国会質問

<第186通常国会 2014年05月09日 経済産業委員会 15号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 電気事業法の改正案について質問いたします。
 最初に、関連して大臣に要望なんですけれども、先んじて原賠機構法案の議論を行いました。その際、廃炉の業務を追加するという際に、では運営委員会でどういう議論をしているのか明らかにしてほしいということを要望しまして、それは一カ月前の話なんですけれども、ここまで来ましたら、やっときょう出てきたのが、廃炉・汚染水対策に関しての運営委員会の議事録部分だけなんですよね。
 これはやはり全体も明らかにしていただいて、今後きちんとした役割を果たすという点でいえば、しっかりとした情報開示が重要だ。そういう点でも、過去の三十数回の原賠機構の運営委員会の議事録について出していただきたい、この点を改めて要望したいんですけれども。

○茂木国務大臣 御要望として承りました。

○塩川委員 参議院の方でも原賠機構について今審議中でありますし、そういう中では、やはりしっかりとした今後さらなる情報開示を求めるという議論もしているというふうに承知しておりますので、そういうものをしっかりと受けとめて、全体を出していただくということで、ぜひお願いしたいと思うんです。
 改めて、一言、いかがですか。

○茂木国務大臣 改めて、二度にわたります御要望として承らせていただきました。

○塩川委員 ぜひ要望を受けとめていただいて、具体化していただきたいということであります。
 それで、法案の関係ですけれども、現行の電気事業法では、一般電気事業者が発行する社債について、優先弁済の特例規定である一般担保規定を置いております。今回の改正案では、二十七条の三十において一般担保を規定しております。資料の配付をしておりますけれども、その一枚目に対照表を載せておきました。
 そこで、経産省にお尋ねします。
 今回の改正案では、自主的に分社する一般電気事業者があった場合に、分社後の持ち株会社や子会社も引き続き一般担保つき社債が発行できるという趣旨になっているのかなと思うんですが、その点、確認でお答えいただけますか。
    〔委員長退席、江田(康)委員長代理着席〕

○高橋政府参考人 お答えを申し上げます。
 御指摘のいわゆる一般担保の規定でございますけれども、現行の電気事業法第三十七条におきまして、一般電気事業者の社債権者に対して、その会社の全財産について優先弁済権を認めてございます。この規定は、大規模な発電設備、送配電設備を保有する一般電気事業者が、電気の安定供給に必要な資金調達の円滑化を図るものでございます。
 今回の法案でございますけれども、一般電気事業者という概念を見直しますものの、現存しております一般電気事業者が引き続き大規模な発電設備、送配電設備の多くを保有し続けるという実態も踏まえまして、電力の自由化を進めつつ、引き続き一般担保つきの社債を認める規定を設けてございます。
 今回の法案における規定、二十七条の三十という規定になりますけれども、これにつきましては、現行の一般電気事業者に相当します小売と一般送配電と発電をいずれも営む事業者、これを兼業事業者というふうに定義していますけれども、この事業者が引き続き一般担保つき社債を発行できる旨を規定しておりまして、さらに、この兼業の事業者が会社を分割あるいは譲渡した場合に、分割後の各社に対しましても、発行する社債について、一般担保つきの社債が発行できる旨を規定しているものでございます。

