原価も抑える。両方のことをやらなければいけないと思っておりますが、能率的な経営イコール安全性の向上につながるものではない。何度も申し上げているとおりです。

○塩川委員 では、もう一度聞きますけれども、査定方針のときに、設備投資分を電気料金に上乗せしないということを整理した、その議論の中にこの十九条二項一号があったわけですけれども、それをひっくり返すような議論が行われたんですか。

○上田政府参考人 前回の東京電力の値上げの際に、平成二十四年七月におきまして私どもの方から、東京電力株式会社の供給約款変更認可申請に係る査定方針、委員御指摘のものをお示しさせていただいたわけでございますが、その後、一つは、平成二十四年九月に施行されました新たな改正炉規制法というものがございまして、これによりまして、災害の発生した原子力施設は当該施設の状況に応じた適切な方法により管理を行う等々、いわゆるバックフィットも含む新しい規制というのが施行されたわけでございます。
 そういった状況も踏まえまして、去年の六月でございますけれども、こういったバックフィットの規制の導入を初めとする新たな規制の展開、それから、運転終了後も一定期間にわたって放射性物質の安全管理が必要という廃炉の実態、こういうものを踏まえまして、廃炉に関する現行の会計制度というものについて再度検証するということで、先ほど申し上げました廃炉会計に関するワーキンググループというものを設けて検討し、今のような結論に至ったということでございます。

○塩川委員 通常の廃炉経費の費用負担について、解体引当金の見直しですとか、あるいは廃炉経費についての減価償却に関しての、通常の廃炉についての手続の見直しというのはあるでしょう。
 しかし、事故炉というのを同列で扱うということ自身が、この東電と、ひいてはさらに政府、経済産業省の責任が問われる問題でもありますし、費用負担の問題を棚上げして、電気料金という形で利用者、国民に負担を転嫁するというやり方というのは認められないということを申し上げなければいけないし、こういったことを省令改正で、役所の中で決めて、さあ行きましょう、こういう決め方自身も大問題だ、国民の理解は得られないということを強く申し上げて、質問を終わります。
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