国会質問

<第186通常国会 2014年05月15日 総務委員会 21号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 行政不服審査法案について質問をいたします。
 関連して、財務省においでいただきました。
 今回の不服申し立ての手続の見直しで、異議申し立てを廃止し、国税通則法などにおいては、新たに再調査の請求を置くということですけれども、それとの関係で、三年前、二〇一一年に国税通則法の改正が行われまして、税務調査の手続において、いわゆる再調査と言われるものが設けられるということになったと承知をしております。
 そこで、財務省にお尋ねいたしますが、この二〇一一年の法改正による国税通則法七十四条の十一第六項について、簡単に御説明いただきたい。いわゆる再調査についてということであります。

○岡田政府参考人 お答えをいたします。
 今委員御指摘のように、国税通則法の改正によりまして、調査の終了の際の手続が明確化をされております。
 税務調査を行った結果、更正決定をする必要がないというときには、その旨を納税者に伝えますし、仮に問題があるという場合には、納税者から修正申告が出るとか税務署の方で更正決定を打つというようなことで税務調査は終わります。しかし、税務調査が終了した後に、新しく得られた情報に照らして非違があると認めるときには、改めて質問検査等を行うことができるという規定が設けられました。
 この場合の質問検査等については、既に調査を実施した納税者に対しまして、同一の税目、課税期間について改めて行うものであるということで、納税者等にもわかりやすいように、これを再調査と呼んでおります。

○塩川委員 調査の終了の際の手続を新たに明確化し、その中で、新たに得られた情報に照らし非違があると認められるときは質問検査ができるという規定として、これもいわゆる再調査と呼ぶというお話であります。
 そこで、重ねてお尋ねしますが、やはり、今のお話にもありますように、この再調査というのが、国税通則法のいわば罰則つきの質問検査権が行使され得るものであるということでありますと、本来、行審法においての権利救済の手続の再調査の請求と、税務調査のやり直しとしての再調査と、この文言が重なるわけですよね。
 そういう点では、申し立てをする納税者の人にしてみれば、非常に混同し得るという点でいうと、再調査ということでの質問検査権が行使されるような形にイメージもされるような再調査の請求とも受け取られかねない、こういった権利行使をちゅうちょせざるを得なくなるような状況も生まれかねないという点におきましては、再調査という文言は法定化をされているわけじゃないわけです。誤解というのであれば、これをきっちり解く上でも、私は、今回、再調査の請求という形で法案では改めるわけですけれども、通称で使っている税務調査の再調査という文言の方を直すということもあるんじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがですか。

○岡田政府参考人 お答えをいたします。
 今回の行政不服審査法の見直しに合わせまして、国税通則法の方においても、今では異議申し立てという手続がございますけれども、これを再調査の請求という名称にかえるということになります。
 再調査の請求自体は、不服申し立ての一類型としての名称でございまして、再調査の請求があれば処分庁は審理手続を行うものでございますので、税務調査におけるいわゆる再調査とは明確に異なるものであるということで、委員の方から、混同されないようにしないといけない、こういう御指摘かと思います。
 一方で、先ほど申し上げました税務調査における再調査という名称でございますけれども、確かに法律用語ではございませんが、平成二十三年の税制改正の議論の段階から一般に使われている用語でございまして、現在では、パンフレット等によりまして広く周知広報を行っている状況でございます。したがいまして、再調査という表現を変更した場合には、何か税務手続の変更があったのかという形で納税者の方に混乱を引き起こすような可能性も考慮しないといけないということでございます。
 したがいまして、今回の改正法の施行によりまして現行の異議申し立てが再調査の請求に変更された際には、再調査の請求の趣旨が適切に理解され、また、税務調査における再調査と混同などが生じることのないよう、適切な周知広報等に努めてまいりたいと考えております。

○塩川委員 国税庁の方からいただいた、税務手続についてというようなペーパーなんかで見ても、税務調査の手続、その一番最後に再調査と出てくるわけですけれども、その下の欄が権利救済手続なんですよ。そこのところに、現行では異議申し立てとなっているのが、ここが今度、再調査の請求となると、見た人は、この上下に再調査と再調査の請求があるわけで、この関係というのが、やはり当然誤解を招くようなものでありますし、私は、権利救済という意味でいうのであれば、こういった、ちゅうちょする、ためらうことになるような用語そのものをなくすべきだ。そういう点でも、法文上明記されていない再調査の方を改めるというのは当然選択肢としてもあり得ると思います。
 あわせて、今回、法案でこういう形で出るわけですから、大臣の方にお尋ねしますが、今、財務省の方から答弁がありましたように、税務調査のやり直しを再調査としているわけです。再調査は、国税通則法の罰則つきの質問検査権が行使されるもので、不服申し立ての手続である再調査の請求と文言が同じになる。こうなると、結局、要らぬ誤解を招くようなやり方という形も含めて、納税者が不服申し立てをちゅうちょすることになりはしないのか。こういう点で、用語の見直しを含めてしっかり行うべきだと私は思いますが、その点、いかがでしょうか。