○塩川委員 分割後の持ち株や子会社も一般担保つきの社債が発行できるということであります。
 これはワーキンググループで議論がありまして、一月二十日の事務局ペーパーの中にこういう趣旨のことが書かれているわけです。現在の一般電気事業者が自主的に行う分社化を妨げないという趣旨で、二十七条の三十の二項、三項が対応するところだと思いますけれども、そういう規定が入っているということです。
 これは一月二十日でしたけれども、それに先立つ一月十五日に、原賠機構と東電が提出しました新・総合特別事業計画、新総特について茂木経産大臣が認定をいたしました。
 そこで、経産省にお尋ねします。
 資料の二枚目の方にも紹介しましたけれども、新総特の東電の事業運営に関する計画の中の(5)に金融機関及び株主への協力要請とあって、その1に自由化後の資金調達を見据えた金融機関への協力要請ということが書かれております。左側の下から二行目のところに線を引いておきましたけれども、東電が二〇一七年の三月期に分社化し、ホールディングカンパニー制に移行する際に金融機関の了承を求める前提として、所要の立法措置が整備された場合においてとあります。ここで書かれている立法措置に当たるのが今回の法案ということでいいんでしょうか。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 現行の電気事業法におきましては、一般電気事業者が送配電業務や家庭への小売を行うことを想定してございまして、いわゆる発電、送配電、小売を垂直一貫体制で行うということを想定し、規定がなされているものでございます。
 今回の法案におきまして、発電事業、送配電事業、小売電気事業と事業類型を見直すということになりまして、各事業に応じた規制措置を規定しております。これによりまして、現行の一般電気事業者が各事業の特性に応じて自主的に分社ができるようになるものと考えてございます。
 いわば現行の電気事業法は一般電気事業者という存在を前提としておりましたので、一般電気事業者というもとでは分割ができないということでございますので、各事業類型に応じた規制を導入することによって、会社の分割が自主的にできるようになるというふうに考えてございます。

○塩川委員 確認的に、ここで言う所要の立法措置は、今回の法案ということでよろしいですね。
    〔江田(康)委員長代理退席、委員長着席〕

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 ここで言う、この総特に書いてある立法措置というものにつきましては、今回の法案のライセンス制の導入というところによって、一般電気事業者というものを送配電あるいは小売、発電というふうに分けることができるようになったというところを指していると考えております。

○塩川委員 そこも入るんでしょうけれども、先ほど説明していただいたように、一般担保についても分割後も使えますよという規定も含めて、この所要の立法措置に含まれているということであります。
 そこで、この一般担保については、附則の四十一条で、中立性確保措置を法的分離において実施する場合についての規定の中でも、電気事業を営む者の間の適正な競争環境の確保という観点から一般担保の扱いについても検討するとあります。
 ここに、電気事業を営む者の間の適正な競争環境の確保というのは、昨年の改正法で、附則の十一条にはなくて、今回新たに入れた部分かなと思っておりますけれども、そういう点では、新たな文言が今回入って、それはこの趣旨からいえば一般担保をなくす方向なのかなというふうにも読めるわけですけれども、この点はどうなんでしょうか。

○上田政府参考人 御指摘との関係では、一般担保につきましては、第一弾のときについては、プログラム規定におきまして、改革の第三段階たる法的分離の実施に際して金融市場の動向も踏まえて検討を行い、電力の安定供給に必要となる資金の調達に支障を来さないよう経過措置等の必要な措置を講じるということを規定いたしておりました。
 今回の法案でございますが、現存している一般電気事業者が引き続き大規模な発電設備、送配電設備の多くを保有している実態も踏まえまして、電力の自由化を進めつつ、引き続き一般担保つき社債の発行を認めるという規定を設けているわけでございますが、一方で、今回の法案は小売事業の自由化ということを主たる目的としているわけでございまして、競争部門たる発電、小売部門における対等な競争条件を確保するということも重要でございます。
 このため、法的分離を規定する第三段階に際しましては、事業者間の適正な競争関係を確保するという観点も含めまして、一般担保のあり方につきましてゼロベースで検討していく、そういう趣旨でございます。

