国会質問

<第186通常国会 2014年05月16日 経済産業委員会 17号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今回の電力システム改革そして電気事業法改正案は、東日本大震災と東電福島第一原発事故、これを契機として行われるものであります。ですから、原発問題と不可分ということで、この立場でお尋ねいたします。
 総理は、今月の初め、五月一日に、シティーにおけるスピーチをされました。その中では、「世界のどこにも劣らないレベルの厳しい安全基準を満たしたところから、目下ひとつとして動いていない原子力発電所を、ひとつ、ひとつ、慎重な手順を踏んで稼働させていくことにしました。」と発言しておられます。
 この点ですが、本法案の参考人質疑におきまして、植田和弘参考人は、規制基準にかかわって、安全性とは何かというときに、原子力規制委員会の安全審査をパスするという安全性とともに、住民が安全かどうかという問題がある、事故が起こった場合に避難が具体的にできることが確保されることは前提条件だ、大事な点は、避難計画というのは実は避難を受け入れるところがないと避難できない、避難受け入れ計画もはっきりしていないといけない、このように述べております。
 総理にお尋ねします。
 総理は安全基準について触れたわけですけれども、総理のおっしゃる安全基準の中には、原子力施設の安全基準の話だけではなくて、このような避難計画を含めた住民の安全確保のための安全基準というのは含まれているんでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 原発については、福島の事故の教訓を踏まえて、安全を確保することが大前提であります。その前提のもと、独立した原子力規制委員会が世界で最も厳しいレベルの規制基準に基づいて徹底的な検査を行い、これに適合すると認められた原発について再稼働を進めていく方針であります。
 そして、再稼働を進めていくに当たって、地元の理解を得ることが重要でございまして、このため、各自治体が作成する地域防災計画、避難計画については、住民の安全、安心を高めるため、政府としてもしっかり支援し、継続的に改善充実を図っていきます。
 これまでに、昨年九月に決定した原子力防災会議の方針に基づきまして、関係自治体における計画の充実化を支援するためのワーキングチームを地域ごとに設置し、関係省庁を挙げて取り組んでいるところであります。
 この結果、泊、伊方、福井、島根、玄海、川内の六地域において、関係市町村全ての避難計画が策定されました。これらの地域についても引き続き要援護者対策や移動手段確保など計画の具体化のための支援を行っているところでございまして、さらに各ワーキングチームにおいて個別地域の防災体制について確認していく方針でございます。
 引き続き、政府を挙げて自治体を力強く支え、地域の防災避難計画の充実に向けてしっかりと取り組んでいく考えでございます。

○塩川委員 避難計画、国は支援はするけれども、それをつくるのは自治体だという点で、総理の安全基準の中に、住民の安全確保のための安全基準が含まれているというお話はございませんでした。
 現状として、UPZのエリアでの避難計画の策定数というのは、まだまだ策定されていないところが現に残されておりますし、全自治体が避難計画を策定したところもあるのも実際ですが、避難計画が一つも策定されていない地域というのも現に残されているわけであります。
 原子力防災会議では、地域防災計画の充実に向けて、避難計画や要援護者対策等の具体化を進めるに当たって、自治体のみでは解決が困難な対策については、国が具体化、充実化を支援するとしています。
 そこで、内閣府に確認でお尋ねします。
 避難計画を立てるのであれば、これは当然、避難元の計画だけではなく、避難先の計画が必要であります。こういった避難の受け入れ計画というのは、実際にどういうふうになっているんでしょうか。

○黒木政府参考人 お答えします。
 平成二十六年の三月末時点で、七十一市町村につきまして避難計画が作成されているところでございますが、受け入れ側自治体及び施設が具体的にこの避難計画の中に記載されております。避難計画を踏まえた具体的な避難の受け入れに関する調整や準備につきましては、避難元自治体と避難先自治体で順次実施されるものでありまして、必ずしも受け入れ計画という形で作成されるものではないと認識しております。
 なお、現時点では、住民の全部または一部が他府県への避難を予定しておる自治体は二十四市町村ございまして、他府県への避難先となる自治体は約百四十市町村でございます。
 いずれにしましても、政府としては、関係自治体の地域防災計画、避難計画の策定や充実のため、各地域にワーキングチームを設置し支援を行っており、この取り組みの中で、避難の受け入れ準備の状況についても適宜把握してまいる所存でございます。
 なお、特に、先ほど申し上げました他府県への避難を予定している自治体に関しましては、その住民の皆様に対しましてはしっかりとした支援を行ってまいる所存でございます。
 以上であります。

