国会質問

<第186通常国会 2014年05月13日 総務委員会 20号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 皆様には、大変貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。
 最初に、小早川参考人にお尋ねいたします。
 冒頭の意見陳述の中でも、不服申し立ての手続を審査請求に一元化することにつきまして、整理統合し、わかりやすいものにというお話がございました。その趣旨ということで、わからないではないんですけれども、しかし、実態は、個別法でいろいろな不服申し立てが設けられています、もちろん一般法としての行政不服審査法にも書かれていることでもありますけれども。その際に、個々の三百五十本の法律、総務省の方にお聞きしましたら、この異議申し立ての廃止をするといった場合に、実際に審査請求に一元化をするという法律が幾つかある。
 そういう中には、道路運送車両法ですとか、あるいは小売商業調整特別措置法などがあります。これらは、現行異議申し立ては、商調法の方は知事に対して行い、道路運送車両法については、これは地方のブロックの局長があるわけですけれども、支局が都道府県単位にありますから、都道府県単位でできる。それがなくなるとなると、みんな東京にやらなくちゃいけないという点でいうと、私は、その異議申し立てをする、不服申し立てをする方々にとってみれば、大きく利便性が後退することになりはしないかという懸念を持つわけであります。
 その点で、一元化と言われるんですけれども、そもそもの異議申し立てと審査請求をそのまま存置して、それを自由選択する、つまり、異議申し立てなしに審査請求に行くとか、そういう自由選択でもいいんじゃないのかなと思ったんですけれども、その点についてはどのように受けとめていらっしゃるでしょうか。

○小早川参考人 その辺は、これまでの異議申し立てなり審査請求なりの実態がどうであったか、それはまた分野によっても違う、時期によっても違うと思いますので、一概には言えないことかと思いますが、今回の法案の基本的な考え方は、まず、残念なことですけれども、従来の行政不服審査というのは、その本来の趣旨に十分応えていなかった。国民の権利救済のためにも十分働いていなかったのではないか。その原因は、手続保障のレベルがやはり低い、それは特に審査請求よりも異議申し立ての方が問題だ。そういう発想で、だから、大事なのは、どれだけの仕組みが用意されていて、それをまた何回も使えるかどうか、重ねて使えるかという話よりは、十分な手続保障を備えた、しっかりした審査の手続というものを一つつくる、できるだけそれで問題に対処するという、そこが基本的な発想だと思います。
 その結果、おっしゃるような、国民にとっての利便性が損なわれるというようなことがあってはいけないのですが、そこは、今回の審査請求への一本化、一元化という場合にも、宛先は、国の機関であれば大臣ということになりますけれども、申し立て書の提出先は、何も霞が関まで来なくても、その省の出先機関があればそこで受けるというふうに、当然、それは制度上は可能だと思いますし、運用上もそういうふうになるのが自然ではないか。そして、その後のやりとりも、こういう時代ですから、申立人あるいは代理人が一々東京に何度も何度も来るというようなことにはならないで済むのではないか、また、そうあるべきであろうというふうに思っております。

○塩川委員 小売商業調整特別措置法の場合には、県に権限がありますから、その都道府県の処分に対して異議ありというのが異議申し立ての制度ということもありまして、単に、ではそれを経産大臣に言えばよいということじゃないんじゃないのか。そういう点でも、不服申し立ての人の立場からいったときに、こういう審査請求への一元化というのは、本当にそれで現場の実態に即したものなんだろうかという懸念を覚えるところであります。
 関連して、松倉参考人にお尋ねします。
 審査請求への一元化に当たりまして、異議申し立てはなくします、かわりに、自由選択で再調査の請求を設けますということが幾つかあります。五本ぐらいあるそうですけれども。
 この中で、国税通則法などについては、異議申し立てと再調査の請求の中身自体はほとんど変わらないんだというのが、これは財務省の説明です。それ以外の法律、例えば、公害健康被害の補償等に関する法律、公健法ですね、公健法などにおいては、処分を行う都道府県に対して異議申し立てを行うのが、今度の再調査の請求にかわるわけですけれども、この一般法の行審法において、その手続において変更があるわけですよね。
 従来の異議申し立てにおいては、物件の提出要求ですとか参考人の陳述及び鑑定の要求、検証、関係人への質問を行うことができるわけですけれども、今度の再調査の請求ではこの規定が落ちているわけです。この点でいえば、国税通則法に合わせたというか、そういう感じなんだと思うんですけれども、これはやはり、権利救済の手続を保障する上では後退なんじゃないか。
 特に、公健法のように、公害患者の皆さんが多く裁判に訴えてこられた、そういう中で公健法もできて、でも、やはりその処分を行った県に異議申し立てをしたいということで行ってきたそういう異議申し立てが、実態として、今言ったような、内容が後退するということは、私は、これは納得いくものになるんだろうかと思うんですけれども、その辺について、お考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○松倉参考人 再調査については、先ほど青木税理士から問題があると言いましたけれども、用語の問題があって、実は、日弁連も、再考の申し立てというふうなことで考えています。
 その名前でわかるとおり、これは異議申し立てというふうな厳格な審査ではなくて、例えば税務なんかで、完全に計算が間違っているではないか、この間違いを直したら結論が変わるでしょう、そういうふうな簡便な誤りを指摘して、そしてそこで提訴をする、こういうふうな仕組みとして残すわけです。
 ですから、従来の異議申し立てのようなある程度慎重な審理というのは審査請求に一本化する、しかし、そういうふうなものではなくて、本当に簡単なミステークで、直るものについては再考、再調査というふうに私は理解しております。