○塩川委員 ゼロベースで見直すですから、結果がどうなるかというのは当然あるんでしょうけれども、方向は適正な競争環境の確保ということですから、やはり、そういう優遇するような措置を見直そうという方向での規定というのが新たに入ったというふうに受けとめております。
 そうすると、今お聞きした二十七条の三十の二項、三項で、自主的に分社化、分割した電気事業者についても持ち株それから子会社が当分の間発行する社債とここに書いてあるということは、一方で一般担保をなくすような方向での適正な競争環境の確保をうたいながら、他方では今回の法改正の中で分社化後の東電が一般担保つき社債を発行することを認めるような中身にもなっているということで、これはそれぞれ方向性が逆なんじゃないかなと思うんですけれども、この辺はどうなんでしょうか。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 一般担保につきましては、第二弾の段階では、現在の一般電気事業者の設備の保有の実態に変更がないことから引き続き措置をすることとしておりますけれども、第三段階におきましては、資金調達の安定性と競争条件の確保という観点から見直すということになっております。
 今回の、分社化した場合の各社の一般担保の規定ですけれども、第二弾における状況のもとでの規定でございますので、第三段階への検討に即して、また必要な見直しがあれば見直すことになると思います。そういう意味では、当分の間ということで規定がされているものでございます。

○塩川委員 もちろん、第二段階の話というのはあるんでしょうけれども、既発債については一応規定としてはあるわけで、新発債、今後発行するという点では、分社化後に発行するものも入るということでいいますと、その方向というのが、一般担保をなくすという方向とやはりそごがあるんじゃないのかというのは率直に思うんです。
 もともと、東電改革としての新総特は電力システム改革の先取りと言ってきておりますので、この電力システム改革という名で東電の後押しとなっているというような、ここの中身になりはしないのかという点は、その辺はどうなんですか。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 この規定は、別に東京電力のみならず、第二弾の段階で自主的に分社される企業があればあまねく適用されるということですので、特に東京電力のためだけに規定を設けたわけではございませんで、自主的に電力システム改革を先取りして分社化されるという企業であれば適用される条文でございます。

○塩川委員 電力システム改革の先取りで分社化するのであれば、本来、法的分離の方向での流れだと思うんですけれども、であればやはり一般担保の見直しということが必要じゃないのかということは重ねて申し上げておくものであります。逆方向という現状というのがあるんじゃないのかという指摘であります。
 次に、大臣にお尋ねします。
 新総特、これは資料の二枚目の右側のところにアンダーラインを引きましたけれども、「HDカンパニー制への移行に際しての既存社債の権利保護については、新たな競争環境下における東電の今後の事業収益の改善との両立を図る観点から、各子会社が連帯債務または連帯保証を負担することなく、それぞれの子会社の総財産を担保とする子会社の社債を持株会社に対して発行する方法等によることとし、」とあります。
 一方で、昨年三月二十一日、参議院の経済産業委員会で、大久保委員の質問に対して大臣は、NTT法の改正の部分についての質疑だったわけですけれども、平成九年のNTT法改正では既に発行されている社債に係る債務について関係会社間の連帯債務とするといった措置を講じている、こうした立法例を参考にしつつ今後具体的な方策を検討していくと述べていました。
 ですから、関係会社間の連帯債務というそのNTT法改正の立法例を参考にするといいながら、この新総特においては各子会社が連帯債務または連帯保証を負担することなくという措置を東電が行うことを大臣が了承したわけですけれども、これについて説明いただけますか。

○茂木国務大臣 申し上げますけれども、私からNTTの問題を出したわけじゃないんですよ。そのことについて聞かれたので、NTTの分割のときはどうしたかということについて事実関係を述べたわけであります。その上で、いわゆる既発債については、財産上の権利に実質的に影響を与えないための制度の手当てについて検討していく、そしてその検討を行っているということでありまして、別に私からNTTのを、こうだから電力についてもこうするという話で申し上げたんじゃない。一部をとって、私から言ったような印象を与えるような質問は非常に私としても困惑いたしますので、ぜひよろしくお願いいたします。