○塩川委員 しっかりと支援という話でありますけれども、現状では、具体的に避難受け入れ計画があるわけではありません。協議を始めるという段階にとどまっているわけであります。福島第一原発事故は、自力での避難が困難な方々に避難を強いたことで多くの悲劇も生んだわけであります。この点での要援護者対策も具体化が十分されていないという現状もあるわけです。
 福島県では、十四万人の方々が避難生活を強いられたまま三年が過ぎました。東京二十三区の二倍の広さの地域が無人の地となって、三年がたっているのが今回の事故であります。
 私は、先月、いわき市内の、楢葉町からの避難者の方がいらっしゃる仮設住宅に行って、お話を伺いました。
 その方のお話の中では、今までは田んぼをつくったり、畑をつくったり、山からタラの芽やワラビ、フキをとってきたりして、自給自足の暮らしをしてきた。それが原発事故で追い出されて、中には十二回も避難場所を変えてここにたどり着いた人もいる。壁一枚で隣の音も聞こえてくる仮設住宅暮らしは、みんなストレスがたまり、トラブルも多い。放射線量が高いところに帰れなんてとんでもない。調査はセシウムだけで、その他の放射性物質は測定していない。山の放射線量が高い。水のことが心配だ。楢葉町に流れる水源となっている木戸川のダムの水がどうなっているのか。一つ一つ不安が解消されていかないと戻るに戻れない。これが原発事故被害者、避難者の方の声であります。
 総理にお尋ねしますが、このように、現状の原発事故においては避難が長期化しております。その避難者の生活を支え続けるような避難計画というのが本当につくれるんでしょうか。

○茂木国務大臣 福島県の、いまだ十四万の皆さんが大変厳しい避難生活を続けていらっしゃる。一日も早くふるさとに戻れるように、また希望される皆さんが新しい生活を始められるように、政府としてもさまざまな対策に万全を期していきたい、そのように考えております。
 その上で、地域の防災計画、避難計画についてでありますけれども、これは委員も御案内のとおり、どの地区単位で避難を行うか、また、どこに学校や高台があるか、そして避難経路をどうやって確保していくか、さらには、その町内にひとり暮らしの、独居老人の方がどう住んでいらっしゃるか、そういう住民の生活実態なども踏まえながらつくっていかなきゃならないということを考えますと、やはり、その地域の状況に精通した各自治体が、住民の避難先となる自治体との調整も含めて、実効性のある計画を策定することが極めて適切である、そのように考えております。

○塩川委員 原発の事故に基づいて避難計画を立てようにも、実際にどこに避難すればいいのか、どのぐらいの時間がかかるのか、あるいは避難が困難なような人たちをどうするのか、一つ一つについて当然のことながら難問になっている。さらに言えば、今回のような、三年に及ぶような長期の避難計画というのはそもそも立てられるのか。これが多くの自治体、そして住民の皆さんの声じゃないでしょうか。
 総理にお尋ねしますけれども、今回のような重大事故によって長期の避難が強いられる、こういう長期に及ぶような避難計画というのを本当に立てることができると思いますか。

○安倍内閣総理大臣 政府としては、先般の事故によっていまだに十四万人の方々が避難生活を余儀なくされている、こうした点も十分に反省し、そして踏まえながら、今後、避難計画について通常は受け入れ側の自治体とも調整した上で作成されていくわけでありますが、我々はまさに、状況を把握し、関係自治体を力強く支え、地域の防災・避難計画の充実に向けて今後ともしっかりと取り組んでいきたいと思います。

○塩川委員 自治体や住民の皆さんの立場から、この避難計画を立てる際のさまざまな問題が出ているにもかかわらず、御支援する、頑張ると言うだけで、これで本当に答えとなるのか、このことがまさに問われているんじゃないでしょうか。避難計画を規制基準に含めていない、こういうあり方そのものが問われているところであります。
 大臣に重ねて楢葉町の避難者の要望をお伝えしたい。帰るか帰らないか判断しろと言われても、事故収束の見通しが立っていない、放射性廃棄物と一緒に暮らすことになる、何より福島第二原発を廃炉にすると東電は言っていない、福島第二原発が存在する限り不安で戻れないという声なんですよ。福島第二の廃炉なくして復興はないというのが、被災地、この原発事故の被害者、避難者の声である。
 総理にお尋ねしますが、福島第二を廃炉にしないということが復興の妨げになっている、こういう認識はお持ちですか。

○茂木国務大臣 政府としても、福島第一原発の廃炉・汚染水対策に全力で取り組まなければいけないと思っております。
 そういった観点から、福島第一の五号機、六号機につきまして、ここにおきまして、さまざまな機材を運び込む、さらにはその施設を使うことによりまして一号機から四号機の作業についてのさまざまな実験等を行う。こういう観点から、総理みずから東電に要請して、東電におきましても福島第一原発の五号機、六号機の廃炉を決めたところであります。
 福島第二原発につきまして、地元の皆さんからもさまざまな御意見をいただいているところであります。
 現状におきまして、福島第二原発につきまして、適合審査申請の行われております十原発十七基と同列に扱うことはできない、このように考えております。

○塩川委員 廃炉という話を出しているわけではありません。
 福島第二の廃炉はオール福島の声であります。これにこそ耳を傾けるべきだ。多数の住民が居住して避難が困難なような地域にはそもそも原発を置くことができないんだ、これこそ問われているということを強く申し上げて、質問を終わります。