○新藤国務大臣 再調査の請求は、不服申し立てが大量にある処分について、処分庁が、事実関係を再び調査することにより簡易に処分を見直す手続であり、その内容を適切にあらわすため、再調査の請求、このようにしたわけであります。
 これも、私も、いろいろと御指摘をいただいておりますので、これまでの検討のプロセスを少し追っているんですけれども、名称はいろいろ検討されたわけであります。ほかに想定される案もあったわけでありますが、しかし、いろいろな案の中で、紛れのない案として、法律上の用語としてもふさわしいというのが再調査の請求ということになったということであります。
 例えば、日税連が提案されたのは、処分見直しの請求であります。また、日弁連は、再考の申し立て、こういうような御提案があったわけでありますが、処分の見直しを求める申し立てである審査請求と紛れるおそれがある、こういう評価がございました。
 なお、再調査の請求につきましては、一般法である行政不服審査法に明確に位置づけられているということであります。また、このように国会等で御審議いただき、誤解のないようにすべきである、こういうことが誤解のない事態を招くことにもなると私は思いますから、御関心を持っていただいてそこをチェックしていただく。かつ、我々は、それを紛れのないようにきちんと周知広報をする、こういうことはやってまいりたいと思います。

○塩川委員 紛れのない表現を選んだというんですけれども、税務調査のやり直しの再調査とまさに紛れるような結果となっているというのが現状であるわけで、ここをやはりしっかりと、納税者や国民の立場から必要な表現をとるということが求められているという点では、私は、国税庁に用語の見直しを求めたいし、今回の法案でこういう表現というのはやはり改めるべきだ。再調査の請求という表現ではない、違う形での表現で行う。前提として、異議申し立てをなくすということは、本来、自由選択の立場からとるべきものではないということも申し添えて、再調査の請求の活用を納税者がちゅうちょする懸念が拭えないということについて指摘をしておくものであります。
 次に、不服申し立ての前置の見直しについてお尋ねをいたします。
 法務省においでいただいておりますけれども、一九六二年の行政事件訴訟法の制定時におきまして、この前置の見直しが図られました。不服申し立て前置の法律を整理したわけであります。当時、この不服申し立ての前置を置いた法律は、結果として幾つになったのか。あわせて、その際の前置を置く妥当性の基準についてはどのようなものだったのかについて御説明をいただけますか。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
 行政事件訴訟法でございますけれども、その第八条第一項本文におきまして、原則として行政処分の取り消しの訴えと当該処分に対する審査請求とを選択して申し立てることができるものとしておりますが、この同項ただし書きにおきまして、個別法によって不服申し立て前置とすることを許容しております。
 そして、この法律と合わせて制定されました、行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律におきましては、約五十の個別法につきまして不服申し立て前置を定める規定を設ける改正が行われたものと承知しております。
 行政事件訴訟法の制定に際しましては、一つは、大量的に行われる処分であって、不服申し立てに対する裁決によって行政の統一を図る必要があるもの、また、専門技術的性質を有する処分、そしてまた、不服申し立てに対する裁決が第三者的機関によってなされることになっている処分、これらのいずれか一つに該当するものについて、不服申し立て前置を規定するものとするという議論がされていたものと承知しております。

○塩川委員 行訴法が制定されたとき、整理をした時点で前置が残されたのが約五十本、その際の前置を許容する基準については、大量に行われる処分、専門技術的性質を有する処分、第三者的機関によってなされる、こういうことを挙げられました。
 この行訴法制定以前の不服申し立ての前置、これはどういうふうになっていたのかについても御説明いただけますか。

○小野瀬政府参考人 行政事件訴訟法が制定される以前でございますが、行政事件訴訟特例法におきまして、行政庁に対する不服の申し立てができる場合には、正当な事由がない限り、これに対する裁決等を経た後でなければ、行政庁の処分の取り消しまたは変更を求める訴えを提起することができないと定められておりまして、原則として行政庁に対する不服申し立てを前置とする制度が採用されていたものと承知しております。

