国会質問

<第186通常国会 2014年05月09日 経済産業委員会 15号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、皆さんからそれぞれ貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。
 最初に、安念参考人にお尋ねいたします。
 冒頭の意見陳述で、電力の労働者へのスト規制法の問題についてお話がございました。スト規制の廃止というのは当然で、重要な指摘だと思います。
 この点につきましては、昨年の電気事業法改正案の質疑に当たりまして、この衆議院経産委員会の附帯決議がついております。その中にもスト規制法の扱いについて書かれているわけです。そこでは、スト規制法については、「自由な競争の促進を第一義とする電力システム改革の趣旨と整合性を図る観点から再検討を行うものとする」とあって、その再検討が、今回の法改正案の、いわば用語の整理みたいな、ああいうことであってはならないんだろうなと思っているんですけれども、このことについて一言、御感想があれば。

○安念参考人 全く先生に同感でございます。あのような古色蒼然たる規制がなぜ残っているのか、大変不思議でございます。
 今どき、まともな企業でストライキをやるというところがあるんでしょうか。もしあるのなら、余りまともでない企業であって、そういうところが電気事業に携わるのは甚だ好ましくないと存じます。
 いずれにいたしましても、単に古色蒼然というだけではございませんが、そもそも実効性が甚だ疑わしい。というのは、いよいよ保安要員が必要だということになれば、それはストライキなんか禁止したってしようがないのであって、個別のこのポジションにこういう人間を張りつけなきゃいけないというプログラムをつくっておかなければいけないのでして、実効性の面でも、私はほぼないというふうに思っております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 続けて、安念参考人にお尋ねいたします。
 いただいた参考資料に、本来、東電は会社更生の申請をすべきだったというお話がありました。これは、安念参考人が電気料金の委員長のときにもこういう発言をしたということも報道されたことであります。もちろん、三年たって今さらということも述べておられるんですが、改めて、本来、東電は会社更生の申請をすべきだったという、その趣旨について簡単に御説明いただけないでしょうか。

○安念参考人 裁判官の前での手続以外では、公正、透明な形で各プレーヤーの法律上の権利義務を確定するということができないからでございます。時間がたてばたつほど、それから裁判所の外であればあるほど、さまざまな、率直に申しまして大変に欲の深いプレーヤーが跳梁ばっこすることになりまして、何が何だかわからない。要するに声の強い者が勝つ、そういうスキームがだんだんとつくられてまいります。
 私は、会社更生が理想的だとは申しません。これはもう先生が御存じのとおりだと思いますが、会社更生というのは今回のように莫大な数の損害賠償債権の債権者がいるというようなことを念頭に置いておりませんので、恐らく、大量処理をするための特別立法は必要だったとは思いますが、会社更生以外の方法は基本的なスキームとしてはなかったのではないかと考えております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、広瀬参考人にLNGの調達価格について一つ教えていただきたいんです。
 昨年の当委員会でもLNGの調達価格の問題の質問をしたこともあるんですけれども、実際、東京電力さんと一緒に発電所の共同運営やLNGの一部を調達するということもされておられるということで、電気料金の三分の一を占める燃料費のうち、LNGの調達価格というのが、アメリカと比べても非常に大きな開きもあります。
 また、輸入LNGの揚げ地によって価格がかなりばらばらで、結構、二倍以上の開きがあったりということもありますし、同じ揚げ地でも半年ほどで一・二五倍とか開きも生まれる、その辺が国民、需要家、消費者サイドからするとよくわからない。そういう点でも、この透明化を図るという趣旨からも、揚げ地によって調達価格が変わるように見える、こういう実態というのは何なのかということについて少し御説明いただけないでしょうか。

○広瀬参考人 LNG価格につきましては、今お話があったとおり、各税関単位で既に金額がはっきりしています。そういう面では非常に透明性はあるんですけれども、おっしゃるとおり、結構ばらつきがあるということも事実でございます。
 LNGの場合には、先ほどもお話ししましたように長期プロジェクト、相当長い契約で、十五年とかです。その上で、あるタイミングで料金の更改をしていく。その時々のLNGの需給でプロジェクトごとに、たまたま需給が緩んだときには、いわゆる石油価格との連動ですからそれとの関係で、売り主のいろいろな都合によって場合によったら安く購入できるケースもあれば、たまたま全体的にエネルギーが上がった場合には、それが高いと。したがって、どちらかというと、場所というよりもプロジェクトごとに価格が違うということは事実でございます。
 したがって、それが何年間にわたって平均化されると、ほぼだんだんそれが合ってくる、こういうような仕組みで、いずれにしても、昔はこの世界はなかなか情報開示できなかった時代もありましたけれども、最近ではそういった声が非常にやはり強いものですから、いろいろな情報公開に努めているところでございます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、八木参考人にお尋ねいたします。
 四月十五日に、関西経済連合会と九州経済連合会が「原子力発電所の一刻も早い再稼働を求める」という提言を政府に出しました。
 この中では、「現在、新規制基準に対する適合性の申請を行なっている関西電力の大飯・高浜、九州電力の川内・玄海の各原子力発電所については、できる限り早期の再稼働が実現するよう、安全審査の最大限の効率化を図ること。」を求めております。
 つまり、原子力規制委員会に審査を促進してくれと催促するような趣旨の内容でありますけれども、この関西経済連合会、関経連の会長は関電の会長でもございます。
 ですから、いわば関電、電力会社のトップが原子力規制委員会に審査の促進を働きかける、こういうような形は国民の理解を得られるんだろうかと率直に考えますが、この点についてはどのように受けとめておられますか。

