○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
行審法等関連法案について質問をいたします。
そもそも、不服申し立てについては多元であり、また審理についても多段階というのが行審法にもあり、また個別法の中にもそういう規定が設けられているものもあるわけであります。その点で、最初にお聞きしたいのは、そもそも、不服申し立てが多元で行われており、また審理が多段階だった、こういう理由というのは何だったのか。この点について、まずお答えいただけますか。
○上村政府参考人 お答えいたします。
典型的には、現在の法律の異議申し立てと審査請求の二段階ということになると思いますが、これは、一つには、例えば課税処分のような大量、集中的に行われる処分でありまして、当該処分に対する不服申し立てが概して要件事実の認否にかかわるような、こうしたものは、審査請求手続というのをとる前に、処分の内容、それから経緯等をよく把握している、処分を担当した部局といいますか処分庁ですね、それが処分を見直すことに意味がある。そういうことを踏まえて、こういう制度、二段階制になっていたものだというふうに考えられております。
○塩川委員 行政の側の都合だけではなくて、不服を申し立てる側の都合というのもあるということもこの経緯としてはあるんだろうと思います。
その上で、今回、法改正におきまして、不服申し立ての種類の一元化ということで、審査請求に一元化をし、異議申し立てを廃止するという措置をとるわけですけれども、その理由は何なんでしょうか。
○上村政府参考人 二段階制はそういう意味があるわけでございますが、一方で、現行の異議申し立てというのは、手続保障の面になるわけですが、一方当事者である処分庁が審理を行う、こういう仕組みであるわけでございます。その関係から、ちょっと専門的になりますが、弁明書というものを処分庁から出させる、それに対して申立人が反論書を提出する、そういう規定が今ございません。それから、証拠書類の閲覧というのも規定されてございません。そういういろいろな点で、審査請求に比べますと、公正な審理手続の保障という意味で不十分な面がございます。
そうした御批判もかねてあるところでございますので、今般の見直しにおきましては、こうした現行の異議申し立てにつきましても、処分庁ではなくて、原則、一番上、最上級の行政庁への審査請求に変更する、そして手続保障のレベルをそろえる、これが一番のポイントでございます。
ただし、この審議でも何回か出てまいりましたが、再調査の請求と言葉をかえまして、一部、大量に事実関係の誤り等を正させるような、こうした簡易なものにつきましては、従来の異議申し立てにかわるものといたしまして、申立人の選択で処分庁に申し立てることができるものも残しているということでございます。
○塩川委員 不服申し立ての種類が異議申し立てしかないような場合については、今のような一元化の理由というのもあるのかなとは思いますけれども、しかし、複数あるような場合はどうなのかという点です。
そういう点で、再調査請求、この後でお尋ねしますけれども、異議申し立てを廃止するというものについてお聞きしますが、異議申し立てと審査請求という複数の種類の不服申し立てがある法律で、異議申し立てを廃止して審査請求だけにしようという法律というのは、今回の法改正ではどういうものがあるんでしょうか。
○上村政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの、審査請求に先立って異議申し立てがあるもの、それで廃止するものとしましては四法律ございます。具体的には、道路運送車両法、小売商業調整特別措置法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律、それから石綿による健康被害の救済に関する法律、この四法律が、今回の整備法の中で整理をされているということでございます。
○塩川委員 恩給法についてはどういう位置づけなんでしょうか。
○上村政府参考人 お答えいたします。
恩給法、まさに御指摘のとおり、これは二段階になっているわけでございますが、実はこれは今般の行政不服審査法の施行に伴う整備法ではなくて、先ごろ成立いたしました国家公務員法の一部改正法によりまして、異議申し立てというのが、先立って廃止をされております。
そういう意味では、より正確には、委員のお尋ねにお答えするならば、整備法の四法律、それから国家公務員法改正に伴う一法律、計五法律が異議申し立てがなくなったということになると思います。
○塩川委員 先立つ改正国公法の中で恩給法が措置をされて、合わせて五本ということであります。
その中で、道路運送車両法と小売商業調整特別措置法については、現行の異議申し立て先はどこになっているんでしょうか。