○塩川委員 出訴に対する不服申し立ての前置が原則だった。それを百八十度転換して、出訴と不服申し立てを自由選択とするということを原則とすることに転換をしたわけであります。
 一九六二年の行訴法制定時の不服申し立ての前置を存置した法律が約五十本、それが、今回の見直しで見ますと、約百本にふえているわけであります。随分ふえたわけですけれども、この行訴法制定以後、前置がふえ続けた理由というのは何なのか、この点について誰がチェックしているのか、これは法務省と総務省と、それぞれお答えをいただけますか。

○上村政府参考人 昭和三十七年以降ということになりますけれども、それ以降提出された法案につきましては、先ほど法務省から御回答のありました三つのメルクマールに沿いまして、関係府省におきまして、前置とする必要があるかどうか、そのメルクマールに照らして検討し、国会の議決を経てそうした法律が制定されてきたものと考えております。
 その結果といたしまして、先生御指摘のように、約百本、九十六本、今回見直したわけでございますが、ふえてきたというふうな背景だと思っております。
 ついでに申しますと、ふえてきた背景といいますのは、やはり、近年の行政の複雑、高度化というものが背景にございますので、処分が大量になってきた、大量に行われる処分がふえてきたというものですとか、専門技術的な処分がふえてきた、それから、そういう専門技術性の裏腹でもございますけれども、もう一つには、処分の公正性を担保する要請の高まりに加えまして、第三者的機関がここに関与する必要があることによって、そういうものが置かれている法律がふえてきたということなんだろうと思っております。

○小野瀬政府参考人 行政事件訴訟法第八条第一項ただし書きに該当するものとして個別法が定められる場合でございますけれども、その合理性につきましては、基本的に、当該不服申し立て前置を定める個別法の所管省庁において十分に検討されるものと考えられますが、法務省といたしましても、そのような個別法の制定に際しましては、行政事件訴訟法を所管する立場から関係省庁と協議をしてまいりましたし、今後もそういった立場から十分に協議してまいりたいと考えております。

○塩川委員 ふえてきたのは、複雑性、高度化している、処分もふえてきた、そういう趣旨の話もありましたけれども、これはこれで検証が必要だと思いますが、誰がチェックするかというところで、そうしますと、前置を置くかどうかについては、そもそも所管省庁で検討されるものだ、しかし、当然、行訴法八条一項ただし書きの関係もありますので、法務省がそれに対して、例えば合い議ですとか、そういうふうな手続になっている、そういうことでよろしいんですか。

○小野瀬政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、個別法の制定に際しまして、行政事件訴訟法を所管する省庁といたしまして、この八条第一項本文、それから、ただし書きの趣旨を十分理解していただけるように協議してまいるというものでございます。

○塩川委員 つまり、前置を置くような法案が出てきたときには法務省がきちっと物を言うということになっているということですね。

○小野瀬政府参考人 基本的には、個別法の所管省庁におかれまして十分に御検討されるものと考えられますが、この法律の所管省庁といたしまして、十分に私どもの方からも御意見を言うことがあるということでございます。

○塩川委員 御意見を言うことがあるということなんですけれども、要するに、御意見を言う、前置の入った、そういう法案が出てきたらきちっと物を言うと。結論はありますよ。しかし、物を言うというところははっきりしているということですか。

○小野瀬政府参考人 関係省庁との協議の場におきまして、法務省としての御意見を申し上げるということでございます。

○塩川委員 前置が出るような法案があれば、必ず協議の場が設けられる、設けられてきたということですか。

○小野瀬政府参考人 過去のものをそれぞれについて今個別に確認しているわけではございませんが、恐らく、一般的には、行政事件訴訟法のただし書きの個別法でございますので、法務省も協議をしてまいったというふうに理解しております。

○塩川委員 恐らくというのでよくわからないんですけれども、本当にやっているのかなというのもちょっと疑わしいところがあるわけですが、しかし、法務省がやはり行訴法との関係ではしっかり見ていくという立場にあるというお話ではあると思いますので、そういう点で、なぜふえ続けてきたのかということについてのしっかりとした検証というのを法務省を中心にやっていただきたいというふうに思うわけであります。
 それで、今回、前置を見直しました。その見直した基準がどのようなものか、この点について、行訴法制定時のメルクマールとの違いも含めて御説明をいただけますか。