○塩川委員 法曹関係者の方の、水俣の患者の皆さんなどについても、やはり多く県への異議申し立てを行っておられる。そういう点でも、県の処分に対して異議ありということが本来の異議申し立ての趣旨としてもあったわけで、当然、その先の審査請求を充実するということは、これはこれで重要なことではありますけれども、私は、単純に一元化という名のもとに、こういう形で異議申し立てのあり方の変更というのが、個別法の具体の差異を考えても、妥当なものかどうかということについては疑問を申し上げているところであります。
 次に、青木参考人にお尋ねいたします。
 冒頭のお話の中でも、今言った再調査の請求のことがございました。なるほどと思ったんですけれども、税務調査のやり直しを再調査というということになっていると。
 ということになれば、国税通則法で罰則つきの質問検査権があるとしたら、それが行使をされる。そうすると、いわば税務調査の流れの中の再調査と国民の権利救済としての異議ありという再調査の請求が用語として重なるということについて言うと、これは納税者にしてみると、不服申し立て、再調査の請求をちゅうちょすることになるんじゃないのかなという強い危惧を覚えるんですけれども、この点についてのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○青木参考人 私も全く同感でございまして、もう既に現在、再調査という、二十年法案のときはなかった、その後に、自後に国税通則法の改正がありまして、それによって、再調査というのは税務調査、もう一度税務調査ですよという事前手続の用語として使われていますので、それが今度、事後救済手続で再調査の請求という言葉が入ると、もし本当にそれを入れるとしたら、今度、事前手続の方の再調査という言葉を別の言葉にかえなきゃいけなくなるかもしれませんし、同じ言葉であるとしたら、相当説明が難しいんじゃないかな。慎重に周知徹底していただきたいというふうに考えております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 小早川参考人に、不服申し立て前置の見直しについてお尋ねいたします。
 国民の権利としての裁判を受ける権利を保障するという点で、不服申し立ての前置、重要な課題だと考えております。
 そういう点で、もともと、行政事件訴訟法、行訴法が一九六二年にできて、そのときにもかなり前置の整理をしたんだと思うんですよね。何か整理法が出たということも聞いているものですから。そのときに整理をして、その時点で前置を認めたものが五十本ぐらいあったということで承知しているんですが、結局、その後ふえてきたわけですよね。百本近くになって、今回の見直しにもなったわけです。
 これは、行政事件訴訟法の八条で、やはり裁判を受けるのは妨げられないということで、前置というのは原則なしだよと。ただし書きがついているということで、個別法で対応しているわけですけれども、何でこの間ふえてきてしまったのか。行訴法で前置はだめだよと言っておきながら、実態は、五十が今百ぐらいにふえているという、その背景といいますか理由といいますか、その辺について、お考えのところをお聞かせいただけないでしょうか。

○小早川参考人 行政関係の法律は数がたくさんございまして、その中で前置規定を持っているものが、今御指摘のように、結構ある。私もその数は正確に存じませんでしたが、その一つ一つについて、何でこうなったのかという、そこのフォローは私には到底できません。
 全体の仕組みとして言えば、昭和三十七年の立法の際に、おっしゃるとおり、行訴法八条の原則に対して例外は認める、だけれども、それは原則は原則なので、例外を認める要件、場合というのがたしか三つあるはずだという整理がそのときにされております。ただ、その三つの基準というのが、今から見ればやはりちょっと緩かったのかなと。
 特に、先ほど申しました、繰り返しになりますけれども、選択を認めたって、いい方、便利な方を使えばそれでいいんだから、片方を通行どめにするのは、これは余計なお世話だという部分がやはりどうしてもあったわけですね。だから、そこが今回整理されたんだと思います。
 今回は、その当時の三つの基準にかえて、たしか三つだったと思いますが、前置を認める基準というのをもう一度立て直して、それでしっかりコントロールしていこうということだと思います。
 お答えになっているかどうかわかりませんが、一般的には、各お役所は、何となく裁判所というのは煙たいもので、そこへ行く前に何とか、聞くべきものは聞いて、とにかく自分のところで処理してしまいたいというような気分があったということも、それはあるだろうと思っております。

○塩川委員 質疑の中でも小早川参考人はお答えになっておられましたが、今後前置がふえていくことのないように、今後の立法で注意していただきたいというお話をされました。
 これをどう担保させるかというのがあると思うんですよね。つまり、これからつくる法律で前置をつけるようなことがないようにするためにどうするのかという点は、過去、一度、前置はなしよと言ったのが結局ふえ続けたわけですから、今回改めて整理をして、同じ五十ぐらいに絞った、中身は違いますけれども。今後ふえないようにするためにどうするのか。その辺で何かお知恵があればお聞かせいただいて、お願いしたいと思います。

○小早川参考人 私は、法律学専攻でして、行政上の立法過程の実務については詳しくございません。
 ただ、一般論として言えば、閣法であれば内閣法制局の審査があるわけですし、その前に、前置規定を入れるというのであれば、その所管省と総務省との間での協議は行われるはずです。ですから、その辺で基準が明確で合理的なものがあれば、それをしっかり実行させていくということは難しくはないのかなという気はいたします。

○塩川委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。