国会質問

<第186通常国会 2014年04月24日 総務委員会 18号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、参考人お三方の皆さん、大変お忙しい中お越しいただき、ありがとうございます。
 最初に、西尾参考人にお尋ねをいたします。
 冒頭のお話にもありましたように、地方分権改革やあるいは地制調の中心的なメンバーとして活躍をされてこられました。そのお立場で何点かお尋ねをしたいんです。
 一つは、今回の法改正案でも措置されようとしております新たな広域連携の仕組みのところです。
 これは、人口減少、少子高齢化社会における今後の基礎自治体の行政サービス提供体制、これの検討を具体化する中で出されてきているものでありますけれども、この連携協約制度やまた事務の代替執行制度、こういった新たな広域連携の仕組みというのは、この間行われてまいりました事務、権限の移譲があります、こういった事務、権限の移譲について、これをしっかりと受けとめる上での有効な手段の一つとして機能する、そういうものになり得る、このように受けとめておられるのか、この点についてまずお聞かせいただけないでしょうか。

○西尾参考人 市町村合併を議論するときには分権の受け皿という議論がありましたけれども、広域連携を考えるに当たっては、さらなる事務、権限の受け皿としてそれを使うという発想ではありませんでした。最低、市町村が持たされている、義務づけられている仕事をこなしていくこと自身が容易なことではなくなるのではないか、むしろ、そちらの方の発想から出ている新しい連携の仕組みでございます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 そこで、市町村合併のお話が今出ました。平成の大合併、市町村合併についてのメリット、デメリットの議論があります。私は、この点については、やはり制度的な問題で、市町村の合併、現場でさまざまな問題が生じている、このように受けとめておりますけれども、西尾参考人として、この平成の大合併についての評価についてお聞かせいただけないでしょうか。

○西尾参考人 平成の市町村合併に最初のゴーサインを出しましたのは、地方分権推進委員会の第二次勧告であります。政府は合併の促進に向けて積極的な方策を講ずるべきであるという勧告を第二次勧告の中に書きましたので、それを受けて、当時の地方制度調査会が具体的な推進方策を議論し、地方自治法の改正とか市町村合併特例法の改正というようなことが行われ、あの合併促進運動に至ったわけです。
 私は、その最初のゴーサインを出した委員会の委員の一名でありましたから、この問題については非常に責任を感じております。
 その後、地方分権推進委員会が終わってから、今度は地方制度調査会の委員として、これをどういうふうに収束するかという議論がまた起こりました。ここでも、どこで幕引きを図るべきかということに非常に苦労したというふうに思っております。
 責任は感じておりますので、どこかで幕を引かなければならないと思っておりました。十年くらいかかったわけですけれども、これは、明治の市町村合併や昭和の市町村合併よりも長期間かけております。これ以上頑張っても、そうはもう進まないのではないかということで、幕引きすべきだということを私は主張したりいたしました。
 この評価ですけれども、これは両面あると思います。率直なところ、合併による行財政の効率化といったような効果がはっきりと出てくるのにはかなりの年数が必要であります。したがって、今の時点で歴然たる効果が出ているというふうにはなかなか言えないと思います。
 その一方で、私が今まで理事長をしておりました後藤・安田記念東京都市研究所も、この平成の市町村合併の総合的研究というのをやりまして、うちの若い研究員たちが出した結論は、案外、合併をせずに孤立を選んだ市町村の方が、合併した市町村よりも財政効率化がむしろ進んでいるのではないかという結果が出ておりますが、合併せずに頑張るというのは相当な自己努力をしなければならないんですね。その自己努力をした市町村はもっと効率化が進んでいるというのは、今の時点での評価ではないかという感じがいたします。
 ですけれども、これから効果がどれだけ出てくるかという問題は、もうちょっと年数が要るんじゃないかと思います。

○塩川委員 ありがとうございます。
 関連してですけれども、都道府県の果たす役割の問題との関係で、事務、権限の移譲の問題です。
 この間、一括法でのさまざまな事務、権限の移譲もありましたし、今回の自治法におきましても、国から都道府県への権限移譲、さらに都道府県から市町村への権限移譲の問題も含まれておるわけですが、都道府県から市への移譲につながるような新中核市の創設などもあるわけです。
 一方で、現場のいろいろな話を聞きますと、例えば、社会福祉法人についての監督の事務などを一般市におろすといった際に、小規模な団体では、一方で社会福祉法人への支援や指導を行い、他方で監督を行う、これはなかなか大変だ、現場でそういった業務の切り分けも難しい、かえって、そういった一つのところで指導と監督が一緒になると、あってはなりませんけれども事業者との癒着にもなるんじゃないのかという懸念なども生まれてまいります。
 また、特例市をなくして新中核市にという方向というのは、保健所を権限移譲するということにもつながるわけですが、それはやはりちょっと受けられないという特例市の方などもたくさんいらっしゃるということを見たときに、私は、そういう意味では、事務の中では、権限の中では、広域の自治体としての都道府県が担うべき仕事というのはあるんじゃないのか。
 高度な専門性を発揮するような事務ですとか、あるいは広く薄くあるような業務であって、都道府県がやった方が効率的に行えるような事務というのもあるんじゃないのかとか、また、先ほども言ったように、事業者との関係で、支援や推進、一方で監督をしなくちゃいけない、こういう分離を図る上で、例えば監督権限、規制権限などを一方の広域自治体が持つ、こういうことも当然あり得るんじゃないのか。
 ですから、そういう点でも、一律の権限移譲ではなくて、こういう広域自治体が積極的に果たす役割があるのではないのか、都道府県の果たすべき役割があるのではないのかと思うんですが、この点についての西尾参考人のお考えをお聞かせください。