○上村政府参考人 行訴法制定時のメルクマールは、先ほど法務省の方から御答弁がございましたけれども、まず第一点目が、大量的に行われる処分であるということでございます。これによって、裁決等によって行政の統一を図る必要があるもの、こういったものだというふうに理解しております。
 今回は、大量の不服申し立てがあるものと、処分ではなくて申し立てに変更してございます。
 これは、一つには、当然でございますが、処分が大量であっても、必ずしも申し立て自体が大量であるとは限らない。それから、裁決段階で行政の統一を図るというよりは、行政手続法の制定もそうなんですが、昨今の事前手続重視の流れの中からしますと、処分段階で確保していった方がいいのではないかということもございますので、この第一点目に関しましては、大量の不服申し立てがありまして、大量と申しますのはおおむね一千件でございますが、直ちに出訴されると裁判所の負担が大きくなる、こういったものにすることとした。これが変更の一点目でございます。
 それから、当時のメルクマールはあと二つございまして、一つが、専門技術的性質を有する処分、それからもう一つが、裁決が第三者機関によってなされているもの、この二つでございます。
 しかし、専門技術性といいましても、具体的にどのようなものであるか、何をもって専門技術性を有するかというのはなかなか判断の基準としては難しいということがございます。それから、単に、第三者機関が判断をする、裁決をするということだけをもって、では、裁判との関係におきまして、訴訟期間の短縮なり、ひいては国民の権利利益の向上に資するか、そちらの方がよりよいのだということも必ずしも言えないという論点がございました。
 こうしたことを踏まえまして、あとの二点をまとめて申し上げますと、第三者的機関が高度に専門技術的な判断を行う場合、これは医学的な場合とかを念頭に置いているわけですけれども、そうしたことによって裁判所の負担が低減されると考えられる場合に限って今回は前置を残すこととした、これが第二のメルクマールになってまいります。したがいまして、行訴法制定当時のあとの二つを一つにまとめたメルクマールになっているということでございます。
 今回、新たにもう一つメルクマールをつけ加えておりますが、これは、不服申し立ての手続に一審代替性があるものでございます。
 すなわち、裁決後に地裁を経ずに直接高裁に提訴できるもの、これは、全体として裁判の長期化を防ぎまして、国民の手続負担の軽減が図られることになりますので、こうしたものは存置をする。これを三つ目のメルクマールとした、こういうことでございます。

○塩川委員 大量性と第三者的機関と一審代替性、もちろん、地方議会への諮問などの理由での特別な事情というのは、これはこれとしてあるんだと思いますけれども、そういった三つの整理に基づいて行われたということです。
 この大量性なんですけれども、処分ではなくて不服申し立てに着目というのはわかります。一千件というのは一つの目安ということですけれども、同時に、裁判所の負担が大きくなるというのが本当に理由として適切なのかなというのも思うわけです。
 国民の権利救済、これを保障するという観点ですから、当然そういう点では出訴もあるでしょうし、不服申し立てというのも選べるという点でいえば、どちらも自由に選択しましょうというのが基本であるわけで、その負担が行政の方で大きいか司法の方で大きいかという点については、国全体の中で国民が判断することであろうと思っています。
 その上で、大量性というのを具体的に拾っていきますと、大量性という理由で前置を存置しているというのは、例えば税ですよね、国税、地方税ですし、あと、社会保険関係で、医療や介護や年金があります。また、労働保険関係、労災や失業などもありますし、あとは生活保護とか。そういう点でいえば、まさに国民生活に深くかかわる分野についての権利救済にかかわる部分に前置が置かれているということになるわけです。
 これまではほとんどが二重前置でしたから、ここを見直して一重にしましたというのは、これはこれで半歩前進だと思いますけれども、だったら、そもそも前置そのものをなくすということも踏み込んで考える必要があるんじゃないのか。
 そういう点でも、大臣にお尋ねいたしますが、今回の不服申し立て前置の見直しの基準について、全体としての見直しが必要なんじゃないのか、特に大量性のところについては、権利救済という立場からいっても、もう一歩踏み込んだ見直しをすることが必要なんじゃないのか、こういうふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

○新藤国務大臣 まさに五十年ぶりにこの不服申し立て前置に係るメルクマールも見直したわけであります。そして、不服申し立て前置そのものの見直しも行うということでございまして、九十六法律を洗い直した結果、六十八法律については前置を廃止、縮小、特に二重前置は全て解消したということであります。
 今のような御指摘も踏まえた上で、今後、このメルクマールは、不服申し立て前置に関する基本的な原則として適用されるわけであります。
 したがって、総務省としては、この原則に反した不服申し立て前置が定められることのないように、政府内の法案立案プロセスにおいては、しっかりと対応してまいりたい、このように考えております。