○上村政府参考人 基本的に処分庁でございますので、ちょっと正確な名称は今あれでございますが、道路運送車両法の場合は国土交通省のブロック機関等の地方運輸局ではないかと思います。小売商業調整特別措置法につきましても、地方経済産業局ではないかと思います。
○塩川委員 これは事前にお願いしていたんですけれども、私が承知しているのは、道路運送車両法におきましては地方運輸局長、さらにそれが委任という形で運輸監理部長や運輸支局長になり、商調法においては都道府県知事となっていると思いますが、それでよろしいでしょうか。
○上村政府参考人 都道府県知事で間違いございません。(塩川委員「商調法はね」と呼ぶ)はい、小売商業調整法の方は都道府県知事で間違いございません。それから、道路運送車両法の方は運輸局長ということで間違いございません。
○塩川委員 そうなりますと、道路運送車両法では地方運輸局長、ブロック単位ですし、さらに支局長単位ですと都道府県単位ぐらいに置かれているわけです。また、小売商業調整特別措置法の場合では都道府県知事ですから、いずれの場合でも、現行での異議申し立て先というのは都道府県単位にはあるというものが、これが審査請求に一元化ということになりますと、東京まで出てこなくちゃいけないという話になるわけです。
大臣にお尋ねしますけれども、複数の種類の不服申し立てを持つ場合に、審査請求への一元化で異議申し立てを廃止するような場合は、都道府県単位であったような異議申し立てができる不服申し立て先というのがなくなって、もちろん審査請求の内容については充実する方向ということはあるのかもしれないけれども、東京で処理しなければならないというのは、これは国民の権利救済という立場から立つと改善と言えるのかということを率直に思うんです。かえってそういう申し立て先が近くになくなってしまうということは後退になりはしないのかという懸念を持つわけですが、この点についていかがでしょうか。
○新藤国務大臣 まず、今回の見直しにおきまして、最上級行政庁の審査請求を行うということ、それは高いレベルの手続保障を受けることができるということだと思います。
また、現行法の異議申し立てが、一方当事者である処分庁が審理を行うことから、弁明書や反論書の提出、証拠書類等の閲覧が規定されていないなど、審査請求に比べますと公正な審理手続の保障が不十分な面がある。こういうことですから、それを審査請求に一本化したわけでありまして、結果、審理期間の長期化を防ぐことにもつながっていくのではないかと思っております。
ですから、あくまで権利行使の向上といいますか、レベルを保障しつつ長期化を防ぐ、こういう観点から、我々はこのようなことを考えているわけであります。
○塩川委員 現行で、異議申し立てがあって、審査請求がある。異議申し立てについては都道府県とか地方に申し立て先があって、一方で審査請求は東京の方にあるという整理だとする場合に、基本は自由選択ということを条件とすれば、私は、異議申し立てを残しても、これはメリット、つまり、国民の立場からいえば権利救済のメリットになると思うんですけれども、それを今回、一元化ということで異議申し立ての方をなくしてしまうというのは、権利救済では後退じゃないか、その点についてお尋ねしているんですが、いかがですか。
○新藤国務大臣 まず、場所の問題につきましては、その前に、電話における口頭意見陳述も可能となるような、そういったこともあります。ですから、移動に関することは、それはまだいろいろな対応ができるのではないかというふうに思っております。
それから、今も申しましたけれども、やはり権利行使をしっかりと向上させるという意味におきましては、今回の審査請求の一元化に加えて、コピーを認めるですとか、そういったさまざまな権利を拡充することによって全体として向上をされるのではないか、このように考えております。
○塩川委員 ですから、高いレベルの手続保障ができるというのは結構な話なんですけれども、それをやった上で、そもそも異議申し立てを廃止する必要はないんじゃないのかということですよね。
ですから、事前の簡易迅速なという趣旨に立って、それは行政庁の都合もあるでしょうけれども、国民の側から、権利救済として、身近なところにまず異議申し立てをすることというのは、簡易迅速の一つとして選択肢として残す。ですから、これを自由選択にして、異議申し立てもできるし、そのまま審査請求もできるという方向の改正で、全体として高いレベルの手続を保障していけばいいんじゃないかと思うので、一元化の名のもとに審査請求に一本化をして、異議申し立てを廃止する必要はないんじゃないのかと思うんですが、その点、もう一回、いかがですか。
○上村政府参考人 繰り返しのお答えになってしまうかもしれませんけれども、やはり一方で簡易迅速化ということがございますので、二段階でやるとそれなりの時間がかかるということがございます。かつ、一段階にすることによりまして、先ほど大臣もお答えいたしましたようなさまざまな権利保障を充実させるということでございますので、権利保障の面では、そういうふうな一段階のところで十分に今回担保されているという観点に立ったものでございます。