○西尾参考人 お答えいたします。
 一般論として、都道府県が果たすべき役割というのは非常に大きくあるわけです、依然としてあるわけです。それは当然のことでありますけれども、この間、ここ十数年といいますか、二十年ぐらいですか、徐々に徐々に変わってきた大きなことは、市区町村に幾つもの段階が出てきたということなんだと思います。
 それ以前は、基礎的自治体である市町村というのは、基本的に同一に扱うという考えで制度はできていたと思います。市と町村との間の事務の分担の違いというのはごくわずかでありました。市になったならば福祉事務所を持つ、しかし、町村は持たずに都道府県にやってもらうということですし、原則として都市計画権限は、市になれば持ちますが、町村の方は持たないという違いぐらいしかなかったわけですね。それ以外は、ほとんど市と町村で所掌事務の範囲に違いはありませんでした。政令指定都市と都制度というのが唯一の例外であったわけです。あと、一般的な市町村は大差がないものとして存在していたわけです。
 ところが、その後、分権を進めていくという観点で中核市が生まれました。それからさらに特例市が生まれました。そして、その要件が徐々に徐々に緩和されていって、変わってきまして、現在では、政令市は、最初は六大市の問題だったんですけれども、これが二十に達しているというような大きな変化が起こりまして、基礎的自治体である市区町村に、政令市はこう、中核市はこう、二十三特別区はこう、一般の市はこう、そして町村というふうに差が出てきたわけです。
 最近の都道府県から市町村への権限移譲の場合には、政令市にはおろす、中核市にまでおろすというのと、市におろすというのと、市町村全部におろす、いろいろ段階分けがなされていまして、市の持つ範囲と町村の持つ範囲にだんだん差が出てきています。これは近年の大きな変化なんだと思います。
 しかし、それがどういう分類が一番適切かというのは、まさにそれにふさわしい能力を持っているかどうかという判断だと思います。

○塩川委員 そういう中でも都道府県の果たす役割というのは当然出てくるだろうと思っております。
 お三方に、道州制に関連してお尋ねいたします。
 これは今、政府としても、道州制担当大臣を置き、道州制推進に取り組んでいる、自民党においてその作業を行っているという形になっておりますけれども、道州制の推進について、全国町村会は断固反対という立場であります。全国町村会は、道州制が、新たな集権体制を生み出し、大都市圏への集中を招き、地域間格差は一層拡大し、市町村合併が事実上強制されることなど問題点が少なくないことを指摘し、懸念を表明してきたと述べて、この道州制の導入に断固反対としております。
 道州制に対する全国町村会の立場、見解についてどのように受けとめておられるのか、三人の参考人の方からお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○西尾参考人 私は、先ほども言いましたように、平成の市町村合併に深くかかわらざるを得なかった人間です。したがって、それをずるずると引きずらないで幕引きをするということを一生懸命主張した人間でございますので、今は、ようやくこの合併騒動から市町村が解放され、何とかしてこの体制をきちんとしたものに築こうということで一生懸命になっている時期だと思います。そのときに、その基盤を揺るがされるおそれを町村関係者は感じていらっしゃるんじゃないでしょうか。そう思います。

○上田参考人 地方六団体の枠組みの中で、私、たまたま道州制に関する知事会での取りまとめの責任者になっております。知事会的には、よい道州制は賛成、悪い道州制は反対、こんなふうになっております。
 町村会の考え方、私どもは、よい道州制になったときには町村会に対して説得をお願いするような形になっていく、そういう立場だと思っております。

○橋下参考人 僕は、地方交付税制度がある限りは道州制は進まないと思います。
 といいますのは、それだけの努力、それだけの改革というものをやらなくても、役所組織というものは黙っていてもお金が入る組織ですから。民間であれば、お金が入ってこないとなれば、徹底した組織改革をやる、少々負担や犠牲が生じても、何とか生き残るために必死になって改革をやるということになるんでしょうけれども、地方交付税制度があり、市町村も、道州制までやらなくても、今のような意見を出して道州制に反対していても、何とかお金が入ってくるので何とかなる、そういう状況なんじゃないでしょうか。
 やはり僕は、今の国の財政構造を考えても、まだまだ地方の予算、これは大阪市も含めてですけれども、無駄が多過ぎます。これは委員とちょっと考え方が違うのかもわかりませんが、職員の人件費も高過ぎますよ。特に現業職ですよ。地方の現業職。
 行政職がやっているラスパイ比較で、僕はあのラスパイ比較もあんなのはまやかしだと思っていますけれども、あれは現状の組織を是とした形で民間組織に組みかえた場合にどうなるのかという、あんなのはまやかしで、今の地方行政組織、それがそもそも組織のあり方として間違っていますから、そこから是正しなきゃいけない。
 特に現業職については、これは国会議員の皆さんが恐らくルール化していないところが問題だと思うんですが、官民給与比較のメカニズムがありません。これは、大阪市で初めて今度、現業職、官民給与比較をやって、余りにも高過ぎる状況が明らかになって、今何とか下げようと思っていますけれども。
 こういう地方の改革というものを促すためにも、早く地方交付税制度みたいな甘えを断って、道州制を成立させて自立をさせる。そこには少々の負担とか犠牲もあるかもわからないけれども、国民がそれぞれ犠牲を少しずつ受けて、それでも国を立て直すというような、全国民のそういう意識改革がなければ国の財政構造は変わらないと思っていますので、早く道州制を成立させて、責任を負わせて、自立をさせて、少々の痛みや負担も国民に理解を求める、そういう取り組みが必要なんだと僕は思っています。

○塩川委員 国による地方の人件費削減の方針というのは大きな地方のゆがみにもなっておりますし、たくさんの非正規の自治体職員がいるという事態も、放置をするということでは自治体サービスが提供できないということを申し上げ、ちょうど時間となりましたので、終わります。