○八木参考人 関西経済連合会及び九州経済連合会が国に対して提言を出されたことについては承知しておりますが、私ども業界としてはそれに対して直接コメントする立場にはないというふうに思っております。
 ただ、明らかなことは、私ども関西電力は、関西地域の企業の方々に当社の電気をお使いいただきまして電気料金をいただいておりますけれども、明らかに原子力プラントが再稼働できないということによりまして、昨年の四月、五月に料金の値上げをさせていただきました。これは自由化部分が四月、それから規制部分が五月でございます。そういう意味では、原子力プラントが停止していることによって、企業の活動に大変大きな影響があるという認識はしております。
 したがいまして、関西経済の企業の皆様方のお話を伺いますと、一つは、需給の不安が拭えない中での、例えば企業の成長のための設備投資をするに当たって少し逡巡するというような御意見もありますし、やはりできるだけ電気料金を下げていただきたい、こういう御要望等もいただいております。
 したがいまして、恐らく関西経済連合会としては、原子力プラントが停止することによる影響面を、実際に影響を受けておられる立場としての切実なる御意見といいますか、御要望をなされたものだというふうに理解しております。
 以上でございます。

○塩川委員 関電の会長でもある方が関経連の会長でもあるわけで、つまり、原子力事業者の代表の方が結果として再稼働を進めてくれと原子力規制委員会に要請する形になっているということに、国民の皆さんからの理解が得られるんだろうかと。そのことについてはありませんか。

○八木参考人 確かに関西経済連合会の会長は弊社の森が担当しておりますけれども、あくまでも関西経済連合会は関西企業の皆様方の集まりでありまして、関西企業の皆様方の議論の末の結果でございますので、結果としてそういう形ではございますが、関西経済界の皆様の総意の意見ということで私どもは理解いたしております。
 以上でございます。

○塩川委員 国民の皆さんの判断もあろうかと思います。
 次に、昨年の参考人質疑でもお伺いしました、電気料金の見える化のことです。
 去年、私の方で、原発に係るいろいろな経費について、内訳として消費者、需要家に明示したらどうかという質問に対して、八木参考人は、料金の中身をできるだけ明細に詳しくしていくという方向性については理解できる、どこまで見せるかというのは今後の検討課題というふうにおっしゃっておられました。
 原発関連の賦課金には、使用済み燃料再処理等発電費や特定放射性廃棄物処分費、原子力発電施設解体費、原子力損害賠償支援機構一般負担金、電源開発促進税等々あるわけです。これら原発関連の賦課金について、家庭の電気料金の明細書にきちっと明示をするということをやったらどうかなと思うんですけれども、その点はどうでしょうか。

○八木参考人 前回の参考人招致のときにも塩川先生からそういう御質問をいただきました。
 まず、御家庭のお客様に電気料金の検針票、それからいわゆる請求書等をお配りしておりますけれども、これは、あくまでも電気の需給契約に基づきまして御使用いただいた電気の量、それに伴う電気料金をお知らせするという趣旨のものでございます。
 その中で、電気料金については、いわゆる認可といいますか、約款でいただいておりますので、それは明らかにその数字で出しておりますけれども、それ以外に、例えば再エネのサーチャージとか消費税とかいう枠組みの外にあるものについては、その部分を明記させていただいているところであります。
 今先生御指摘のように、確かに電気料金の構成比の中にはいろいろな項目があるということで、これは、電金料金を認可する際にはそこまで明細を出して御審査いただいておりますが、一方で、電気の請求書、検針票というのは、ある意味では詳細なデータを御希望されるという御意見の方もいらっしゃいますが、一方で、やはりシンプルでわかりやすいものであるという御意見、いろいろございます。したがいまして、帳票のスペースの問題とか、お客様にとって見やすい点とか、そんなことを勘案して現行方式とさせていただいています。
 したがいまして、もしお客様で本当にそういうような具体的な原価の構成までお知りになりたいという方々に関しては、既に年度の決算等々におきましてホームページの中でそれを公開してございますので、今、そうしたことの情報公開を進めているところであります。
 先生のそういう御意見も今回もう一度頂戴いたしましたので、どういう形で電気料金への御理解がいただきやすい方法があるかについては、引き続き、今後、情報公開のあり方については検討させていただきたいと思います。
 以上でございます。