○塩川委員 ですから、NTT法改正の議論がありましたという前置きでお話ししたわけで、私が取り上げたのは、そういうNTT法改正の立法例を参考にしつつ今後具体的な方策を検討していくと大臣が答弁したことについて、それとは違う方向が新総特にありますね、これはどのように説明されますかということをお尋ねしたんですけれども、改めていかがですか。

○茂木国務大臣 財産上の権利に実質的に影響を与えないということを私は申し上げたわけでありまして、当然、新総特に記載されている内容、これは利害関係者であります社債権者等の協力を取りつけた上で対応していくという位置づけのものでありますから、私の答弁と全くそごを来さないと思っております。

○塩川委員 NTT分割の議論の中では、会社分割における債権者保護の方法として最も典型的なのは全当事会社による連帯債務を負わせることだ、アメリカでも、一つの会社が複数に分かたれる場合には、旧会社の債務につき新会社の全てが連帯債務を負うべきだと解されている、そういう話なんかもあったものですから、大臣の方がもちろんお詳しいと思ったので、その辺のお話も聞けるかなと思ったんですけれども……(茂木国務大臣「話しますよ、幾らでも」と呼ぶ)はい、わかりました。経緯についてはわかりました。
 私は、だから、こういうのを見ると、資料の三枚目にあるように、これは新総特の話ですけれども、下の段に今後の資金調達の考え方とあるように、要するに、それぞれ子会社が大いにもうけてもらおうというスキームというのが新総特で掲げている中身ということで、今回の一般担保規定の改正、あるいは新総特を踏まえたような措置というのが、いわばこういう東電の事業会社の成長を確保する、そういう方策になっていくということで、連帯債務とか連帯保証がないことで、分社化後の子会社の実質的な経営の自由度が高まっていく、そういう趣旨の流れだろうと思っております。
 こういった議論については、第五回の制度設計ワーキンググループの議論の中で、SMBC日興証券マネジングディレクターという肩書の円尾委員が発言しておりましたけれども、世界じゅうのどこを見ても、一般担保がなければ資金調達ができないという電力会社は皆無だ、民営化以降のJパワーも無担保で社債を調達している、一般担保に関する本質がどこにあるかといえば、一般担保のありなしではなくて、原子力のリスクがさまざまに顕在化してきたことで、これをどう分担していくのかが不透明だというところにあるということで、いわば原子力のリスクの問題なんだということを強調しているわけです。そういう点でも、この三枚目の図の右上がホールディングカンパニー制ですけれども、原発について、これは持ち株の方で持つという仕組みにもなっております。
 そこで、新総特を見ると、今後の収支計画においては柏崎刈羽の再稼働が掲げられているわけです。柏崎刈羽の六号機、七号機は二〇一四年度の前半に稼働を目指したい、一、五号機については二〇一四年度の後半に再稼働を目指したいというのが収支計画になっているわけで、私は、大臣も認定した新総特というのが結局は柏崎刈羽の再稼働なしには成り立たない計画なんじゃないのか、この妥当性が問われているんじゃないかと思うんですけれども、この点について最後に大臣に伺って、終わりにしたいと思います。

○茂木国務大臣 NTTもそうでありますが、電気事業も高度成長期においてどう資金調達をしていくか。
 田嶋委員の方が多分私より電気通信についてはお詳しいと思うんですけれども、積滞解消、こういう言葉のもとで、通信設備の増強というのを図ってきたところであります。その社債を、民営化するに当たって、どう分けるかという議論でやってきました。
 今回の電力の安定供給を図っていくためにどういう資金調達をするというのと、若干議論としては違う部分があるというのをまず御理解いただきたいと思っております。
 そして、新総特に記載されている事項につきましては、どの一つが重要ということではなくて、それぞれが、電力の安定供給であったりとか、さらにはコストの低減も含めて、事業者として果たすべき役割が記載されており、それぞれが全うしてほしい、このように考えております。

○塩川委員 新総特の具体化を後押しするのが今回の法案、この点を指摘し、きょうは終わります。
 ありがとうございました。