○塩川委員 見直したメルクマールで今後きちっとチェックをしていくという話ですけれども、このメルクマールそのものをもう一歩踏み込んで考え直す考えはないのかということなんですよ。
 ですから、大量性というのが、具体的に一つ一つの法律を見ていけば、まさに国民生活に直結するようなところばかりです。だからこそ、そういう意味では大量性と言われるように訴えも多いということでもあるわけで、その点について、本来は、出訴もできるし不服申し立ても選べるよと、自由選択という基本に立って考えるわけで、二重を一重にしたからよしとするという点では、これはやはり権利救済の立場からも不十分じゃないのか。もう一歩踏み込んで、この点、前置を解消するという点についてもうちょっと考えるお考えはないのか。そこはいかがですか。

○新藤国務大臣 このメルクマールがそもそも基本的な原則であります、指標ですね。この大量というのも、どの程度をもって大量とするかは、おおむね一千件ということであります。
 ですから、あとはその事案の内容によって適切な対応がなされるものだと思いますし、メルクマール、今回統一の指標として定めましたから、それらを使ってどういうふうに運用がなされていくか、そして国民の権利救済や出訴の権利がきちんと維持できるかどうか、そういったものを踏まえて、総合的なチェックが必要なわけであります。
 まずは運用して、適切な状態をつくっていきたい、このように考えております。

○塩川委員 メルクマール自身は、何らかオーソライズされている形のもの、当然、法定化はされておりませんし、その意味では一定程度、緩いといいますか、かっちりしたものにはなっていないわけです。ですから、これはこれとして参考にしていくということですけれども、私は見直しが必要だと思います。
 今後どうしていくかというお話をされました。しっかり見ていくということなんですけれども、その点で、これまでは、少なくとも行訴法との関係で法務省が見てきましたという立場だったわけです。それもきちっとやっていたかどうかはちょっと検証が必要だと思いますけれども、今後はどうなんでしょうか。今後前置をふやさないための手だてというのは、法務省だけではなくて、行審法の議論もあったんですから、総務省もかかわっていくということになるんでしょうか。この点はどうでしょうか。

○新藤国務大臣 それは一番最初に御答弁申し上げましたが、総務省といたしましても、こういった政府内の法案立案プロセスにおきましては関心を持ってまた対応していきたい、このように考えております。

○塩川委員 法務省はもちろん、行訴法の立場もあるでしょうし。ただ、行審法の中では、直接的には前置に係る規定というのはないんですよね。ただ、今回、前政権のときの見直しというのも引き継いだ形で行われている行審法の議論だったわけですから、そういう意味では、こういう形での、前置を見直したということ自身の前進方向というのは理解をいたします。
 今後どうするかという点について、法律上の根拠がないという点だとなかなか難しい。特に、そうなると、メルクマールそのものも法的な根拠がない格好で置かれているということになるんじゃないのかと思うんです。そういう点で、法務省の方は直接メルクマールづくりにかかわっていない、総務省の方はメルクマールについての法的な根拠を持っていない、これで大丈夫なのかという思いがあるんですけれども、いかがですか。

○新藤国務大臣 まず、そういう以前に、五十年ぶりに見直したわけであります。これからそれを運用していこうということでありますから、運用が始まる段階で、この次どうするのですか、こういう御心配があるとするならば、そういったものも踏まえて、まずは適切な運用を心がける。その中から実態に応じてさまざまな研究が行われていくし、法案の立案プロセスにおいても私たちも関心を持っていく、こういうことを申し上げているわけでありまして、しっかりと対応できるようにしていきたいと思います。

○塩川委員 そういうふうに役所内でちゃんとチェックしますよという合意みたいな、覚書ですとか何らかの了解事項とか、そういうのを少なくとも設けるという考えはないですか。

○新藤国務大臣 まず始めてから、運用して、運用した上で、その上で、我々はさまざまな検討をなさなければいけない、このように思っております。

○高木委員長 塩川君、申し合わせの時間が来ています。

○塩川委員 五十年ぶりといって、次の改正が、まあ、五年後の見直しの修正もあるそうですけれども、そのときには何らか見えるものがあるんでしょうか。しっかりとした対応を求めて、質問を終わります。