○塩川委員 丸めた数字ということでなくて、個々の御家庭でどうなのかということがわかるような見える化を図るということで、ぜひ具体化を図っていただきたいと思います。
 植田参考人にお尋ねいたします。
 電力システム改革を考えるその前提というのは、当然、エネルギー政策そのものをどう考えるかということであります。このエネルギー政策を考えるときに、やはり、福島原発事故から何を学ぶかというのが問われていると思います。この福島原発事故を踏まえて、エネルギー政策はどうあるべきなのかについて、植田参考人のお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○植田参考人 とても大きなテーマなので簡単に答えられるものではありませんが、もちろん、福島の事故を反省しということを踏まえますと、福島のような事故を二度と起こさないということを政策の一番の基本に置くということは一番大事な点だというふうに思っております。それが具体化されるべきだというふうに思います。
 それは、いろいろな側面がありまして、もちろん原子力発電の安全性問題とかそういう側面もございますが、同時に、私は、電力システム改革も、福島原発事故が起こった背景としてあった電気事業のあり方そのもの、これを変える必要があるということとつながりがあるというふうにも理解をしております。そういう点で、電力システム改革を進めるというのは、もっと長期的な見通しもあるわけですが、福島の原発事故を受けた場合には、より一層進めるべき分野というふうにも理解しておるものです。
 以上です。

○塩川委員 福島の事故を二度と起こさないという点で、原発の安全性の問題もあるというお話でございました。
 その点で、政府が原発の再稼働に当たりまして世界で最も厳しい水準の規制基準という説明をしておりますけれども、この点について植田参考人に伺いたいんです。厳しい規制基準と言うのであれば住民の安全が第一というのが本来であって、そういう点でこの新規制基準をどう見ることが必要なのか、この点についてお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○植田参考人 まず、規制基準についてですけれども、私は、先ほど申し上げたように、福島のような過酷事故を二度と起こさないということが基準であります。世界最高であるかどうかということではありません。世界最高だったら起こさないのかということが問われているというふうに思っております。
 ですから、大事な点は、本当に福島の事故を二度と起こさないようになっているかということでありますし、その上で、規制基準にかかわって、これは安全性とは何かという問題だというふうに私は理解しておりますが、現状、政府が安全性と言う場合には、一言で言うと、原子力規制委員会の安全審査をパスするということを安全性というふうに言っているように私には聞こえます。
 しかし、大事な点は、住民が安全かどうかという問題がもう一つあります。これは福島の事故の反省と非常にかかわりますけれども、あのときに避難がうまくできたかという問題は大変大きな問題でありまして、ですので、事故を二度と起こさないというふうにすると同時に、事故が起こった場合に避難が差し当たり具体的にできること、そういうことが確保されるということは、私は一種の前提条件ではないかというふうに思っている次第です。
 大事な点は、避難計画というのは、実は避難を受け入れるところがないと避難できないんですね。ですから、避難の受け入れ計画もはっきりしていないと本当はいけないというふうに思っておりますが、そこも余りはっきりしていないんじゃないかというふうに思っておりまして、その点で、ちょっと現時点の安全性というものの中身が十分じゃないというふうに思っている次第です。
 以上です。

○塩川委員 最後にもう一点、植田参考人に再生可能エネルギーのことでお尋ねします。
 地域分散型の再生可能エネルギーの成長には電力システム改革が欠かせないというお話がございました。この間、FITで太陽光発電などの普及も進んでいるわけですけれども、風力とかマイクロ水力とかバイオマス、こういったエネルギーの普及促進を図るために、まだまだちょっと時間がかかるというのはあるのかもしれませんけれども、何が今必要なのか、このことについてぜひ御教示いただけないでしょうか。

○植田参考人 私、先ほど申し上げましたように、FITができたことによって人々の気持ちだとか企業家のマインドは大きく変化して、ぜひ取り組もう、こういうところが、企業の中でも、あるいは全国各地で非常に広がっているということだと思います。
 差し当たりはどうしても、風力でも最低四年ぐらいかかりますし、地熱になると十年かかります。ですから、今始めるといっても、成果が出てくるのはもうちょっと時間がかかることは確かなんですね。
 動きがあることも事実であります。ですから、何が大事かというと、まずもって、FITで見通した、政府はこの制度を適切にずっと運用していきます、再生可能エネルギーを急速にふやしていきますと。できれば、本当は目標値のようなものを明確にして、そういう方向性をはっきりさせる、そのことが人々や投資家や企業家を安心させるというか、投資しようという意欲が湧く、ここが一つの鍵ですね。
 同時に、それを実際にやろうと思ったときに、いろいろ障壁、障害があるわけですね。これは系統の問題であったりさまざまな規制であったりしますから、そういうものをセットにして取り組んでいくということが大変重要なことだというふうに思います。
 ですので、企業家や地域の人々の中でせっかく起こってきているマインドを、政府がそれを支えて大きくしてやるという方向をはっきり示すということ、それを具体的な手当てとあわせて取り組むということが一番大事だというふうに思っております。
 以上です。

○塩川委員 時間が参りました。ありがとうございました。