それから、申立人の便宜等々でございますが、口頭意見陳述等の場合は、確かに、例えば東京に出向く地方の方という場合が想定されなくはございませんが、いろいろな、電話等の手段を使うということも可能でございますし、また、口頭意見陳述ということ自体、現行の制度で見る限り、それほど頻度高くやっているものではございません。大体一割、全体の手続の一割というぐらいかと思いますし、また、必ず東京でやらなくてはいけないというものでもございませんし、出先に審理員が出向いてするということも可能でございます。そこは、いろいろな手段を講じて、申立人の方々の不便にならないようなことは考えてまいりたいと思っております。
○塩川委員 労働保険審査会なんかでもテレビ電話があるなんという話を聞きましたけれども、でも、面と向かってやるんだったらそれなりの時間をとってやるのを、テレビ電話だと、終わりますと、ぱちっと切られちゃうというわけですよね。そういう点では、やはり遠いところでやるというのは、権利救済という点では十分に保障されないという問題があるので、私は、全体としての手続を充実するという方向そのものは結構だけれども、一元化の名のもとに、異議申し立てがあり、審査請求があるものを、一律に異議申し立てをなくすというのはいかがかなというのが率直な思いであります。
次に、再調査の請求の導入のところであります。
今回の改正で、異議申し立てを廃止し、再調査の請求を導入する法律というのは、どういうものがあるんでしょうか。
○上村政府参考人 これは、先ほどの五件のなくすものと違いまして、非常に多うございます。典型的なのは、国税通則法とかが、異議申し立てが再調査の請求にかわるということでございます。
○塩川委員 事前に総務省から説明いただいたのは、異議申し立ての取り扱いについて再調査の請求を導入するものは、国税通則法を含めて五本と聞いているんですけれども、違いますか。
○上村政府参考人 失礼いたしました。再調査の請求を導入するものというのは五本でございます。
繰り返して申しますと、国税通則法、それから関税法、とん税法、特別とん税法、それから公害健康被害の補償等に関する法律でございます。
大変失礼をいたしました。
○塩川委員 それで、行政不服審査法において、現行の異議申し立てと、今度の改正案の再調査の請求、これには違いがあるんでしょうか。
○上村政府参考人 お答え申し上げます。
現行の異議申し立てと改正後の再調査請求ですが、まず、共通する手続といたしましては、口頭意見陳述の機会の付与、それから必要があると認められる場合の執行停止、この二つなどがございます。
他方、改正法案における再調査の請求でございますが、これは特定の、今申しました五つの手続に関し、処分庁が関係資料を改めて調査する、そういった簡易な見直しの場合を想定してございますので、例えば参考人の陳述及び鑑定の要求、それから処分庁による物件の提出要求、それから処分庁による検証、それからまた審査請求人または参加人の審尋などに相当する手続は置かれておりません。
○塩川委員 ということで、異議申し立てと比べて、今回導入する再調査の請求というのは、より簡易、簡略なものとなっているわけです。
この行政不服審査法の改正を受けて、異議申し立てをなくして再調査の請求を導入する法律の中で、現行の異議申し立てより簡易、簡略な再調査請求を導入する形になるのは、国税通則法を除くほかの四本だと承知しているんですが、それでよろしいですか。
○上村政府参考人 ほかの四法案につきましては、本体の行政不服審査法の手続と同じ手続になるということでございます。
○塩川委員 国税通則法は、通則法での措置を行うということであります。
その場合に、今言った四本ですけれども、それは、審査請求の方での充実とか一連の取り組みがあるのは承知しているわけですけれども、しかし、異議申し立てをなくして、再調査の請求を置いて、それも選択できますよという今回のスキームで、今言ったように、四つの項目について、異議申し立てにあったものが再調査の請求にないという御説明でした。それは、結果として、不服申し立てを行う国民の立場からすると、権利救済において後退するような仕組みになっていないのかというのは率直に思うんですが、そこはいかがですか。
○上村政府参考人 今回の再調査の請求というのは、繰り返しになりますけれども、特定の、一定の範囲内に絞った形での類型としてお認めするということでございます。
現行法の異議申し立てというのは、多種多様な、言ってみれば、どういうものが申し立てとして来るかわからないという中で、そういういろいろな手続のメニューをそろえていたという面がございます。今回は、簡易な物件、資料の見直しということに特化した手続ということになれば、先ほど私が申し上げましたようないろいろな手続を、基準法たる行政不服審査法に一律に規定する必要はないだろう、そういう考えに立ったということでございます。
○塩川委員 これは、だから、行審法で、一般法で直すから、個別法もそれに合わせて調整しましょうという話ですけれども、例えば、公害健康被害の補償等に関する法律、公健法などは、もともと公害患者救済のためにということで生まれた法律でもあります。裁判がたくさん出て、それで裁判所が大変になったというのもあるわけですけれども、一方で、不服申し立ての仕組みをつくることによって権利救済を図っていこうという中で生まれてきているものですから、そういうときに、異議申し立てと審査請求があるというスキームそのものは、私は、権利救済の立場から意味のあるものだと思うんです。
その際に、異議申し立てを再調査の請求に置きかえて、しかし、その中身そのものが、四つの項目が落ちているということになると、これは本来の権利救済という点でいかがかなということも思わざるを得ません。
この点は、ちょっとまた引き続き、次回の機会で取り上げていければいいなと思っております。
残りの時間で、国税通則法でお聞きしたいんですが、財務省の方にお尋ねします。
国税通則法において、現行の異議申し立て、今回の法改正で再調査の請求を設けるわけですけれども、その異議申し立てと再調査の請求、国税通則法においては違いはあるんでしょうか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。
国税の不服審査につきましては、処分の大量性、争いの特殊性といった事情があるために、現行の国税通則法では、審査請求の前に異議申し立てを置くこと、それから、審査請求の処理のために国税不服審判所を設置することなど、固有の不服審査制度を規定しているところでございます。
他方、不服審査の一般法でございます行政不服審査法の見直しに合わせまして、国税通則法におきましては、今般、異議申し立てにかえて選択制の再調査の請求を設けるといった見直しを行っているところでございますけれども、この再調査の請求につきましては、基本的には現行の異議申し立ての手続と変わりのないものになってございます。
○塩川委員 総務省にその点で確認ですけれども、そうしますと、もともと、国税通則法の異議申し立てと、それから行審法の異議申し立てには違いがあるということですよね。その点、確認で、お答えいただけますか。
○上村政府参考人 御指摘のとおりでございまして、現行の国税通則法の異議申し立ては、現行の行政不服審査法に規定されていない手続、いろいろございます。例えば、異議申し立て書の職権補正、それから税務署長経由による異議申し立て等が可能となる等の違いがございます。
○塩川委員 ですから、現行の行政不服審査法の異議申し立ての手続について、より簡易な国税通則法の異議申し立てに合わせるような形で再調査の請求というスキームをつくったというのが実態なのかなと思っております。
そういう中身として、財務省にお尋ねしますが、行政不服審査法の改正に対する日弁連の意見書の中で、再調査請求については、税務調査との混同が起こらないよう、その区別が法律上明確となるように適切な規定を置くこと、このようにありますが、どのように対応されたのかについてお答えください。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。
再調査の請求との文言につきまして、税務調査との混同が起こらないようにすべきとの御指摘があることは、先生が今おっしゃられたように承知をしているところでございます。
行政不服審査法の見直しにおきまして、再調査の請求が、処分内容等を把握している処分庁において事実関係を改めて調査することにより簡易に処分を見直す手続であることから、その内容を適切にあらわすため、再調査の請求との名称とされたものと承知をしております。国税通則法におきましても、行政不服審査法の見直しの内容に合わせて、現行の異議申し立てを、再調査の請求という名称を用いることとしたところでございます。
この再調査の請求は、不服申し立ての一類型として、行政不服審査法、また国税通則法において明確に位置づけられているものでございまして、こうした再調査の請求の趣旨が適切に理解されるよう、関係省庁等と連携いたしまして、周知、広報等に努めてまいりたいと思っております。
○塩川委員 先ほど西野委員からの指摘もありましたけれども、再調査請求という名称だと、何か不服申し立てをする人が調査を再要求するみたいな形で、というのは、本来、税務調査の再調査を求めるという趣旨とは違うわけで、それにとられるようなあり方というのはそもそもあってはならないわけであります。
そもそも、国民の権利救済の手続であるはずの再調査請求において、税務調査の調査権、罰則つきの質問検査権を行使するような、本来こういうことであってはならないということを最後に申し上げて、質問を終わります。
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